肥満




肌荒れ、乾燥肌

 冬は肌が荒れる季節です。空気が乾燥していますし、その上暖房が加わると余計に乾燥し、肌から水分を奪います。寒いときには手洗いにお湯を使うことになりますが、お湯は手の油分を奪い、乾燥させます。

 冬は、アトピーとかアレルギーとかがなくても皮膚が乾燥して痒みを伴いがちです。子供の乾燥肌、高齢者に多い老人性掻痒などです。掻くと皮膚を傷め、さらに痒くなり、悪循環になります。油分や水分が少ない場合は、保湿性のある軟膏を使用します。色々なタイプの保湿剤があります。小児科や皮膚科で相談してください。ごく軽度の場合は別として、夜中に無意識に掻いているようであれば入浴後に薄く塗ってあげてください。皮膚に掻き傷のあることからでも判断できます。肌荒れは軽いうちからの対処が奏効します。掻くのが止まれば皮膚の回復はすぐです。かゆみが強い場合は入眠前にかゆみを抑える薬も考慮します。

 荒れた肌をきれいにしようとして、お風呂でゴシゴシこするのは止めましょう。新しく出来てきている皮膚までも傷つけます。よけいに回復しません。ベビー石鹸などを使用して、手や木綿のタオルでやさしく洗ってあげてください。最後は湯ぶねに浸かって石鹸分をきれいに落としましょう。その後に程度に合わせて保湿剤を使用してください。アトピー用の石鹸や低刺激性の石鹸は石鹸の主成分である界面活性剤の含有が少ないため、皮膚の汚れが落ちにくく、汚れが残る場合があります。これらの石鹸は汚れた皮膚には不向きで、重症な皮膚炎などの特殊な状況での使用に限ってください。

 すべすべの肌にしようとするのは不可能ですし、必要もありません。年頃の娘さんであればまだしも、赤ちゃんや子供では多少肌が荒れていても元気で夜が眠れていれば無視です。特によだれの出る時期の口の周囲やほっぺの軽い荒れはあって当然です。ほっぺに毛糸などの服が当たらないようにする、こまめに洗うなどひどくならないような対応は必要ですが、よだれが止まるまで治らないとあきらめてください。

 特殊な例を除けば、ほとんどの例でアレルギーは心配要りません。良くなったり、悪くなったりしながら数年の経過で治まります。

1、皮膚について
 皮膚の表面には死んだ表皮細胞が15から20層に重なり合って形成する角層というラップ1枚ほどの厚さのバリアがあります。その上に皮脂膜という車でいえばワックスのようなものがあり、これらが皮膚での水分を調節しています。

 入浴後は角層に水分が十分含まれるため肌はスベスベです。乾燥肌をスベスベの肌にするには角層に水分を保たせればよいのです。角層と皮脂膜の機能を保つことが大切です。

 角層は保湿作用以外にも、ホコリ、ダニ、細菌、化学物質などの刺激となる異物が皮膚内に侵入するのを防いでいます。皮膚には清潔に保ち、乾燥を防ぎ、皮膚への刺激を抑えるスキンケアが必要です。スキンケアは角質を保護し、皮膚の細胞が壊れるのを防ぎ、皮膚の再生をしやすくするのが目的です。皮膚は4週間で再生するといわれています。スキンケアを行い皮膚の再生を待ちましょう。

2、皮膚の脂(皮脂)
 皮脂は毛孔(毛あな)から分泌され、毛や皮膚を潤します。手のひらや足の裏は毛がありませんので皮脂の分泌も無く、乾燥してひび割れができやすくなります。

 皮脂の量は性ホルモンに影響され@赤ちゃんはお母さんの性ホルモンの影響で多く、A生後6か月から思春期までは性ホルモンが少なく皮膚が乾燥しがちになります。B思春期では皮脂が多く、にきびも出ますがC女性では30歳頃、男性では40歳頃から皮脂の量が減少し、老人になるとさらに皮膚は乾燥します。

3、乾燥させる因子
 部屋の空気が乾燥していると当然皮膚も乾燥します。冷房や暖房の効いた部屋、コタツ、電気毛布などの快適に暮らす道具が皮膚を乾燥させます。

4、入浴
 子供や皮膚の弱い人では汗やあかが布団へ入ってからの痒みの原因となることがあります。お風呂は汗やあかを落とすという意味では有用です。自分にあった安物の石鹸をやさしく使って、石鹸分をよく洗い流すような入浴をして下さい。
 長風呂や石鹸は皮脂を落とします。入浴後皮膚がつっぱる様であれば入浴後に保湿性のあるクリームを使用して下さい。タオルでゴシゴシ洗うのは皮膚を傷つけ、皮膚の持つバリア機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増しますので止めましょう。

5、衣服
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。シャツなどのノリ付けは止め、麻や毛糸なども皮膚に直接触れないようにして下さい。これは赤ちゃんなどを抱っこする人も同様です。赤ちゃんの肌に直接刺激のあるものが触れないようにして下さい。

6、食事
 食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎は小学校入学頃までは多少ありますが、その後は稀です。食物制限は明らかに食べればひどくなる食物のみに限定してください。食物制限自体がストレスとなります。ストレス自体が皮膚炎を悪化させます。

7、ホコリ、ダニ
 生活環境を整備して、こういったものを減らすことは大切ですが、限度があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、じゅうたんなどを止めるなどで十分と思います。アトピー性皮膚炎はダニやホコリといった単純なアレルギー反応ではなく、遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光など多くの因子が関係しています。原因の1つのみにとらわれすぎるのは感心しません。アレルギー皮膚炎は幼稚園や小学生では軽症まで含めると10〜20%の子供にあるというデータがありますが、成人までにはほとんどが治ります。

