2002年 12月22日 放送
子どもの下痢


 生活環境や栄養の改善の結果、重症の下痢は少なくなりましたが、冬に流行する嘔吐下痢症などはまだ要注意です。

1、原因
1)ウイルス
@ロタウイルスやノロウイルスなどは冬に流行し、水様の便と嘔吐を伴います。ロタウイルスではクリーム色の下痢便が特徴です。

A風邪ウイルスに伴う軽症の下痢

2)細菌
 病原性大腸菌(O−157など:主に牛肉)、サルモネラ(卵、亀などのペット類)、キャンピロバクタ(鶏など)などがあります。便に血液や膿が混入、悪臭のある下痢便が特徴です。

3)だらだら続く下痢
 ウイルス性下痢の後に腸の粘膜が傷つき、乳糖などの吸収が悪くなるため、乳糖や濃い濃度の糖分が入った飲み物(牛乳やジュースなど)や食事が吸収しきれずに下痢がだらだら続きます。

2、食事
 牛乳や乳糖を含むお菓子などは止め、糖分濃度の濃いジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を欲しがるだけ飲ませて下さい。離乳食や煮物の和食など消化の良い食事は欲しがるだけ与えて下さい。食事は腸の回復を助けます。
 嘔気や嘔吐がある場合には食事は止め、ごく少量(嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えてください。イオン飲料水が十分飲めるようになれば消化の良い食事を開始して下さい。

注1、乳糖や糖分の高い濃度の飲み物や食べ物:急性下痢の後や下痢が続く場合では腸の粘膜が傷害されていますので、乳糖(牛乳などに含まれる糖分)などの吸収が悪くなります。そのため、これらを多く含んだ飲料やお菓子、食事を与えると乳糖が吸収されずに下痢になります。

注2、イオン飲料水:嘔吐や下痢では胃液や腸液も出ますので、水分だけでなく塩分(ナトリウムやカリウムなど)も体から失われます。その補充のため、塩分や糖分が含まれているイオン飲料水は水分補給に適しています。

3、治療
 軽症の下痢では牛乳やジュースを止めるだけで治ります。
 下痢は体に害のあるものを早く出す身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に便を止めないのが一般的です。消化剤や乳酸菌で腸の働きやバランスを良くして回復を待ちます。
 嘔吐や下痢がひどく、口の中が渇いたりぐったりしたら点滴による水分補給が必要です。小児科専門医を受診して下さい。

4、お尻のケアや手洗い
 頻回の下痢ではすぐにオムツかぶれになります。
 家族にもうつります。便や吐物を触った手はよく洗って下さい。



2002年 11月24日 放送
インフルエンザ


 インフルエンザは毎年12月から3月まで日本国内に蔓延し、高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳など多彩な症状を示し、年少児では脳炎・脳症が、高齢者では肺炎が問題となります。

1、インフルエンザウイルス
 A型、B型、C型の3つのタイプに分類され、流行して病気を引きおこすのはA型とB型ウイルスです。このウイルスは大小様々な変化を毎年おこし、毎年感染します。

2、症状
 ウイルスに感染後1〜3日で症状が出現し、38〜40℃が2〜7日間続きます。一旦、熱が下がったように見えた後再度上がることが時々あります。「かぜ」といわれる他のウイルスと比べ、寒気、関節痛、筋肉痛、咳などの症状が強く出ます。
 12月から3月に毎年流行し、他人への伝播力は強力です。初期はA型が、遅くなるにつれB型が主流となるのが一般的です。数種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザを発症することもあります。

3、小児での問題
1)熱性けいれん
 40℃ほどの熱が数日間出るため熱性けいれんの生じやすい子どもにけいれんが生じやすくなります。

2)解熱剤の使用
 ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)という解熱剤を使用した場合に脳炎・脳症が生じやすいとされています。解熱剤は一時的に(数時間)熱を下げる作用はありますが、病気そのものを治す力はありません。熱のため機嫌が悪く寝てくれないなど困る時に限定してアセトアミノフェンなどの弱い薬を少量使用するなどにとどめて下さい。

3)脳炎・脳症
 意識の低下や長時間の痙攣が特徴です。脳に後遺症を残しやすい病気です。3歳までの乳幼児に生じやすく、発熱と同じ日や翌日になります。高熱だから脳炎・脳症になるわけではありません。

