2010年 12月26日 放送
細気管支炎


 細気管支炎では細い気管支が狭くなり、肺に出入りする空気の流れが妨げられ、呼吸困難を引き起こし、特に息を吐くことが困難な状況になります。特に、乳児の場合は、細気管支は非常に細く、炎症が起きると痰がすぐにたまって空気が通り難くなります。主な原因はRSウイルスです。

 このRSウイルスは10月から5月頃まで流行する冬の風邪のウイルスの1つで、何度でも感染、発症します。しかし、再感染を繰り返す毎に免疫力も徐々に獲得し、症状も軽くなっていきます。一般的に2歳頃までには数回の感染を受けますので、この頃には十分な抵抗力も獲得し、感染しても鼻風邪程度になります。

 成人や年長児におけるRSウイルス感染症は軽いかぜの症状のみですみますが、2歳以下の乳幼児ではしばしば上気道炎から下気道炎に進展して細気管支炎となります。特に6か月以下の乳児では入院加療を要する頻度の高い病気です。

症状と診断
 咳、鼻水などの風邪の症状が2〜3日続いた後、息を吐くときにゼーゼーという音がしたり、呼吸回数が多くなり、呼吸時に胸が凹みます。罹病期間は通常7〜12日で、ほとんどの乳児では症状は軽度で治りますが、一部の乳児では入院を必要となる場合もあります。

治療
 RSウイルスに対する治療薬はありません。症状に対する治療法のみです。呼吸困難が出現しなければ、10日ほどで自然に治ります。重症化しやすい乳児に対してRSウイルスの抵抗力を投与して感染を予防する治療法がありますが、現時点では使用対象者は非常に限定されています。

 呼吸困難により元気がなくなり、母乳、ミルクを飲まなくなります。脱水気味になると痰が絡み、咳込みなどがさらにひどくなり、水分を取れず、どんどん悪くなります。こまめに水分摂取を心がけて下さい。部屋もできるだけ湿度を上げて下さい。加湿器があれば使い、なければ洗濯物を室内に干したりして下さい。



2010年 11月28日 放送
子供の腹痛


 子供はよく「ぽんぽんが痛い」と訴えますが、便秘や下痢が原因での腹痛であることが多く、急を要する病気や手術を必要とする場合は非常に稀です。また、「ぽんぽんが痛い」は「ウンチ」「オシッコ」に行きたい、「吐きそう」「筋肉痛」や時には体調不良や心因性が原因で腹痛を訴えることもあります。「遊んでほしい」「しんどい」「行きたくない」「やりたくない」などストレスや欲求不満の表現の代わりのこともあり、子どもが嫌うことや不安に感じること、家族や友人との人間関係なども考慮してあげて下さい。入学や新学期の頃ではクラス変えや担任の交代が原因のこともあります。アセトン血性嘔吐症や小学生の高学年では起立性調節障害(血圧の調整うまくいかず朝の体調が悪い)という病気のこともあります。

 腹痛のために顔をしかめたり、体を前屈する姿勢をとる場合は腹痛が強烈ということを示しており、早急に小児科専門医を受診して診断をしてもらう必要があります。一般的には@おなかを手のひらでさすってあげることで本人は納得し、痛みが消失することがよくあります。どこか痛い部位があればさすってあげることで痛い部位に手のひらが触れて顔をしかめたり痛みを強く訴えますので、小児科を受診するかどうかの目安にもなります。Aトイレに座らせて排便をさせ、便の状態をチェックします。便秘や下痢による腹部の痛み、トイレに行きたいという不快感を腹痛として訴えることが多く、トイレで排便さすか浣腸で便を出してあげれば痛みは消失します。便をチェックして下痢や便秘などの状況や、便の色や臭い、粘液や血液の付着状況なども見て下さい。排便でも治らない場合や便の性状が悪い場合は小児科専門医を受診して下さい。

 いつもの「ポンポンが痛い」だからなどと子供の訴えを無視しないで下さい。忙し場合は短時間でも結構ですから、お腹をさすってあげたり、話を聞いてあげたりして下さい。子供は何かを訴えようとしています。



2010年 10月24日 放送
乾燥肌


 冬になると皮膚は乾燥します。ひどい場合には布団に入って温もると痒くなり、イライラや不眠の原因になります。
 汗やあかは痒みの原因となります。お風呂ではベビー石鹸や木綿のタオルなどでやさしく洗って汗やあかを落とし、石鹸をよく洗い流すようにして下さい。タオルでゴシゴシ洗うと皮膚を傷つけ、皮膚の機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増します。
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。抱っこする人の服なども含め毛糸などの刺激が赤ちゃんや子供の肌に直接触れないようにして下さい。

