2023年 5月28日 放送
熱中症


 熱中症は高温環境やスポーツ活動などによって体内で作られた熱が生理的反応の適応範囲を超えた結果、体温を維持するための水分や電解質の代謝がうまくいかなくなった病態です。

 夏以外でも急に暑くなったときに、体が暑熱環境や体の発熱に馴れていないために生じます。@気温は高いときに起こりやすいのですが、気温はそれほどでもなくても湿度の高いときA前日に比べ急に気温が上昇したB無風状態C砂やアスファルトなどの日光の反射が多い所などが起こりやすいとされています。空調のない室内でのスポーツも要注意です。マスクも息苦しさを伴います。子どもの環境をチェックし、予防を心がけてください。

 晴天のときには照り返しのために地面に近い低い位置の気温が高く、子どものほうが暑さを感じています。特にベビーカーの中は風通しも悪く注意が必要です。晴れた日の空調を止めた車の中は非常に暑くなりますので、子どもを車内に放置する事は止めて下さい。

 睡眠不足、運動不足などの体調不良は熱中症を起こしやすくなります。服装は通気性の良い、放熱を促進する服を使用し、外では帽子をかぶって太陽光をさえぎる服を選択して下さい。お水やイオン飲料水、経口補水液などの水分補給はこまめに行なって下さい。日頃から外遊びを奨励し、暑さに慣れるような生活を心がけて下さい。

 発症予防のためや初期症状を見つけたときは涼しい環境で休ませ、水分補給を十分に取ることが重要です。子どもの顔が赤く、汗をかなりかいている時は身体の深部体温はかなり上昇している可能性があり、涼しい環境下で休ませてあげて下さい。強い疲労感や嘔吐、意識障害などの症状が出ている場合は、点滴や入院が必要ですので、救急車を要請して下さい。






2023年 4月23日 放送
低身長


 低身長はいじめ、コンプレックス、精神的な問題などを引き起こすことがあり、周囲からの精神的なサポートが必要です。低身長になる病気があり、その病気を治療することで身長が伸びる場合もあります。ただ、思春期が過ぎて、骨が成熟して身長が伸びなくなってからでは治療法はなく、遅すぎます。身長の伸びは個人差が大きく、早く止まる子もいますので、「その内に伸びる」という考えは困ります。親からの遺伝の影響は大きくありません。親、子が共に身長というものを理解し、平均身長からどの程度低くて、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。心配な場合は小児科専門医を受診して下さい。治療が必要な子では、早期からの治療が身長に良い結果を生みます。

 体質のための低身長もありますが、成長ホルモンや甲状腺ホルモンなどが不足する病気の場合は不足しているホルモンを補充することで身長の伸びが良くなり、全身状態も正常化し、身体の働きも活発になり、元気になります。骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気での低身長も治療可能な場合があります。強いストレスを感じている場合も身長の伸びが悪くなることがあります。

 骨を伸ばすのはたんぱく質です。たんぱく質などを多くしたバランスの良い食事や十分な睡眠、適度な運動は身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともありますので、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

 牛乳をたくさん飲んでも身長は伸びません。カルシウム、アルギニン、GHRP−2や成長ホルモン舌下スプレーなどのインターネットで宣伝しているサプリメントに身長を伸ばす効果はありません。






2023年 3月26日 放送
子どもの個性


 個性には変化しない先天的要素と環境や生き方によって変化する後天的な要素があり、各々個人が違う個性を持っています。

 「個性を大切に」と言われますが、学校や実社会では、集団行動や共通認識といった型にはまった考え方や行動が求められ、個性の強い子は「変わった子」とされて、個性を育めるような教育や育てられ方が行われることは稀です。また、「個性を尊重する」は「一般的に短所と考えられていることをも尊重する」という意味で使用されています。子どもに何か足りなかったり、多すぎたりする所があったとしても、改善してあげようと考える前に、まず、その個性の全てを「ありのままに受け入れてしまう」ことを実行して下さい。才能に発展しうる個性や創造力を大人が「常識」や「普通」という名の下で潰しています。皆と異なることは個性で、多様性のある個性が発揮できる状況は集団が進歩発展し、進化していくために必須なものです。