4)ワクチン
 このウイルスは毎年数種類が流行し、かつ変化をしますので毎年ワクチンを接種する必要があります。効果は70%程度といわれています。
 接種回数は乳幼児では2回接種をお勧めします。小学生以上で毎年インフルエンザワクチンを接種している人やこの数年間に何回もインフルエンザにかかっている人は1回でも有効と考えます。

5)薬
 インフルエンザの治療薬は3種類です。ただ、これらの薬はインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬ですので、体内ですでに増えてしまえば効果がありません。発熱出現後40時間以内(2日以内)の使用でなければ効かないとされています。なるべく早期に服用してウイルスを増やさないようにするのが肝心です。



2002年 10月27日 放送
子どもの腹痛


 子供は「おなかが痛い」「ポンポンが痛い」とよく訴えます。しゃべれない子は泣くことで腹痛を訴えます。
 外科的な処置を必要とするのは1%以下です。「トイレへ行きたい」や「おなかがきもち悪い」の代わりがほとんどですが、「遊んでほしい」「しんどい」「行きたくない」「やりたくない」などのこともあります。

1、腹痛
 元気な場合は@おなかを手のひらでさすってあげると痛みが消失することがよくあります。Aトイレで排便をさせます。排便で腹痛は消失することが多く、下痢など便の状況も判断できます。顔をしかめ、体を前屈する姿勢をとる場合は腹痛が強烈ですので早急に小児科専門医を受診して下さい。

2、腹痛の原因
 便秘や下痢による腹部の痛み、不快感が主な原因です。便はチェックして下さい。排便でも治らない場合や便の性状が悪い場合は小児科専門医を受診して下さい。
 腹痛が朝に多かったり、月曜日に多かったり、痛む部位が変化したりする場合は心因性腹痛を疑います。

1)便秘
 硬い便を排便しようとするときに腹痛を訴えます。硬い便の排便時の腹痛が嫌で排便するのを嫌がり、便秘がひどくなることもあります。この場合には便を軟らかくする薬や浣腸などを使用し、排便には痛みが伴わないということを十分納得してもらう必要があります。

2)下痢
 便の性状が悪くなればなる程、排便する直前に腹痛を強く訴えます。

3)腸重積症
 3歳までの子に多く、風邪や下痢のときに腸が腸の中に入り込むことがあります。その結果、腸が閉塞され嘔吐が生じ、便に血液が混入します。痛みは周期的で、泣いたり泣き止んだりを繰り返すのが特徴です。自然に治ることもありますが、多くは緊急的な処置が必要です。

4)自家中毒症
 発熱や下痢、疲れなどがきっかけで腹痛や嘔吐をおこすことがあります。おこしやすい体質の子がいます。点滴が良く効きます。

5)起立性調節障害
 朝なかなか起きられず、顔色不良で腹痛や頭痛を訴えます。午前中に症状が集中します。立ちくらみや乗り物酔いもします。小学校高学年や中学校の思春期の子供に多く、登校拒否と間違われる子もいます。朝に薬を飲めばよくなります。

3、注意点
1)便の観察
 便秘、下痢、色、臭い、血液や粘液の付着などは医師にお知らせ下さい。

2)子供の訴えを無視しない
 いつもの「ポンポンが痛い」だと子供の訴えを無視しないで下さい。忙し場合は短時間でも結構です。子供は何かを訴えようとしています。



2002年 9月22日 放送
乳幼児の水分補給


 市販の離乳食や乳児用イオン飲料水などが色々増えて食事や水分補給の選択肢が増えました。

1、体の水分
 生後数か月までは体の70%、乳幼児では65%が水分です。通常はその水分の約5分の1が1日に失われるため、同量の水分補給が必要です。この水分補給はお茶やイオン飲料水の水に限りません。ご飯やおかず、果物、お菓子の中にも多量の水が含まれており、母乳やミルクも80%以上は水分です。普通に食べていれば特別な水分補給は不要です。

2、水分補給を考慮すべき状態
 体内に入る水分と尿、便、皮膚から失われる水分とのバランスです。発熱では皮膚からの不感蒸泄が多くなり、嘔吐や下痢では体外に失われる水分が多く、食欲もなくなります。食事以外の水分補給を考慮して下さい。

3、脱水症の症状
 脱水になると口唇や口腔内が乾燥し、尿量が減少してきます。進行すると元気がなくなり、意識がはっきりしなくなり、痙攣なども生じます。元気で、口唇や口腔内がみずみずしく、尿は多少減少する程度であれば問題はありません。

