2007年 12月23日 放送
インフルエンザ5


 インフルエンザが流行しています。例年は1月から流行が始まるのですが、今年は11月から流行が始まりました。インフルエンザは香港型とソ連型の2種類のA型とB型という3種類が毎年流行します。現在はソ連型が流行の主流です。今後は香港型やB型が流行する可能性があり、ソ連型に感染しても香港型やB型のインフルエンザには感染しますので、今後も要注意です。

 年少児では脳症が、高齢者では肺炎が問題となるやっかいな病気です。ワクチン接種で予防したり、軽症化が期待出来ます。インフルエンザワクチンには2種類のA型とB型に効くように成分が調整されております。

 インフルエンザウイルスに感染後1〜3日で急に発熱し、38〜40℃が4〜7日間続きます。一旦、熱が下がったように見えた後再度上がることも時々あります。寒気、関節痛、筋肉痛、咳などの症状が強いのが特徴です。

 診断はのどか鼻腔内の粘液で行い、15分ほどで診断できます。

 インフルエンザ脳症は3歳までの乳幼児に生じやすく、発熱と同じ日や翌日になります。意識の低下や長時間の痙攣が特徴です。脳に後遺症を残しやすい病気です。高熱だから脳症になるわけではありません。熱だけでは頭に異常はきません。

 ボルタレンやポンタールなどの解熱剤を使用した場合に脳症が生じやすいとされています。その他にも脳症をおこすやすいとされる解熱剤が数種類あります。病院でもらったり、薬局で買った総合感冒剤(風邪薬)にも脳症を起こしやすいとされる解熱剤が入っている場合が多くみられます。安全性が高いのはアセトアミノフェン(カロナールなど)のみです。解熱剤は数時間は熱を下げる作用はありますが、病気そのものを治す力はありません。

 小児では治療薬のタミフルやリレンザでの異常行動が報告されております。薬を飲まなくてもインフルエンザ自体での異常行動の報告もあります。インフルエンザの初期2日間は薬の使用、使用しないにかかわらず、子どもの言動に注意し、目を離さないようにして下さい。



2007年 11月25日 放送
嘔吐下痢症5


 ロタウイルスやノロウイルス、腸管アデノウイルスが主な原因です。ロタウイルスやノロウイルスは毎年冬季に流行し、腸管アデノウイルスは年間を通じて発生します。各々にはタイプが多くあり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。

 患者の吐物や下痢便中にウイルスがありますので、これらを触って、口の中にウイルスが入ることによる感染が主です。吐物や便を触った後は手洗いを十分する必要があります。塩素系の消毒薬や漂白剤、85℃で1分間以上煮沸がこのウイルスに有効とされています。
 症状は病名が示すように頻回の嘔吐と下痢です。潜伏期間は1〜3日です。微熱が1日程度認められることもあります。嘔吐は半日から丸1日で治まります。
 下痢は4〜5日間続きます。淡黄色の便や白っぽいクリーム色の水様便が特徴です。 

 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に下痢を止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。嘔吐がひどい場合には薬を使用します。

 嘔吐や下痢がひどく、口の中が渇いてきたり、ぐったりするなど脱水が疑われる場合には点滴による水分補給が必要です。
 初期の嘔吐や嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(コップ1/4〜1/3程度の嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。

 下痢が続きますので、牛乳や乳糖を多く含むお菓子などは止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。下痢で腸の粘膜が傷害されると、乳糖などの吸収が悪くなり、乳糖や糖分の高い濃度の飲み物や食べ物は下痢の回復を悪くします。離乳食や食事は消化が良くない食物以外は欲しがるだけ与えることを心がけて下さい。食事をすることは腸の回復を助けます。



2007年 10月28日 放送
乾燥肌5


 冬は肌が乾燥しがちで、布団に入って温もると痒くなる子供や老人が多くなり、イライラや不眠の原因になります。皮膚を保湿する外用剤が乾燥を防ぎ、痒みを予防します。

1、皮膚について
 皮膚の表面には角層というバリアがあり、その上の皮脂と共に水分を調節しています。
 入浴後は角層に水分が十分含まれるため肌はスベスベです。乾燥肌をスベスベの肌にするには角層に水分を保たせればよいのです。
 皮脂の量は生後6か月から思春期までは少なく皮膚が乾燥しがちになります。思春期では皮脂が多くなるのですが、老人になると皮膚は再び乾燥します。
 部屋の空気が乾燥していると当然皮膚も乾燥します。エヤコン、コタツ、電気毛布などの快適に暮らす道具が皮膚を乾燥させます。

