2012年 12月23日 放送
小児の発熱


 発熱を心配するのは当然ですが、心配しすぎないようにして下さい。急を要する病気の症状のこともありますが、ほとんどはウイルスによる感染症(いわゆる風邪)です。ウイルスと戦う体力が重要です。涼しい気持ちの良い環境つくりを心がけてください。水分補給も重要です。食べられるものから食べさせて下さい。

 乳幼児では1年間に5〜6回の熱発があるのが一般的です。特に保育園や幼稚園に行き始めの1年間は頻繁に熱を出します。風邪が治ればそのウイルスに対する抵抗力が得られます。これら1つ1つのウイルスに感染し、抵抗力を獲得することで、次第に感染するウイルスが減少し、熱発の頻度も少なくなります。

 高熱では幻覚(幻聴、幻視)が起こることがありますが、一般の病気の高熱で脳が障害されることはありません。熱が高くても機嫌が良い場合はあせらず、落ち着いて小児科専門医を受診して下さい。熱が低くても機嫌がかなり悪い、ぐったりしている、呼びかけに対する反応が悪い(意識低下)などの場合は救急で小児科専門医のある病院を受診するようにして下さい。涼しい服装(薄着)、冷やす、食べやすい食事や食べてくれるものを食べさし、子供の機嫌が良くなるように努めて下さい。水枕や冷却ジェルシートは医学的な効果はありませんので、本人が嫌がればする必要はありません。

 解熱剤は熱を下げて子供の機嫌を良くしますのでありがたい薬ですが、熱を数時間下げるだけであり、病気は治しません。熱のために機嫌が悪い時や寝てくれないなどの時に限定し、なるべく使用回数を減らして下さい。インフルエンザの時はボルタレンやポンタールなどの解熱剤は脳症を生じやすくする可能性があると言われていますので子供には使用しないで下さい。使用する場合は、アセトアミノフェン(カロナールなど)に限定して下さい。風邪薬と言われる総合感冒薬には解熱剤が含まれています。注意が必要です。



2012年 11月25日 放送
RSウイルスと細気管支炎


 RSウイルスは毎年、冬に流行する風邪のウイルスの1つです。大きな子では鼻風邪で済みますが、乳幼児ではごく稀に細気管支炎や肺炎となります。

 呼吸で肺に空気が入っていく道が気管支です。気管支は枝分かれしながら、どんどん細くなり、その最も細くなった末端部分が細気管支で、その先には肺胞という酸素と二酸化炭素を交換する部分があります。

 細気管支炎の場合は粘膜が腫れて、粘液が多く分泌されますので、細い気管支がよけいに狭くなり、肺に出入りする空気の流れが妨げられ、呼吸困難を引き起こし、特に息を吐くことが困難な状況になります主な原因はRSウイルスで、稀にパラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルスなどの場合もあります。

 RSウイルスは10月から5月頃まで流行します。乳児でも感染・発症し、2歳までにほぼ100%が初感染をうけると考えられていますが、何度でも感染、発症します。しかし、再感染を繰り返す毎に免疫力も徐々に獲得し、症状も軽くなっていきます。2歳以降は感染しても鼻風邪程度になります。

 初期は鼻水、くしゃみ、微熱、咳などの感冒様症状です。咳、鼻水などの風邪の症状が2〜3日続いた後、息を吐くときにゼーゼーという音がしたり、呼吸回数が多くなり、呼吸時に胸が凹みます。罹病期間は通常7〜12日で、ほとんどの乳児では症状は軽度で治ります。ただ、一部の乳児では、呼吸困難が悪化し、入院を必要となる場合もあります。

 RSウイルスに対する治療薬はありません。脱水気味になると痰が絡み、咳込みなどがさらにひどくなり、水分を取れず、どんどん悪くなります。こまめに水分摂取を心がけて下さい。加温、加湿を心がけて下さい。咳き込んだ時には抱っこしてあげたり、上体を起こして背中をさすってあげると少し楽になります。