 アレルギー体質を持っている子供にできる湿疹をアトピー性皮膚炎といいます。遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光、食事、ほこりやダニなど多くの因子が悪化に関係しています。アレルギー反応の原因を調べるためにRAST法という血液検査などが行われますが、アトピー性皮膚炎のような遅延型といわれるアレルギー反応主体の皮膚炎ではRAST法で陽性で原因を探すことは不適切です。

1、食事
 食物制限は食べれば皮膚の症状が悪化する食物のみに限定して下さい。血液検査では原因を探せません。極端な食物制限は発育異常をおこします。食物制限自体がストレスとなり、皮膚炎を悪化させる可能性もあります。

2、ホコリ、ダニ
 生活環境を整備して、ホコリやダニを減らすことは大切ですが、限度があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、ほこりの出やすいものを止めるなどで十分と思います。ダニやホコリは悪化原因のひとつに過ぎません。

3、薬
 スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠は困ります。入浴後に塗ると乾燥した肌に水分を保たせる保湿作用のある軟膏があります。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと皮膚のバリア機能が低下し、保湿機能が低下し、刺激物質が皮膚内に侵入しやすくなりますので、症状が悪化します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬も併用して下さい。あせらず気長に治療することが大切です。



2010年 9月26日 放送
嘔吐下痢症


 ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスによる感染症で、頻回の嘔吐と下痢を伴います。潜伏期間は1〜3日で、微熱が1日程度認められることもあります。嘔吐は半日から丸1日で治まります。下痢は白っぽいクリーム色の水様便になることが多く、4〜5日間続きます。機嫌が悪くなったり、ぐったりして点滴が必要となることもあります。特に乳児では脱水症を伴いやすいので要注意です。毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。

 患者の吐物や下痢便中にウイルスがありますので、これらを触って、口の中にウイルスが入ることによる感染が主です。吐物や便を触った後は手洗いを十分する必要があります。塩素系の消毒薬や漂白剤および85℃で1分間以上煮沸がこのウイルスに有効とされていますが、家庭ではきれいに拭き取ってから水道水(流水)での手洗いでも十分と思います。

 嘔吐や嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(コップ1/4程度の嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。その後徐々に1回量を増やしていきます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。

 下痢が続きますので、牛乳や乳糖を多く含む食物は止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。吐気がなければ離乳食や消化の良い食事は欲しがるだけ与えて下さい。食事は腸の回復を助けます。

 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で下痢を無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。ひどい嘔吐には嘔吐止めを使用します。

 症状がひどく、口の中が渇いてきたり、ぐったりするなど脱水が疑われる場合には点滴による水分補給が必要です。



2010年 8月22日 放送
子供の腹痛


 子供は「おなかが痛い」「ポンポンが痛い」とよく訴えます。赤ちゃんや小さくてしゃべれない子は泣いたり、不機嫌になります。腹痛の原因は便秘や下痢による痛みが主で、虫垂炎(もうちょう)や腸重積など緊急の処置を必要とするのはごく稀です。また、「ぽんぽんが痛い」は必ずしも病気による腹痛を訴えているとは限りません。「ウンチ」「オシッコ」に行きたい、「吐きそう」「筋肉痛」など色々です。体調不良や心因性が原因で腹痛を訴えることもあります。何か嫌な事や不安なこと、家族や友人との人間関係などでもおこります。親が忙しくしているときなど、「寂しい。私のことも忘れないで」の訴えであることもあります。「遊んでほしい」「しんどい」「行きたくない」「やりたくない」などの表現の代わりのこともあります。小学高学年以降では朝起きれない、朝に腹痛や頭痛を伴うなど朝に調子が悪くなる起立性調節障害という病気のこともあります。

 腹痛で顔をしかめたり、体を前屈する姿勢をとる場合は腹痛が強烈ということを示しており、とにかく不機嫌、便に血が混ざるなどと共に早急に小児科専門医を受診する必要があります。それ以外の場合は@おなかを手のひらでさすってあげることで本人は納得し、痛みが消失することがよくあります。さすって痛がれば小児科を受診です。Aトイレに座らせて排便をさせ、便の状態をチェックします。便秘や下痢による腹部の痛み、不快感を腹痛として訴えることが多く、トイレで排便さすか浣腸で便を出してあげれば痛みは消失します。便をチェックして下痢や便秘、便の色や臭い、粘液や血液の付着状況なども見て下さい。普段とは異なる便の場合は便をしたオシメや便を小児科に持参すると診断の助けになります。排便でも治らない場合や便の性状が悪い場合は小児科専門医を受診して下さい。