8、塗り薬
 保湿を目的に使用することが主体です。ワセリンのように何も含んでいないものから、さらに保湿性を高める薬、かゆみを抑える薬、炎症を抑える薬などいろいろあります。数種類を症状にあわせて使い分けてください。
 赤みがひどい場合は保湿を目的とした軟膏だけでは抑え切れないことが多く、炎症を抑える薬の入った軟膏が必要となります。こういった状況では、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を含有する軟膏をごく短期間(数回や1、2日間)使用することで、副反応も出ず、有効です。薬の効果と副作用を理解し、漫然と使わなければ大丈夫です。ただ、皮膚の炎症が強く、長引く場合は副反応に注意しながらステロイド剤やプロトピック軟膏を長期に使用して皮膚の炎症を抑えていかなければならない場合もあります。

9、飲み薬
 目的はかゆみ、特に夜中のかゆみを抑えることです。掻いて皮膚の状態を悪化させないこと、夜に親子ともに熟睡できることです。皮膚の状態がよくなれば止れます。うまく使ってください。



発熱

 発熱は病気に気づくきっかけとなる症状の1つです。発熱を心配するのは当然ですが、心配しすぎないようにしましょう。急を要する病気の症状のこともありますが、ほとんどはウイルス性の感染症(いわゆる風邪)です。こういったウイルス性感染症に効く薬はほとんどありません。ウイルスと戦う体力が重要です。涼しい気持ちの良い環境つくりを心がけてください。水分補給が重要です。食べれるものから食べてください。

発熱
1、考え方
1)乳児では1年間に5〜6回の熱発があるのが一般的です。特に保育園や幼稚園に行き始めの1年間は頻繁に熱を出します。

2)発熱や下痢を生じさせるウイルスがある。これら一つ一つのウイルスに感染し、抵抗力を獲得することで感染するウイルスが減少し、徐々に感染しにくく、熱発もしなくなります。

3)熱が高くても機嫌が良い場合はあせらず、落ち着いて小児科専門医を受診する。熱が低くても機嫌がかなり悪い、ぐったりしている、呼びかけに対する反応が悪い(意識低下)などの場合は救急で小児科専門医のある病院を受診してください。

4)原因はウイルスによることがほとんどであり、この場合は抗生剤(マイシン)は効きません。ただ、1歳未満の場合はその後の細菌感染を予防する意味で、抗生剤の使用に意味がある場合も多い。

5)リュウマチ熱、急性腎炎などをおこしやすい溶血性連鎖球菌(溶連菌)など特殊な菌の場合は一定期間の抗生剤服用が重要で、後遺症を予防します。



早くおっぱいが大きくなった

 思春期は来なければ子孫繁栄は望めません。しかし、健全な心身の発育を考えると思春期出現はあまり早すぎたり遅すぎたりすると問題が生じる場合があります。また、思春期が来ない病気もあります。ここでは思春期が早く来すぎた場合を、女児を例にとり述べますが、男児では、睾丸がおおきくなる、陰毛が出現するに置き換えていただければ結構です。

 おっぱいが小学校入学までに大きくなった。
思春期が早く来すぎる可能性がある。

1、原因
 不明なことが多い。まれだが脳内や卵巣に腫瘍があることがある。女児の場合は特別な原因がなく乳房腫大がくることが多い。

2、困ること
 幼稚園でおっぱいが大きいと非常に目立つ。
 生理の処理は幼稚園児自身では難しい。
 幼稚園や小学校低学年では身長は高いが、身長が早く止り、最終身長はかなり低くなる。