4、脱水症の原因
 発熱や嘔吐、下痢の症状が強い病気は全て原因となります。また、炎天下で長く遊んだり、汗をたくさんかいても脱水になります。

5、水分補給の方法
1)嘔吐や下痢のない場合
 何でも好むだけ年齢にあった飲料や食事を与えてください。食欲がなく一回量が少ない場合は頻回に与えてください。

2)下痢がある場合
 なるべく普通の食事を続けるようします。@母乳や育児用ミルクはそのまま与えます。A離乳食も続ける。たんぱく質や脂肪分は多少控える。離乳食は育児用ミルクよりも下痢時には消化吸収が良い場合があります。B牛乳は止める。下痢が続けば腸管での乳糖を分解する力が低下し、下痢を助長する可能性があります。Cジュースや果汁も止めるか少なくする。糖分濃度が高いため下痢を助長する可能性があります。Dお茶や乳幼児用イオン飲料水は積極的に与える。

3)嘔吐がある場合
 嘔吐が強い場合はお茶やその年齢にあったイオン飲料水に限定し、少量ずつ頻回に与えてください。飲めるようになってから食事を再開します。

4)注意点
 @嘔吐や下痢ではまず、小児科専門医を受診して原因を探す必要があります。A嘔吐や下痢は有害なもの、不要なものを体外に出す生体防御反応です。薬で無理に止めることは避けて下さい。余計に病気を重くすることもあります。B嘔吐も下痢もひどい場合は点滴での水分補給が必要です。



2002年 8月25日 放送
溶連菌


 A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)という細菌は、咽頭炎、扁桃炎、中耳炎、膣炎、猩紅熱などのほか劇症型溶連菌感染症、膿痂疹、丹毒、食中毒もおこします。小児ではリューマチ熱や腎炎を引き起こし、心臓や腎臓に障害を与えることが稀にありますので、溶連菌を確実に診断、治療することが重要です。小児科専門医の能力が発揮される病気です。

1、 溶連菌について
 咽頭炎の原因菌としては一般的ですが、心臓や腎臓などに障害を起こしうるという点で、小児では非常に重要な菌です。この菌は100以上の型があるため何度でも感染します。

2、 咽頭炎、扁桃炎
 健康な子供でも15〜30%の子どもが咽頭にこの菌を持っています。この菌の存在自体が悪いことではありませんが、時に咽頭に炎症を起こすと咽頭炎、扁桃炎となります。
 症状は3歳未満とそれ以上で差があり、3歳未満では咳や鼻水といった症状が主です。3歳を越える頃からは発熱と強い咽頭痛で発症します。咽頭の発赤は強く、点状の発赤や出血斑を伴い、扁桃にも白苔が出現するなど特徴があります。舌は白苺舌や赤苺舌といわれ、表面がイチゴみたいにざらざらとなります。全身の皮膚に細かい紅色の発疹が出ることがあります(しょう紅熱)。3歳以上では要注意の菌です。

3、 膿痂疹
 黄色ブドウ球菌による伝染性膿痂疹(とびひ)が有名ですが溶連菌による膿痂疹も稀に存在し、痂皮が厚いのが特徴的です。腎炎の続発が稀にあり、要注意です。

4、 急性糸球体腎炎
 咽頭炎や皮膚感染症後1〜3週に全身の浮腫、血尿、蛋白尿、高血圧が出現し、数か月の入院が必要です。

5、 リュウマチ熱
 稀な疾患ですが、心臓、関節、神経などがやられます。咽頭炎発症後1〜5週に生じます。再発があり、再発する毎に心臓障害が重くなりますので再発防止が重要で抗生剤を長期使用します。