 いつもの「ポンポンが痛い」だからなどと子供の訴えを無視しないで下さい。忙し場合は短時間でも結構ですから、お腹をさすってあげたり、話を聞いてあげたりして下さい。子供は何かを訴えようとしています。



2010年 7月25日 放送
外遊び、夏太り


 夏に外で遊ぶと交通事故、熱中症、強い紫外線による日焼けなどの心配があります。しかし、外遊びは体力や気力、自律神経の発育や精神的な発育に欠かせませんし、小児のメタボリック症候群の予防に重要な役割を担っています。気候を感じ、怪我をして痛みを知る、友達と一緒に遊ぶために協調性が養われ、ストレス発散の手段としても非常に有用です。小さな動物や植物に触れ、いつくしむ心が形成されます。日ごろからの外遊びや運動の習慣は熱中症の予防にも役立ちます。危険防止を心がけて楽しい外遊びをさせてあげて下さい。

 紫外線は、肌表面の細胞を傷つけ、日焼けを作り、皮膚で骨の発育に重要なビタミンDを合成します。紫外線で傷害されたDNAは自動的に修復されますが、傷害が多ければ一部に異常が残ってしまう可能性があります。ただ、日本人は黄色人種ですので、皮膚のメラニン色素を増やして紫外線の影響を受けにくくします。外で遊ぶときに帽子や衣服、日焼けしやすい子ではサンスクリーン剤で紫外線防御する必要はありますが、極端な紫外線対策は不要とは思います。

 運動不足と間食の摂りすぎによる小児期の肥満は成人の肥満に移行します。空調の効いた快適な部屋でジュースやお菓子を食べ、ゲームやテレビ三昧といった夏休みを過ごす子供が多くなり、「夏やせ」ではなく「夏太り」という状況に変わってきています。屋外で遊ぶことはゲームやメディア漬けが回避され、本来の子どもの健全な状態になり、肥満も解消されます。

 ただ、肥満による悪い影響が出る程度は個人によって異なります。太っていることが大きな問題ではなく、脂肪によって生じる症状、障害が問題です。肝臓に脂肪が蓄積すると脂肪肝になります。ただ、太っている人が必ずしも脂肪肝ではありません。また、染色体や遺伝の病気で肥満になる場合もあります。本人や親が悪いのではなく、どうしようもない場合もあることも考慮して下さい。



2010年 6月27日 放送
暑熱障害(熱中症)


 暑熱環境や運動などで生体の適応範囲をこえる高温環境下で水分や電解質の代謝がうまくいかないためにおこります。

 梅雨明け直後に多く発症しますが、夏以外でも急に暑くなったときや、体が暑熱環境や体の発熱に馴れていない状況で生じます。@気温が高いときや湿度の高いときA前日に比べ急に気温が上昇したB無風状態C砂やアスファルトなどの日光の反射が多い所などが起こりやすい状況です。地面に近い所は気温が高くなりますので、大人が暑い時は、乳幼児は大人以上の暑さを感じています。特にベビーカーの中は風通しも悪く注意が必要です。

 大量の発汗により、脱水や電解質の喪失が生じ、水分の補給が追いつかない場合に脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。涼しい所で休ませ、身体の冷却や水分補給をします。

 発汗のため電解質が喪失すると、筋肉の興奮性が亢進して下肢を主とした筋肉の痙攣が起こります。下腿のふくらはぎのこむら返りが有名です。電解質の含まない水分の補給を長期間続けた場合にみられやすく、電解質の補給が必要です。

 さらに進行し、強い脱水に加え体温調節機能が破綻した状態が熱射病です。体温上昇が発汗量を超えているため体温が異常に上昇し、熱自体や熱による循環不全による全身臓器の障害が生じます。極度の脱力状態となり、強い疲労感、虚脱感、頭痛、嘔吐などの症状が生じますし、血圧の低下、皮膚の蒼白などのショック症状にもなります。重症になると意識障害なども生じます。強い疲労感や嘔吐、意識障害などの症状が出ている場合は、点滴や入院が必要です。

 睡眠不足、運動不足、風邪などの体調不良は暑熱障害を起こしやすくなります。服装は通気性の良い、放熱を促進する服を使用し、外では帽子をかぶって太陽光をさえぎる服を選択して下さい。水分補給はこまめに行なって下さい。子供の顔が赤く、汗をかなりかいている時は涼しい環境下で休ませてあげて下さい。暑さに慣れるため外での遊びを奨励して下さい。



