2011年 12月25日 放送
乾燥肌


 冬になると皮膚は乾燥します。皮膚は乾燥すると痒くなり、特に身体が温もったり、衣類などの刺激で痒みが増します。布団に入って温もると痒くなるため不眠の原因にもなります。

 汗やあかは痒みの原因となります。お風呂ではベビー石鹸や木綿のタオルなどでやさしく洗って汗やあかを落とし、石鹸をよく洗い流すようにして下さい。タオルでゴシゴシ洗うと皮膚を傷つけ、皮膚の機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増します。

 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。抱っこする人の服なども含め毛糸などの刺激が赤ちゃんや子供の肌に直接触れないようにして下さい。

 アレルギー体質を持っている子供にできる湿疹をアトピー性皮膚炎といいます。遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光、食事、ほこりやダニなど多くの因子が悪化に関係しています。アレルギー反応の原因を調べるためにRAST法という血液検査などが行われますが、アトピー性皮膚炎のような遅延型といわれるアレルギー反応主体の皮膚炎ではRAST法で原因を探すことは不適切です。

 極端な食物制限は発育異常をおこします。食物制限自体がストレスとなり、皮膚炎を悪化させる可能性もあります。食物制限を行う場合は食べれば皮膚の症状が悪化する食物のみに限定して下さい。

 スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠は困ります。入浴後に塗ると乾燥した肌に水分を保たせる保湿作用のある軟膏があります。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと皮膚のバリア機能が低下し、保湿機能が低下し、刺激物質が皮膚内に侵入しやすくなりますので、症状が悪化します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬も併用して下さい。あせらず気長に治療することが大切です。



2011年 11月27日 放送
RSウイルスと細気管支炎


 RSウイルスは10月から5月頃まで流行する冬の風邪のウイルスの1つで、何度でも感染、発症します。しかし、再感染を繰り返す毎に免疫力も徐々に獲得し、症状も軽くなっていきます。一般的に2歳頃までには数回の感染を受けますので、この頃には十分な抵抗力も獲得し、感染しても鼻風邪程度になります。

 成人や年長児におけるRSウイルス感染症は軽いかぜの症状のみですみますが、2歳以下の乳幼児ではしばしば下気道炎に進展して細気管支炎となります。

 細気管支炎では気管支の末端部分(細気管支)が狭くなり、肺に出入りする空気の流れが妨げられ、呼吸困難を引き起こし、特に息を吐くことが困難な状況になります。乳児の場合は、細気管支は非常に細く、炎症が起きると痰がすぐにたまって空気が通り難くなり重症になる場合があります。咳、鼻水などの風邪の症状が2〜3日続いた後、息を吐くときにゼーゼーという音がしたり、呼吸回数が多くなり、呼吸時に胸が凹みます。乳幼児でもほとんどは軽症で治りますが、6か月以下の乳児では入院加療を要する率が高くなります。

 RSウイルスに対する治療薬はありません。症状に対する治療法のみです。肺炎などを合併しなければ、10日ほどで自然に治ります。重症化しやすい乳児に対してRSウイルスの抵抗力を投与して感染を予防する方法がありますが、現時点では使用対象者は非常に限定されています。

 呼吸困難のために元気がなくなり、母乳、ミルクを飲まなくなります。脱水気味になると痰が絡み、咳込みなどがさらにひどくなり、水分を取れず、どんどん悪くなります。こまめに水分摂取を心がけて下さい。部屋もできるだけ湿度を上げて下さい。加湿器があれば使い、なければ洗濯物を室内に干したりして下さい。咳き込みには抱っこしたり、上体を起こして背中をさすってあげて下さい。



2011年 10月24日 放送
嘔吐下痢症


 冬に流行する風邪の1つで、頻回の嘔吐と下痢を伴います。潜伏期間は1〜3日で、微熱が1日程度認められることもあります。嘔吐は半日から丸1日で治まります。下痢は白っぽいクリーム色の水様便になることが多く、4〜5日間続きます。

 ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスが主な原因です。それぞれタイプが多数あり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。

 患者の吐物や下痢便中にウイルスがありますので、これらを触って、口の中にウイルスが入ることによる感染が主です。吐物や便を触った後は手洗いを十分する必要があります。消毒用アルコールは効果が不十分で、ミルトンやキッチンハイターなどの塩素系の消毒薬や漂白剤および85℃で1分間以上煮沸がこのウイルスに有効とされています。家庭ではきれいに拭き取ってから水道水(流水)での手洗いでも十分と思います。