6、 壊死性筋膜炎(ヒト食いバクテリア)
 非常に稀ですが、筋肉、脂肪、皮膚が破壊されることがあります。

7、治療
 早期の診断、治療が重要で、抗生物質を5日間は服用します。腎炎発症チェックなども必要ですので小児科専門医を受診しましょう。

8、予防
 咳や鼻水、皮膚炎では水疱から感染します。手洗いやうがいが予防となります。咽頭炎での兄弟の感染症は25%ほどです。兄弟に症状が出れば薬を服用します。

9、登園、登校について
 適切な抗生剤治療後24時間以内に伝染力はなくなるため、登園・登校は本人の健康状態により可能です。



2002年 7月28日 放送
食中毒


 水や食物はけっして無菌ではありませんが、ひとはこれらに対応できるようになっており、病原性があっても、食べた細菌数や毒素の量が少なければ、自然治癒します。

1、症状
 腹痛、嘔気・嘔吐、下痢が主です。菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。
 一般的には、経口摂取された菌が腸管内で増殖して毒素などを出すため発症する感染型食中毒ですが、ブドウ球菌などでは食物の中で増殖した菌が産生した毒素を食べて発症します。前者では発症までに数日が必要ですが、後者では数時間で発症します。

2、原因菌
 夏には主として腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、冬は生牡蠣などによる小型球形ウイルスが主な原因です。

1)腸炎ビブリオ
 夏の生の魚介類です。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。まな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 鶏肉を介する感染が主です。肉が一旦汚染されれば冷蔵庫に保存しても感染は防げません。下痢便は粘血便となることが多い。

3)サルモネラ
 卵、鶏肉、ペット類を介して感染することが多い。粘血を伴った緑色の水様便が多いですが、乳幼児では全身感染症となりやすいため、卵や肉は十分加熱をして下さい。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157で有名になった菌です。牛肉からの感染が主です。汚染された野菜なども感染源となりますが、熱に弱く(75℃1分間で死滅)十分な加熱が最も有効です。血便となることが多く、腎不全となることもあります。

5)黄色ブドウ球菌
 この菌は皮膚の化膿部に多く、調理人の手に化膿部があれば食物を汚染します。毒素を食べたための発症ですので、食後1〜6時間で発症します。

6)ボツリヌス菌
 健康な人ではこの菌を食べても発病しませんが、生後8か月までの乳児の腸管内では菌が増殖可能で、腸管内で神経毒を産生します。症状は便秘で、進行すると筋力低下などなどが生じます。主な原因としては蜂蜜で、乳児には蜂蜜を与えないことが原則です。

3、対策
 @菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行う。

 下痢を止める薬は悪い菌の排出も止めますので、使用しないのが原則です。脱水に注意してお茶やイオン飲料水を与えて下さい。激しい嘔吐や血便などでは早期治療が重要ですので小児科専門医を受診して下さい。



2002年 6月23日 放送
夜尿症(おねしょ)


 夜尿をしたからといって健康を害することはありません。小学生で数%ともいわれ、夜尿をしている子供は意外と多いのです。

1、夜間の排尿の自立過程
 膀胱容量の増大と睡眠リズムの安定による夜間尿量の減少という年齢に伴う発達により夜尿が徐々に少なくなります。

2、夜尿のタイプ
 一般的に@ぐっしょり型、Aちょっぴり型、B混合型に分けられています。
1)ぐっしょり型
 睡眠中の尿の量が多すぎるため夜尿となるタイプです。睡眠中は尿量を減少させる作用のあるホルモンがたくさん分泌され尿量が減ります。年齢につれ睡眠リズムが安定してくると夜間尿量が減少し治ります。

2)ちょっぴり型
 膀胱の尿をためられる量が少なくて夜中に十分な蓄尿ができず漏らしてしまうタイプです。年齢とともに排尿を抑制する能力が強くなり、膀胱の蓄積できる尿量が増大していきますので治ります。

3)混合型
 夜間の尿量も多く、膀胱の容量も少ないタイプです。時間がかかります。

2、発達の指標
 1回に出る尿量が多くなっていく(膀胱容量の増大)、夜尿回数が減少してくる(夜間尿量の減少)、夜尿する時刻が寝入りばなから明け方になっていくことで判断します。

3、季節変動
 夜尿は冬に悪化し夏に改善します。寒冷刺激が膀胱の容量を縮小し、尿量を増加します。

4、生活指導
 大きくまとめると@しからず、Aあせらず、B起こさずです。
1)しからず
 無意識に行っているので、しかられても本人はどうしようもないのです。
2)あせらず
 長期戦です。未熟な機能がゆっくり発達してくるのを待つ必要があります。
3)起こさず
 夜尿のおこりそうな時刻に起こして排尿させるという方法は、その時刻になると無意識に排尿するといった習慣がつく可能性があります。また、夜間の膀胱容量も大きくなりません。睡眠リズムを崩しますので、熟睡やホルモン分泌などにも影響します。