2012年 10月28日 放送
乾燥肌


 空気が乾燥してきました。皮膚は乾燥すると痒くなり、特に身体が温まったり、衣類などの刺激で痒みが増します。布団に入ると痒くなるため不眠の原因にもなります。

 汗やあかは痒みの原因となります。お風呂ではベビー石鹸や木綿のタオルなどでやさしく洗って汗やあかを落とし、石鹸をよく洗い流すようにして下さい。タオルでゴシゴシ洗うと皮膚表面の角質を傷つけ、皮膚の機能を破綻させて痒みが増します。皮膚の保護作用や保湿作用のある皮膚角層を保護するようなスキンケアをして下さい。

 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。抱っこする人の服なども含め毛糸などの刺激が赤ちゃんや子供の肌に直接触れないようにして下さい。

 アレルギー体質を持っている子供にできる湿疹をアトピー性皮膚炎といいます。遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光、食事、ほこりやダニなど多くの因子が悪化に関係しています。アレルギー反応の原因を調べるためにRAST法という血液検査などが行われますが、アトピー性皮膚炎のような遅延型といわれるアレルギー反応主体の皮膚炎ではRAST法で原因を探すことは不適切です。

 極端な食物制限は発育異常をおこします。食物制限自体がストレスとなり、皮膚炎を悪化させる可能性もあります。食物制限を行う場合は食べれば皮膚の症状が悪化する食物のみに限定して下さい。

 スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠は困ります。入浴後に塗ると乾燥した肌に水分を保たせる保湿作用のある軟膏があります。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと皮膚のバリア機能が低下し、保湿機能が低下し、刺激物質が皮膚内に侵入しやすくなりますので、症状が悪化します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬も併用して下さい。あせらず気長に治療することが大切です。



2012年 9月23日 放送
嘔吐下痢症


 冬に流行する風邪の1つで、頻回の嘔吐と下痢を伴います。潜伏期間は1〜3日で、微熱が1日程度伴うこともあります。嘔吐は半日から丸1日で治まります。下痢は淡黄色や白っぽいクリーム色の水様便になることが多く、4〜5日間続きます。

 ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスが主な原因です。それぞれタイプが多数あり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。

 患者の吐物や下痢便中にウイルスがありますので、これらを触って、口の中にウイルスが入ることによる感染が主です。吐物や便を触った後は石鹸を使い水道水で手洗いを十分にする必要があります。消毒用アルコールは効果が不十分で、ミルトンやキッチンハイターなどの塩素系の消毒薬や漂白剤および85℃で1分間以上煮沸がこのウイルスの消毒に有効とされています。乾燥するとウイルスが空中に広がりますので、吐物や便を濡らした新聞紙などで直ぐに覆い、きれいに拭き取って下さい。

 嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(20〜30mlの嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。その後徐々に1回量を増やしていきます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。食事は腸の回復を助けます。

 下痢が続きますので、牛乳や乳製品は止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。吐気がなければ離乳食や消化の良い食事は欲しがるだけ与えて下さい。

 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。ひどい嘔吐には嘔吐止めを使用します。

 機嫌が悪くなったり、ぐったりして点滴が必要となることもあります。特に乳児では脱水症を伴いやすいので要注意です。



2012年 8月26日 放送
子供の腹痛


 子供の腹痛は便秘や下痢による痛みが主で、急を要する病気は非常に稀です。原因は「ウンチ」「オシッコ」に行きたい、「吐きそう」「筋肉痛」など色々です。時には体調不良や心因性が原因で腹痛を訴えることもあります。「遊んでほしい」「しんどい」「行きたくない」「やりたくない」などストレスや欲求不満の表現の代わりのこともあり、子どもが嫌うことや不安に感じること、家族や友人との人間関係なども考慮してあげて下さい。入学や新学期の頃ではクラス変えや担任の交代が原因のこともあります。小学生の高学年では起立性調節障害(血圧の調整うまくいかず朝の体調が悪く、朝起きられない)という病気のこともあります。

 腹痛のために顔をしかめたり、体を前屈する姿勢をとる場合は腹痛が強烈ということを示しており、早急に小児科専門医を受診して診断をしてもらう必要があります。一般的には@おなかを手のひらでさすってあげることで本人は納得し、痛みが消失することがよくあります。どこか痛い部位があればさすってあげることで痛い部位に手のひらが触れて顔をしかめたり痛みを強く訴えますので、小児科を受診するかどうかの目安にもなります。Aトイレに座らせて排便をさせ、便の状態をチェックします。便秘や下痢による腹部の痛み、トイレに行きたいという不快感を腹痛として訴えることが多く、トイレで排便さすか浣腸で便を出してあげれば痛みは消失します。便をチェックして下痢や便秘などの状況や、便の色や臭い、粘液や血液の付着状況なども見て下さい。排便でも治らない場合や便の性状が悪い場合は小児科専門医を受診して下さい。

