2004年 12月26日 放送
嘔吐下痢症2


 寒くなると流行する風邪の1つに嘔吐下痢症があります。嘔吐して、下痢もしますので機嫌が悪くなったり、ぐったりして点滴が必要となることもあります。特に乳児では脱水症を伴いやすいので要注意です。

1、原因
 ロタウイルスやノロウイルス、腸管アデノウイルスが主な原因です。ロタウイルスやノロウイルスは毎年冬季に流行し、冬の初期はノロウイルス、後半はロタウイルスによる嘔吐下痢が一般的です。腸管アデノウイルスは冬以外でも発生します。それぞれタイプが多数あり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。
 これらは患者の吐物や下痢便を触って感染しますので、触った後は手洗いを十分して下さい。大人でも感染します。

2、症状
 症状は病名が示すように頻回の嘔吐と下痢です。嘔吐は頻回ですが半日から丸1日で治まります。下痢は白っぽいクリーム色の水様便になることが多く、4〜5日間続きます。

3、食事
 嘔吐や嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(コップ1/4〜1/3程度の嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。その後徐々に1回量を増やしていきます。胃が膨れるほど飲むと嘔吐します。少量の水分が胃から徐々に吸収されるのを待ちます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。
 下痢が続きますので、牛乳や乳糖を多く含む食物は止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。下痢で腸の粘膜が傷害されると、乳糖(牛乳などに含まれる糖)などの吸収が悪くなり、乳糖や糖分の高い濃度の飲み物や食べ物は下痢の回復を悪くします。吐気がなければ離乳食や食事は消化が良くない食物以外は欲しがるだけ与えて下さい。食事は腸の回復を助けます。

4、治療
 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。ひどい嘔吐には嘔吐止めを使用します。
 症状がひどく、口の中が渇いてきたり、ぐったりするなど脱水が疑われる場合には点滴による水分補給が必要です。
 頻回の下痢ではオムツかぶれにすぐになります。お尻を出来るだけ頻回に洗って乾かして下さい。ひどい場合は洗った後で軟膏を使用して下さい。



2004年 11月28日 放送
子どもの発熱3


 子どもの発熱は急を要する病気のこともありますが、ほとんどはウイルス性の感染症(いわゆる風邪です。こういったウイルス性感染症に効く薬はほとんどありません。ウイルスと戦う体力が重要です。服の着せすぎは困ります。涼しい気持ちの良い環境つくりを心がけてください。水分補給が重要です。食べられるものから食べさせて下さい。発熱を心配するのは当然ですが、心配しすぎないようにして下さい。
 乳幼児では1年間に5〜6回の熱発があるのが一般的です。特に保育園や幼稚園に行き始めの1年間は頻繁に熱を出します。また、兄姉がいると発熱する機会も多くなります。しかし、これら一つ一つのウイルスに感染し、抵抗力を獲得することで、次第に感染するウイルスが減少し、発熱の頻度も少なくなります。それまで我慢です。

1、発熱時の対応
1)熱が高くても機嫌が良い場合はあせらず、落ち着いて小児科専門医を受診しましょう。熱が低くても機嫌がかなり悪い、ぐったりしている、呼びかけに対する反応が悪い(意識低下)などの場合は救急で小児科専門医のある病院を受診して下さい。

2)原因はウイルスによることがほとんどであり、この場合は抗生剤(マイシン)は効きません。ただ、ウイルス感染と断定することは困難ですし、その後の細菌感染を予防する目的で使用する場合もあります。

3)細菌、特に溶血性連鎖球菌(溶連菌)など特殊な細菌の場合は一定期間の抗生剤服用が必要です。

4)おでこを冷やしても体温は下りません。子どもが嫌がれば止めて下さい。短時間の入浴は機嫌がよければ可能です。

2、熱性けいれん
 発熱時におこるけいれんです。一般的には数分で止まりますし、後遺症はまず残しません。頻回におこるようであれば予防をします。親や兄姉に熱性けいれんがあればおこしやすいといわれています。