5、対策
 機能の発達は待つしかないのですが、夜間の尿量の減少や排尿抑制機能を高めることは可能です。
1)水分制限
 飲んだ水分は3、4時間で尿になります。入眠5、6時間前から水分制限です。
2)塩分制限
 塩分をたくさん摂ると尿量が増加し、のどが渇きますので水分摂取が増えます。

3)排尿抑制
 腎臓や尿管に異常がある場合を除いて、昼間に尿意があっても可能な限り我慢して膀胱の大きさを大きくします。

4)薬物療法
 上記の対応を行っても効果が得られない場合に薬を使用します。小児科専門医にご相談下さい。



2002年 5月26日 放送
予防接種


 誰も病気にかかりたくはありません。他人にうつしやすい病気もあります。保育園、幼稚園、学校を休まなければなりません。予防できる病気は予防し、かかった病気は発病後早期から治療を行うことが一般的と考えます。

1、予防接種の種類
 ウイルスや細菌に対するワクチンがあり、生ワクチン(病原性を弱めているが生きている)と不活化ワクチン(生きていない)などに分類されます。

2、予防接種の効果
 病気にかからない、または感染しても重症化を防ぐことが出来ます。予防は治療に優ります。個人の健康被害のみならず病気の流行を阻止し、医療費の抑制にも役立ちます。
1)自己防衛と他人への配慮
 病気の予防は自分にとって非常にプラスですし、他人にもうつしません。
 兄弟姉妹間での感染、親に感染し重症になる、母親の妊娠中に子供が風疹にかかり先天性風疹症候群について心配をしなければならないなどいろいろあります。かかっていない親は子と共に予防接種をしておくのも1つの考え方です。

3、効果の持続
 予防接種の効果は実際に病気にかかって獲得する抵抗力に比較すると弱く、効果の持続性も短くなります。ただ、病気が毎年のように流行しているわが国では効果は長期間十分続きます。

4、予防接種の回数と間隔
 一般に生ワクチンは効果が得られやすいので1回の接種、不活化ワクチンなどは効果が出にくいので数回の接種が必要です。1年後にも接種するのはワクチンの力を何年も持続させるためです。 生ワクチン接種後は4週間、それ以外のワクチンでは1週間後に他のワクチンが接種可能です。

5、スケジュール通りにしなければならない?
 海外へ急に転居するなどの場合、一度に数種類のワクチン接種が可能です。ワクチンの特徴を考えればスケジュールは多少変更できます。保育園や幼稚園へ入園するまでに出来るだけ接種するなども対応できます。小児科専門医にご相談下さい。

6、基礎疾患を持つ子供
 ワクチン自体にも副反応はありますが、実際に病気のかかれば、元々の病気の上にその病気がプラスされ、大変です。主治医と相談して出来るだけのワクチン接種をお勧めします。

7、ワクチン接種を見合わせる場合
 発熱や機嫌が悪い場合は接種を延期します。妊娠中の生ワクチン接種は避けてください。ワクチンの成分に強いアレルギーがある人は専門の小児科病院で相談して下さい。
 軽度の咳や鼻水などでは接種可能です。出来るだけ早い時期に接種して下さい。



2002年 4月28日 放送
低身長4  治療の実際


 今回は治療についてのお話です

1、治療が必要と考えられる子は?
 統計上同じ年齢の子を100人身長順に並べると、前から1人または2人が成長ホルモンの分泌が悪いなどの病気の可能性があります。特に日本人小児の身長曲線(小児科専門医にご相談下さい)の伸びから離れていく人(平均身長との差がだんだん大きくなる)にその可能性が強い。クラスや学年内で身長がかなり低い、ほかの子が伸びるのにあまり伸びないなど感じたら小児科専門医にご相談下さい。

2、診断方法
 全身状態、二次性徴の出現程度、それまでの身長・体重の記録(持参して下さい)、骨の成長程度、成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌能力などを調べます。

3、成長ホルモン
 成長ホルモンは脳にある下垂体から分泌され、少ないと低身長になり、多すぎると巨人症となります。成長ホルモンは1日のうちでも数回は高くなったり低くなったりするため、1回の検査では成長ホルモンが十分分泌されているかどうかはわかりません。低血糖やある種のアミノ酸や薬が成長ホルモンを分泌することがわかっていますので、これらを投与して成長ホルモンの分泌の程度を調べるホルモン分泌負荷テストを行います。

