2003年 12月28日 放送
インフルエンザ


 新しい年になりました。冬は熱や咳をひきおこすウイルスが活発化し流行します。その中でも特にインフルエンザは高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳など多彩な症状を示し、年少児では脳炎・脳症が、高齢者では肺炎が問題となるやっかいな病気です。かからないようにうがい、マスク、手洗いをお願いします。

1、インフルエンザウイルス
 A型、B型、C型の3つのタイプがありますが、流行するのはA型とB型です。A型は香港型とソ連型に大きく分類されますが、A型B型ともに大小様々な変化を毎年おこし、ウイルスが変化しますので、昨年に感染していてもまた感染します。

2、症状
 ウイルスに感染後1〜3日で急に発熱し、38〜40℃が4〜7日間続きます。一旦、熱が下がったように見えた後再度上がることも時々あります。「かぜ」といわれる他のウイルスと比べ、寒気、関節痛、筋肉痛、咳などの症状が強く出ます。
 12月末から3月に流行し初期はA型が、遅くなるにつれB型が主流となるのが一般的です。数種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザにかかることもあります。

3、解熱剤の使用
 ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)という解熱剤を使用した場合に脳炎・脳症が生じやすいとされています。その他にも脳炎・脳症をおこすやすいとされる解熱剤もあります。安全性が高いのはアセトアミノフェン(カロナールなど)のみです。解熱剤は一時的に(数時間)熱を下げる作用はありますが、病気そのものを治す力はありません。熱のため機嫌が悪く寝てくれないなど困る時に限定してアセトアミノフェンを少量使用するにとどめて下さい。薬局で売っている薬や病院でもらって残っている薬などは成分を確認して下さい。成分が不明な場合は使用しないで下さい。

4、脳炎・脳症
 意識の低下や長時間の痙攣が特徴です。脳に後遺症を残しやすい病気です。3歳までの乳幼児に生じやすく、発熱と同じ日や翌日になります。高熱だから脳炎・脳症になるわけではありません。

5、診断
 のどか鼻腔内の粘液で15分ほどで診断できます。粘液採取は痛いですが我慢です。

6、治療薬
 インフルエンザの薬はウイルスの増殖を抑える薬ですので、体内でウイルスがすでに増えてしまった状態では効果がありません。そのため発熱出現後40時間以内(2日以内)の開始でなければ効かないとされています。なるべく早く服用してウイルスを増やさないようにするのが大切です。



2003年 11月23日 放送
嘔吐下痢症


 下痢は生活環境や栄養の改善の結果、軽症で治ることが多くなりましたが、冬に流行する嘔吐下痢症は乳児では脱水を伴いやすいので要注意です。

1、原因
 ロタウイルスやノロウイルス、腸管アデノウイルスが主な原因です。ロタウイルスやノロウイルスは毎年冬季に流行し、腸管アデノウイルスは年間を通じて発生します。各々にはタイプが多くあり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。
 これらは患者の吐物や下痢便を触って感染しますので、触った後は手洗いを十分して下さい。ノロウイルスは2枚貝(主に生カキ)を生または半生で食べたり、生の貝を触った手で生野菜などを調理することで感染します。

2、症状
 症状は病名が示すように頻回の嘔吐と下痢です。嘔吐は頻回ですが半日から丸1日で治まります。下痢は白っぽいクリーム色の水様便で、4〜5日間続きます。

3、食事
 初期の嘔吐や嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(コップ1/4〜1/3程度の嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。その後徐々に1回量を増やしていくようにします。胃が膨れるほど飲むと嘔吐します。少量の水分が胃から徐々に吸収されるのを待ちます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。
 下痢が続きますので、牛乳や乳糖を多く含むお菓子などは止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。下痢で腸の粘膜が傷害されると、乳糖(牛乳などに含まれる糖)などの吸収が悪くなり、乳糖や糖分の高い濃度の飲み物や食べ物は下痢の回復を悪くします。離乳食や食事は消化が良くない食物以外は欲しがるだけ与えることを心がけて下さい。食事をすることは腸の回復を助けます。

4、治療
 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。嘔吐には嘔吐を抑える薬を使用することもあります。
 嘔吐や下痢がひどく、口の中が渇いてきたり、ぐったりするなど脱水が疑われる場合には点滴による水分補給が必要です。
 頻回の下痢ではオムツかぶれにすぐになります。お尻を出来るだけ頻回に洗って乾かして下さい。ひどくなる場合は洗った後で軟膏を使用して下さい。