3、解熱剤の使用
 解熱剤は熱を下げて子供の機嫌を良くしますのでありがたい薬ですが、熱を数時間下げるだけであり、病気は治しません。数時間の効果が切れれば熱は元に戻ります。解熱剤の使用は熱のために機嫌が悪い時や寝てくれないなどの時に限定し、なるべく使用回数を減らしましょう。薬剤としてはアセトアミノフェンが無難です。インフルエンザの時はボルタレンやポンタールなどの解熱剤は脳炎・脳症などとの関係が言われていますので使用しないで下さい。薬局や病院でもらう総合感冒薬の中に含まれる解熱剤にも注意して下さい。



2004年 10月24日 放送
予防接種3


 今年もインフルエンザワクチンを接種する時期になりました。インフルエンザワクチンは毎年の接種が必要です。面倒ですし、痛いので誰も喜ばないのですが、インフルエンザにかかりたくなければ接種するしかありません。誰も病気にかかりたくはありません。他人にうつしやすい病気もあります。保育園、幼稚園、学校を休まなければなりません。予防できる病気は予防し、かかった病気は発病後早期から治療を行うことが重要です。

1、予防接種の種類
 ウイルスや細菌に対するワクチンがあり、生ワクチン(病原性を弱めているが生きている)と不活化ワクチン(生きていない)などに分類されます。

2、予防接種の効果
 病気にかからない、または感染しても重症化を防ぐことが出来ます。予防は治療に優ります。個人の健康被害のみならず病気の流行を阻止し、医療費の抑制にも役立ちます。
 兄弟姉妹間での感染、親に感染し重症になる、母親の妊娠中に子供が風疹にかかり、生まれてくる子の先天性風疹症候群について心配をしなければならないなどいろいろあります。かかっていない親は子と共に予防接種をしておくのも1つの考え方です。

3、効果の持続
 予防接種の効果は実際に病気にかかって獲得する抵抗力に比較すると弱く、効果の持続も短くなります。ただ、病気が毎年のように流行しているわが国では、効果は長期間十分続きます。

4、予防接種の回数と間隔
 一般に生ワクチンは1回の接種、不活化ワクチンなどは効果が出にくいので数回接種します。1年後にも接種するのは効果を長期間持続させるためです。
 生ワクチン接種後は4週間、それ以外は1週間後に他のワクチンが接種可能です。

5、スケジュール通りにしなければならない?
 海外へ急に転居するなどの場合、一度に数種類のワクチン接種が可能です。保育園や幼稚園へ入園するまでに出来るだけ接種するなども対応できます。小児科専門医にご相談下さい。

6、基礎疾患を持つ子供
 ワクチン自体にも副反応はありますが、実際に病気にかかれば、元々の病気の上にその病気がプラスされ、大変です。主治医と相談して出来るだけのワクチン接種をお勧めします。

7、ワクチン接種を見合わせる場合
 発熱や機嫌が悪い場合は接種を延期します。妊娠中の生ワクチン接種は避けてください。ワクチンに含まれる成分に強いアレルギーがある人は接種を避けて下さい。

 軽度の咳や鼻水などでは接種可能です。出来るだけ早い時期に接種して下さい。



2004年 9月26日 放送
子どもの心、親知らず -かん虫、第一反抗期-


 赤ちゃんが激しく泣きやまない、夜泣き、食べない、すぐ不機嫌になる、つまり親が困る、親の言うことをきかない、大人の思うようにならないことを「かん虫」と表現します。「虫封じ」、「かん虫を切りに行く」ということも耳にします。赤ちゃんは成長するにつれ欲求が強くなります。自分の思うようにならなければ腹が立つと思います。自我が芽生え、腹が立つことを覚えると「かん虫」が出てきます。子どもがうまく成長している証拠です。かん虫とうまく付き合うことを考えて下さい。感染症が心配ですので体を傷つけるようなまじないは止めて下さい。疲れたら子育て中の友人か小児科専門医に相談しましょう。気持ちが楽になります。

 2歳頃になると走ったり、言葉を理解したり、行動の幅が広がると同時に、自分で出来ることに喜びを感じるようになります。色々な事に兆戦し、他人が手伝うと「自分で、自分で」と怒ります。急いでいるのにこれをされると、こういった時期だとわかっていても、理性と感情は別で、我が子ながら腹が立ってきます。