 いつもの「ポンポンが痛い」だからなどと子供の訴えを無視しないで下さい。忙し場合は短時間でも結構ですから、お腹をさすってあげたり、話を聞いてあげたりして下さい。子供は何かを訴えようとしています。



2012年 7月22日 放送
小児のメタボリックシンドローム


 内蔵に脂肪がたまった状態(内臓脂肪蓄積)、中性脂肪やコレステロールが高くなる状態(脂質代謝異常)、高血圧、耐糖能異常(高血糖など)などの動脈硬化危険因子が重なった病態がメタボリックシンドロームという概念で、これら1つ1つが軽度でも、これらが重なることによって動脈硬化が進行し、成人後の心筋梗塞、脳梗塞等へ進展していく危険性が高くなります。

 早期発見するために腹囲は男女共に小学生は75cm 、中学生は80cm以上と決められ、脂質、血圧、高血糖にも基準があります。

 体重が過剰傾向にある小児は成人になると肥満しやすいことがわかっています。塾での勉強や室内でゲームやテレビやケータイを楽しむなど体を動かさない生活、不規則な食事時間、ジャンクフードと称される高脂肪・高カロリー食品の氾濫、コンビニなどでの食品入手の容易さなどがあります。エネルギーの過剰摂取・消費減少が小児の肥満を増大させています。動脈硬化性の病気自体は、主に成人になってから発症しますが、動脈硬化自体は小児期から徐々に進行しています。

 予防には、適度な運動と食生活の見直しが大切です。ごはんを主食にしたバランスのよい食事が望まれますし、脂っこいものを避け、味付けも薄くする必要があります。ジュースやお菓子などを与え過ぎないこと、親子や友達同士で外で思いっ切り遊ばせることなども重要です。

 小児メタボリックシンドローム対策とはいえ成長期なので、極端なダイエットは危険であり、効果的ではありません。過度なダイエットでは身長の伸びが不良になります。女子では子宮や卵巣の発育が悪くなりますし、拒食症を引き起こして、生命を脅かすまでに進行する可能性も有ります。妊娠が困難になったり、中年以降の骨粗しょう症につながります。それよりも運動を増やして消費カロリーを増やして健康的に肥満を解消する方が効果的です。



2012年 6月24日 放送
暑熱障害(熱中症)


 暑熱環境や運動など、生体の適応範囲をこえる高温環境下で水分や電解質の代謝がうまくいかないためにおこります。節電で空調温度が上がるこの夏は注意して下さい。

 梅雨明け直後に多く発症しますが、夏以外でも急に暑くなったときや、体が暑熱環境や体の発熱に馴れていない状況で生じます。@気温が高いときや湿度の高いときA前日に比べ急に気温が上昇したB無風状態C砂やアスファルトなどの日光の反射が多い所などが起こりやすい状況です。地面に近い所は気温が高くなりますので、大人が暑い時は、乳幼児は大人以上の暑さを感じています。特にベビーカーの中は風通しも悪く注意が必要です。

 大量の発汗により、脱水や電解質の喪失が生じ、水分の補給が追いつかない場合に脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。涼しい所で休ませ、身体の冷却やイオン飲料水などの水分補給をします。

 発汗のため電解質が喪失すると、筋肉の興奮性が亢進して下肢を主とした筋肉の痙攣が起こります。下腿のふくらはぎのこむら返りが有名です。電解質の含まない水分の補給を長期間続けた場合にみられやすく、電解質を含む水分の補給が必要です。

 さらに進行し、強い脱水に加え体温調節機能が破綻した状態が熱射病です。体温が異常に上昇し、熱自体や循環不全による全身臓器の障害が生じます。強い疲労感や嘔吐、意識障害などの症状が出ている場合は、点滴や入院が必要です。少しでも、意識がおかしくて、自分で水分が飲めないようであれば、救急車を要請して下さい。