3、診断方法
 それまでの身長・体重の経過。女性ホルモンや腫瘍のマーカーなどの血液検査。思春期が来そうな場合は超音波(エコー)やMRIの検査

4、治療
 思春期が来そうな場合はお薬で思春期を遅らせる。




ヒトメタニューモウイルス

 主に咳や鼻水などの呼吸器感染症をひきおこすウイルスです。昔から普遍的に存在している風邪のウイルスですが、最近になって診断が鼻腔ぬぐい液で出来るようになり、そのウイルス名が知られるようになりました(H28年での保険適応はレントゲンなどで肺炎が強く疑われる6歳未満の子の場合のみに限定されています)。臨床像は鼻炎や咽頭炎などの上気道炎症状が主です。小児の発熱を伴う呼吸器感染症(風邪)の5〜10%、大人の呼吸器感染症の2〜4%はこのウイルスが原因だと考えられており、一般的なウイルスです。このウイルスは1回の感染のみでは再感染を防ぐほどの免疫が獲得できずに再感染を繰り返しますが、再感染を繰り返すにつれて徐々に免疫を獲得し、症状が軽くなる傾向にあります。成人では感染しても症状の出ない不顕性感染や咳や鼻水が主体の風邪症状程度で治まるのが一般的です。ただ、乳幼児や高齢者などの免疫機能の低下した状況では重症化する場合もあり、注意が必要です。
 出生時に母親からもらった免疫の切れる生後6か月頃から感染し始めて、2歳までに約半数が、遅くとも10歳頃までに全員が初感染を受けるとされており、主に1〜3歳の幼児の間で流行します。このウイルスは遺伝子も感染症状も冬に流行する子どもの風邪の1つである細気管支炎の主な原因ウイルスであるRSウイルスに非常に似ています。ただ、ヒトメタニューモウイルスの初感染は1〜2歳に多いのに対して、RSウイルスは1歳未満に多い傾向があり、RSウイルスの流行期は秋〜冬ですが、ヒトメタニューモウイルスの流行期は春先で、RSウイルスやインフルエンザの流行の後に流行する傾向があります。RSウイルスと同様に咳やくしゃみに伴って出たウイルスが気道粘膜に付着する(飛沫感染)、手などを介してウイルスが粘膜に付着する(接触感染)ことで感染します。
 1年を通じて発症しますが、3月〜6月に流行のピークがあります。ウイルスに対する治療薬はなく、症状を軽くする薬での対応ですが、ほとんどの場合は感染しても症状の出ない不顕性感染ですみますし、症状を伴う場合でも咳や鼻水などの上気道炎(いわゆる風邪)症状までで治癒します。潜伏期間は4〜6日間で、咳や鼻水は 1週間程度、発熱は4〜5日間続きます。ウイルスの排泄量は発熱後1〜4日に多く、排出は1〜2週間持続します。一部の乳幼児では下気道にまで炎症が進み、喘鳴を伴う気管支炎(喘息様気管支炎)や細気管支炎、肺炎を引き起こすこともあります。
 保育園などの集団生活の場で、このウイルスの感染児がいた場合は、周辺には感染した無症状の子や上気道炎症状の子がすでに多くいると考えられます。軽症の子どもを登園禁止にして隔離することは困難ですし、有効な治療薬がなく、ウイルスの排泄期間が長いことなどを考慮すると、集団生活の場で、このウイルスの流行を防止することは非常に困難と考えられます。親に不安を与えたり、重症でない子にむやみにウイルス検査を強制することは不要と考えますし、このウイルスに感染しているという理由だけでの登園禁止は無意味であり、出欠に関してはその子の全身状態で判断すべきと考えます。



肥満

 肥満は悪いものという認識がありますが、肥満による悪い影響が出る程度は個人によって異なります。食べることは楽しいことですし、子供では身体の発育が大切です。食事の制限ばかりせずに、自分や子供の程度を知って楽しく食べましょう。

1、考え方
1)太っていることは大きな問題ではない。体に脂肪が付くことによって起こる症状、障害が問題である。

2)染色体や遺伝の病気で肥満がくる場合がある。本人や親が悪いのではない。どうしようもない場合もあることも考慮する。

2、運動嫌い
 太ると運動するのがたいそうになる。運動しないと余計に太るという悪循環になる。

3、脂肪肝
1)肝機能が悪くなる。定期的に血液検査でチェックする.
2)内蔵型肥満(脂肪がお腹の中につく)に肝機能障害がおこりやすい。
3)太っている人が必ずしも脂肪肝ではない。
4)肝機能が悪くても運動させてやせさせることが肝心である。運動で肝機能がよくなる。

4、糖尿病
1)インスリン非依存型糖尿病になりやすい。家族に同型の糖尿病があると特に要注意である。
2)検尿でわかる。血液検査も必要である。食事療法と運動で改善する。

5、治療法
1)子どもは身長が伸びるため、体重を増やさないようにするだけで肥満度は低下する。
2)間食を控えるだけで肝機能はよくなる。身体の発育のため、食事は十分に食べる
3)ゆっくりとした運動を続けることが重要である(激しい運動は長続きしない)。
4)運動や食事療法は家族みんなで行うことも大事である。
5)子どもの時期の食事や運動の習慣は大人になってからの成人病の予防にも重要である。




服薬困難な子への薬の服用法

 味の悪い薬は錠剤にするか、粉の一粒一粒を柑橘類や苺の匂いや甘味でコーティングして飲みやすい粉末にして発売されています。最近では薬の味、匂い、錠剤の小型化、粉末のコーティング技術などに様々な工夫が凝らされており、服薬しやすくなってきています。しかし、水薬しか飲んでくれない子、水薬は飲まない子、どのような薬でも飲まない子供も少数ですがおります。せっかく処方した薬も服用してくれないと意味がありません。

 乳児期前半であれば、味覚もあまり発達していませんので、薬を嫌う子は少ないのですが、乳児期後半になって、離乳食が進んでくると、味や匂いなどへの感覚、舌の触覚も発達し、しかも自己主張も出てきますので、服薬を嫌がる子供が増加してきます。この年齢ではもちろん服薬の必要性は理解できず、子供に上手に薬を飲んでもらうには、親が試行錯誤しながら苦労することになります。ただ、錠剤や粉末といった剤型、味や匂い、ざらつく舌触りなど理由は様々ですが、喉を通るときに嘔吐反射が起きて飲み込めない、その薬であると考想像しただけで吐気を催す子もおります。その場合、親が頑張ってもだめで、医師はそのことを理解し、その子の飲める薬の中で最良と思われる薬を処方する事になります。

 医師が薬の服用方法を指示する際に、一日3回食後という表現が昔から慣用的に使用されています。しかし、薬嫌いの子どもでは、満腹の時はなおさらまずい薬を嫌がり、無理に飲ませるとせっかく食べた食物まで一緒に嘔吐することも少なくありません。そのため、@小児の薬は食前に服用してもらったり、空腹時での服薬で飲める場合もあります。子供では空腹時服薬による薬効への影響や胃に対する負担など特に問題はないとされています。