2003年 10月26日 放送
予防接種2


 インフルエンザワクチンの接種時期になりました。ワクチンは必ず接種しなければならないものではありませんし、痛いし、微熱や注射部位が腫れるなどの副反応がありますが、誰も病気にかかりたくはありません。麻疹、おたふく風邪、水痘では7〜10日間ほど保育園、幼稚園、学校を休まなければなりません。麻疹やインフルエンザでは40℃ほどの熱が出ます。予防できる病気は予防したほうが無難です。

1、予防接種の種類
 生ワクチン(病原性を弱めているが生きている)と不活化ワクチン(生きていない)に分類され、効果も異なります。

2、予防接種の効果
 病気にかからない、または感染しても重症化を防ぐことが出来ます。予防は治療に優ります。個人の自己防衛のみならず家族内での病気の流行を阻止し、医療費の抑制にも役立ちます。
 大人が感染すると麻疹などでは入院が必要になるほど重症になります。妊娠初期の妊婦に風疹が感染すると先天性風疹症候群(心臓、視力、聴力が傷害される)の子供の出産の可能性について心配をしなければなりません。心配な人は子と共に予防接種をしておくのも1つの考え方です。感染を避けたい場合に、そのワクチンを数年毎に接種することもあります。

3、予防接種の回数と間隔
 一般に生ワクチンは効果が得られやすいので1回の接種、不活化ワクチンなどは効果が出にくいので数回の接種が必要です。1年後にも接種するのはワクチンの力を何年も持続させるためです。
 生ワクチン接種後は4週間、それ以外のワクチンでは1週間後に他のワクチンが接種可能です。

4、スケジュール通りにしなければならない?
 海外へ急に転居するなどの場合、一度に数種類のワクチン接種が可能です。ワクチンの特徴を考えればスケジュールは多少変更できます。集団生活では感染の機会が増加します。保育園や幼稚園へ入園するまでに出来るだけの接種をお勧めします。小児科専門医にご相談下さい。

5、基礎疾患を持つ子供
 現在、何らかの病気にかかっている子の場合は、実際に病気にかかれば、元々の病気の上にその病気がプラスされ、大変です。主治医と相談して出来るだけのワクチン接種をお勧めします。

6、ワクチン接種を見合わせる場合
 発熱や機嫌が悪い場合は接種を延期します。妊娠中には生ワクチンの接種は避けてください。ワクチンの成分に強いアレルギーがある人は病院の小児科で相談して下さい。
 軽度の咳や鼻水などでは接種可能です。



2003年 9月28日 放送
包茎(ほうけい)


 包茎は包皮口(ちんちんの尿の出口の皮の部分)が狭くて包皮(ちんちんの皮)がむけなくて亀頭が露出できない真性包茎と亀頭が容易に露出できる仮性包茎に分けられます。
 出生時の男児は全員が真性包茎ですが、成長するに従い仮性包茎となり成人では皮もむけます。ほとんどの子は二次性徴終了まで包茎です。程度の強い包茎の真性包茎は中学生でも10%ほどといわれております。思春期が過ぎるまで包皮が亀頭を覆っているのが普通です。
 包皮と亀頭の間には分泌物や剥離した細胞が溜まった黄白色の軟らかい恥垢(ちこう)があります。包皮の下に黄白色の丸いコロコロした塊のように見える場合もあります。こういった恥垢は病的なものではなく、成長に従い包茎が治ってくると自然に消失します。

治療
 包茎口が狭すぎて排尿するのが困難な場合は治療が必要ですが、子供ではこれ以外の包茎の治療は不要です。自然に仮性包茎となり、思春期を過ぎてから包茎も消失します。小学生でも亀頭の一部さえ包皮口から見えれば自然に治ることが多く、放置してもかまいません。ただ、子供が気にするようであれば保存的治療を考慮してあげて下さい。
 治療には1〜2か月かけて軟膏を包皮口から塗りこんでいく保存療法と手術で輪状に切取る方法があります。保存的療法で十分効果がありますので、手術を必要とすることは稀です。