 睡眠不足、運動不足、風邪などの体調不良は暑熱障害を起こしやすくなります。服装は通気性の良い、放熱を促進する服を使用し、外では帽子をかぶって太陽光をさえぎる服を選択して下さい。運動時以外はお茶で結構ですので、水分補給はこまめに行なって下さい。子供の顔が赤く、汗をかなりかいている時は涼しい環境下で休ませてあげて下さい。暑さに慣れるため外での遊びを奨励して下さい。



2012年 5月27日 放送
夏の食中毒


 細菌性食中毒がおこりやすい季節になりました。原因菌は腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などで、症状は腹痛、嘔気・嘔吐、下痢など、菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。一般的には、菌が腸管内で増殖して毒素などを出し、発症しますので増殖(8時間から数日)してから発症しますが、ブドウ球菌などは食物の中で増殖して毒素を出し、その増えた毒素を食べての発症ですので食後数時間で発症します。

1、原因
1)腸炎ビブリオ

 夏の魚介類のエラや内臓に存在します。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。魚を調理したまな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 鶏肉を介する感染が主です。汚染されれば冷蔵庫に保存しても感染は防げません。便に血液が混入します。

3)サルモネラ
 卵、鶏肉、ペット類からの感染が主です。粘血を伴った緑色の水様便ですが、乳幼児では重症化します。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157が有名ですが、最近は焼肉店の生肉(ユッケ)のO―111が有名になりました。牛肉からの感染が主です。熱に弱く(75℃1分間で死滅)十分な加熱が最も有効です。血便になり重症化もします。乳幼児には生肉を食べさせないで下さい。

5)黄色ブドウ球菌
 調理人の手の化膿部から汚染します。おにぎり、お弁当などでの感染が主です。食物の中で菌が増殖し、毒素が蓄積され発症しますので、食後1時間でも発症します。

2、対策
 食べた細菌数や毒素の量が少なければ治療なしでも自然に治ります。菌や毒素を少なくすることが重要で、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うなどを心がけて下さい。子供は重症化しやすいため、子供への生肉は避けて下さい。

 下痢を止める薬は悪い菌の排出も止め、重症化させる可能性があり、使用しません。



2012年 4月22日 放送
子どもの健康チェック


 入学(園)、新学期での変化にも慣れた頃と思います。自分の子供の全般をこの機会に考えてみませんか。元気さ、食欲、運動能力、知的能力、やさしさ、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 感染を予防できますし、かかっても軽症で済みます。他人にも感染させにくくなります。麻疹風疹混合ワクチンの接種は1歳と幼稚園年長児の2回、今年度も中学1年生と高校3年生にも接種する事になっています。乳幼児の髄膜炎を予防するヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンが生後2か月から5歳未満に無料で、子宮頚がんワクチンが中学1年から高校1年生相当を対象に低料金での接種が延長されました。有料ですが、水ぼうそう、おたふくかぜなどのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。

2)健診での身長や体重の伸びは順調ですか。
 健診での身長や体重の数値を母子手帳にある男女の年齢別の身長や体重を書き込めるグラフに印をつけて下さい。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあり、伸び率はどうかなどがわかります。

 身長がかなり低い場合はホルモンの分泌が少ないなどの病気のこともあります。治療で身長が良く伸びる場合がありますので、小児科専門医を受診して下さい。2歳頃までの肥満体は問題ないのですが、小学校以降でかなり太っている場合は脂肪肝など肝機能や糖尿病のチェックが必要です。肥満自体が問題ではないのですが、身体に異常が生じるほどの肥満は困ります。

 女性はやせ体型が美しいとする考え方が思春期前の女性を摂食障害に追い込んでいます。やせ体型にも程度があり、個人差があること、ダイエットには低身長、子宮や卵巣の発育不全、将来の不妊や骨折のしやすい身体になる可能性があります。特に十代での過度のダイエットは危険です。



2012年 3月25日 放送
低身長


 低身長は学校のような集団生活の場や多感な思春期ではいじめ、コンプレックス、精神的な問題などを引き起こすことがあります。低身長になる病気があり、その病気を治療することで身長が伸びる場合もあります。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。中学生や高校生になり、骨が成熟して身長が伸びなくなってからでは遅すぎます。治療が必要な子では、早期からの治療が身長に良い結果を生みます。

 骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲むだけでは身長は伸びませんし、サプリメントも効果がありません。たんぱく質などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、十分な睡眠も必要ですし、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともあり、負担がかからないような工夫をして、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