 嘔吐や嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(コップ1/4程度の嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。その後徐々に1回量を増やしていきます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。

 下痢が続きますので、牛乳や乳糖を多く含む食物は止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。吐気がなければ離乳食や消化の良い食事は欲しがるだけ与えて下さい。食事は腸の回復を助けます。

 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。ひどい嘔吐には嘔吐止めを使用します。

 機嫌が悪くなったり、ぐったりして点滴が必要となることもあります。特に乳児では脱水症を伴いやすいので要注意です。



2011年 9月25日 放送
発熱6


 発熱は心配ですが、風邪の高熱のみでは脳に障害を残すことはありません。発熱は細菌やウイルスに対する生体の防御反応の1つで、病気に負けて熱が出るわけではありません。体温が39℃ということは脳の体温中枢という体温をコントロールする所が自分の適した体温が39℃と判断しているということです。体温が急に上昇する際の寒気を強く訴えるに時は毛布などで包みますが、それ以外は薄着で、涼しい気持ちの良い環境つくりを心がけて下さい。発熱時は水分補給が重要です。ゼリーやアイスクリームやお菓子など食べられるものから食べさせてください。食べ物も水分です。何でも食べてくれればありがたいと考え、数日間は栄養バランスは無視して下さい。

 幼児では1年間に5〜6回の発熱があるのが一般的です。特に保育園や幼稚園に行き始めの1年間は頻繁に熱を出します。たくさんのウイルスに感染し、抵抗力をたくさん獲得すると、感染するウイルスも減少し、発熱の頻度も少なくなります。それまで我慢です。

 水枕や冷却ジェルシートは機嫌が良くなれば続けますが、医学的な意味はありませんので子供が嫌がればやめて下さい。熱があっても機嫌がよければ短時間の汗を流す入浴であれば制限する必要はありません。熱が高くても機嫌が良い場合はあせる必要はありません。機嫌がかなり悪い、ぐったりしている、呼びかけに対する反応が悪い(意識低下)などの場合は救急で小児科専門医のある病院を受診して下さい。

 解熱剤は熱を下げて子供の機嫌を良くしますのでありがたい薬ですが、病気は治しません。解熱剤の使用は熱のために機嫌が悪い時や寝てくれないなどの時に限定し、アセトアミノフェンを使用します。インフルエンザの時は他の解熱剤は脳症などとの関係が指摘されていますので使用しないで下さい。風邪薬といわれる総合感冒薬にも解熱剤は入っていますので内容をチェックして下さい。



2011年 8月28日 放送
包茎(ほうけい)


 包茎はちんちんの皮(包皮)が亀頭を覆っている状態をいいますが、包皮口(ちんちんの尿の出口の皮の部分)が狭くて包皮がむけなくて亀頭が露出できない真性包茎と亀頭が容易に露出できる仮性包茎に分けます。

 出生時の男児は全員が真性包茎ですが、成長するに従い仮性包茎となり成人では皮もむけます。逆に、赤ちゃんのちんちんの皮がむけているのは病気を疑います。真性包茎は中学生でも10%ほどといわれております。思春期が過ぎるまで包皮が亀頭を覆っているのが普通です。亀頭表面と包皮内側の間に恥垢(ちこう)が少しずつ溜まり剥がれてきます。又、時々起こる勃起現象によって包皮口も少しずつ伸ばされていきます。第2次性徴での男性ホルモンでちんちんが急速に発達し、包皮も柔らかく伸びやすくなります。

 包皮と亀頭の間には分泌物や剥離した細胞が溜まった黄白色の軟らかい恥垢があります。包皮の下に黄白色の丸いコロコロした塊のように見える場合もあります。こういった恥垢は病的なものではなく、成長に従い包茎が治ってくると自然に消失します。

 子供でも恥垢のあるちんちんは不潔で、皮をむいてよく洗った方が良いという人がいます。恥垢は無菌であり、感染の原因とはなりません。不潔でもありません。子供は汚い手でちんちんを触るため、細菌が付いて亀頭が腫れる亀頭炎をよくおこします。数日の抗生剤の服用で治ります。包茎はちんちんの発育を妨げませんし、恥垢が陰茎癌の原因になるという根拠もありません。皮をむいてゴシゴシ洗う必要はありません。包皮は小児期では弱い亀頭を外的刺激や外傷から守っていますし、性的刺激を感知する機能がありますので無駄な部分ではありません。