2、入浴
 汗やあかが痒みの原因となることがあります。お風呂は汗やあかを落とすという意味では有用です。タオルでゴシゴシ洗うのは皮膚を傷つけ、皮膚の持つバリア機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増しますので止めましょう。自分にあった石鹸をやさしく使って、石鹸分をよく洗い流すような入浴をして下さい。

3、衣服
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。麻や毛糸なども皮膚に直接触れないようにして下さい。

4、食事、ホコリ
 食物制限は明らかに食べればひどくなる食物のみに限定してください。食物制限自体がストレスとなり、ストレス自体が皮膚炎を悪化させます。
 ホコリ、ダニを減らすことも大切ですが、限度があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、じゅうたんなどを止めるなどで十分と思います。乾燥肌やアトピー性皮膚炎は多くの因子が関係しています。原因の1つのみにとらわれすぎるのは感心しません。

5、薬
 ツルツル、スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠は困ります。肌に水分を保たせる保湿作用のあるクリームや軟膏があります。入浴後に塗ると効果があります。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと症状が悪化し、皮膚のバリア機能も低下します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬を併用して下さい。自分の生活に合わせて、あせらず気長に治療することが大切です。



2007年 9月23日 放送
発熱5


 子どもの発熱は心配ですが、風邪の高熱のみでは脳に障害を残すことはありません。発熱は細菌やウイルスに対する生体の防御反応の1つで、病気に負けて熱が出るわけではありません。体温が39℃ということは脳の体温中枢という体温をコントロールする所が自分の適した体温が39℃と判断しているということです。体温が急に上昇する時には、手足が冷たくなり、寒気を強く訴えることがあります。この時は体を温めてあげて下さい。それ以外は薄着で、涼しい気持ちの良い環境つくりを心がけてください。発熱時は水分補給が重要です。食べられるものから食べさせてください。食べ物も水分です。

1、考え方
 幼児では1年間に5〜6回の発熱があるのが一般的です。特に保育園や幼稚園に行き始めの1年間は頻繁に熱を出します。たくさんのウイルスに感染し、抵抗力をたくさん獲得すると発熱の頻度も少なくなります。それまで我慢です。

2、発熱時の対応
 水枕で頭などを冷やしたり、おでこに張るシートは子供が嫌がればやめて下さい。熱が高くても機嫌が良い場合はあせる必要はありません。高熱が長期間続いても、熱で頭が悪くなることはありません。機嫌がかなり悪い、ぐったりしている、呼びかけに対する反応が悪い(意識低下)などの場合は救急で小児科専門医のある病院を受診して下さい。

3、解熱剤の使用
 解熱剤は熱を下げて子供の機嫌を良くしますのでありがたい薬ですが、病気は治しません。解熱剤の使用は熱のために機嫌が悪い時や寝てくれないなどの時に限定し、アセトアミノフェンを使用します。インフルエンザの時は他の解熱剤は脳炎・脳症などとの関係が指摘されていますので使用しないで下さい。風邪薬にも解熱剤は入っていますので病院の薬や薬局で買った薬は内容をチェックして、不明な場合は使用しないで下さい。



2007年 8月26日 放送
包茎(ほうけい)2


 包茎はちんちんの皮(包皮)が亀頭を覆っている状態をいいますが、包皮口(ちんちんの尿の出口の皮の部分)が狭くて包皮がむけなくて亀頭が露出できない真性包茎と亀頭が容易に露出できる仮性包茎に分けます。
 出生時の男児は全員が真性包茎ですが、成長するに従い仮性包茎となり成人では皮もむけます。程度の強い包茎の真性包茎は中学生でも10%ほどといわれております。思春期が過ぎるまで包皮が亀頭を覆っているのが普通です。
 包皮と亀頭の間には分泌物や剥離した細胞が溜まった黄白色の軟らかい恥垢(ちこう)があります。包皮の下に黄白色の丸いコロコロした塊のように見える場合もあります。こういった恥垢は病的なものではなく、成長に従い包茎が治ってくると自然に消失します。