 また、粉薬をそのまま水で服用する以外にも、A服用困難な子供には少量の牛乳、練乳、ジュース、スポーツドリンク、アイスクリーム、ヨーグルトなど小児が好む飲み物や食べ物に混ぜて服用させることも可能です。アイスクリームやヨーグルトなどはチョコレート味などの味の濃い方が薬の味を隠せるために好まれます。軟らかいチョコレートやチョコレートを電子レンジなどで軟らかくして混ぜることも可能です。混ぜる際には全体に混ぜるのではなく、一部にのみ混ぜて、まずい薬の部分を食べさせた後はおいしく残りを食べさせてあげて下さい。全体に混ぜると、残すと薬も残りますし、少し我慢した後においしい食べ物や飲み物があれば子供も喜ぶと思います。ただ、マクロライド系抗生剤の一部などではジュース、スポーツドリンク、ヨーグルトなどに混ぜると薬のコーティングがとれ、苦みが逆に増強される薬がありますので薬剤の特徴を知って使用するようにする事も必要です。哺乳瓶のミルク全体に混ぜたりすると、その味の悪さのためミルク嫌いになることもありますので、ミルクやご飯などの主食や主食に近い食品に混ぜることは避けたほうが無難と思います。

Bスプーンや乳首で飲ませたり、スポイトや注射器で少量ずつ舌の奥に流し込む方法や、C粉薬を数滴の水で練ってペースト状にして頬部の口腔粘膜に塗りつけた後に水分を飲ませる方法もありあります。粉薬を練るときに少量の砂糖、チョコレート、ココア、練乳などを加えたりすると飲みやすくなる場合もあります。

D冷たさで味覚が鈍くなり苦さを感じにくくなりますので、冷たくした方が飲みやすくなります。アイスクリームを使用したり、時には薬を少量の水と混ぜて凍らせてシャーベット状にすると飲める場合もあります。ただ、冷たさで咳き込む場合がありますので、喘息性の咳の場合には注意が必要です。

E薬をオブラートで包み込んで飲ませる方法もあります。オブラートはそのままですと口の中にくっついてしまい服用しにくい場合もありますので、オブラートの外側をさっと水でぬらし、とろみを出して服用させて下さい。

F服薬補助ゼリーではゼリーに薬を混ぜるのではなく、ゼリーの上に薬を置きさらにその上をゼリーで包むようにして使用します。粉の薬を少量の水でペースト状に練ったものをゼリーで包むと利用しやすくなります。ただ、酸性飲料で苦味が出てしまうマクロライド系の抗生剤などには果汁系の酸味のあるゼリーではなく、チョコレート味などの中性の服薬ゼリーを使用して下さい。  

 特別なごく一部の薬を除き、薬は決められた時間ごとに飲ませないといけないほどの厳密さは必要ありません。朝昼夕など、ある程度一定時間ごとに飲ませるように心がけていただければ結構ですし、症状を抑える作用のある薬であればその症状が強くなる前に服用するべきです。当然、空腹時での服薬になる場合も多くなります。症状を抑える薬であれば飲めた分だけ症状は改善されるというプラス思考で、少しでも飲んでくれれば、子供は頑張ってくれてありがたいと考えてあげて下さい。

 服薬を嫌がる子には薬の必要性をわかりやすく説明してあげて下さい。ただ、親がどのように頑張っても服用しない、出来ない子供がいます。飲めない薬は飲めないと医師に伝えて下さい。伝えないと医師は飲めているものとしてその子の状態を判断してしまいます。

 子供用の小さな錠剤であれば、5歳頃から服用できる子供もおります。錠剤をつぶせば、味は良くないですが飲む粉の量は少なくてすみます。粉薬でも水に完全に溶けて、舌へのざらざら感がなく、ジュースのようになる粉薬もあります。「薬が飲めて偉いね」「頑張ったね」「おりこうさん」という親や医師の言葉に頑張って薬を飲んでくれる子がいますし、医師と飲むことを約束したために頑張ってくれる子もいます。その子その子に合った方法があります。服薬困難な子供の場合は、医師と相談して、必要最低限の薬のみに限定してもらったり、服用できる薬の中で最良と思われる薬にしてもらって下さい。服用しなければ子供の将来に大きな影響を及ぼすと考えられる薬は非常に限られています。ただ、小児科医として、これだけは必ず服用して欲しいと判断する薬はあります。この場合は、子供を泣かしても、押さえつけてでも、親が心を鬼にして服用させて欲しいと思います。




ヘルペス
{単純ヘルペスウイルス(1型、2型)や水痘帯状疱疹ウイルスによる皮膚炎}

 ヘルペスとは一般的にはヘルペスウイルスが原因で限局した皮膚の患部に小さな水泡が集まった急性皮膚炎のことをいいます。ヘルペスウイルスのグループの内で人に感染をおこすのは単純ヘルペスウイルス1型、2型、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6A型、6B型、7型、エプスタイン・バーウイルス(EBウイルス)、ヒトヘルペスウイルス8型があります。これらのウイルスの中で、こういったヘルペスと呼ばれる皮膚炎をおこす原因ウイルスは単純ヘルペスウイルス1型および2型と水痘帯状疱疹ウイルスのみです。