 包茎口が狭すぎて排尿するのが困難な場合は治療が必要ですが、それ以外の包茎の治療は不要です。自然に仮性包茎となり、思春期を過ぎてから包茎も消失します。

 治療には1〜2か月かけて軟膏を包皮口から塗りこんでいく保存療法で十分効果がありますので、手術を必要とすることは稀です。



2011年 7月24日 放送
外遊び、夏太り2


 夏に外で遊ぶと熱中症、強い紫外線による日焼けなどの心配があります。しかし、外遊びは体力や気力、自律神経の発育や精神的な発育に欠かせませんし、小児のメタボリック症候群の予防に重要な役割を担っています。気候を感じ、怪我をして痛みを知る、友達と一緒に遊ぶことで協調性が養われ、ストレス発散の手段としても非常に有用です。小さな動物や植物に触れ、いつくしむ心が形成されます。日ごろからの外遊びや運動の習慣は熱中症の予防にも役立ちます。危険防止を心がけて楽しい外遊びをさせてあげて下さい。

 紫外線は、肌表面の細胞を傷つけ、日焼けを作り、皮膚で骨の発育に重要なビタミンDを合成します。紫外線で遺伝子が傷害されても、自動的に修復されます。また、日本人は黄色人種ですので、皮膚のメラニン色素を増やして紫外線の影響を受けにくくします。外で遊ぶときに帽子や衣服、日焼けしやすい子ではサンスクリーン剤で紫外線防御する必要はありますが、極端な紫外線対策は不要と思います。

 運動不足と間食の摂りすぎによる小児期の肥満は成人の肥満に移行します。空調の効いた快適な部屋でジュースやお菓子、ゲームやテレビ三昧といった夏休みを過ごす子供が多くなり、「夏やせ」ではなく「夏太り」という状況に変わってきています。屋外で遊ぶことはゲームやメディア漬けが回避され、本来の子どもの健全な状態になり、肥満も解消されます。

 ただ、肥満による悪い影響が出る程度は個人によって異なります。太っていることが大きな問題ではなく、脂肪によって生じる症状、障害が問題です。肝臓に脂肪が蓄積すると脂肪肝になります。ただ、太っている人が必ずしも脂肪肝ではありません。また、病気で肥満になる場合もあります。本人や親が悪いのではなく、どうしようもない場合もあることも考慮して下さい。



2011年 6月26日 放送
暑熱障害(熱中症)


 暑熱環境や運動などで生体の適応範囲をこえる高温環境下で水分や電解質の代謝がうまくいかないためにおこります。

 初夏に多く発症しますが、夏以外でも急に暑くなったときや、体が暑熱環境や体の発熱に馴れていない状況で生じます。@気温が高いときや湿度の高いときA前日に比べ急に気温が上昇したB無風状態C砂やアスファルトなどの日光の反射が多い所などが起こりやすい状況です。地面に近い所は気温が高くなりますので、大人が暑い時は、乳幼児は大人以上の暑さを感じています。特にベビーカーの中は風通しも悪く注意が必要です。

 発汗のため電解質が喪失すると、筋肉の興奮性が亢進して下腿のふくらはぎのこむら返りがおこります。電解質の含まない水分の補給を長期間続けた場合にみられやすく、たくさんの水分摂取の場合は一部はイオン飲料水などにして、電解質の補給も心がけて下さい。

 大量の発汗により、脱水や電解質の喪失が生じ、水分の補給が追いつかない場合に脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。涼しい所で休ませ、身体の冷却や水分補給をします。

 さらに進行し、強い脱水に加え体温調節機能が破綻した状態が熱射病です。体温上昇が発汗量を超えているため体温が異常に上昇し、熱自体や熱による循環不全による全身臓器の障害が生じます。極度の脱力状態となり、強い疲労感、虚脱感、頭痛、嘔吐などの症状が生じますし、血圧の低下、皮膚の蒼白などのショック症状にもなります。重症になると意識障害なども生じます。強い疲労感や嘔吐、意識障害などの症状が出ている場合は、点滴や入院が必要です。