注)ちんちんをゴシゴシ洗うことについて

 子供でも恥垢のあるちんちんは不潔で、皮をむいてよく洗った方が良いという人がいます。本当にそうでしょうか。恥垢は無菌であり、感染の原因とはなりません。不潔でもありません。真性包茎でなくとも子供は汚い手で触るため、細菌が付いて亀頭が腫れる亀頭炎をよくおこします。数日の抗生剤の服用で治ります。包茎はちんちんの発育を妨げませんし、恥垢が陰茎癌の原因になるという根拠もありません。皮をむいてゴシゴシ洗う必要はありません。小児では包皮と亀頭の間は一部が癒着していることが多く(成長に従い自然とはがれてきます)、無理にむくと出血させます。また無理にめくると亀頭の根元で皮が丸まって、元に戻らず緊急手術が必要となる場合があります。
 宗教儀式や習慣として、小児期に包皮を輪状に切取ってしまう割礼を行っている国もありますが、包皮は小児期では弱い亀頭を外的刺激や外傷から守っていますし、性的刺激を感知する機能がありますので無駄な部分ではありません。



2003年 8月24日 放送
夜泣きと夜驚症


 大人は昼間に仕事や家庭があり、夜に眠れないとしんどくなりますが、乳幼児では眠りたい時に眠り、起きたい時に起き、お腹がすいた時に食べるという生活で何ら問題がありません。夜泣きは大人と子供の生活リズムのズレから生じるのです。子供が成長して大人の生活リズムに近づくと夜泣きは自然になくなります。それまで我慢です。夜中におっぱいを欲しがれば与えて、抱っこしてあやしてあげて下さい。
 6か月を過ぎて知恵が付き始めれば眠りが浅くなった時にお母さんを探しますし、昼間の興奮の影響が夜に出ることもあります。環境が変わっても興奮します。
 睡眠のリズム、夜昼の区別に重要なのは光と言われ、朝の光の刺激を受けると体は覚醒状態となります。また、昼間の適度な疲れも睡眠には重要です。昼寝は乳幼児には必要ですが、昼寝が長いと夜に眠ってくれません。
 「夜泣き封じ」のお寺やまじないは全国にたくさんあります。ほとんどの親は「夜泣き」に悩んだ経験を持っています。昼間はわがままを言うし、夜は夜泣きで寝てくれないなど親が困る状況は「かん虫」といわれます。子供は子供のリズムがあり、やりたいこともあります。他人の迷惑など考えられる年齢ではありません。子供に自我が芽生えてきた証拠です。言い聞かして理解できるようになる年齢までじっと我慢です。「かん虫切り」をする習慣もあります。体に傷をつけるような「かん虫切り」は困ります。この傷からB型肝炎が流行した地方がありました。

対応
 夜泣きは生後7、8か月頃に最も多く見られ、2、3歳頃には少なくなります。気長に待つことが基本ですが、@朝に光(太陽光や室内の光)を当てる。A昼間はなるべく遊ばす。B昼寝は昼食後の早い時間帯で1〜2時間程度にするなども試みてください。騒がしい、暑苦しい、明るいなどの眠る環境も関係します。
 親が子供の夜泣きのために睡眠不足となると大変です。睡眠不足となるような時には小児科専門医に相談して下さい。薬もあります。親が疲れるのは困ります。

夜驚症
 入眠後2〜3時間頃に泣き叫んだり、汗をかいたりします。なだめても収まらず、翌朝には覚えていません。添い寝などをしてあげて下さい。緊張やストレスなどが関係しているといわれ、3〜4歳に多く、年齢と共に減少します。夢遊症といって歩いたり服を着たりする症状が起きることもあります。この場合は怪我をしない環境整備が必要です。



2003年 7月27日 放送
夏に気をつけたいこと


 夏休みに入りましたが、最近では毎日外で真っ黒になって遊んだり、泳いだりという子は少なくなりました。冷房の効いた部屋でジュースを飲みながらテレビやゲームなどです。「夏やせ」の代わりに「夏肥り」です。冷房はあっても汗疹や夏風邪は減ってはいませんし、車の中の子供の熱中症(熱射病)では死亡する例もあります。