1、単純ヘルペスウイルス1型、2型
 限局した皮膚表面が赤く腫れて、その部位に水疱ができるのが特徴で、その後、ただれやかさぶた(痂疲)となって1〜2週間で治ります。原因は単純ヘルペスウイルス1型、または2型の初感染(初発型)か、神経節に潜んでいた同ウイルスの再活性化(再発型)によって発症します。
 単純ヘルペスウイルスは幼少の頃に初感染することが多いのですが、感染してもほとんどの児では症状が出ず、気づかれずに終わってしまいます(不顕性感染)。初めての感染(初発型)で症状が出る場合には、感染後4〜7日に顔面や性器などにかゆみや痛みが生じ、その後赤くなり、水疱がたくさんできます。口腔内や性器の場合は多数の口内炎やびらんができ、痛みます。高熱やリンパ節の腫脹もみられることもあります。初感染後にウイルスが皮膚や粘膜の病変部から、感覚神経線維を神経伝達とは逆行性に中心部に向かって進んで、感覚神経節(感覚情報の中継点として機能する神経細胞の集まっている場所)に到達し、そこで潜伏します。その後は感覚神経節の中に生涯潜み、発熱、紫外線(スキーや海水浴の2〜3日後)、ストレス、疲労、性交、薬剤の服用(ステロイド、抗がん剤など)、月経前(女性ホルモンが関係)などの刺激や免疫力の低下によってウイルスが再活性化します。再活性して増殖したウイルスは神経節からウイルスが感覚神経線維内を下行し、皮膚・粘膜に至り、それらの終末で増殖して、散在性に水疱や痛みなどの症状を再発させます。再発型の場合は、口唇、口囲、性器の一部に小さな水疱ができ、破れた後にかさぶたになる程度がほとんどで、軽症で治ります。口唇に再発するヘルペスは発熱時に再発しやすいため、「熱の華」とも呼ばれています。
 単純ヘルペスウイルスの初めての感染では、身体のどこの皮膚にでも感染して症状が出ますし、その部位を支配する感覚神経節にウイルスは潜みますが、再発の場合は、主には1型では口唇を中心として顔面に再発をくり返し、2型では性器を中心として再発をくり返します。また、皮膚症状の強いアトピー性皮膚炎の人の皮膚にウイルスが初感染すると、広範囲の皮膚に病変が広がることがあります(カポジ水痘様発疹症)。

1型……ウイルスが主に顔の三叉神経節に潜むため、おもに顔や上半身、とくに顔や口唇に症状が現れます。ほかに角膜炎やヘルペス脳炎などもおこります。

2型……ウイルスが主に腰の部分の腰・仙髄神経節に潜むため、下半身に発症。おもに性器ヘルペスがおこります。

 ヘルペスの水泡の中に大量の単純ヘルペスウイルスが増殖しており、患部を手で触れる、発症している人が使ったウイルスのついたグラスやタオルを使う、キスをして患部や唾液から感染します。 ただ、感染するのは主に症状が出ている時だけで、ウイルスが神経節に潜伏しているときに感染することはほとんどありません。

 昔はほとんどの人が小学校入学までに感染していましたが、最近は核家族化や衛生面の改善などで初感染時期が遅くなってきています。幼少期に感染すると軽症で済むことが多いのですが、大人になって初めて感染すると、重症化するケースが多くなります。

1)口唇ヘルペス

 口唇への初感染では4〜7日の潜伏期間を経て、唇や口の周りが痛痒くなった後、赤く腫れ、その部位に水疱が出ます。歯肉が発赤し、口内炎が多数出きて痛く、食欲がなくなります(歯肉口内炎)。発熱やあごの下のリンパ節の腫れ、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。ただ、小児の初感染では、症状もなく気づかないケース(不顕性感染)がほとんどです。
 免疫力が低下するとウイルスが活性化して再発し、再発時の症状は@ 前兆として皮膚がピリピリ、チクチクするなどの違和感や痒み、ほてりが出ることがあります。A 前兆から半日程度で赤く腫れますB 1〜3日後、赤く腫れた上に水疱ができます(熱の華)。C 1週間前後でかさぶたになり治ります。再発は年1〜2回ペースで起こることが多く、通常、再発のたびに軽症化していきます。

2)性器ヘルペス
 性器ヘルペスは性行為などによって単純ヘルペスウイルス1型、または2型に感染する性感染症の1つです。口唇ヘルペス同様、初感染では無症状のケースも少なくありません。発症は@ 4〜7日の潜伏期間の後、感染箇所に痛みや痒みが出ます。A 小さな水疱や赤いびらん(潰瘍)が多数現れ、ただれや激痛を伴います。高熱や灼熱感、そ径部のリンパ節が腫れることもあります。B 2〜3週間でかさぶたになり、自然に治ります。免疫力が低下すると再発し、口唇ヘルペスでは平均年2回ですが、性器ヘルペスでは女性は年数回、男性はそれ以上と頻繁に繰り返すのが特徴です。お産の時に新生児に感染すると新生児ヘルペス脳炎となる場合もあり、注意が必要です。

2、水痘帯状疱疹ウイルス
 このウイルスの初感染は水痘(水ぼうそう)という形で発症し、その後は単純ヘルペスウイルスと同様に、ウイルスが皮膚や粘膜の病変部位から感覚神経線維を神経伝達とは逆行性に中心部に向かって感覚神経節である脊髄後根神経節もしくは脳神経節に到達し、そこで潜伏します。その後、免疫力が低下したときに神経節に潜んだウイルスが活性化して帯状疱疹として発症します。発疹が神経節の支配神経部位に沿って帯状に出るところから帯状疱疹といわれます。ウイルスは全ての感覚神経節に潜伏する可能性がありますが、帯状疱疹の発生は胸からお腹、背中など、胸髄神経節の領域と、顔面の三叉神経の領域に多く発生します。発疹は片側の1つの神経節内のウイルスが再活性化しますので、通常はその1つの神経領域に限られます。非常に稀ですが、2つの神経領域に同時に発症することもあります。

