2013年 12月22日 放送
インフルエンザ


 インフルエンザ流行の時期になりました。インフルエンザでは高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳など症状が出ます。咳などを介して伝播、流行し、年少児では脳症が、高齢者では肺炎が問題となります。

 A型とB型ウイルスが流行し、初期はA型が、後半はB型が主流となるのが一般的です。 このウイルスは大小様々な変化を常におこしますので毎年感染しますし、2種類のA型とB型といったように、ひと冬で数回インフルエンザを発症することもあります。

 ウイルスと接触後1〜3日で発症し、39℃程が2〜7日間続き、高熱のために熱性けいれんや幻覚、幻聴、幻視による異常行動が生じやすくなります。

 ボルタレンやポンタールなどの脳症を起こしやすくする解熱剤があります。解熱剤は熱のため機嫌が悪く寝てくれないなどに限定してアセトアミノフェン(カロナールなど)を少量使用するなどにとどめて下さい。総合感冒薬(いわゆる風邪薬)のほとんどに解熱剤が含まれており、脳症を起こしやすくする解熱剤が含まれている薬もあります。注意が必要です。

 脳症は小児、特に3歳までの乳幼児に生じやすく、意識障害や痙攣が長時間持続して脳に後遺症を残しやすい病気です。解熱剤を使用しなくてもなりますし、高熱だから脳症になるわけではありません。

 タミフルやリレンザなどの治療薬は症状を軽くしますが、使用しなくても3、4日程度で治ります。タミフル使用時での異常行動が指摘されていますが、他の治療薬でも、治療薬を使用しなくても発生しています。高熱になると神経系の未熟な小児では熱せん妄(幻視、幻覚、異常行動)が生じやすくなるためと考えられています。



2013年 11月24日 放送
乾燥肌


冬になると皮膚は乾燥し、痒みを伴います。温かくなると痒みが増します。ひどい場合には布団に入って温もると痒くなり、イライラや不眠の原因になります。

 汗やあかは痒みの原因となります。お風呂ではベビー石鹸や木綿のタオルなどでやさしく洗って汗やあかを落とし、石鹸をよく洗い流すようにして下さい。タオルでゴシゴシ洗うと皮膚を傷つけ、皮膚の機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増します。
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。抱っこする人の服なども含め毛糸などの刺激が赤ちゃんや子供の肌に直接触れないようにして下さい。

 アトピー性皮膚炎は遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光、食事、ほこりやダニなど多くの因子が悪化に関係しています。アトピー性皮膚炎のような遅延型といわれるアレルギー反応主体の皮膚炎では血液検査で原因を探すことは不適切です。

1、食事
 食物制限は食べれば皮膚の症状が悪化する食物のみに限定して下さい。血液検査では原因を探せません。極端な食物制限は発育異常をおこします。食物制限自体がストレスとなり、皮膚炎を悪化させる可能性もあります。

2、ホコリ、ダニ
 生活環境を整備して、ホコリやダニを減らすことは大切ですが、限度があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、ほこりの出やすいものを止めるなどで十分と思います。ダニやホコリは悪化原因のひとつに過ぎません。

3、薬
 スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠は困ります。保湿作用のある軟膏を使用し、赤みが強い時は炎症を抑える軟膏も必要です。掻くと皮膚のバリア機能が低下し、保湿機能が低下し、刺激物質が皮膚内に侵入しやすくなり、症状が悪化します。スキンケアが大切です。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬も併用して下さい。あせらず気長に治療することが大切です。



2013年 10月27日 放送
細気管支炎


 細気管支炎は細い気管支が狭くなり、肺に出入りする空気の流れが妨げられ、呼吸困難を引き起こし、特に息を吐くことが困難な状況になる病気です。

 呼吸で肺に空気が入っていく道が気管支です。気管支は枝分かれしながら、どんどん細くなり、その最も細くなった末端部分が細気管支で、その先には肺胞という酸素と二酸化炭素を交換する部分があります。特に、乳児の場合は、細気管支は非常に細く、炎症が起きると痰がすぐにたまって空気が通り難くなります。主な原因はRSウイルスで、稀にパラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルスなどの場合もあります。RSウイルスは毎年、冬に流行する風邪のウイルスの1つです。大きな子では鼻風邪で済みますが、乳幼児ではごく稀に細気管支炎や肺炎となります。