1、汗疹(あせも)
 かゆみがありますので、かいて引っかき傷を作ります。引っかき傷に黄色ブドウ球菌や溶連菌が感染すると「とびひ」になります。@吸湿性の良い下着(木綿など)A風通しを良くするBシャワーなどの使用で予防します。薬もあります。

2、熱中症
 高温の環境のため大量に発汗し、脱水や電解質が喪失したことが原因です。脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。電解質の含まない水分の補給のみでは運動後の筋肉の痙攣(下腿のふくらはぎのこむら返り)がおこります。体温が異常に上昇すると熱自体や熱による循環不全によって全身臓器の障害が生じ、痙攣、意識障害などが生じます。
 熱中症は予防できます。高温下で運動する場合は適当な休憩や電解質やカロリーの含まれた水分を十分に摂取させるなどに注意して下さい。睡眠不足、運動不足などの体調不良を極力避けて下さい。疑われる場合は電解質やカロリーの含まれた水分を十分摂らして、冷所で安静にさせる。衣服を脱がせ、体を冷却する。重症は緊急入院です。

3、夏風邪
 代表的な病気としては「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」があります。いずれも何回もかかります。

@ 手足口病
 口内炎、手のひらと足の裏に小さな水泡性の発疹(赤いぶつぶつ)ができます。乳幼児では膝前面や臀部(お尻)にも発疹ができます。

A ヘルパンギーナ
 ぼどの奥(のどちんことその左右)が真っ赤になり、口内炎ができます。口の中の痛みが非常に強いのが特徴です。高熱も1〜3日出ます。

B 咽頭結膜熱(プール熱)
 のどの奥が真っ赤になり、目の結膜炎(目やにが出る)、高熱が4、5日続きます。

対応
 のどの痛みが強く、食べない、不機嫌、よだれが多くなります。イオン飲料水、プリンやゼリーなどの冷たく、のどごしの良いものをあげて下さい。水分さえ飲めていればあまり心配はいりません。

5、夏肥り
 肥満による肝障害や糖尿病の子供は注意して下さい。お菓子を置かない、冷蔵庫にはジュースを置かない、麦茶のみといった環境を整え、夕方に家族で散歩などをして下さい。



2003年 6月22日 放送
便秘


 子供が腹痛で苦しんだり、排便のために気張っているのに便が出ない、排便時に肛門が切れたり痛みのために泣くのは困ります。排便をスムーズにさせるためにはどうしたらよいのでしょう。
 週に2回以下の排便回数では便秘症と考えますが、便の回数が少ないために便が硬くなり排便時に痛みを訴えたり、痛くて排便できない場合にも便秘と診断します。ただ、2〜3日に1回の排便でも腹痛などの訴えがなければ心配は要りません。また、母乳栄養児では軟らかい便なのに3〜4日に1回の排便のことはよくあります。母乳のみの場合はこの程度では便秘とは考えません。

原因
 消化管などに病気がある器質的便秘と排便時の痛みがいやで排便しないため便秘になる機能性便秘、食物や食物繊維が少ない食事内容による食事性便秘の3つの型があります。

1、器質性便秘
 甲状腺機能低下症や肛門部の神経が少ないなどの病気のことがあります。

2、機能性便秘
 何らかの原因で便秘になり、その排便時の痛みが強かったため排便するのがいやになり、排便を我慢したため便が大きく、硬くなり排便時に肛門が切れたり、さらに強い痛みを伴い余計に排便することがいやになり便秘がひどくなるというものです。便の塊が大きくなると直腸を拡張します。この直腸の拡張が繰り返され、常に拡張した状態になると、便が直腸にあっても正常の排便反射(直腸に便がたまると排便したくなる)が抑制されて便秘が治りません。薬や浣腸などで排便を痛くないようにし、子供の恐怖心を取り除きながら、時間をかけて拡張した腸管を元に戻す必要があります。

3、食事性便秘
 食事に繊維質が少ないことが主な原因です。果物、野菜、海藻、こんにゃく、豆などの摂取を増やします。

治療
 慢性便秘ではまず病気がないことを診断します。食事内容の改善(食物繊維をさらに多く)、運動量の増加(外で遊ばせる)、排便習慣をつけるなどが主な治療です。
 学校のトイレが汚いと感じる子供が学校での排便を嫌がり、便秘になるといった状況もあります。便秘になった原因を探すことも大切です。
 排便のコントロールが出来るようになるのは個人差が大きく遅い子もいますが、だいたい3歳頃です。この頃から朝食後か夕食後にトイレまたはオマルに数分間座らせる排便習慣を付けて下さい。
 浣腸は癖にはなりません。排便時の痛みが強い場合などに排便させるのに有用です。薬もあります。小児科専門医に相談して下さい。