4、成長ホルモン療法
 低身長の子供のうち成長ホルモンの分泌が悪いと判定された場合に成長ホルモンを補充します。ホルモン補充で年間3〜4cmの身長の伸びが7〜8cmとなり、同級生の身長に近づきます。成長ホルモンは身長を伸ばす以外にも筋肉増強、体脂肪の減少、動脈硬化増強因子の減少などにも働きます。ホルモンの補充は皮下注射ですが痛みはほとんどありません。
 日本では今まで2万人以上の子が投与を受け、和歌山県でも現在は70人ほどの子が治療中です。

5、費用
 一定の基準を満たせば小児慢性特定疾患事業により無料で治療が受けられます。身長の伸びが同年代の子供に追いつくまで数年間の治療を必要とします。特に成長ホルモンは高額のため、こういった無料の制度を利用しないと継続することは困難です。

6、その他:身長が早く止まる思春期早発症
 成長ホルモンは正常ですが、思春期が早く来すぎるため、幼稚園や小学校低学年では身長は高く喜んでいると、身長が早く止まり、最終的に低身長となります。女児では7歳までに乳房腫大、9歳までに生理が出現した場合に疑い、男児では9歳までに睾丸が大きくなった場合に疑います。二次性徴を抑える薬の早期使用で低身長が予防できます。



2002年 3月24日 放送
低身長の基礎2


 低身長は学校などの集団生活の中や多感な思春期では精神的な問題を引き起こすことがあります。親や保護者の方が同級生の身長と比較して一喜一憂することが子供にストレスを与えます。精神的なサポートが必要な場合があります。
 親、子が共に身長というものを理解し、どういった時に、どの程度で小児科を受診すべきか、治療は必要か、どのような治療法があるのかを理解することが大切です。
今回は、身長についての一般的な考え方です。

1、身長はいつまで伸びるか?
 一般的には男子は17歳、女子は15歳頃までです。しかし、思春期の来るのが早い子では早く止まりますし、遅い子では遅くまで伸びます。

2、身長の男女差はなぜできるのか?
 思春期の出現が女児では9歳半、男児では11歳ごろと1歳半ほどの差があります。その期間の身長の伸びの差が8cmで、思春期出現時期の女児の平均身長は132cm、男児140cmです。その後は男女共5〜6年で身長は止まりますが、その伸びは女児26cm、男児31cmです。つまり、合計で13cmほどの差が出来ます。

3、身長の増加は年齢や季節によって異なる?
 身長増加率は年齢によって差がありますし、1年間でも伸びの良い時期と伸びの悪い時期があります。また、その時の全身状態や精神状態によっても変わります。

4、牛乳をたくさん飲めば身長が伸びる?
 牛乳中のカルシュームは骨を硬くしますが、身長の伸びにはそれ程影響しません。骨を造るのはたんぱく質です。たんぱく質を十分摂る必要がありますが、今の子どもの栄養は十分足りていると思います。野菜などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが良い結果を生むと思います。

5、運動は身長を伸ばす?最も有効な運動はあるのか?
 発育時期の子どもの手や足の骨の両端には成長層といわれる骨が伸びる所があります。適度な圧力が加えられると成長層が活発化し、骨が順調に伸びます。適度な運動が成長層を刺激し、身長増加を促します。どのスポーツも楽しく、適度にすることで身長に良い影響を与えます。ただ、過激な運動で成長層に負担をかけ過ぎると逆効果です。運動に打ち込むことも青春です。運動の程度は各自判断して下さい。

6、低身長の主な原因は?
 @成長ホルモンや甲状腺ホルモンが不足、A骨の病気、B思春期が早く来すぎた、C愛情遮断、病気ではないですがD家族性、E思春期が遅くまだ来ていない、F低出生体重児などがあります。



2002年 2月24日 放送
赤ちゃんの食事


 食事は親とのスキンシップなど人間関係の形成に重要です。

1、母乳
 母乳は@赤ちゃんにとって消化吸収や代謝に最適、A感染防御物質を豊富に含む、Bアレルギーを起こしにくい、C母子間の情緒関係が安定するなどの良い点があります。母乳育児が理想ですが、育児粉乳(赤ちゃん用のミルク)も母乳に近づける努力がなされており、母親の愛情があれば育児用粉乳でも十分です。