 子どもが思い通りにならない、自分と価値基準の違う行動をとると大人は当惑しますが、親や大人、幼稚園、学校の判断基準で子どもを判断するのではなく、好き嫌いや得意不得意、積極的や内気、協調性の程度、行動力信条、生活環境なども含め、その子の個性の特徴を踏まえた上で、社会に出た時に困らないように教育や指導をするのが大人の役割と思います。ちゃんとしつければ素直に親や学校の言うことを聞く子になるというのは幻想で、2歳頃の第一反抗期や思春期の第2反抗期の存在は、その子が自分で判断して主張する能力が身についているということです。逆に、親や学校、社会に反抗できない子どもの環境や精神状態の方が心配です。




2023年 2月20日 放送
薬嫌いへの服薬


 水薬しか飲んでくれない子、水薬は飲まない子、どのような薬でも飲まない子など薬嫌いも色々です。

一日3回食後という表現が使用されます。しかし、満腹の時はなおさらまずい薬を嫌がります。食後という1日3回の間隔が服薬のタイミングとして良く、忘れにくいというメリットから慣用的に用いられております。特殊な薬以外、@子供での空腹時服薬は問題はありません。水で服用以外にも、A少量の牛乳、練乳、ジュース、スポーツドリンク、アイスクリーム、ヨーグルトなど好む飲み物や食べ物に混ぜることも特殊な薬以外は可能です。混ぜる際には一部にのみ混ぜて、まずい薬の部分を食べさせた後はおいしい残りを食べさせます。ただ、マクロライド系抗生剤の一部などではジュース、スポーツドリンク、ヨーグルトなどに混ぜると薬のコーティングがとれ、苦みが逆に増強される薬があります。また、主食や主食に近い食品に混ぜることは、主食嫌いになると困りますので、避けたほうが無難です。Bスプーンや乳首で飲ませたり、スポイトや注射器で少量ずつ舌の奥に流し込む方法や、C粉薬を数滴の水で練ってペースト状にして頬部の口腔粘膜に塗りつけた後に水分を飲ませる方法もありあります。D冷たくした方が飲みやすくなります。アイスクリームを使用したり、時には薬を少量の水と混ぜて凍らせてシャーベット状にすると飲める場合もあります。E薬をオブラートで包み込んで飲ませる方法もあります。オブラートの外側をさっと水でぬらし、とろみを出して服用させて下さい。F服薬補助ゼリーではゼリーに薬を混ぜるのではなく、ゼリーの上に薬を置きさらにその上をゼリーで包むようにして使用します。粉の薬を少量の水でペースト状に練ったものをゼリーで包むと利用しやすくなります。特別なごく一部の薬を除き、薬は決められた時間ごとに飲ませないといけないほどの厳密さはありません。






2023年 1月22日 放送
子どもの服装


 衣服は外気温や年齢、発育、使用目的や状況によって選択する必要があります。生後1〜2か月頃では体温調節機能は未熟なために服の主目的は保温であり、全身を覆う長着が主体です。ただ、この頃に股関節の動きを妨げると先天性股関節脱臼になりやすく、オムツも含め下肢が自由に動かせる様な、ゆったりとした服装が基本です。

 保湿性や通気性の良い、頻回の洗濯にも耐えうる肌ざわりの良い木綿の下着、伸縮性が良く体型に合った動きやすい服、子どもが着脱しやすい単純な形の服を四季の変化に合わせて使用するのが基本です。一般的には服の主目的が保温である生後2か月頃までは大人より1枚多めの服装で、その後は大人と同程度、生後6か月頃以降は大人よりも1枚少なめと言われます。子どもは走り回りますので、大人よりも暑さを感じますし、発汗も多く、薄着が基本です。幼児では少なくとも大人よりも1枚少なめか同程度で、子どもが気持ち良く感じる服装にして下さい。

 冷たい空気は下に移動しますので、寝ている赤ちゃんは成人よりも寒く感じているかもしれません。逆に、床暖房やホットカーペットの上の赤ちゃんは、暖かく感じており、長時間になると低温熱傷や熱中症などにも注意が必要です。抱っこ紐での抱っこでは、お母さんの体温で赤ちゃんは温かくなります。ベビーカー内は夏では地面近いため暑くなりますが、冬は地面に近いほど気温が低く、風にも配慮する服装が必要です。

 暑がり、寒がり、よく動く子、静かな子など子どもの個性や体質の違いにも考慮が必要です。夏冬にかかわらず、下着は通気性や吸湿性が良い清潔な木綿の製品が基本で、冬でも子どもに発熱インナーの下着は不要です。

 自分で服を着れる場合は脱着しやすい服で、事故防止の観点からは紐類やフードは付いてない方がよく、なるべくシンプルな服を選んで下さい。








Copyright © こばやし小児科 All Rights Reserved.

PAGE TOP