2003年 5月25日 放送
ことばの遅れ


 他の子がしゃべれているのに自分の子はしゃべらないと心配です。順調にしゃべれている場合は知能が順調に発育しているということですが、逆に、ことばが遅い場合は知能が遅れているということではありません。ことばの発達には個人差が大きく、知能などに問題がなくてもことばの遅い子がたくさんいます。その子その子でのことばの発達があります。チェックは必要ですが、ゆっくり待ってあげて下さい。

1、言葉の発達
 生後6か月頃から「バブバブ」などの赤ちゃん言葉が出だします。
 1歳のお誕生頃に「バイバイ」と手を振ってくれる子は多いですが、「バイバイ」という言葉は出ません。理解してからしゃべるまでに時間がかかります。また、赤ちゃんは口腔内の広さに比べ舌が大きく、しゃべりにくく、赤ちゃん言葉になります。「ブー:車」「クック:靴」「マンマ:ごはん」 

一般的な基準として
1)1歳では25%の子供がまだ単語1つ(ママやパパなど)を言えません
2)1歳6か月の98%の子供が単語を2個しゃべれる(まだしゃべれない子もいます)。
3)2歳の誕生日頃では50%の子供が2語文(ママ、スキなど)をしゃべれません。
4)3歳のほとんどの子は2語文をしゃべれます。

2、問題点、チェックすべきこと
1)耳が聞こえない(早期から補聴器を使用する必要があります)
 言葉が聞こえなければしゃべれません。呼びかけに反応しない、音の方を向かないなどで判断します。
2)発声が可能
 声が出る。
3)模倣できる
 まねをする。(行動や言葉は模倣からです)
4)対人関係が良好
 遊んでもらったり、話しかけてもらうのが好きかどうか。
5)言語理解が可能か
 言葉が理解できなければしゃべれません。「パパ」でパパの方を向くなど

3、心がけること
1、1対1のほうが言葉の発育が良い
 テレビでの言葉は一方的に来ます。テレビも有用ですが、顔を見て話しかける機会を多くして下さい。

2、保育園などの集団の中では言葉は出てきやすい
子供同士の集団の中では他人の気を引こうとしますし、まねをします。積極的に子供どうしで遊ばせましょう。

3、なるべく子供に話しかけて下さい
 子供と同じ目線で。なるべく「おはよう」「おやすみ」「暑いね」「お外に行こうね」「痛かったね」「ワンワンだ」「ブーブーだ」など子供に合ったことばでゆっくり話しかけて下さい。

4、しゃべることを強制したり、何度も言い直させないで下さい。
 発達はゆっくりです。



2003年 4月27日 放送
年に一度は健康チェック


 入園、入学、新学期などで戸惑いもあったかと思いますが、そろそろ落ち着いてきた時期かと思います。子供の日は過ぎましたが、自分の子供を全般的にわたって見直してみてはいかがでしょうか。
 元気さ、食欲、運動能力、知的能力、やさしさ、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、小さなお子さんの場合はまず、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。または、終了していますか。
 BCG、ポリオは保健所などで行われ、三種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳)、麻疹、風疹、日本脳炎などのワクチンが開業の小児科医院などで行われています。しかし、予防接種の無料券は7歳半までしか使えません。接種がまだの人は早く済ませて下さい。「急いで数種類のワクチンを接種したい」や「1回目はかなり以前にしているが、2回目は忘れていた」などでも対応が可能です。小児科専門医にご相談ください。有料ですが、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。お父さんやお母さんも今まで感染してなければ自分自身へのワクチン接種を考慮して下さい。