 自己というのが強く出始め、大人のいう「反抗期」です。ただ、子供は反抗しているのではなく、急いでいるとか子供のためにという大人の都合や考えを理解できていないだけです。あと数年間はこういう時期だと諦めて下さい。

 出来なかったことに挑戦し、我慢をしてみたり、一生懸命に言われたことをしようと努力します。親にほめられたり、認められることを喜びます。自分でさせることにより、能力がついていきますし、失敗をしながら自分の限界を理解し、耐える能力が身についてきます。甘やかしすぎたり、制限のない自由奔放は困ります。他人とうまく協調してやっていくルールを教えながら、その中で自由にさせて下さい。子どもは自分の欲求のままに振舞おうとしますので、悪いことや不注意なことには怒ったり、注意を喚起する必要があります。善悪の判断を教えてあげて下さい。これらの体験を通じて衝動にブレーキがかかり忍耐力が身に付いていきます。

 親は勝手な面もあり、子どもが自分で出来ると喜んでほめますが、忙しいときや無理そうなときは親の都合で親がやってしまいます。子どものプライドが傷つくかもしれません。親が子どものプライドを踏みつけたり、頭ごなしに押さえつけたりすると強く反発し、抗議します。子どもに親の忙しい状況を説明してあげて下さい。子供の話を聞いてあげて下さい。



2004年 8月22日 放送
肝炎ウイルスとその予防 


 肝臓に障害を与えるものにはウイルスや毒素、肥満などがあります。子供の肝臓は予備能力や再生力は強く、早期に原因を除去すれば完全回復します。

1、肝炎ウイルスとは
 A型、B型、C型、D型、E型と呼ばれる肝炎ウイルスがありますが、D型とE型は日本では稀です。A型は食物(日本では少ないですが牡蠣などの2枚貝)、B型とC型は血液(ウイルスを持った母から子、ウイルスを含む血液など)を介して感染します。

2、慢性になりやすいウイルス
 A型肝炎はそのウイルスに汚染された貝を加熱不十分で食べて発症しますが、慢性にはなりません。しかし、B型とC型のウイルスでは一旦感染するとキャリアといわれる、ほぼ一生涯肝臓中にウイルスを持つ場合があります。この状態でも肝炎を一生おこさない人も多いのですが、一部の人は慢性肝炎、肝硬変、肝癌といった経過をとります。

3、キャリアになぜなるのか
 抵抗力が弱い乳幼児に感染した場合や体の防御機能がウイルスを排除できない場合に肝臓の中にすみつきます。B型では5、6歳頃までは感染するとキャリアになる可能性がありますが、それ以降の年齢ではキャリアにはまずなりません。C型はウイルスが排除されにくく、成人の感染でもキャリアになる可能性があります。

4、キャリアにならないために
 キャリアの母や父から子、感染した血液の輸血、汚染された針の再使用などが感染の原因です。B型肝炎ウイルスの場合はワクチンで感染をほぼ完全に予防できます。親がキャリアの場合は子供にワクチンを生まれてすぐから接種して下さい。親子が安心して接し、遊べます。
 C型肝炎ウイルスの場合はワクチンがなく、予防は出来ません。しかし、キャリアの母から子への感染率が5〜10%で、血液以外で感染する危険性はまずありません。

5、キャリアになってしまったら
 BやC型の肝炎ウイルスを排除することは困難ですが、肝炎の薬やインターフェロンなどのウイルスを排除する薬があります。肝臓にウイルスがあっても肝障害の無いことが多く、子どもでは肝硬変などにはまずなりませんが、元気であっても年に1〜2回の肝機能検査をお勧めします。