 RSウイルスは10月から5月頃まで流行しますが、今年は7月頃から流行しており、それに伴い、現在、細気管支炎が流行しています。2歳までにほぼ100%が初感染をうけると考えられていますが、何度でも感染、発症します。しかし、再感染を繰り返す毎に免疫力も徐々に獲得し、症状も軽くなっていきます。2歳以降は感染しても鼻風邪程度になります。

 初期は鼻水、くしゃみ、微熱、咳などの感冒様症状です。咳、鼻水などの風邪の症状が2日程続いた後、息を吐くときにゼーゼーという音がしたり、呼吸回数が多くなり、呼吸時に胸が凹みます。罹病期間は通常7〜12日で、ほとんどの乳児では症状は軽度で治ります。ただ、一部の乳児では、呼吸困難が悪化し、入院を必要となる場合もあります。

 RSウイルスに対する治療薬はありません。脱水気味になると痰が絡み、咳込みなどがさらにひどくなり、水分を取れず、どんどん悪くなります。こまめに水分摂取を心がけて下さい。加温、加湿を心がけて下さい。咳き込んだ時には抱っこしてあげたり、上体を起こして背中をさすってあげると少し楽になります。



2013年 9月22日 放送
嘔吐下痢症


 冬に流行する風邪の1つで、頻回の嘔吐と下痢を伴います。潜伏期間は1〜3日で、微熱が1日程度伴うこともあります。嘔吐は半日から丸1日で治まります。下痢は淡黄色や白っぽいクリーム色の水様便になることが多く、4〜5日間続きます。

 ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスが主な原因です。それぞれタイプが多数あり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。

 患者の吐物や下痢便中にウイルスがありますので、これらを触って、口の中にウイルスが入ることによる感染が主です。吐物や便を触った後は石鹸を使い水道水で手洗いを十分して下さい。消毒用アルコールは効果が不十分で、ミルトンやキッチンハイターなどの塩素系の消毒薬や漂白剤および85℃で1分間以上の加熱がこのウイルスの消毒に有効とされています。乾燥するとウイルスが空中に広がりますので、吐物や便を濡らした新聞紙などで直ぐに覆い、きれいに拭き取って下さい。

 嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、20〜30ml(嘔吐しない少量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。その後徐々に1回量を増やしていきます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。食事は腸の回復を助けます。
 下痢が続きますので、牛乳や乳製品は止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。吐気がなければ離乳食や消化の良い食事は欲しがるだけ与えて下さい。

 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。ひどい嘔吐には嘔吐止めを使用します。

 機嫌が悪くなったり、ぐったりして点滴が必要となることもあります。特に乳児では脱水症を伴いやすいので要注意です。



2013年 8月25日 放送
子供の肥満とメタボリックシンドローム


 生活習慣は幼児期にその基礎がつくられ、小学生頃に完成するといわれます。食事での動物性蛋白質と脂質の摂取増加、コンビニや自動販売機による間食、受験勉強や塾による余暇の減少とストレス、テレビやゲームの普及よる夜型の生活習慣と運動不足などが問題となっています。

 内蔵脂肪型肥満、高脂血症、高血圧、高血糖などの危険因子が重なった病態がメタボリックシンドロームで、これらが軽度でも重なることによって動脈硬化が進行し、将来心筋梗塞、脳梗塞等へ進展していく危険性が高くなります。子供の頃からのバランスの取れた健康的な食事と運動習慣が肥満を予防し、メタボを予防します。小児期の和食が「おふくろの味」として成人になっても好まれる食生活が重要です。

 ただ、2歳頃までの肥満は成人になってからの肥満と結びつきませんので、この頃の「ぽちゃぽちゃしてかわいい」は心配いりません。3歳以降の肥満の大部分は成人になってからの肥満に結びつきますので、小児期での肥満対策は重要です。少なくともジュース類やスナック菓子類の間食を少なくした食生活を家族全員で実行して下さい。

 肥満はやせる努力よりも肥満しないように注意するほうが楽ですし、効果的です。悪くなる前の早期対策が楽です。特に、子供では身長が増加しますので、体重を維持するだけで肥満度が下がります。子供の頃からの肥満予防対策が大切です。ただ、肥満でも肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝にならない児や肥満と見えない児が脂肪肝であったりもします。元気で、活発で、肥満が肝障害など体に悪さをしなければ肥満体であるということは個人の勝手かもしれません。一律な肥満対策は避けて下さい。肥満を気にし過ぎて過剰なダイエットを実行する女の子では低身長、子宮や卵巣の発育不全、骨のカルシュウム沈着不足など将来の病気に繋がります。特に発育期の10歳代での過剰なダイエットは危険です。