2)健康診断を受けていますか。身長や体重の伸びは順調ですか。
 都合で健診を受けられなかった場合や言葉、行動、運動などの発達で気になることがあれば小児科専門医にご相談下さい。健診での身長や体重の数値を見て下さい。ただ、この数値だけではよくわからないと思います。母子手帳の後ろのほうに男女の年齢別に身長や体重を書き込めるグラフがあります。身長や体重をその図に印をつけて下さい。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあり、伸び率はどうかなどがわかります。
 大きい年齢の子は幼稚園や学校などでの記録があります。小児科に行けば子供の平均身長、体重曲線のグラフがあります。それに記載して平均からのずれの程度や伸び率の良し悪しをチェックして下さい。
 身長がかなり低い場合はホルモンの分泌が少ないなどの病気のこともあります。小児 科専門医を受診して下さい。治療で身長は良く伸びます。2歳頃までの肥満体は問題ないのですが、それ以降では問題になることもあります。小学校以降でかなり太っている場合は脂肪肝など肝機能や糖尿病のチェックが必要です。体に異常が生じるほどの肥満は困ります。



2003年 3月23日 放送
低身長の基礎3


 低身長は学校などの集団生活の中や多感な思春期では精神的な問題を引き起こすことがあり、精神的なサポートが必要な場合があります。また、親や保護者の方が同級生の身長と比較することも子供にストレスを与えます。
 親、子が共に身長というものを理解し、どういった時に、どの程度で小児科を受診すべきか、治療は必要か、どのような治療法があるのかを理解することが大切です。
 今回は、身長についての一般的な考え方です。

1、身長はいつまで伸びるか?
 一般的には男子は17歳、女子は15歳頃までです。しかし、思春期が早く来た子は早く止まり、遅い子では遅くまで伸びます。

2、身長の男女差はなぜできるのか?
 思春期の出現が女児では9歳半、男児では11歳頃で、1歳半ほどの差があります。つまり、男児のほうが約一年半は身長の伸びる期間が長いということです。また、思春期の伸びも男児のほうが良好です。

3、身長の増加は年齢や季節によって異なる?
 身長増加率は年齢によって差がありますし、1年間でも伸びの良い季節と伸びの悪い季節があります。また、その時の全身状態や精神状態によっても変わります。

4、牛乳をたくさん飲めば身長が伸びる?
 牛乳中のカルシュームは骨を硬くしますが、身長の伸びにはそれ程影響しません。骨を造るのはたんぱく質です。たんぱく質を十分摂る必要がありますが、今の子どもの栄養は十分足りています。野菜などを含めたバランスの良い食事を楽しく食べることが良い結果を生みます。

5、運動は身長を伸ばす?最も有効な運動はあるのか?
 発育時期の子どもの手や足の骨の両端には成長層といわれる骨が伸びる所があります。適度な運動が成長層を刺激しますので成長層が活発化され、身長増加を促します。どのスポーツも楽しく、適度にすることで身長に良い影響を与えます。ただ、過激な運動で成長層に負担をかけ過ぎると逆効果です。運動に打ち込むことも青春です。運動の程度は各自判断して下さい。

6、低身長の主な原因は?
 @成長ホルモンや甲状腺ホルモンが不足(治療が必要)、A骨の病気(診断後に治療)、B思春期が早く来すぎた(小さい頃は大柄ですが、早く止まるため最終身長は小さくなります。早い思春期は治療が必要)、C愛情遮断(今まで以上に愛情を注いであげて下さい)、病気ではないです(精神的なサポートは必要です)がD家族性、E思春期が遅くまだ来ていない、F低出生体重児などがあります。



2003年 2月23日 放送
こどもの誤飲事故


 誤飲事故は、ハイハイする生後8か月頃から多くなり、2歳頃まで続きます。畳に直に物を置く習慣が大きな原因です。生後5か月頃から赤ちゃんは色々な物を拾いますし、何でも口に持っていきます。口に入るような小さな物や口に持っていっては困るものを子供の手の届くところに置かないように心がけて下さい。