治療

 包茎口が狭すぎて排尿するのが困難な場合は治療が必要ですが、それ以外の包茎の治療は不要です。自然に仮性包茎となり、思春期を過ぎてから包茎も消失します。
 治療には1〜2か月かけて軟膏を包皮口から塗りこんでいく保存療法と手術で輪状に切取る方法があります。保存的療法で十分効果がありますので、手術を必要とすることは稀です。

注)ちんちんをゴシゴシ洗うことについて

 子供でも恥垢のあるちんちんは不潔で、皮をむいてよく洗った方が良いという人がいます。本当にそうでしょうか。恥垢は無菌であり、感染の原因とはなりません。不潔でもありません。子供は汚い手でちんちんを触るため、細菌が付いて亀頭が腫れる亀頭炎をよくおこします。数日の抗生剤の服用で治ります。包茎はちんちんの発育を妨げませんし、恥垢が陰茎癌の原因になるという根拠もありません。皮をむいてゴシゴシ洗う必要はありません。小児では包皮を無理にむくと出血させますし、痛くて恐怖心を与えます。
 宗教儀式や習慣として、小児期に包皮を輪状に切取ってしまう割礼を行っている国もありますが、包皮は小児期では弱い亀頭を外的刺激や外傷から守っていますし、性的刺激を感知する機能がありますので無駄な部分ではありません。



2007年 7月22日 放送
夜泣き、かん虫


 大人は昼間に仕事や家庭があり、夜に眠れないとしんどくなりますが、乳幼児では夜昼関係なしに、眠りたい時に眠り、起きたい時に起き、お腹がすいた時に食べるという生活で何ら問題がありません。子供が成長して大人の生活リズムに近づくと夜泣きは自然になくなります。それまで我慢です。夜中におっぱいを欲しがれば与えて、抱っこしてあやしてあげて下さい。
 睡眠のリズム、夜昼の区別に重要なのは光と言われ、朝の光の刺激を受けると体は覚醒状態となります。また、昼間の適度な疲れも睡眠には重要です。昼寝が長いと夜に眠ってくれません。昼間の興奮の影響が夜に出ることもあります。環境が変わっても興奮します。

 乳幼児が泣き止まない、夜泣き、食べてくれない、すぐに不機嫌になる、奇声を発する、すねて動かないなど親の言うことを聞かない、親が困ることをする事を「かん虫」といいます。子供は子供のリズムがあり、やりたいこともあります。他人の迷惑など考えられる年齢ではありません。子供に自我が芽生えてきた証拠です。危険なことには怒る必要はありますが、言い聞かして理解できるようになる年齢である5歳頃までじっと我慢です。ほとんどの親は「夜泣きやかん虫」に悩んだ経験を持っています。針やナイフを使った「かん虫切り」の風習でB型肝炎が流行した地方がありました。

対応
 夜泣きは生後7、8か月頃に最も多く、2、3歳頃には少なくなります。気長に待つことが基本ですが、@朝に光(太陽光や室内の光)を当てる。A昼間はなるべく遊ばす。B昼寝は昼食後の早い時間帯で1〜2時間程度にするなども試みてください。騒がしい、暑苦しい、明るいなどの眠る環境も関係します。親が子供の夜泣きのために睡眠不足となると大変です。夜泣きがひどい場合には薬も考慮します。
 かん虫も自我の形成過程ですので、我慢するしかないのですが、子育て中の友人や小児科医に相談してください。対応策が見つかるかもしれませんし、気分が楽になります。



2007年 6月24日 放送
赤ちゃんスリングと先天性股関節脱臼


 最近流行している赤ちゃんスリングは、おんぶひも、抱っこひもに比べファッション性が高いためか、使用されてきています。しかし、生後3か月未満の赤ちゃんに横抱きの状態で使用されている場合もあり、股関節脱臼になる危険性があります。スリングを使う際、股関節脱臼にならないように生後1か月以降に使用するのが望ましいとされています。また、スリングをまだ首がすわっていない生後3か月未満の赤ちゃんに使用するときに、「よこ抱き」や「バナナ抱き」のように下肢を伸展した形で使用すると、股関節脱臼を誘発する肢位になり易い危険性があります。この年齢ではスリングで長時間横抱きにするのは股関節にとってはあまり良いことでは無いと考えます。もしスリングを生後3か月未満の赤ちゃんに使用するときには、縦抱きにして赤ちゃんの股関節が開いた開排位になるように、両下肢が母親のおなかをまたぐように股関節を広げて、膝を曲げた状態になるような使用法で使用する必要があります。関節は自由に動かせるようにし、首が据わるまでは首の後ろに手を添えてあげて下さい。