 睡眠不足、運動不足、風邪などの体調不良は暑熱障害を起こしやすくなります。服装は通気性の良い、放熱を促進する服を使用し、外では帽子をかぶって太陽光をさえぎる服を選択して下さい。水分補給はこまめに行なって下さい。子供の顔が赤く、汗をかなりかいている時は涼しい環境下で休ませてあげて下さい。暑さに慣れるため、日頃から散歩や外での遊び、運動を奨励して下さい。



2011年 5月22日 放送
夏の食中毒


 腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などの細菌が原因で、腹痛、嘔気・嘔吐、下痢などの症状が出ます。菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。一般的には、菌が腸管内で増殖して毒素などを出し、発症しますので増殖(8時間から数日)してから発症しますが、ブドウ球菌などは食物の中で増殖して毒素を出し、その増えた毒素を食べての発症ですので食後数時間で発症します。

1、原因
1)腸炎ビブリオ
 夏の魚介類のエラや内臓に存在します。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。魚を調理したまな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 鶏肉を介する感染が主です。汚染されれば冷蔵庫に保存しても感染は防げません。便に血液が混入します。

3)サルモネラ
 卵、鶏肉、ペット類からの感染が主です。粘血を伴った緑色の水様便ですが、乳幼児では重症化します。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157が有名ですが、最近は焼肉店の生肉(ユッケ)のO―111が有名になりました。牛肉からの感染が主です。熱に弱く(75℃1分間で死滅)十分な加熱が最も有効です。血便になり重症化もします。乳幼児には生肉を食べさせないで下さい。

5)黄色ブドウ球菌
 調理人の手の化膿部から汚染します。おにぎり、お弁当などでの感染が主です。食物の中で菌が増殖し、毒素が蓄積され発症しますので、食後1時間でも発症します。

2、対策
 食べた細菌数や毒素の量が少なければ治療なしでも自然に治ります。菌や毒素を少なくすることが重要で、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うなどを心がけて下さい。
 下痢を止める薬は悪い菌の排出も止め、重症化させる可能性があり、使用しません。



2011年 4月24日 放送
子どもの健康チェック


 入学(園)、新学期での変化にも慣れた頃と思います。自分の子供の全般をこの機会に考えてみませんか。元気さ、食欲、運動能力、知的能力、やさしさ、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 感染を予防できますし、かかっても軽症で済みます。麻疹風疹混合ワクチンの接種は1歳と幼稚園年長児の2回、平成20年から5年間は中学1年生と高校3年生にも接種する事になっています。この1年間は乳幼児の髄膜炎を予防する可能性のあるヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンが生後2か月から5歳未満、子宮頚がんワクチンが中学1年から高校1年生相当を対象に無料かたは低料金で本年度は接種出来るようになっています。有料ですが、水ぼうそう、おたふくかぜなどのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。

2)健診での身長や体重の伸びは順調ですか。
 健診での身長や体重の数値を母子手帳の後ろのほうにある男女の年齢別の身長や体重を書き込めるグラフに印をつけて下さい。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあり、伸び率はどうかなどがわかります。
 身長がかなり低い場合はホルモンの分泌が少ないなどの病気のこともあります。治療で身長が良く伸びる場合がありますので、小児科専門医を受診して下さい。2歳頃までの肥満体は問題ないのですが、小学校以降でかなり太っている場合は脂肪肝など肝機能や糖尿病のチェックが必要です。肥満自体が問題ではないのですが、身体に異常が生じるほどの肥満は困ります。
 女性はやせ体型が美しいとする考え方が思春期前の女性を摂食障害に追い込んでいます。やせ体型にも程度があり、個人差があること、ダイエットには低身長、子宮や卵巣の発育不全、将来の不妊や骨折のしやすい身体になる可能性があります。特に十代での過度のダイエットは危険です。



2011年 3月27日 放送
低身長12


 大人になると身長が低くても問題となることは少ないのですが、学校のような集団生活の場や多感な思春期ではいじめ、コンプレックス、精神的な問題などを引き起こすことがあります。低身長になる病気があり、その病気を治療することで身長が伸びる場合もあります。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。中学生や高校生になり、骨が成熟して身長が伸びなくなってからでは遅すぎます。治療が必要な子では、早期からの治療が身長に良い結果を生みます。

 骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲むだけでは身長は伸びません。牛乳も含むたんぱく質などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、十分な睡眠も必要ですし、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともあり、負担がかからないような工夫をして、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

 同じ生年月日の子100人を身長順に並べて前から2人を低身長と診断します。病気が原因での低身長は治療が可能で、治療により全身状態も正常化し、身体の働きも活発になり、元気になります。