 再活性時には神経行性に感覚神経線維や神経線維束を取り巻く細胞にも感染しながら皮膚に向かって下行して、その神経支配領域に沿って増殖して帯状疱疹を発症させます。この時、神経障害が起きるため、帯状疱疹の皮疹出現前3〜5日に前駆症状として同部位の痛みや無疱疹性帯状疱疹の痛みが起きます。

 帯状疱疹は発症する前に@体の右または左の片側の神経に沿って刺すような強い痛みやヒリヒリした感じが数日〜1週間続いた後、 虫に刺されたような赤い発疹が出ます。Aその後、 発疹の上に、中央にくぼみのある水疱が多数でき、B 水疱が黄色い膿を持ち、1週間前後で破れてただれます。C 発症から2週間でかさぶたとなり、3週間で治癒します。

 発疹の水疱内にウイルスが存在します。その発疹に触れると、水痘にすでに感染している人では感染しませんが、水痘に罹患していない人では2週間後に水痘を発症します。発疹出現中では、少量ですが咽頭にもウイルスが存在するといわれており、キスなどは避けた方が無難と思います。

 このウイルスに対する免役力を十分持っていれば帯状疱疹は発症しません。免疫力の低下がある場合は再発を繰り返す場合もありますが、一般には生涯に1回、まれに2回の発症に限られるといわれています。ただ、元気な子供でも数回発症した子もおりますので、発症に対する備えは必要と思います。発疹が出る前から痛みが出たり、夜も眠れないほどの激痛が4〜5日続くケースもあります。高齢者では、皮膚症状が治まった後も強い痛みが3か月以上続く帯状疱疹後神経痛を合併しやすくなります。

3、治療
 単純ヘルペスウイルスと水痘帯状疱疹ウイルスの両方に効く薬があります。症状により軟膏、飲み薬、注射薬が選択可能です。ウイルスが増えるのを抑える働きがあり、早期治療が奏功します。水疱が出る前に使用すればかさぶたにならずに治ります。
 単純ヘルペスウイルスにはワクチンはありませんが、水痘帯状疱疹ウイルスには水痘ワクチンがあります。このワクチンを接種すれば水痘の感染を予防するか感染しても軽症で治りますので、神経節へのウイルスの潜伏を予防でき、帯状疱疹が発症しない可能性があります。また、水痘にすでに感染していて、帯状疱疹が出現する可能性のある人がこのワクチンを接種すればこのウイルスに対する免疫力が強化され、帯状疱疹の出現を予防できる可能性もあります。



便に血が混じる(下血)

 鼻腔から肛門までの気管や消化管に出血がおこると便に血液が混じります(血便)。一般に、小腸までの出血では赤血球中の赤い色素であるヘモグロビンが胃酸などで酸化されるため、血液は黒っぽく変色しますので、黒っぽい便が出ますが、大腸や肛門での出血では赤い便になります。ただ、赤や赤黒い色素の含まれる食品を食べたり、ある種の抗生剤とミルクを一緒に飲んでも便は赤く、出血した便のようになります。下痢気味では、スイカやトマト、にんじん、赤パブリカを食べると赤みの帯びた便になり、海苔では黒っぽい便になります。便の赤や黒っぽい色が血液によるものかどうかは便の潜血反応をみる試薬で簡単にすぐ検査できます。心配な場合は便を持参してください。

1、便の色が赤い
1)痔、裂肛
 便の外周に赤い血液が線状に付着したり、お尻を拭いたトイレットペーパーに血液が付いたりします。硬い便が原因のことが多く、排便時に痛がることもあります。出血は繰り返します。

2)腸炎
 病原性大腸菌(O−157など)、サルモネラ、カンピロバクタなどの細菌による腸炎は粘液と血液が混じった下痢便となるのが一般的です。血液は粘液とともに出てくることが多く(粘血便)、悪臭があったり、便の色が緑になったり、腹痛や発熱を伴ったりします。

3)頻回の下痢便
 水様の下痢が頻回になると腸の粘膜が傷害され、便に点状の出血が混入することがあります。

4)腸重積症
 腸管の一部が突然に肛門側の連続する腸管内にもぐり込む状態で、その部分では腸管内が閉塞されます。一般には手術は必要なく、肛門から圧力をかけて重なっている腸管をゆっくり押し出して元に戻す方法が行われます。ただ、腸管同士の圧迫によりその部分では血流障害をおこしますので、長時間放置すると腸管壊死をおこし手術が必要になります。苺ジャム状と表現される粘液に血液が混じった粘血便と腹痛、嘔吐が特徴です。急に激しく泣きだし、少しして泣き止むといった状態を繰り返します。とにかく不機嫌で顔面蒼白にもなります。

5)メッケル憩室炎
 便とは関係なしに暗紫色でブルーベリージャム様の色の出血が多量に出ます。稀な病気ですが、小腸が大腸につながる少し口側に胃粘膜ができることがあり、そこから分泌された胃酸が小腸に潰瘍を作り出血させます。一般には腹痛は伴いません。

6)母乳栄養児
 ビタミンKが欠乏すると出血しやすい状態となります。母乳栄養児の場合にビタミンKが欠乏しやすいといわれ、これが原因で血便となることがあります。新生児に出生直後、生後5日目、1か月目にビタミンKを飲ませることが一般に行われるようになりビタミンK欠乏症による血便はなくなりました。ビタミンKの欠乏ではなく、原因は不明で治療は必要ないのですが、母乳栄養児では元気で便も悪くないのに点状の出血が便に混入することがあります。