1)食事や運動について

 食事や運動に制限は全くありません。バランスの良い食事をして下さい。運動の制限もありません。肝機能が多少悪くてもクラブ活動などは大丈夫です。

2)他人への感染は
 幼稚園や学校、日常生活の中で、他人へ感染させる心配はありません。



2004年 7月25日 放送
夏に気をつけたいこと2


 暑さが本番を迎えています。子供の熱中症(熱射病)では死亡する例もあります。涼しい服装や水分補給を心がけて下さい。

1、あせも
 かゆみがあり、引っかき傷を作ります。その傷に黄色ブドウ球菌などの細菌が感染すると「とびひ」になります。@吸湿性の良い下着(木綿など)を着せるA風通しを良くするB皮膚を清潔に保つCシャワーなどを適宜使用するなどで予防します。薬もあります。

2、熱中症
 高温環境が続くと、水分や電解質の代謝がうまく働きません。小児では体温調節機能は未熟で、水分をたくさん必要とします。汗による体重減少が2%(20kgの子では400cc)以上では水分補給がないと生命に危険が及ぶことがあります。

@ 熱疲労
 大量の発汗による脱水や電解質の喪失が原因で、脱力感、嘔吐、頭痛などが症状です。

A 熱痙攣
 発汗での塩分(ナトリウムとクロール)の喪失に、塩分の含まない水分の補給ばかりすると、運動後に手足の筋肉の痛みと痙攣が生じます。

A 熱射病
 体温が異常に上昇すると循環不全を生じ、全身臓器が障害されます。意識障害(行動や言葉がおかしい)、痙攣、死亡することもあります。

対応
 熱中症は予防できます。高温になる環境を避ける。高温下で運動するような場合には適当な休憩や塩分やカロリーの含まれた飲料を十分に摂取させるなどの注意が必要です。また、睡眠不足、運動不足などの体調不良では無理を避け下さい。重症では緊急入院を要します。

3、夏風邪
 代表的な病気としては「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」があります。これらの病気をおこすウイルスは各々数種類ずつあり、いずれも何回もかかります。

@ 手足口病
 口内炎、手のひらと足の裏に小さな水泡性の発疹(赤いぶつぶつ)ができます。乳幼児では膝前面やお尻にも発疹ができます。

A ヘルパンギーナ
 のどの奥(のどちんことその左右)が真っ赤になり、すぐにその部分に口内炎が数個できます。高熱も1〜3日出ます。

B プール熱
 のどの奥が真っ赤になり、目の充血、高熱が4、5日続きます。タオルの共有やプールなどで感染します。

対応
 口内炎ができたり、のどの奥が真っ赤になりますのでのどの痛みが強く、食べない、不機嫌、よだれが多いなどの症状が出ます。イオン飲料水やお茶、プリンやゼリーなどの冷たく、のどごしの良いものを食べるだけあげて下さい。水分さえ飲めていればあまり心配はいりません。薄着で涼しい環境を作って下さい。



2004年 6月27日 放送
夏太り


 3歳以降の肥満は成人後も肥満になりやすいといわれ(赤ちゃんの肥満は大丈夫です)、成人での生活習慣病を防ぐためには3歳以降の肥満を防ぐことが重要です。また、子供でも肥満の程度や体質によっては脂肪肝や糖尿病になりますし、運動能力の低下、いじめなどの問題もあります。しかし、肥満による悪い影響が出る程度は個人によって異なります。悪い影響さえなければ多少の肥満はかまわないという考えもあります。食べることは楽しいことですし、子供では身体の発育が大切です。食事の制限ばかりせずに、運動や間食を考慮しながら楽しく食べましょう。
 冷房のなかった時代の夏休みは暑く、家の外で遊ぶしかなく、食欲も低下し、「夏やせ」といって夏に体重が減少しましたが、冷房の効いた部屋で、テレビ、ゲームとお菓子、ジュースといった現在の生活では夏に太ります。要注意です。

1、脂肪の蓄積は動物の本能
 脂肪は食料が十分になかった時代の飢えに備えるエネルギーの蓄積です。生きるために、食べれる時に出来るだけ貯める。エネルギー効率の良い甘いもの、脂っこいものを好むのは当然です。食事制限は本能に逆らうことで難しいことです。10年、20年後を考え、ゆっくりやって下さい。

2、肥満に対する考え方
1)肥満自体は大きな問題ではありません。脂肪蓄積でおこる症状や障害が問題です。
2)病気のために肥満になる場合もあります。本人や親ではどうしようもない場合があります。

