2024年 7月28日 放送
子どもの外遊び、夏太り

 夏に外で遊ぶと熱中症や日焼けなどの心配があります。しかし、外遊びは体力や気力、自律神経の発育や精神的な発育に欠かせませんし、メタボリック症候群の予防にもなります。気候を感じ、怪我をして痛みを知る、友達と遊ぶことで協調性が養われ、ストレス発散の手段としても非常に有用です。外遊びや運動で汗をかく習慣は体温調節機能を向上させ、夏バテや熱中症の予防にも役立ちます。

紫外線は、皮膚の細胞を傷つけ、日焼けを作り、皮膚で骨の発育に重要なビタミンDを合成します。紫外線で遺伝子が傷害されても、自動的に修復されます。また、日本人は黄色人種ですので、皮膚のメラニン色素を増やして紫外線の影響を受けにくくする機能を持っています。急に強い紫外線は困りますが、日頃から外遊びをさせて紫外線や暑さに慣れさせて下さい。外で遊ぶときに帽子や涼しい衣服、日焼けしやすい子ではサンスクリーン剤で防御する必要はありますが、極端な紫外線対策は不要と思います。

外遊びやスポーツには外傷などの危険は伴いますが、経験になりますし、身体や精神、自律神経を鍛え、思いやりや心の規範意識を育てます。危険防止を心がけて楽しい外遊びをさせてあげて下さい。

夏休み中は室内で遊ぶことが多く、冷房の効いた部屋で、テレビ、ビデオ、ゲーム、ユーチューブ三昧とお菓子、ジュースといった現在の生活では夏太りに注意が必要です。ただ、肥満による悪い影響が出る程度は個人によって異なります。悪い影響さえなければ多少の肥満はかまわないという考えもあります。食べることは楽しいことですし、子どもでは身体の発育が大切です。子どもは身長が伸びるため、お菓子などの間食やジュースを控えて体重を増やさないようにするだけで肥満度は低下します。






2024年 6月23日 放送
熱中症

 熱中症は高温環境やスポーツ活動などによって体内で作られた熱が生理的反応の適応範囲を超えた結果、体温を維持するための水分や電解質の代謝がうまくいかなくなった病態です。

 身体が暑熱環境や体の発熱に馴れていないと生じやすくなります。@気温は高いときに起こりやすいのですが、気温はそれほどでもなくても湿度の高いときA前日に比べ急に気温が上昇したB無風状態C砂やアスファルトなどの日光の反射が多い所などが起こりやすいとされています。空調のない室内でのスポーツも要注意です。子どもの環境をチェックし、予防を心がけてください。

 晴天のときには照り返しのために地面に近い低い位置の気温が高く、子どものほうが暑さを感じています。特にベビーカーの中は風通しも悪く注意が必要です。晴れた日の空調を止めた車の中は非常に暑くなりますので、子どもを車内に放置する事は止めて下さい。

 睡眠不足、運動不足などの体調不良は熱中症を起こしやすくなります。服装は通気性の良い、放熱を促進する服を使用し、外では帽子をかぶって太陽光をさえぎる服を選択して下さい。お水やイオン飲料水、経口補水液などの水分補給はこまめに行なって下さい。日頃から外遊びを奨励し、暑さに慣れるような生活を心がけて下さい。

 初期症状はめまい、立ち眩み、だるさ、こむら返り、頭痛などですので、発症予防のためや初期症状を見つけたときは涼しい環境で休ませ、水分補給を十分に取ることが重要です。子どもの顔が赤く、汗をかなりかいている時は身体の深部体温はかなり上昇している可能性があり、涼しい環境下で休ませてあげて下さい。強い疲労感や嘔吐、意識障害などの症状が出ている場合は、点滴や入院が必要ですので、救急車を要請して下さい。






2024年 5月26日 放送
夏の食中毒

 腹痛、嘔気・嘔吐、下痢などの症状で発症し、菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。ブドウ球菌などは食物の中で増殖して毒素を出し、その蓄積された毒素を食べての発症ですので食後1時間程度で発症しますが、一般的には、菌が腸管内で増殖してからの発症ですので、8時間から数日後の発症です。