2013年 7月28日 放送
子どもの健やかな眠りと目覚め


 昼間に使用した脳や身体の疲れを癒すために眠ります。脳は眠ることでしか休息できませんし、睡眠は日中の活動で疲れた心身を効率よく修復します。

 夜になると副交感神経が心臓の動きを抑え、お腹を動かして便を肛門に送ります。目覚めると交感神経が脳や筋肉に行く血流を多くして活動に備えます。睡眠・覚醒、ホルモン分泌、自律神経が約24.5時間周期で変動しており生体時計(体内時計)と表現します。それを日常生活の24時間に合わさなければ体調が徐々に崩れていきます。生体時計の周期を短縮するのは朝の光で、夜中の光が生体時計の周期を延長します。

 朝の太陽の光でセロトニンが脳内に増えるとその鎮静作用によって精神状態が落ち着き、不安や恐怖の感情が抑えられ、イライラが少なくなり、穏やかな気分にしてくれます。逆に脳内にセロトニンが不足すると不安緊張が誘導され、不眠状態に陥りますし、感情にブレーキがかかり難くなったり、すぐ平常心をなくす「切れ易い」精神状態、マイナス思考の状態になります。メラトニンは夕方になって目に入る光の量が減ると分泌され始めます。このホルモンは眠気を催す作用があります。朝に向かってだんだんとメラトニンが減少し、覚醒に近づきます。

 大切なのは朝の光と昼間の運動であり、問題となるのは夜の光です。安眠するには@朝の光を浴びる。A昼間に活動をする。B規則的に食事を摂取する。C睡眠時には部屋を暗くする。Dカフェインなどの興奮性のある成分の含まれた飲料などを夜には避ける。E入眠前には興奮するようなテレビや映画、ゲームなどは避ける。などを心掛けて下さい。

 幼児や小学生では10時間の睡眠時間が必要といわれています。ただ、勉強や趣味で睡眠時間が短くならざるを得ない状況では、睡眠時間を犠牲にして、やりたいことを頑張らせてあげて下さい。自分のやりたいことにまい進する、まい進出来るという習慣は、その子の将来に非常に役に立つと思います。



2013年 6月23日 放送
夏の食中毒


 細菌性食中毒は腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、黄色ブドウ球菌などが原因で、症状は腹痛、嘔気・嘔吐、下痢など、菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。一般的には、菌が腸管内で増殖して毒素などを出し、発症しますので増殖(8時間から数日)してから発症しますが、ブドウ球菌などは食物の中で増殖して毒素を出し、その増えた毒素を食べての発症ですので食後数時間で発症します。

1)腸炎ビブリオ
 夏の魚介類のエラや内臓に存在します。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。魚を調理したまな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 鶏肉を介する感染が主です。汚染されれば冷蔵庫に保存しても感染は防げません。便に血液が混入します。

3)サルモネラ
 卵、鶏肉、ペット類からの感染が主です。粘血を伴った緑色の水様便ですが、乳幼児では重症化します。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157が有名ですが、生肉(ユッケ)のO―111が有名になりました。牛肉からの感染が主です。熱に弱く(75℃1分間で死滅)十分な加熱が最も有効です。血便になり重症化もします。乳幼児には生肉を食べさせないで下さい。

5)黄色ブドウ球菌
 調理人の手の化膿部から汚染します。おにぎり、お弁当などでの感染が主です。食物の中で菌が増殖し、毒素が蓄積され発症しますので、食後1時間でも発症します。

2、対策
 食べた細菌数や毒素の量が少なければ治療なしでも自然に治ります。菌や毒素を少なくすることが重要で、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うなどを心がけて下さい。