 成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症などの子供の成長に欠かせないホルモンが不足する病気があります。これらの不足しているホルモンを補充することで身長の伸びが良くなり、元気になります。骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気での低身長も治療可能な場合があります。愛情遮断症候群などで、子供が愛情に飢えて強いストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。ただ、病気ではなく、その子の体質のための低身長もあります。心配な場合は小児科専門医を受診して下さい。



2011年 2月27日 放送
乳幼児の水分補給


 水分補給と言うとお茶やイオン飲料水での水分補給を考えますが、ご飯やおかず、果物、お菓子の中にもかなりの量の水が含まれておりますし、母乳やミルクも80%以上は水分です。母乳やミルク、食事を十分食べていれば、水分の摂取量は十分であり、通常は特別な水分補給まで考える必要はありません。

1、水分補給を考慮すべき状態
 子供は発熱や嘔吐、下痢を伴う病気によくかかります。熱や嘔吐、下痢では体外に失われる水分が多くなり、また食欲もなくなり体内に入る水分が少なくなりますので脱水状態になりやすくなります。こういった場合は食事以外の水分補給としてお茶、お白湯、その子の年齢にあったイオン飲料水を考慮する必要があります。

2、脱水症の症状
 脱水になると口唇や口腔内が乾燥し、尿量が減少してきます。進行すると元気がなくなり、意識がはっきりしなくなり、痙攣なども生じます。元気で、口唇や口腔内がみずみずしく、尿は多少減少する程度であれば問題はありません。口唇や口腔内が乾いてきたり、尿が出にくくなりだしたら早く小児科専門医を受診してください。

3、水分補給の方法
 嘔吐が強い場合、食事はいったん中止し、お茶やその年齢にあったイオン飲料水に限定し、水分が普通に飲めるようになってから食事を再開します。最初の水分は少量から開始します。脱水を心配して大量の水分を一度に飲ませようとするとよけいに嘔吐します。下痢の場合は牛乳やジュース、乳製品は止めるか少なくして、消化の良い普通の食事を食べて下さい。飲み物はお茶やイオン飲料水ですが、嘔吐や下痢が治ればイオン飲料水は止めてください。かなりの糖分が含まれていますので、飲料水の糖分で空腹感がなくなり、肝心の食事を食べてくれないという問題が生じますし、虫歯や肥満の原因になる可能性があります。嘔吐や下痢が無く、発熱で食欲が無い場合の水分補給は、何でも食べてくれれば水分補給されると考えて下さい。
 ただ、嘔吐や下痢のひどい場合は点滴での水分補給が必要です。



2011年 1月23日 放送
インフルエンザ8


 インフルエンザが流行し始めました。現在は新型と香港型といわれる2つのA型が流行しています。今後はこれにB型のインフルエンザが加わる予定です。新型は感染しても軽い症状で治る子も多く、いつものインフルエンザと同様に考えていただいてよいと思います。

 インフルエンザは高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳など症状が強く、年少児では脳症が、高齢者では肺炎が問題となります。感染後1〜4日で急に発熱し、38〜40℃が4〜7日間続きます。うがい、マスク、体調管理などをお願いします。ワクチン接種で軽症化が期待できます。  

 毎年ウイルスが変化しますので、昨年に感染していてもまた感染します。2種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザにかかることもあります。新型はウイルスがあまり変化していない可能性がありますので、昨年に新型に感染した人は感染しないか、感染しても軽症ですむ可能性があります。

 脳症は乳幼児に生じやすく、意識の低下や長時間の痙攣が特徴で、脳に後遺症を残しやすい病気です。高熱だから脳症になるわけではありません。

 ボルタレンやポンタールなどの解熱剤を使用した場合に脳症が生じやすいとされています。安全性が高いのはアセトアミノフェン(カロナールなど)のみです。薬局や病院でもらう総合感冒薬などのほとんどに解熱剤が含まれています。注意して下さい。

 インフルエンザの治療薬は発熱出現後2日以内の開始が有効で、早期のほうが症状は軽く治ります。しかし、治療薬は使用しなくても治ります。タミフルは安全性にため1歳未満と異常行動出現の可能性のため10歳台での使用は原則控えるようになっています。ただ、発熱自体でも幻覚、幻聴、異常行動が出現する場合があります。少なくとも発症2日間は子どもの行動への注意が必要です。




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