腸炎ビブリオは夏の魚介類のエラや内臓に存在します。真水や低温に弱いため、よく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。カンピロバクターは鶏肉を介する感染が主です。サルモネラは卵、鶏肉、ミドリガメなどのペット類からの感染が主で、乳幼児では重症化しますので、乳幼児には爬虫類を触らせないか、触った後の手洗いが重要です。腸管出血性大腸菌は牛肉からの感染が主です。

 食べた細菌数や毒素の量が少なければ自然に治ります。菌や毒素を少なくすることが重要で、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫などに保管してください。ただ、冷蔵や冷凍では菌の増殖は止まりますが、殺菌はされず、冷蔵庫から出すと菌はすぐに増殖を開始します。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うなどを心がけて下さい。加工肉では内部までの十分な加熱が必要です。子どもは重症化しやすいため、生レバーや生肉を食べさせないで下さい。

 低温調理法が話題となっていますが、殺菌には「75度で1分以上」の加熱という基準があり、それと同等の効果は「71度で3分」「63度で30分」とされており、肉や魚の表面の温度ではなく、中心部の温度が、この示された温度を超えて加熱される必要があることにも考慮してください。

 抗生剤や整腸剤は使用しますが、下痢を止める薬は病原菌の排出も止め、重症化させる可能性があり、一般的には使用しません。







2024年 4月28日 放送
低身長

 低身長は学校ではいじめ、コンプレックス、精神的な問題などを引き起こすことがあります。低身長になる病気があり、病気の治療で身長が伸びる場合もあります。ただ、思春期が経過して、骨が成熟して身長が伸びなくなってからでは治療法はなく、遅すぎます。一般的に、身長は男児では17歳、女児では15歳頃まで伸びますが、個人差が大きく、早く止まる子もいます。「その内に伸びる」や「親が小さいから」という考えは困ります。親からの遺伝の影響は大きくありません。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。心配な場合は小児科専門医を受診して下さい。治療が必要な子では、早期からの治療が身長に良い結果を生みます。

 体質のための低身長もありますが、成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症などのホルモンが不足する病気が原因の場合は不足しているホルモンを補充することで身長の伸びが良くなり、全身状態も正常化し、身体の働きも活発になり、元気になります。骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気での低身長も治療可能な場合があります。強いストレスを感じている場合も身長の伸びが悪くなることがあります。

 骨を伸ばすのはたんぱく質です。たんぱく質などを多くしたバランスの良い食事や十分な睡眠、適度な運動は身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともありますので、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

 牛乳をたくさん飲んでも身長は伸びません。カルシウム、アルギニン、GHRP−2や成長ホルモン舌下スプレーなどのインターネットで宣伝しているサプリメントに身長を伸ばす効果はありません。






2024年 3月24日 放送
清潔な皮膚

 皮膚には肌の水分を保持し、外部からの異物の侵入を防いでいる表皮と皮脂膜によるバリア機能があります。また、皮膚表面の多くの常在菌のバリアが病原菌から肌を守っています。これらの皮膚バリアが壊れてしまうと、皮膚に異物が侵入してきますし、肌にある水分は蒸発しやすくなります。スキンケアや栄養、生活習慣も含めた対策で皮膚のバリア機能を維持することが重要です。

 良い皮膚の状態とは、常在菌がバランスよく存在して、皮脂が常在菌で処理されて弱酸性の皮脂膜で皮膚が覆われ、アルカリ性を好む病原菌が繁殖しにくくなった状態です。頻回に洗う、ゴシゴシ擦る、洗浄力の強い洗浄剤を使うなどの過剰な洗浄では皮膚常在菌が失われ、弱酸性の皮脂膜が洗い流されてバリア機能が弱まります。健全な皮膚常在菌を育てて健全な皮膚環境を作るためには、洗い過ぎない事が大切です。

 普通の石鹸や洗浄剤は弱アルカリ性ですが、洗った後は水道水で流しますので、皮膚はすぐに弱酸性に戻ります。弱酸性の洗浄剤は洗浄能力が弱いものが多く、普通の子では香料などを含まない普通の石鹸(小さな子ではベビー石鹸)で良く、その後に十分に流すことが大切です。

 手洗いが奨励されていますが、頻回の手洗いでは手が荒れますし、アルコールによる手洗いでは常在菌のほとんどを殺します。皮膚が荒れた常在菌の少ない部位には病原菌が増殖しやすくなります。汚れや汚染物などで手が汚れていれば丁寧な手洗いは必要ですが、遊具や家具を触った程度での手洗いまでは不要と思います。