2、母乳不足?
 母乳は吸わせれば出が良くなるため、子どもが欲しがるたびに授乳させることが大切です。しかし、母親の生活もありますし、無理はしないで下さい。
 生後1か月からは@授乳間隔が短い、A授乳後すぐ泣く、B授乳時間が長い(30分以上)、C機嫌が悪いなどが要注意です。ただ、体重増加が良ければ問題ありません。

3、育児用ミルクとフォローアップミルク
 これらは母乳不足や母乳を与えられない時に使用するべきものであって、母乳が続けられれば最良です。育児用ミルクは母乳と同様に好きな時に欲しがるだけ与えるのが原則ですが、一般には2〜3時間の間隔で与えます。
 母乳や育児用ミルクは出生直後から与えることができますが、フォローアップミルクは9か月からです。フォローアップミルクは使用しなければならないわけではありません。内容の精密さからいえば母乳、育児用ミルク、フォローアップミルクの順になり、値段の安さからは逆です。

4、離乳食
 母乳やミルクから固形の一般普通食に移行途中が離乳食です。生後5〜6か月頃から口の中に入ってきた物を歯ぐきでつぶすことを自然に行うようになります。最初は1品をドロッとした状態にして1さじから開始し、2〜3さじまで進め、次の品を追加してゆきます。1歳3か月頃までに大部分の栄養が母乳やミルク以外の食事から摂れるようにゆっくり進めていって下さい。母乳はずっと続けてもかまいません。

5、ベビーフード
 手軽で、忙しい時や外出時には便利です。うまく使って下さい。離乳食作りのお手本にもなりますし、1品を少量追加するにも便利です。

6、肥満とやせ
 赤ちゃんは丸々と太っているのが一般的で元気です。3歳までの肥満は成人の肥満とは関係がないといわれています。母乳、ミルク、定期的な食事は欲しがるだけ食べさせて下さい。3歳を過ぎてからの肥満は少し考えて下さい。やせが強い赤ちゃんは生まれつきのやせ型で正常に発育している赤ちゃんもいますが、念のため小児科専門医に相談して下さい。



2002年 1月26日 放送
乾燥肌


 冬は肌が乾燥しがちで、布団に入って温もると痒くなる子供や老人が多くなります。少し痒いだけであればよいのですが、イライラや不眠は困ります。

1、皮膚について
 皮膚の表面には角層というバリアがあり、その上の皮脂の膜と共に水分の調節をしています。

2、皮膚の脂(皮脂)
 皮脂の量は性ホルモンに影響され@赤ちゃんはお母さんの性ホルモンの影響で多く、A生後6か月から思春期までは性ホルモンが少なく皮膚が乾燥しがちになります。B思春期では皮脂が多く、にきびも出ますがC女性では30歳頃、男性では40歳頃から皮脂の量が減少し、老人になるとさらに皮膚は乾燥します。

3、皮膚を乾燥させる因子
 エヤコンの効いた部屋、コタツ、電気毛布などの快適に暮らす道具が部屋の空気を乾燥し、皮膚を乾燥させます。程々にして下さい。

4、入浴
 汗やあかが痒みの原因となります。汗やあかを落とすお風呂は有用です。石鹸をやさしく使って、石鹸分をよく洗い流して下さい。
 タオルでゴシゴシ洗うのは皮膚を傷つけ、皮膚の持つバリア機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増しますので止めましょう。

5、衣服
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。ノリ付けは止め、麻や毛糸なども皮膚に直接触れないようにして下さい。赤ちゃんなどを抱っこする人も赤ちゃんの肌に直接刺激のあるものが触れないようにして下さい。

6、食事
 食物制限は明らかに食べればひどくなる食物のみに限定してください。食物制限自体がストレスとなり皮膚炎を悪化させます。

7、ホコリ、ダニ
 生活環境の整備には限界があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、じゅうたんなどを止めるなどで十分です。アトピー性皮膚炎はダニやホコリといった単純なアレルギー反応ではなく、遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光など多くの因子が関係しています。原因の1つのみにとらわれすぎるのは感心しません。

8、薬
 スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠などは困ります。入浴後に保湿作用のあるクリームや軟膏を塗布して下さい。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと症状が悪化し、皮膚のバリア機能も低下します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬を併用して下さい。自分の生活に合わせて、あせらず気長に治療することが大切です。




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