 下痢を止める薬は悪い菌の排出も止め、重症化させる可能性があり、使用しません。



2013年 5月26日 放送
先天性股関節脱臼と赤ちゃんスリング


 先天性股関節脱臼とは赤ちゃんの股関節がはずれている(脱臼している)病気で、その後の歩行をはじめとした運動機能を大きく障害し、立位や坐位などの姿勢にも影響を与えます。また、成人後の変形性股関節症の原因にもなります。関節が柔らかい赤ちゃんの時期に股関節の動きを制限すると先天性股関節脱臼になりやすくなります。股関節脱臼を予防するため、赤ちゃんの股関節の動きを制限するような赤ちゃんの姿勢を強いることは避けるべきです。下肢は股関節が開き、膝関節を曲げた状態が自然であり、下肢はアルファベットのMの字の形になります。このスタイルが赤ちゃんにとっていちばん無理のない、自然な姿勢で、股関節にとっても脱臼しにくい格好です。

 スリングは赤ちゃんの足の動きを制限しやすい状態を作りやすく、股関節脱臼を予防するために、少なくとも生後1か月までは使用を制限するのが望ましいとされていますし、生後3か月頃までの赤ちゃんに使用するときに、横抱きで下肢を伸展した形で使用すると、股関節脱臼を誘発する肢位になる危険性があります。できれば歩行出来るようになるまでは股関節が自由に動かせるような状態でいるべきと思います。

 抱っこする人と赤ちゃんとがお互いが向き合うようにして(おなかの前に抱っこ)、赤ちゃんの膝が曲がるようにして、下肢を抱っこする人の左右になるような縦抱きにして、お尻を支えて、足をスリングの外に出すようにすると、赤ちゃんの下肢は自然な形をとり、ある程度自由な運動が可能になります。

 小さくて足が外に出せない場合は、足側のポーチは広めにとり、必ず赤ちゃんの足がひざを少し曲げた状態で、理想形のM字になった開脚状態で、両足が自由に動かせるように留意し、お尻に体重がかかっていることを確認して下さい。

 これらはスリングだけではなく、通常の抱っこにも共通する問題です。抱っこは親子や家族とのスキンシップに重要です。問題点を知って、赤ちゃんのことを考えながら、出来るだけ抱っこをしてあげて下さい。



2013年 4月28日 放送
子どもの健康チェック


 新学期に自分の子供の全般について考えてみませんか。元気さ、食欲、体格、運動能力、知的能力、やさしさ、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 感染を予防できますし、かかっても軽症で済みます。他人にも感染させにくくなります。乳幼児の髄膜炎を予防するヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンが生後2か月から5歳未満、子宮頚がん予防ワクチンが小学6年から高校1年生相当を対象に国の定期予防接種に変更されました。和歌山市では子宮頸がん予防ワクチンは無料で接種できることになりました。三種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、麻疹風疹混合ワクチンもあります。ポリオワクチンは注射です。有料ですが、水ぼうそう、おたふくかぜなどのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。

2)健診での身長や体重の伸びは順調ですか。
 健診での身長や体重の数値を母子手帳にある男女の年齢別の身長や体重を書き込めるグラフに印をつけて下さい。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあり、伸び率はどうかなどがわかります。

 身長がかなり低い場合はホルモンの分泌が少ないなどの病気のこともあります。治療で身長が良く伸びる場合がありますので、小児科専門医を受診して下さい。2歳頃までの肥満体は問題ないのですが、小学校以降でかなり太っている場合は脂肪肝など肝機能や糖尿病のチェックが必要です。肥満自体が問題ではないのですが、身体に異常が生じるほどの肥満は困ります。
 女性はやせ体型が美しいとする考え方が思春期前の女性を摂食障害に追い込んでいます。やせ体型にも程度があり、個人差があること、ダイエットには低身長、子宮や卵巣の発育不全、将来の不妊や骨折のしやすい身体になる可能性があります。特に十代での過度のダイエットは危険です。



2013年 3月24日 放送
低身長


 低身長は学校のような集団生活の場や多感な思春期ではいじめ、コンプレックス、精神的な問題などを引き起こすことがあります。低身長になる病気があり、その病気を治療することで身長が伸びる場合もあります。「その内に伸びる」や「親が小さいから」という考えは止めてください。親からの遺伝の影響は大きくありません。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。一般的に、身長は男児では17歳、女児では15歳頃まで伸びますが、個人差が大きく、早く止まる子もいます。中学生や高校生になり、骨が成熟して身長が伸びなくなってからでは遅すぎます。治療が必要な子では、早期からの治療が身長に良い結果を生みます。

 骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲んだり、サプリメントを飲んでも身長は伸びません。たんぱく質などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、十分な睡眠も必要ですし、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともあり、負担がかからないような工夫をして、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