2010年 5月23日 放送
夏の食中毒


 夏の食中毒は腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などの細菌が原因で発症することが多く、主な症状は腹痛、嘔気・嘔吐、下痢です。菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。菌が腸管内で増殖して毒素などを出し、発症しますので増殖する時間(8時間から数日)が必要ですが、ブドウ球菌などは食物の中で増殖して毒素を出し、その増えた毒素を食べての発症ですので食後1時間程度で発症します。

 食べた細菌数や毒素の量が少なければ自然に治ります。菌や毒素を少なくすることが重要で、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うなどを心がけて下さい。下痢を止める薬は悪い菌の排出も止め、重症化させる可能性があり、使用しません。

1)腸炎ビブリオ
 夏の魚介類のエラや内臓に存在します。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。魚を調理したまな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 鶏肉を介する感染が主です。汚染されれば冷蔵庫に保存しても感染は防げません。便に血液が混入します。

3)サルモネラ
 卵、鶏肉、ペット類からの感染が主です。粘血を伴った緑色の水様便ですが、乳幼児では重症化します。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157の菌です。熱に弱く十分な加熱が最も有効です。牛肉からの感染が主です。血便になり重症化もします。

5)黄色ブドウ球菌
 調理人の手の化膿部から汚染します。おにぎり、お弁当などの中で菌が増殖し、毒素が蓄積され発症しますので、食後1時間でも発症します。



2010年 4月25日 放送
こどもの日の健康チェック


 5月にはこどもの日もあります。自分の子供の全般について考えてみませんか。身長、体重、元気さ、食欲、運動能力、知的能力、やさしさ、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 感染を予防できますし、かかっても軽症で済みます。他人にうつしませんし、病気の流行を阻止します。麻疹の撲滅を目指して、麻疹風疹混合ワクチンの接種は1歳と幼稚園年長児の2回になり、平成20年からは5年間の限定ですが、中学1年生と高校3年生にも接種する事になりました。日本脳炎ワクチンは新しくなりました。有料ですが、みずぼうそう、おたふくかぜなどのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。

2)健診での身長や体重の伸びは順調ですか。
 身体の発育、言葉、行動、運動などの発達で気になることがあれば小児科専門医にご相談下さい。健診での身長や体重の数値を母子手帳の後ろのほうにある男女の年齢別の身長や体重を書き込めるグラフに印をつけて下さい。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあり、伸び率はどうかなどがわかります。

 身長がかなり低い場合はホルモンの分泌が少ないなどの病気のこともあります。治療で身長が良く伸びる場合がありますので、小児科専門医を受診して下さい。2歳頃までの肥満体は問題ないのですが、小学校以降でかなり太っている場合は脂肪肝など肝機能や糖尿病のチェックが必要です。肥満自体が問題ではないのですが、身体に異常が生じるほどの肥満は困ります。

 女性はやせ体型が美しいとする考え方が思春期前の女性を摂食障害に追い込んでいます。やせ体型にも程度があり、個人差があること、ダイエットには低身長、子宮や卵巣の発育不全、将来の不妊や骨折のしやすい身体になる可能性があります。特に十代の発育期では過度のダイエットは危険です。



2010年 3月28日 放送
低身長11


 大人になると身長が低くても問題となることは少ないのですが、学校のような集団生活の場や多感な思春期ではいじめ、コンプレックス、精神的な問題などを引き起こすことがあります。低身長になる病気があり、その病気を治療することで身長が伸びる場合もあります。身長がかなり低い、あまり伸びないと感じたら受診して下さい。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。中学生や高校生になり、身長が伸びなくなってからでは遅すぎます。

カルシュームは骨を硬くしますが、骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲むだけでは身長は伸びません。野菜やたんぱく質などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、十分な睡眠も必要ですし、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともあり、負担がかからないような工夫をして、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

 同じ生年月日の子100人を身長順に並べて前から2人を低身長と診断します。病気が原因での低身長は治療が可能で、治療により全身状態も正常化し、身体の働きも活発になり、元気になります。

 成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症などの子供の成長に欠かせないホルモンが不足する病気があります。これらの不足しているホルモンを補充することで身長の伸びが良くなり、元気になります。低身長になる骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気でも治療は可能な場合があります。思春期早発症という思春期が早く来すぎる病気では子供の頃の身長は大きいのですが、身長が早く止まりますので最終の身長は低くなります。これも早期であれば治療可能です。愛情遮断症候群などで、子供が愛情に飢えて強いストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。病気でない低身長もあります。心配な場合は小児科専門医を受信して下さい。