7)薬剤、色素
 抗生剤のセフゾンはミルクと一緒に飲むと便が赤くなることがありますし、ギョウ虫の治療薬のコンバントリンは褐色の便になります。鉄剤の薬は便の色を黒くします。スイカ、トマト、にんじん、赤パブリカなども便を赤くします。

2、便の色が黒い
1)鼻出血
 大量の鼻血を飲んだ場合に便が黒くなります。血液を多量飲むと嘔吐しやすくなりますので、吐血(血液を吐く)する場合もあります。

2)胃・十二指腸潰瘍
 胃や十二指腸での出血が大量の場合に便が黒くなります。この場合も吐血することがあります。



便秘

 子供が腹痛で苦しんだり、排便のために気張っているのに便が出ない、排便時に肛門が切れたり痛みのために泣くのは困ります。排便をスムーズにさせるためにはどうしたらよいのでしょう。
 便の回数は通常、小さな赤ちゃんでは4回以上で、2歳頃までには2回以下になります。ただ、母乳栄養児では軟らかい便なのに3〜4日に1回の排便のことはよくあります。栄養が母乳のみの場合はこの程度では便秘と考えないほうが良いでしょう。
 便の回数が少ないために便が硬くなり排便の時に痛みを訴えたり、痛くて排便できない場合に便秘と診断しますが、週に2回以下の排便回数では便秘症と考えるのが一般的です。ただ、2〜3日に1回の排便でも腹痛などの訴えがなければ心配は要りません。

原因
 消化管などに病気がある器質的便秘と排便時の痛みがいやで排便しないため便秘になる機能性便秘、食物や食物繊維が少ない食事内容による食事性便秘の3つの型があります。

1、器質性便秘
 甲状腺機能低下症や肛門部の神経が少ないなどの病気が原因となることがあります。

2、機能性便秘
 何らかの原因で便秘になり、その排便時の痛みが強かったため排便するのがいやになり、排便を我慢して便が大きく、硬くなり排便時に肛門が切れたり、さらに強い痛みを伴い余計に排便がいやになり便秘がひどくなるというものです。便の塊が大きくなると直腸を拡張します。この直腸の拡張が繰り返され、一旦直腸が常に拡張した状態になると、便が直腸にあっても正常の排便反射(直腸に便がたまると排便したくなる)が抑制されてしまいます。習慣性便秘にはこの型が多く見られます。薬や浣腸などで排便を痛くないようにし、排便すると痛いという恐怖心を取り除きながら、時間をかけて拡張した腸管を元に戻す必要があります。

3、食事性便秘
 食事に繊維質が少ないことが主な原因です。果物、野菜、海藻、こんにゃく、豆などの摂取を増やします。

治療
 慢性便秘ではまず、器質的な病気がないことを診断する必要がありますが、食事内容の改善(繊維質をさらに多く摂取する)、運動量の増加(外に出すと走り回りますので、外に出すだけで結構です)、排便習慣をつけるなどが治療の主なものです。
 浣腸は癖にはなりません。排便時の痛みが強い場合などに排便させるのに有用です。薬もあります。小児科専門医を受診して下さい。
 最近は学校のトイレが汚いと感じる子供が学校での排便を嫌がり、便秘になるといった状況もあります。便秘になった原因を探すことも大切と思います。

 排便のコントロールはだいたい3歳までに90%の子が出来るようになります。個人差が大きく遅くまでかかる子がいますが、この3歳頃から排便訓練が可能となります。朝食後か夕食後にトイレまたはオマルに数分間座らせる排便習慣を付けることから始めてはいかがでしょうか。




包茎(ほうけい)

 包茎は包皮口(ちんちんの尿の出口の皮の部分)が狭くて包皮(ちんちんの皮)がむけなくて亀頭が露出できない真性包茎と亀頭が容易に露出できる仮性包茎に分けられます。
 出生時の男児は全員が真性包茎ですが、成長するに従い仮性包茎となり、成人では自然に皮がむけて包茎の人は激減します。程度の強い包茎である真性包茎は乳児では60%、小学低学年では40%、小学高学年で20%、中学生でも10%ほどといわれており、ちんちんが急激に成長する中学卒業頃までは包皮はスムーズにむけない場合が多いものです。ほとんどの子は成人になるまで包茎です。つまり、子供は包茎のちんちんが普通なのです。男の赤ちゃんのちんちんが包茎でなく、亀頭の全体が見える場合では尿道下裂などのちんちんの病気を疑ってチェックが必要となります。赤ちゃんの時期は全員が真性包茎で、その後に仮性包茎になり、成人になってから包茎でなくなっていきます。そういった意味で、子どもで真性包茎や仮性包茎といった分類は無意味かもしれません。
 包皮と亀頭の間には分泌物や剥離した細胞が溜まり、黄白色の軟らかいチーズのように見える恥垢(ちこう、スメグマ)があります。包茎では包皮の下に黄白色の丸いコロコロした塊のように皮膚の上から透けて見える場合もあります。こういった恥垢は病的なものではなく、感染の原因や陰茎を小さくする原因とはなりません。成長に従い包茎が治ってくると自然に排出され消失しますので、特別な処置は不要です。思春期が過ぎるまで包皮が亀頭を覆っているのが普通です。