 成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症などの子供の成長に欠かせないホルモンが不足する病気が原因の場合があります。これらの不足しているホルモンを補充することで身長の伸びが良くなり、全身状態も正常化し、身体の働きも活発になり、元気になります。骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気での低身長も治療可能な場合があります。強いストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。ただ、病気ではなく、その子の体質のための低身長もあります。



2013年 2月24日 放送
包茎


 包茎はちんちんの皮(包皮)が亀頭を覆っている状態をいいます。出生時の男児は全員が包茎ですが、成長するに従い改善し、成人では皮もむけます。逆に、赤ちゃんのちんちんの皮がむけているのは尿道の病気を疑います。思春期が過ぎるまで包皮が亀頭を覆っている包茎が普通です。亀頭表面と包皮内側の間に恥垢(ちこう)が少しずつ溜まり剥がれてきます。又、時々起こる勃起現象によって包皮口も少しずつ伸ばされていきます。第2次性徴での男性ホルモン増加でちんちんが急速に発達し、包皮も柔らかく伸びやすくなり、勃起時に亀頭が露出し、そのうちに普通でも亀頭が露出するようになります。
 包皮と亀頭の間には分泌物や剥離した細胞が溜まった黄白色の軟らかい恥垢があります。包皮の下に黄白色の丸いコロコロした塊のように見える場合もあります。こういった恥垢は病的なものではなく、成長に従い自然に消失します。

 子供でも恥垢のあるちんちんは不潔で、皮をむいてよく洗った方が良いという人がいますが、気にしなくても良いと思います。恥垢は無菌であり、感染の原因とはなりません。不潔でもありません。子供は汚い手でちんちんを触るため、細菌が付いて亀頭が腫れる亀頭炎をよくおこします。数日の抗生剤の服用で治ります。包茎はちんちんの発育を妨げませんし、恥垢が陰茎癌の原因になるという根拠もありません。無理に皮をむいてゴシゴシ洗う必要はありません。包皮は小児期では弱い亀頭を外的刺激や外傷から守っていますし、性的刺激を感知する機能は亀頭にはほとんどなく、包皮にありますので無駄な部分ではありません。

 包茎口が狭すぎて尿がポタポタしか出ない場合は外科的治療が必要ですが、それ以外の包茎の治療は不要です。包茎が心配な人は、1〜2か月かけて軟膏を包皮口から塗りこんで包皮をむく方法がありますが、小児期は包茎が普通ですので、包皮をむかなければならないわけではありません。



2013年 1月27日 放送
インフルエンザ


 インフルエンザが流行しています。咳などを介して伝播し流行し、年少児では脳症が、高齢者では肺炎が問題となります。

 現在はA型の香港型が流行中ですが、今後ソ連型やB型ウイルスが流行すると思います。各々感染する可能性がありますので、数種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザを発症することもあります。

 ウイルスと接触後1〜3日で発症し、39℃程が2〜7日間続き、寒気、関節痛、筋肉痛、咳が強く出ます。高熱のため熱性けいれんが生じやすくなります。

 ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)やメフェナム酸(ポンタールなど)など、脳症を起こしやすくする解熱剤があります。解熱剤は熱のため機嫌が悪く寝てくれないなどに限定してアセトアミノフェン(カロナールなど)を少量使用するなどにとどめて下さい。総合感冒薬(いわゆる風邪薬)のほとんどに解熱剤が含まれており、脳症を起こしやすくする解熱剤が含まれている薬もあります。注意が必要です。

 脳症は小児、特に3歳までの乳幼児に生じやすく、意識障害や痙攣が長時間持続して脳に後遺症を残しやすい病気です。解熱剤を使用しなくてもなりますし、高熱だから脳症になるわけではありません。

 タミフルやリレンザなどの治療薬は、発熱出現後2日以内の開始が有効で、早期のほうが症状は軽く治ります。治療薬は症状を軽くしますが、使用しなくても3、4日程度で治ります。タミフルは安全性にため1歳未満と異常行動出現の可能性のため10歳台での使用は原則控えるようになっています。タミフルの異常行動が指摘されていますが、リレンザでも、治療薬を使用しなくても発生しています。治療薬が原因ではなく、高熱になると神経系の未熟な小児では熱せん妄(幻視、幻覚、異常行動)が生じやすくなるためと考えられています。少なくとも発症2日間は子どもの行動への注意が必要です。




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