一般の細菌やウイルスの刺激でヒトの身体や免疫状態が健康に保たれています。清潔にし過ぎると身体や免疫力に弊害が出ます。






2024年 2月25日 放送
こどもの貧血

 血液中の赤血球や赤血球内のヘモグロビンという酸素を運ぶたんぱく質が減少した状態で、肺で取り込んだ酸素を体内に運ぶ力が低下し、全身の代謝が低下してエネルギー不足が生じます。乳幼児では極端な貧血が3か月以上続くと精神や運動の発達が遅れる可能性が指摘されています。

 顔色が青白く、唇や爪などの色も白っぽくなり、元気がなく、軽い運動でも動悸や息切れがし、めまいなどの症状が出ます。

 主な原因は偏食による鉄分の不足です。乳児では離乳食が極端に遅れた場合、幼児以降では偏食で鉄分やたんぱく質摂取の少ない子に貧血がみられます。牛乳には鉄分が少ししか含まれていませんので、牛乳を大量に摂取して食事量が少なくなると貧血になります。長時間走ったりジャンプしたりすることによる筋肉内や足底血管内の赤血球破壊が原因でおこるスポーツ貧血もあります。乳児期や思春期では成長が急激ですので、たんぱく質や鉄分の必要性が増します。また、思春期以降の女子では月経出血もありますし、やせ願望による無理なダイエットでは強度の貧血になります。

 鉄分は赤身の肉や魚の血合いに多く含まれます。鉄分は肉や魚などに含まれるヘム鉄と穀物や野菜などに含まれる非ヘム鉄に分類され、非ヘム鉄は腸管からの鉄の吸収率はよくありませんが、ヘム鉄やビタミンCとの摂取で吸収が促進されます。食事では肉や魚、野菜と果物を一緒に摂取することが望まれます。バランスの取れた食事が鉄欠乏性貧血を予防しますし、治療にもなります。食事療法で改善しない場合や強度の鉄欠乏性貧血では鉄剤を服用します。食事では鉄分の過剰状態にはなりませんが、薬やサプリメントの過剰摂取では、頭痛、食欲不振、肝機能障害、皮膚の黒ずみなどの副反応が生じますので注意が必要です。






2024年 1月22日 放送
ミルク嫌い

 母乳は飲むがミルクは飲まないという赤ちゃんがいます。いろいろ努力しても母乳が不足する場合や生後早期から保育所や託児所などに預ける場合に問題となります。ミルク自体が嫌なのかミルクに付随するものが嫌なのか、色々な対策を根気よく試みることになります。搾乳した母乳を哺乳瓶で飲むかを確かめて、飲めれば哺乳瓶や乳首の問題は考えにくく、預けると決めた時点から搾乳を開始して母乳パックでの母乳の冷凍保存を開始します。

 ごく稀にはミルクアレルギーや病気のこともありますので注意は必要ですが、@飲ませるときの抱っこの姿勢を変えてみるA溶かす水をチェックするB乳首の種類を変えてみるCミルクの温度を変えてみるD赤ちゃんの眠たい時に飲ますEミルクの銘柄を変えてみるF入浴後などの喉が渇いている時に飲ましてみるGスプーンやカップを使うなどを試みます

 イライラしたり、無理に飲ませようとすればするほど、赤ちゃんはますます嫌がって飲まなくなります。育児書やミルクの缶に書いてある1日哺乳量はあくまで目安であり、活発で体重の増加が良ければ、基準の哺乳量より少なくても、その子にとっては十分なのです。病気が否定されれば、体重の増加が不良の場合でも、活発であればミルクは少なくても飲んでくれるだけ、母乳も出てくれるだけで我慢をする必要があります。水分補給や空腹で泣くときには果汁や野菜スープ、重湯、赤ちゃん用のイオン飲料水などを与えて様子をみます。生後4か月頃から、早めの離乳食をつぶし粥から開始して、あせらず、ゆっくり進めます。体重の増えはゆるやかですが、子どもが元気であり、体重が確実に増えていれば心配は要りません。子どもはよほどのことがない限り健全に育ちます。離乳食が進んでくれば徐々にですが体重は追いついていきますし、後遺症も残しません。それまであせらず我慢です。





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