治療
 包茎口が狭すぎて排尿するのが困難な場合は治療が必要ですが、子供ではこれ以外の包茎は放置していてもかまいません。ちんちんの先端部が排尿時に少し膨れることが良くあります。この場合、排尿すると尿があらぬ方向に飛び散り、トイレを汚して困ることはありますが、健康状態に影響することは起こりません。自然に仮性包茎となり、思春期を過ぎてから包茎も消失します。小学生でも亀頭の一部さえ包皮口から見えれば自然に治ることが多く、放置してもかまいません。病気ではありません。ただ、親が子どもの包茎の将来が心配な場合や、子供自身が気にするようであれば保存的治療を考慮してあげて下さい。
 治療には1〜2か月かけてステロイドの軟膏を包皮口から塗りこんでいく保存療法(1か月で約70%が仮性包茎となり、皮がむけます)と手術で輪状に切取る方法があります。治療を必要とする場合でも、ほとんどの場合は保存的療法で治りますので、手術を必要とすることは稀です。

注1)ちんちんをゴシゴシ洗うことについて

 最近は子供の時期でも包茎はダメで、恥垢のあるちんちんは不潔で、皮をむいてよく洗った方が良いという人がいます。本当にそうでしょうか。恥垢は無菌であり、感染の原因とはなりません。不潔でもありません。真性包茎であろうがなかろうが子供は汚い手で触るため、細菌が付いて亀頭が腫れる亀頭炎をよくおこします。数日の抗生剤の服用で治ります。包茎がちんちんの大きくなるのを妨げるというデータもありません。恥垢が陰茎癌の原因になるという根拠はありません。皮をむいてゴシゴシ洗う必要はありません。小児では包皮と亀頭の間は一部が癒着していることが多く(成長に従い自然とはがれてきます)、無理にむくと出血させます。また、包皮口が狭い場合に無理にめくると亀頭の根元で皮が丸まって、元に戻らず亀頭を締めつけ、循環障害を起こし、緊急手術が必要となる場合があります。無理にめくると痛いですし、出血もします。子どもに恐怖心を与えるだけです。

注2)包茎の手術を勧める一部の医療機関の広告について

 「包茎は不潔。病気になりやすいし、相手の女性にもうつす。女性も嫌う。」などという広告が成人向けのみならず年長児の男の子向けの漫画や雑誌によく見かけます。本当にそうでしょうか。包茎や恥垢は何ら不潔なことはありませんし、無菌です。特に子供の頃はむしろ包茎が一般的です。成人になって気になるようであれば、よく洗うようにすればよいと思います。特殊な場合以外は手術の必要性はほとんど無く、気になって仕方がない場合は、二重瞼や顔のしわ取りと同様に美容整形と考えて病院を受診して下さい。病院の収入を増やすための不安をあおるような広告に惑わされないで下さい。

 イスラム教やユダヤ教は宗教儀式として、小児期に包皮を輪状に切取ってしまう割礼を行っています。アメリカや韓国、アフリカでは宗教的な理由ではなくて迷信や古い考え方などから慣習的に行われているようです。しかし、包皮は小児期では弱い亀頭を外的刺激や外傷から守っていますし、性的刺激を感知する機能がありますので大人になってからの性生活に役立ちます。無駄な部分ではありません。また、割礼をした人に陰茎癌が少ないという根拠もはっきりしていません。割礼には宗教的な意味はあるものの、医学的な意味合いはないと思います。これらの宗教以前に作られたギリシャの彫刻の成人男性の裸体像を見てください。筋肉隆々の戦士や神々のちんちんは皆包茎です。



発疹(ぶつぶつ)

 発疹を伴う疾患には人にうつすものとそうでないものがあります。また、治療の必要なものとそうでないもの、特別な治療方法のないものもあります。

1、主な原因
 ウイルスや細菌の感染症、アレルギー、皮膚炎(かぶれ)など。感染症としては麻疹(はしか)、風疹、突発性発疹、水痘(水ぼうそう)、溶連菌などが有名で、他の人にうつします。

2、診断
発疹の性状、出現場所、痒みや発熱などの随伴症状、年齢、季節、周りでの流行状況が診断に重要である。
 診察のみでわかることも多いが、不明な場合は血液検査や咽頭ぬぐい液などでウイルスや細菌の検査をする。

3、診断の手助け
1)ウイルス
a)赤くなっている発疹の部分を圧迫すると色が消失する。
b)水痘、手足口病、ヘルペスなどは水泡(小さな水ぶくれ)となる。水疱は口の中に出来るとすぐに破れて口内炎となる。手足口病では手のひらと足の裏に出来た水疱は破れないが、口の中に出来た水疱はすぐ破れて口内炎になる。
c)麻疹などは治った後に色素沈着といって発疹が出たところにうす茶色が数週間残る。水痘もかさべたになり跡が残る。

2)細菌
赤く腫れた(発赤腫脹)後にびらんや化膿する。圧迫すると痛い(圧痛)。
溶連菌などの特殊な菌ではその毒素で全身に小さな赤い発疹ができる。

3)アレルギー
 蕁麻疹(じんましん)の場合は皮膚の柔らかい部分に薄赤く盛り上がりが生じる。固定蕁麻疹以外では発疹出現部位は時間と共に移動、変化するのが特徴である。

4)出血(紫斑)
a)動いたり当ったりする(打撲)部位に出やすい。
b)圧迫しても色は消えない。
c)赤から紫になり、7〜10日で消失する。



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