 赤ちゃんの股関節を守るために大切なことは赤ちゃんの股が開いて下肢がM字になっている赤ちゃん本来の自然な姿勢がとれるような配慮をすることです。赤ちゃんを横に抱っこするときでも、赤ちゃんの股の間に手を入れて、おしりを支えるようにして下肢が自由に動けるような配慮をしながら抱っこすることが必要です。

 たて抱きは足が十分に開いている抱き方なので問題はありませんが、横抱きのときは赤ちゃんの足の位置に注意が必要です。赤ちゃんの足はひざを少し曲げた状態でのM字が理想的です。ですから足側のポーチは広めにとり、抱いた後必ず赤ちゃんの足がM字になっているかどうかチェックして下さい。ただ、赤ちゃんが上を向いた状態の横抱きだとお母さん側にある赤ちゃんの股関節を、お母さんのお腹で押してしまい股関節が動きにくくなりますので長時間は避けるべきです。先天性股関節脱臼の予防の本質は、赤ちゃんの下肢の自由運動を妨げないということです。

1)下肢の動きをなるべく制限しないような薄いオムツ、オムツカバーを股間に当て、赤ちゃんの下肢の自由な動きを妨げないことが基本です。したがって下肢の動きを制限するようなオムツカバーや衣服は使用しないことが重要です。赤ちゃんの下肢の運動とは、曲げることも伸ばすことも含まれます。伸ばすことも重要です。

2)赤ちゃんを抱く場合は、抱く人と赤ちゃんとがお互いが向き合うようにするのが大切です。そうすれば赤ちゃんの下肢は自然な形をとり、ある程度自由な運動が可能になります。赤ちゃんを横にして抱くと、下肢の動きが制限されるので横抱きは出来るだけ避けるべきです。

 首が座っていたら当て抱きにして腰抱きにします。スリングはどうしても股関節を閉じてしまい易いので、抱っこする人の腰骨の上で股をまたがせるようにして抱っこするようにします。スリングに入れる時に赤ちゃんの股をしっかりと開脚させ、抱っこする人の体にしがみつかせるような体勢にすることが重要です。そして、赤ちゃんの膝下は自由に動かせるように、スリングの外に出しておくことが基本です。

 小さくて足が外に出せない場合は、スリングの中で 開脚状態にし、足が多少自由に動かせるように留意する。足が出せるようになったら出来るだけ出すようにします。

 新生児の頃から、赤ちゃんは抱っこする人と向い合わせになるようにして、股関節をしっかり開くようスリングに入れてあげてください。足が出ない場合は股関節が広がっていること、お尻に体重がかかっていることを確認してください。股関節が開くか、自由に動かせるように抱っこすることが理想です。赤ちゃんの足がカエルのように開いた形で抱っこするような形でスリングを使うと良いと思います。スリングの基本としては、手で自然に抱っこした形をスリングで再現することです。



2007年 5月27日 放送
夏の食中毒


 腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などの細菌が原因です。
 症状は腹痛、嘔気・嘔吐、下痢などです。菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。一般的には、菌が腸管内で増殖して毒素などを出し、発症しますので増殖する時間(8時間から数日)が必要ですが、ブドウ球菌などは食物の中で増殖して毒素を出し、その増えた毒素を食べての発症ですので食後1時間程度でも発症します。蜂蜜に混入したボツリヌス菌では生後8か月までの乳児では腸管の中で増殖し、便秘や筋力低下を起こす神経毒を作る可能性があり、1歳になるまでは蜂蜜を与えないで下さい。

1、原因
1)腸炎ビブリオ
 夏の魚介類のエラや内臓に存在します。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。魚を調理したまな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 鶏肉を介する感染が主です。汚染されれば冷蔵庫に保存しても感染は防げません。便に血液が混入します。