2010年 2月28日 放送
子供の貧血


 赤血球やヘモグロビンという酸素を運ぶたんぱく質が減少し、肺で取り込んだ酸素を体内に運ぶ力が低下した状態が貧血です。細胞の活動性が低下しますので、強い貧血が長期間続くと脳や体の発育が悪くなります。原因は赤血球の生産の生産能力の低下、鉄分やビタミンB12などの赤血球の材料不足、赤血球の寿命が短く壊れやすい、出血などでの赤血球の喪失などがありますが、主な原因は鉄分の不足です。
 乳児では離乳食が遅れたり、鉄分が少ない食事をとっている場合、幼児・学童では鉄分やたんぱく質摂取の少ない子に貧血がみられます。長時間走ったりジャンプしたりすることによる足底血管内の赤血球破壊が原因でおこるスポーツ貧血もあります。乳児期や思春期では成長が急激ですので、たんぱく質や鉄分の必要性が増します。また、思春期以降の女子では月経出血も出てきます。やせ願望による無理なダイエットでは強度の貧血になります。

症状
 顔色が青白く、目の結膜や口の粘膜、爪などの色も白っぽくなります。乳幼児では、きげんがわるく食欲がない、元気に遊ばずゴロゴロしている、体重がふえないなどの症状があらわれます。年長児では、疲れやすく、軽い運動でも動悸や息切れがし、めまいです。

 乳幼児では極端な貧血が3か月以上続くと精神や運動の発達が遅れる可能性が指摘されています。

治療
 鉄分は肉や魚の赤身に含まれるヘム鉄と穀物や野菜などに含まれる非ヘム鉄に分類され、非ヘム鉄の腸管からの鉄の吸収率はよくありませんが、ビタミンCが吸収を促進します。食事には肉や魚、野菜と果物を摂取することが望まれます。バランスの取れた食事が鉄欠乏性貧血を予防しますし、治療にもなります。食事療法で改善しない場合や強度の鉄欠乏性貧血では鉄剤を服用します。食事では鉄分の過剰状態にはなりませんが、薬やサプリメントの過剰摂取では、頭痛、食欲不振、肝機能障害、皮膚の黒ずみなどの副反応が生じますので注意が必要です。



2010年 1月24日 放送
子供の肥満とメタボ


 病気は遺伝要因に外部環境や生活習慣要因が加わり発病します。生活習慣は幼児期にその基礎がつくられ、小学生頃に完成するといわれます。子供の生活環境では食事での動物性蛋白質と脂質の摂取増加、コンビニや自動販売機による間食、受験勉強や塾による余暇の減少とストレス、テレビやゲームの普及よる夜型の生活習慣と運動不足などが問題となっています。

 内蔵脂肪型肥満、高脂血症、高血圧、高血糖などの危険因子が重なった病態がメタボリックシンドロームで、これらが軽度でも重なることによって動脈硬化が進行し、将来心筋梗塞、脳梗塞等へ進展していく危険性が高くなります。子供の頃からのバランスの取れた健康的な食事と運動習慣が肥満を予防し、メタボを予防します。小児期の和食が「おふくろの味」として成人になっても好まれる食生活が重要です。

 ただ、3歳頃までの肥満は成人になってからの肥満と結びつきませんので、この頃の「ぽちゃぽちゃしてかわいい」は心配いりません。3歳以降の肥満の大部分は成人になってからの肥満に結びつきますので、小児期での肥満対策は重要です。少なくともジュース類やスナック菓子類の間食を少なくした食生活を家族全員で実行して下さい。

 肥満はやせる努力よりも肥満しないように注意するほうが楽ですし、効果的です。悪くなる前の早期対策が楽です。特に、子供では身長が増加しますので、体重を維持するだけで肥満度が下がります。子供の頃からの肥満予防対策が大切です。ただ、肥満でも肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝にならない児や肥満と見えない児が脂肪肝であったりもします。元気で、活発で、肥満が肝障害など体に悪さをしなければ肥満体であるということは個人の勝手かもしれません。一律な肥満対策は避けて下さい。肥満を気にし過ぎて過剰なダイエットを実行する女の子では低身長、子宮や卵巣の発育不全、骨のカルシュウム沈着不足など将来の病気に繋がります。特に発育期の10歳代での過剰なダイエットは危険です。






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