2024年 4月28日 放送
低身長

 低身長は学校ではいじめ、コンプレックス、精神的な問題などを引き起こすことがあります。低身長になる病気があり、病気の治療で身長が伸びる場合もあります。ただ、思春期が経過して、骨が成熟して身長が伸びなくなってからでは治療法はなく、遅すぎます。一般的に、身長は男児では17歳、女児では15歳頃まで伸びますが、個人差が大きく、早く止まる子もいます。「その内に伸びる」や「親が小さいから」という考えは困ります。親からの遺伝の影響は大きくありません。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。心配な場合は小児科専門医を受診して下さい。治療が必要な子では、早期からの治療が身長に良い結果を生みます。

 体質のための低身長もありますが、成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症などのホルモンが不足する病気が原因の場合は不足しているホルモンを補充することで身長の伸びが良くなり、全身状態も正常化し、身体の働きも活発になり、元気になります。骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気での低身長も治療可能な場合があります。強いストレスを感じている場合も身長の伸びが悪くなることがあります。

 骨を伸ばすのはたんぱく質です。たんぱく質などを多くしたバランスの良い食事や十分な睡眠、適度な運動は身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともありますので、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

 牛乳をたくさん飲んでも身長は伸びません。カルシウム、アルギニン、GHRP−2や成長ホルモン舌下スプレーなどのインターネットで宣伝しているサプリメントに身長を伸ばす効果はありません。






2024年 3月24日 放送
清潔な皮膚

 皮膚には肌の水分を保持し、外部からの異物の侵入を防いでいる表皮と皮脂膜によるバリア機能があります。また、皮膚表面の多くの常在菌のバリアが病原菌から肌を守っています。これらの皮膚バリアが壊れてしまうと、皮膚に異物が侵入してきますし、肌にある水分は蒸発しやすくなります。スキンケアや栄養、生活習慣も含めた対策で皮膚のバリア機能を維持することが重要です。

 良い皮膚の状態とは、常在菌がバランスよく存在して、皮脂が常在菌で処理されて弱酸性の皮脂膜で皮膚が覆われ、アルカリ性を好む病原菌が繁殖しにくくなった状態です。頻回に洗う、ゴシゴシ擦る、洗浄力の強い洗浄剤を使うなどの過剰な洗浄では皮膚常在菌が失われ、弱酸性の皮脂膜が洗い流されてバリア機能が弱まります。健全な皮膚常在菌を育てて健全な皮膚環境を作るためには、洗い過ぎない事が大切です。

 普通の石鹸や洗浄剤は弱アルカリ性ですが、洗った後は水道水で流しますので、皮膚はすぐに弱酸性に戻ります。弱酸性の洗浄剤は洗浄能力が弱いものが多く、普通の子では香料などを含まない普通の石鹸(小さな子ではベビー石鹸)で良く、その後に十分に流すことが大切です。

 手洗いが奨励されていますが、頻回の手洗いでは手が荒れますし、アルコールによる手洗いでは常在菌のほとんどを殺します。皮膚が荒れた常在菌の少ない部位には病原菌が増殖しやすくなります。汚れや汚染物などで手が汚れていれば丁寧な手洗いは必要ですが、遊具や家具を触った程度での手洗いまでは不要と思います。

一般の細菌やウイルスの刺激でヒトの身体や免疫状態が健康に保たれています。清潔にし過ぎると身体や免疫力に弊害が出ます。






2024年 2月25日 放送
こどもの貧血

 血液中の赤血球や赤血球内のヘモグロビンという酸素を運ぶたんぱく質が減少した状態で、肺で取り込んだ酸素を体内に運ぶ力が低下し、全身の代謝が低下してエネルギー不足が生じます。乳幼児では極端な貧血が3か月以上続くと精神や運動の発達が遅れる可能性が指摘されています。

 顔色が青白く、唇や爪などの色も白っぽくなり、元気がなく、軽い運動でも動悸や息切れがし、めまいなどの症状が出ます。

 主な原因は偏食による鉄分の不足です。乳児では離乳食が極端に遅れた場合、幼児以降では偏食で鉄分やたんぱく質摂取の少ない子に貧血がみられます。牛乳には鉄分が少ししか含まれていませんので、牛乳を大量に摂取して食事量が少なくなると貧血になります。長時間走ったりジャンプしたりすることによる筋肉内や足底血管内の赤血球破壊が原因でおこるスポーツ貧血もあります。乳児期や思春期では成長が急激ですので、たんぱく質や鉄分の必要性が増します。また、思春期以降の女子では月経出血もありますし、やせ願望による無理なダイエットでは強度の貧血になります。

 鉄分は赤身の肉や魚の血合いに多く含まれます。鉄分は肉や魚などに含まれるヘム鉄と穀物や野菜などに含まれる非ヘム鉄に分類され、非ヘム鉄は腸管からの鉄の吸収率はよくありませんが、ヘム鉄やビタミンCとの摂取で吸収が促進されます。食事では肉や魚、野菜と果物を一緒に摂取することが望まれます。バランスの取れた食事が鉄欠乏性貧血を予防しますし、治療にもなります。食事療法で改善しない場合や強度の鉄欠乏性貧血では鉄剤を服用します。食事では鉄分の過剰状態にはなりませんが、薬やサプリメントの過剰摂取では、頭痛、食欲不振、肝機能障害、皮膚の黒ずみなどの副反応が生じますので注意が必要です。






2024年 1月22日 放送
ミルク嫌い

 母乳は飲むがミルクは飲まないという赤ちゃんがいます。いろいろ努力しても母乳が不足する場合や生後早期から保育所や託児所などに預ける場合に問題となります。ミルク自体が嫌なのかミルクに付随するものが嫌なのか、色々な対策を根気よく試みることになります。搾乳した母乳を哺乳瓶で飲むかを確かめて、飲めれば哺乳瓶や乳首の問題は考えにくく、預けると決めた時点から搾乳を開始して母乳パックでの母乳の冷凍保存を開始します。

 ごく稀にはミルクアレルギーや病気のこともありますので注意は必要ですが、@飲ませるときの抱っこの姿勢を変えてみるA溶かす水をチェックするB乳首の種類を変えてみるCミルクの温度を変えてみるD赤ちゃんの眠たい時に飲ますEミルクの銘柄を変えてみるF入浴後などの喉が渇いている時に飲ましてみるGスプーンやカップを使うなどを試みます

 イライラしたり、無理に飲ませようとすればするほど、赤ちゃんはますます嫌がって飲まなくなります。育児書やミルクの缶に書いてある1日哺乳量はあくまで目安であり、活発で体重の増加が良ければ、基準の哺乳量より少なくても、その子にとっては十分なのです。病気が否定されれば、体重の増加が不良の場合でも、活発であればミルクは少なくても飲んでくれるだけ、母乳も出てくれるだけで我慢をする必要があります。水分補給や空腹で泣くときには果汁や野菜スープ、重湯、赤ちゃん用のイオン飲料水などを与えて様子をみます。生後4か月頃から、早めの離乳食をつぶし粥から開始して、あせらず、ゆっくり進めます。体重の増えはゆるやかですが、子どもが元気であり、体重が確実に増えていれば心配は要りません。子どもはよほどのことがない限り健全に育ちます。離乳食が進んでくれば徐々にですが体重は追いついていきますし、後遺症も残しません。それまであせらず我慢です。





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