3)サルモネラ
 卵、鶏肉、ペット類からの感染が主です。粘血を伴った緑色の水様便ですが、乳幼児では重症化します。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157の菌です。熱に弱く(75℃1分間で死滅)十分な加熱が最も有効です。牛肉からの感染が主です。血便になり重症化もします。

5)黄色ブドウ球菌
 調理人の手の化膿部から汚染します。おにぎり、お弁当などでの感染が主です。食物の中で菌が増殖し、毒素が蓄積され発症しますので、食後1時間でも発症します。

2、対策
 食べた細菌数や毒素の量が少なければ治療なしでも自然に治ります。菌や毒素を少なくすることが重要で、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うなどを心がけて下さい。

 下痢を止める薬は悪い菌の排出も止め、重症化させる可能性があり、使用しません。



2007年 4月22日 放送
こどもの日の健康チェック


 先日、こどもの日がありましたが、年に1、2回は自分の子供を全般的にわたって見直してみませんか。元気さ、食欲、運動能力、知的能力、やさしさ、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 感染を予防できますし、かかっても軽症で済みます。麻疹と風疹の混合ワクチンは1歳と幼稚園の年長児での2回接種になりました。出来るだけ早期に接種してください。有料ですが、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。お父さんやお母さんも今まで感染してなければ自分自身へのワクチン接種を考慮して下さい。

2)健診での身長や体重の伸びは順調ですか。
 言葉、行動、運動などの発達で気になることがあれば小児科専門医にご相談下さい。健診での身長や体重の数値を母子手帳の後ろのほうにある男女の年齢別の身長や体重を書き込めるグラフに印をつけて下さい。大きな年齢の子では幼稚園や学校での記録があります。小児科には平均の身長と体重のグラフがあります。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあり、伸び率はどうかなどがわかります。

 身長がかなり低い場合はホルモンの分泌が少ないなどの病気のこともあります。小児 科専門医を受診して下さい。治療で身長は良く伸びます。2歳頃までの肥満体は問題ないのですが、それ以降での高度の肥満は問題になることもありますし、成人の肥満をおこしやすい体質になります。小学校以降でかなり太っている場合は脂肪肝など肝機能や糖尿病のチェックが必要です。体に異常が生じるほどの肥満は困ります。しかし、やせすぎも問題です。特に発育期は身体のみならず骨や子宮なども発育する時期です。発育期での無理なダイエットは危険です。健康で丈夫な体は一生の宝です。



2007年 3月25日 放送
低身長8


 低身長の子は引っ込み思案になったり、いじめの対象になったりしますし、学校などの集団生活の中や多感な思春期では精神的な問題を引き起こすことがあります。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。低身長が心配な場合は小児科専門医にご相談下さい。中学生や高校生になり、身長が伸びなくなってからでは遅すぎます。また、治療の対象とならない低身長でも子どもに対する精神的なサポートが必要です。
 骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲んだり、カルシュームを多く摂っても身長は伸びません。野菜などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともあります。負担がかからないように工夫をして下さい。楽しく適度なスポーツをするのが良いと思います。

1、原因
1)成長ホルモン分泌不全症
 成長ホルモンは骨を伸ばしたり、筋肉を大きくする力があります。このホルモンが少ない場合は身長の伸びはかなり悪くなりますが、ホルモンの補充で身長は伸びます。

2)甲状腺機能低下症
 甲状腺ホルモンは身体の活動性を高めます。低下症では活動性の低下や身長の伸びが低下します。ホルモンを補充することで身長も伸びます。

3)骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気
 低身長の治療は可能な場合があります。

4)思春期早発症
 7歳までに乳房が大きくなるなど思春期が早く来すぎると、子供の頃の身長は大きいのですが、身長が早く止まりますので最終の身長は低くなります。早期であれば治療可能です。

5)愛情遮断症候群
 子供が愛情に飢えてストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。

2、治療
 成長ホルモンや甲状腺ホルモンが少なければ、足りない分だけのホルモンを補充します。補充することによって身長が伸びる以外にも体の働きを正常化します。



2007年 2月25日 放送
子どもの病気と入浴


子供は汗や皮膚の汚れが多く出ます。手のひらやガーゼ、木綿のタオルを使用し、石鹸を使うのはゴシゴシこすらなくても皮膚の汚れが落ちるようにすることが目的です。石鹸をお湯で十分洗い流して下さい。石鹸分が残ると皮膚を刺激し、痛みや痒みの原因となります。
 皮膚が乾燥するとかゆみの原因となります。乾燥肌の程度の強い子には入浴後に保湿性の軟膏を使用してかゆみやイライラから守ってあげて下さい。