3、子どもで何が問題となるのか?
1)脂肪肝
 肝臓に脂肪が溜まりすぎる状態で、肝機能が悪くなります。太っている人が必ずしも脂肪肝ではありませんが、肥満と感じている場合は血液検査や尿検査を受けて下さい。この場合は、肝機能が悪くても運動し、やせることが肝心です。食事療法と運動で肝機能がすぐよくなります。

2)糖尿病
 インスリン非依存型糖尿病(糖をコントロールするホルモンが効きにくい)になりやすくなります。家族に同型の糖尿病があると特に要注意です。

5、治療法
1)子どもは身長が伸びるため、体重を増やさないようにするだけで肥満度は低下します。
2)間食(お菓子など)やジュースを控えるだけで肝機能はすぐによくなります。身体の発育を妨げないように、カロリー控えめの食事を十分に楽しく食べましょう。
3)ゆっくりとした運動を続けることが重要です(激しい運動は長続きしません)。
4)運動や食事療法は家族みんなで行って下さい。



2004年 5月23日 放送
食中毒の季節です


 水や食物には細菌が付着していますが、胃の酸は菌を殺しますし、腸には多くの有用な菌があり体を守っています。有害な菌でも食べた菌数が少なければ、症状は出ずに菌は消失します。

1、症状
 腹痛、嘔気・嘔吐、下痢が主です。菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。一般的には、口から入った菌が腸で増殖して毒素などを出すために発症しますが、ブドウ球菌などでは食物の中で増殖した菌が産生した毒素を食物と共に食べて発症します。前者では発症は食べた数日後ですが、後者では数時間で発症します。

2、原因菌
 夏には主として腸炎ビブリオ、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、冬は生牡蠣などによるノロウイルスが主な原因です。

1)腸炎ビブリオ
 夏の生の魚介類のエラや内臓に存在します。この菌は真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。調理に使用したまな板や包丁をこまめに水洗いして下さい。

2)サルモネラ
 色々な動物の腸内に存在します。卵、鶏肉、緑ガメなどのペット類が主な感染源です。血液の混じった緑色の水様便が多いですが、乳幼児では重症な全身感染症となりやすいため、卵や肉は十分加熱をして下さい。

3)腸管出血性大腸菌
 O―157で有名になった菌です。牛肉からの感染が主です。熱に弱く(75℃1分間で死滅)十分な加熱が最も有効です。便に血液が混じることが多く、腎不全となることもあります。

4)黄色ブドウ球菌
 この菌は皮膚の化膿部に多く、調理人の手に傷や化膿部があれば食物を汚染します。食物中で作られた毒素を食べたための発症ですので、食後1〜6時間で発症します。

5)ボツリヌス菌
 健康な人ではこの菌を食べても発病しませんが、生後8か月までの乳児の腸管内では菌が増殖可能で、神経毒を産生します。症状は便秘で、進行すると筋力低下なども生じます。主な原因としては蜂蜜で、乳児には蜂蜜を与えないことが原則です。

3、対策
 @菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行う。
 整腸剤以外の下痢を止める薬は悪い菌や毒素の排出を止め、症状を悪化させますので、使用しないのが原則です。脱水に注意してお茶やイオン飲料水を与えて下さい。激しい嘔吐や便の臭いが強い、便に血液が混じる場合などでは早期治療が重要ですので小児科専門医を受診して下さい。



2004年 4月25日 放送
身長が気になれば


 低身長は学校などの集団生活の中や多感な思春期では精神的な問題を引き起こすことがあります。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。中学生や高校生になり、身長が伸びなくなってからでは遅すぎます。身長が低いと感じたり、低身長が心配であれば、早い時期から小児科専門医に相談して、身長の経過をチェックしてもらって下さい。
 身長は男児では17歳、女児では15歳頃まで伸びますが、個人差が大きく、思春期の早い子では早く止まりますし、遅い子では遅くまで伸びます。
 カルシュームは骨を硬くしますが、骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲んでも身長は伸びません。野菜などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともあります。負担がかからないように工夫をして下さい。特別に効果が良いスポーツはありませんが、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