1、小児科専門医を受診する前の家庭での処置の基本
 @口の中に残っている物を指でかき出す。A食道内で留まるのは困りますが、胃の中に入ってしまえば、2日以内に便に出ます。B食べた物を吐かして出させる。口の中に指を入れ、舌の後方を押せば吐きます。吐きにくいときは牛乳(異物の胃への刺激を緩和する)や水を飲ませて吐かせます。ただ、吐かせてはいけない物(C、D)がありますし、牛乳を飲ませてはいけない物(防虫剤などの脂溶性のもの)もあります。C揮発性の高い化粧品やガソリン、灯油などは吐かせてはいけません。数日後に肺炎をおこす可能性があります。すぐ受診です。D酸やアルカリ性の強い漂白剤やトイレ洗浄剤なども吐かせると口腔内や食道の粘膜をよけいに傷つけます。牛乳を飲ませて希釈してから受診して下さい。E食べた物やその残り、名前や成分(箱やラベル)、食べた量がわかる物を持って受診して下さい。時間がたてば体内に吸収される量が多くなります。受診はなるべく早くお願いします。場合によっては胃洗浄(胃の中を洗って飲み込んだものを出す)が必要です。
 食べた内容をインターネットで調べるか日本中毒情報センター(中毒110番)や病院で聞いて下さい。

2、具体例
1)タバコ
 小児はタバコ1本が致死量です。少量以外は受診です。タバコが浸かっていた水(ニコチンが溶け出す)を飲むと15分以内に急激な症状が出ます。ジュースの空き缶などを灰皿代わりに使用しないで下さい。

2)防虫剤
 ほとんどが危険性の少ないパラジクロルベンゼンです。このかけらを食べた程度では大丈夫です。牛乳を飲ませると、防虫剤は脂溶性のため余計に吸収が早くなりますのでやめて下さい。

3)乾燥剤
@シリカゲル
 一般的な乾燥剤です。吸収されませんので大丈夫です。
A生石灰(せんべいや海苔の乾燥剤)
 水と反応して火傷をします。嘔吐は禁止です。牛乳を飲ませて受診です。

4)芳香剤、化粧水、ヘアートニック
 ほとんどがアルコールを含みますが、多量でないと大丈夫です。

5)蚊取りマット
 1、2枚程度では大丈夫です



2003年 1月26日 放送
発熱2


 インフルエンザの季節です。発熱は心配ですが、ほとんどはウイルス性の感染症(いわゆる風邪)です。心配しすぎないようにしましょう。インフルエンザや水痘(水ぼうそう)などでは発病早期に治療する薬はありますが、それ以外のウイルスに効く薬はほとんどありません。ウイルスと戦う体力が重要です。涼しい気持ちの良い環境つくりを心がけて下さい。水分補給が重要です。食べられるものから食べて下さい。

1、考え方
1)乳幼児では1年間に5〜6回の熱発があるのが一般的です。特に保育園や幼稚園に行き始めの1年間は頻繁に熱を出します。また、兄弟がいると発熱する機会も多くなります。
2)発熱をおこさせるウイルスはたくさんあります。これら一つ一つのウイルスに感染し、抵抗力を獲得することで、次第に感染するウイルスが減少し、熱発の頻度も少なくなります。
3)予防接種をして予防する。

2、発熱時の対応
1)熱が高くても機嫌が良い場合はあせらず、落ち着いて小児科専門医を受診しましょう。熱が低くても機嫌がかなり悪い、ぐったりしている、呼びかけに対する反応が悪い(意識低下)などの場合は救急で小児科専門医のある病院を受診して下さい。
2)発熱の原因はウイルスがほとんどで、この場合は抗生剤(マイシン)は効きません。ただ、乳児などではその後の細菌感染を予防する目的で使用する場合もあります。
3)リュウマチ熱、急性腎炎などをおこしやすい溶血性連鎖球菌(溶連菌)など特殊な菌の場合は一定期間の抗生剤服用が重要です。

3、熱性けいれん
 親や兄姉に熱性けいれんがあればおこしやすいといわれています。前もって対応を相談しておくことも考慮して下さい。

4、解熱剤の使用
 解熱剤は熱を下げて子供の機嫌を良くしますのでありがたい薬ですが、数時間熱を下げるだけで病気は治しません。解熱剤の使用は38.5℃以上で、熱のために機嫌が悪い時や寝てくれない時などに限定し、なるべく使用回数を減らしましょう。インフルエンザの時期はアセトアミノフェンが無難です。インフルエンザの時はボルタレンやポンタールなどの解熱剤や一部の総合感冒薬剤に含まれている解熱剤は脳炎・脳症などとの関係が言われていますので使用しないでください。以前にもらった解熱剤の入った薬(アセトアミノフェン以外)などの使用は止めましょう。また、解熱剤の種類や量によっては強すぎて低体温や尿が出なくなることがありますので注意して下さい。






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