1、発熱と入浴
 発熱があるときの入浴ですが、入浴しても風邪の症状や治りやすさに変わりはありません。特に肌の弱い子や湿疹のある子の場合には入浴を中止すると皮膚炎がひどくなり、イライラや不眠、不機嫌になります。オムツかぶれもできます。病気を治すには病気と戦う体力の維持が重要ですので、体力を弱らせる不眠や不機嫌は困ります。熱があっても、元気なときは、さっと短期間の入浴で汗や皮膚の汚れを流してあげて下さい。機嫌が良くなり寝てくれます。

2、予防接種と入浴
 予防接種のした日の入浴は可能ですし、日常生活でしてはいけないことはありません。運動も特に制限する必要はありません。ただ、ワクチンの種類によっては大きな子供や成人では数日間体がだるくなることがありますので、この場合は体調に合わせて下さい。

3、湿疹と入浴
 湿疹に汚れがつくとかゆみが増します。皮膚をかけばさらに湿疹が増悪します。皮膚の汚れを落とすための入浴は湿疹の管理面からも重要です。皮膚の弱い子は出来るだけ毎日、入浴かシャワーをさせてあげて下さい。汗や皮膚の汚れを出来るだけ少なくすればかゆみも減少し、使用する軟膏や薬も少なくてすみます。入浴後に皮膚の手入れです。

4、お風呂での事故防止
 お風呂でおぼれたり、熱いお湯でのやけどの防止が重要です。ヨチヨチ歩きをし始めたら要注意です。風呂場に近づけない、使用しないときは水を抜く、浴槽にふたをするなど事故防止に注意してあげて下さい。子供の入浴前に、お風呂の温度も自分の手で必ず確認してあげて下さい。



2007年 1月28日 放送
インフルエンザ


 3月末頃まではインフルエンザの流行シーズンです。インフルエンザは高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳など多彩な症状を示し、年少児では脳炎・脳症が、高齢者では肺炎が問題となるやっかいな病気です。かからないようにうがい、マスク、手洗いをお願いします。

1、インフルエンザウイルス
 A型とB型が流行し、A型は香港型とソ連型に大きく分類されます。毎年ウイルスが変化しますので、昨年に感染していてもまた感染します。数種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザにかかることもあります。

2、症状
 ウイルスに感染後1〜3日で急に発熱し、38〜40℃が4〜7日間続きます。一旦、熱が下がったように見えた後再度上がることも時々あります。寒気、関節痛、筋肉痛、咳などの症状が強いのが特徴です。

3、診断
 のどか鼻腔内の粘液で15分ほどで診断できます。粘液採取は痛いですが我慢です。

4、治療薬
 インフルエンザの薬はウイルスの増殖を抑える薬ですので、体内でウイルスがすでに増えてしまった状態では効果がありません。そのため発熱出現後2日以内の開始でなければ効かないとされています。早期に診断し、なるべく早く薬を服用してウイルスを増やさないようにするのが大切です。

5、脳炎・脳症
 意識の低下や長時間の痙攣が特徴です。脳に後遺症を残しやすい病気です。3歳までの乳幼児に生じやすく、発熱と同じ日や翌日になります。高熱だから脳炎・脳症になるわけではありません。熱だけでは頭に異常はきません。

6、解熱剤の使用
 ボルタレンやポンタールなどの解熱剤を使用した場合に脳炎・脳症が生じやすいとされています。その他にも脳炎・脳症をおこすやすいとされる解熱剤が数種類あります。安全性が高いのはアセトアミノフェン(カロナールなど)のみです。解熱剤は数時間は熱を下げる作用はありますが、病気そのものを治す力はありません。熱のため機嫌が悪く寝てくれないなど困る時に限定してアセトアミノフェンを少量使用するにとどめて下さい。病院でもらったり、薬局で買った総合感冒剤(風邪薬)には解熱剤が入っています。成分が不明な場合は使用しないで下さい。





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