1、原因
1)成長ホルモン分泌不全症
 成長ホルモンは骨を伸ばしたり、筋肉を大きくする力があります。このホルモンが少ない場合は身長の伸びはかなり悪くなりますが、ホルモンの補充で身長は伸びます。

2)甲状腺機能低下症
 甲状腺ホルモンは身体の活動性を高めます。低下症では足がむくんだり、運動する気力が低下します。ホルモンを補充することで身長も伸びます。

3)骨の病気
 手足の骨の伸びにくい病気があります。成長ホルモンの効果が期待できる場合もあります。

4)ターナー症候群などの染色体の病気
 染色体自身を治療できませんが、低身長は治療可能です。

5)思春期早発症
 7歳までに乳房が大きくなるなど思春期が早く来すぎると、子供の頃の身長は大きいのですが、身長が早く止まりますので最終の身長は低くなります。早期であれば治療可能です。

6)愛情遮断症候群
 子供が愛情に飢えてストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。

2、診断
 身長の発育経過、手の骨のレントゲンで骨の発育状況、血液検査で成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌能力などを調べます。

3、治療

成長ホルモンや甲状腺ホルモンが少なければ、足りない分だけのホルモンを補充します。補充することによって身長が伸びる以外にも体の働きを正常化します。



2004年 3月28日 放送
新入学、新学期に健康チェック


 入学式、入園式、始業式など新しい学年になり、忙しい時期かと思います。5月には子供の日もあります。この時期に自分の子供を全般的にわたって見直してみてはいかがでしょうか。
 元気さ、運動能力、知的な能力、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、小さなお子さんの場合はまず、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 予防接種のページがあります。BCG、ポリオ、三種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳)、麻疹、風疹、日本脳炎などのワクチンが無料で行われています。接種の開始時期は生後3か月、6か月、1歳とワクチンによって異なっていますが、接種は順調ですか。接種が早ければ早くから病気の予防が可能です。ただ、予防接種の無料券は7歳半までしか使えませんので、この年齢を超えると有料となります。接種がまだの人は早く接種して下さい。病気にかかりたくはありません。他人にうつしたり、治療法がなくて重症になる病気もあります。病気を予防するにはワクチンを接種して予防するしかありません。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。有料ですが、水痘(みずぼうそう)、おたふくかぜなどのワクチンもあります。お父さんやお母さんも子供から病気をもらいたくなければワクチン接種を考慮すべきと思います。

2)健康診断を受けていますか。身長や体重の伸びは順調ですか。
 生後4か月、10か月、1歳半、3歳などの健診があります。健診を受けていない場合や言葉、行動、運動などの発達で気になることがあれば小児科専門医にご相談下さい。母子手帳の後ろのほうにある男女別の身長や体重を書き込めるグラフに子供の身長や体重の印をつけて下さい。大きい年齢の子は幼稚園や学校などの記録を見て下さい。小児科に行けば身長、体重のグラフがあります。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあるのか、また、それらの伸びはどうかなどがチェックできます。入園式や入学式、運動会などで同級生に比べて非常に低い、高い、やせている、太っているなども参考になります。

 身長が非常に低い場合にはホルモンの分泌、かなり太っている場合には脂肪肝や糖尿病などのチェックが必要ですし、治療が必要です。低身長は薬で治療できる病気のことがあります。ただ、年齢が大きくなると治療不可能となります。早期からご相談下さい。



2004年 2月22日 放送
入浴


 冬は熱を伴う風邪が流行します。熱のある時の入浴はどう考えればよいのでしょう。子供は新陳代謝が活発で、汗や皮膚の汚れが多く出ます。この汗や皮膚の汚れを放置すると汗疹や湿疹ができます。子供にとって入浴は湿疹を予防するために重要なのです。

1、発熱と入浴
熱のある時に入浴すると体力が低下して病状が悪化するので、入浴しないようにと昔から言われています。昔は、子供の栄養状態も悪く、家の中にお風呂がなく銭湯などの外のお風呂に歩いて行っていました。特に冬などでは、熱のある子供がわざわざ銭湯まで行くという状況は良いとは言えません。しかし、現在はお風呂やシャワーは家の中ですし、部屋に暖房もあります。