 成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症などの子供の成長に欠かせないホルモンが不足する病気が原因の場合があります。これらの不足しているホルモンを補充することで身長の伸びが良くなり、全身状態も正常化し、身体の働きも活発になり、元気になります。骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気での低身長も治療可能な場合があります。愛情遮断症候群などで、子供が愛情に飢えて強いストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。ただ、病気ではなく、その子の体質のための低身長もあります。心配な場合は小児科専門医を受診して下さい。



2012年 2月26日 放送
夜尿症(おねしょ)


 毎晩、夜尿をしている子供は小学生で数%と多く、寒くなると尿量が増加しますので、夜尿は冬場に多くなります。年齢が進み、身体が発育するにつれて膀胱容量が増大し、睡眠リズムが安定して夜間の尿量が減少してきますので、夜尿は無くなって行きます。

 2つのタイプがあり、ぐっしょり型といって睡眠中の尿の量が多すぎるため夜尿となるタイプがあります。尿量を減少させる作用のあるホルモン分泌機能の未熟が原因で、年齢が進むにつれ十分分泌されるようになり夜間の尿量が減ります。あと1つはちょっぴり型といって膀胱が小さいために尿をためられる量が少なくて夜中に十分な蓄尿ができず漏らしてしまうタイプです。ほとんどの子が両方の要素を持っています。

 生活指導は@しからず、Aあせらず、B起こさずが原則です。@無意識に行っているので、しかられても本人はどうしようもないのです。A長期戦です。未熟な機能が身体の発育と共にゆっくり発達してくるのを待つ必要があります。B子どもの健全な発育・発達には十分な熟睡は大切です。夜中に起こして排尿させるという方法は、睡眠リズムを崩し、熟睡やホルモン分泌に影響します。夜間の膀胱容量も大きくなりません。夜中に起こして排尿させる方法はなるべく避ける方が良いと思います。

 機能の発達は待つしかないのですが、夜間の尿量の減少や排尿抑制機能を高めることは可能です。@食べたり、飲んだりした水分は3、4時間で尿になります。入眠4、5時間前から水分を制限し、夕食も早くして下さい。A塩分をたくさん摂ると尿量が増加し、のどが渇きますので水分摂取が増えます。夕食は薄味でお願いします。B膀胱を大きくする方法として、腎臓や尿管に異常がある場合を除いて、昼間に尿意があっても可能な限り我慢して膀胱を大きくします。これらの対応を行っても効果が得られない場合に薬を使用します。小児科専門医にご相談下さい。



2012年 1月27日 放送
インフルエンザ


 インフルエンザが流行しています。この病気は高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳などの症状で発症し、年少児では脳症が、高齢者では肺炎が問題となります。

 A型とB型の感染が原因で、A型はソ連型と香港型に分類されます。このウイルスは変化をしますので毎年のように感染します。

 ウイルスと接触してから1〜3日後に症状が出ます。38〜40℃が2〜7日間続きます。一般の風邪より寒気、関節痛、筋肉痛、咳が強く出ます。

 主に咳で伝播し、流行初期はA型が、後半にB型が主流となります。現在は香港型が流行していますが、数種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザを発症することもあります。

 高熱が出るため熱性けいれんが生じやすくなります。ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)やメフェナム酸(ポンタールなど)という解熱剤を使用した場合に脳症が生じやすくなります。熱のため機嫌が悪く寝てくれないなど本人も家族も困るような時に限定してアセトアミノフェン(カロナールなど)の少量使用に限定して下さい。薬局や病院で出される総合感冒薬(風邪薬)のほとんどに解熱剤が含まれており、脳症を起こしやすくする解熱剤が含まれている薬もあります。

 脳症は意識を失い脳に後遺症を残しやすい病気です。痙攣が長時間続いたり、意識障害が長く続く場合に疑います。高熱だから脳症になるわけではありません。

 タミフルやリレンザなどの治療薬は症状を軽くしますが、使用しなくても4、5日程度で治ります。小児でのタミフルの異常行動が指摘されていますが、リレンザでも、治療薬を使用しなくても発生しています。高熱になると神経系の未熟な小児では熱せん妄(幻視、幻覚、異常行動)が生じやすくなるためと考えられ、神経系の成熟に伴いおこらなくなってきます。




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