 風邪のときに入浴しても風邪の症状が悪化したり、治りが遅くなることはありません。肌の弱い子や湿疹のある子の場合には入浴を制限すると皮膚炎をおこし、イライラや不眠、不機嫌になります。病気と戦う体力が重要ですので、体力を弱らせる不眠や不機嫌は困ります。しんどがる時は別ですが、熱があっても、元気なときは、さっと短時間の入浴で汗や皮膚の汚れを流してあげて下さい。機嫌が良くなり寝てくれます。

2、ワクチン接種と入浴
 以前は予防接種をした日の入浴は避けてくださいと説明がありましたが、ワクチンを接種した日に入浴しても何ら問題はありません。日常生活も普段と同じ生活をして下さい。運動も特に制限する必要はありません。ただ、ワクチンの種類によっては数日間体がだるくなることがありますので、この場合は体調に合わせて下さい。

3、湿疹と入浴
 湿疹に汗や汚れがつくとかゆみが増し、皮膚をかけばさらに湿疹が増悪します。皮膚の汚れを落とすための入浴は湿疹の管理面からも重要です。皮膚の弱い子は出来るだけ毎日、入浴かシャワーをさせてあげて下さい。汗や皮膚の汚れを出来るだけ少なくすればかゆみも減少し、使用する軟膏や薬も少なくてすみます。ゴシゴシこすって洗うと皮膚を傷つけます。石鹸を使って手のひらでやさしく、皮膚をこすらないように、ゆっくり洗って、湯船で石鹸分を十分落として下さい。入浴後は皮膚が乾燥しないうちに皮膚の手入れです。

4、事故防止
 お風呂でおぼれたり、熱いお湯でやけどなどの事故は困ります。風呂場に近づけない、使用しないときは水を抜く、浴槽にふたをするなど事故防止に注意して下さい。子供の入浴前に、お風呂の温度も自分の手で必ず確認して下さい。



2004年 1月25日 放送
乾燥肌2


 子供は皮脂の量が少ないため、冬に皮膚は乾燥します。ひどい場合には布団に入って温もると痒くなり、イライラや不眠の原因になります。エヤコン、コタツなどの快適に暮らす道具も空気を乾燥させ、皮膚を乾燥させます。
 汗やあかは痒みの原因となります。お風呂ではその子にあった石鹸をやさしく使って汗やあかを落とし、石鹸をよく洗い流すようにして下さい。タオルでゴシゴシ洗うと皮膚を傷つけ、皮膚の機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増します。
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。抱っこする人の服なども含め毛糸などの刺激が赤ちゃんの肌に直接触れないようにして下さい。
 アレルギー状態を呈する遺伝的な素質をアトピーといい、アトピー体質を持っている子供にできる湿疹をアトピー性皮膚炎といいます。遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光、食事、ほこりやダニなど多くの因子が悪化に関係しています。

1、食事
 食物制限は皮膚炎がひどい場合にのみ考慮します。食事だけを考え過ぎないようにして下さい。食物アレルギーは3歳を過ぎるとおこりにくくなります。
 原因を調べるために血液検査などが行われますが、検査結果と症状が一致しないこともよくあります。検査で陽性と出た食物を食べても全く症状が出ないこともありますし、生や半生の食品はだめでも、完全に加熱したものでは症状が出ないこともあります。食品添加物が原因のこともあります。食物制限は食べれば皮膚の症状が悪化する食物のみに限定して下さい。極端な食物制限は発育異常をおこします。食物制限自体がストレスとなり、皮膚炎を悪化させる可能性もあります。

2、ホコリ、ダニ
 生活環境を整備して、ホコリやダニを減らすことは大切ですが、限度があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、ほこりの出やすいものを止めるなどで十分と思います。ダニやホコリは悪化原因のひとつに過ぎません。

3、薬
 ツルツル、スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠は困ります。入浴後に塗ると乾燥した肌に水分を保たせる保湿作用のある軟膏があります。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと皮膚のバリア機能が低下し、症状が悪化します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬も併用して下さい。あせらず気長に治療することが大切です。




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