乳児の湿疹
赤ちゃんの顔や体に出来る赤い湿疹を総称して乳児湿疹と呼びます。汗や食べこぼしの汚れ、皮脂の汚れなどが原因となります。
1、あせも(汗疹)
汗腺の出口(汗の出る穴)がほこりや汚れで塞がれて炎症が生じた状態で、高温多湿という環境で生じます。梅雨から夏に小さな子供によくみられ、痒がります。最近はチャイルドシートの影響で小さな子の背中によく見かけます。
汗腺の詰まり方には2種類あり、日焼けなどで皮膚の表面で汗腺が詰まると白っぽい小さなぶつぶつになりますが、もう少し中のほうで詰まると赤みがでます。一般にはこの赤みがあるのを汗疹といいます。
予防と治療
高温多湿な環境では、汗も多くて蒸発もしませんので汗腺の皮膚への出口がつまりやすくなります。汗をなるべく早く発散させることが汗疹の予防には重要です。風通しを良くし、通気性が良く汗を吸い取りやすい薄手の綿の服を使用し、汗をこまめに拭き取って下さい。入浴やシャワーも必要です。ゴシゴシこすらずに、石鹸を使用して手でやさしく洗ってあげて下さい。
冬に厚着をさせたり、暖房のかけ過ぎで汗をかいて汗疹になることもあります。暖房が効いた部屋では薄着にして下さい。
基本は@吸湿性のよい下着(木綿など)を着せる。A風通しを良くする。B皮膚を清潔に保つ。Cシャワーなどを適宜使用するなどです。
注意点
痒みを伴いますので引っかき傷をよく作ります。その傷から細菌感染をおこし、「とびひ」などになります。最初は小さな薄い膜の水ぶくれですが、すぐ破れてジュクジュクになります。破れたところの液が他の傷に付くと同じような水ぶくれが出来て破れます。
2、とびひ(伝染性膿痂疹)
「とびひ」は正式には伝染性膿痂疹といい、虫刺されや汗疹ができ、湿疹が悪化しやすい夏に多発する病気で、子供によくみられます。虫刺されや汗疹の掻き傷、擦り傷などに細菌がつき、そこを触った手で他の場所を掻くと飛び火してどんどん広がる病気なので、俗に「とびひ」といわれます。直接接触によって伝染することが多く、夏期を中心に保育園や幼稚園での集団発生もみられますが、最近では温水プールの普及により一年中みられるようになりました。
とびひは、アトピー性皮膚炎、虫刺され、汗疹など皮膚に傷があればどこでにも出来る可能性があります。季節は、高温多湿で汗がいっぱい出て、皮膚も不潔になりやすい7〜9月に起こりやすく、年齢は1歳〜6歳ころまでの子どもに多い病気です。
伝染性膿痂疹は、臨床像と原因菌から水疱性膿痂疹(水膨れが出来る)と痂皮性膿痂疹(かさぶたが出来る)の2種類に分類されます。
1)水疱性膿痂疹
黄色ブドウ球菌(ファージII群71型コアグラーゼV菌が多い)によるもので、初め直径1〜2mmの紅斑を生じ、数時間で小水疱となり、これが拡大して容易に破れびらん面を形成します。
最初は1_程度の小さな水疱から始まりますが、だんだん広がり2〜3日で指頭大になります。水疱は破れやすく、破れると「びらん(ただれること)」になり、そこに薄いかさぶたができます。水疱が破れて液が他に付くと感染して、どんどん増えていきます。鼻孔のあたりから始まって、おなかや背中、手足と広がることが多い病気です。
ひとつひとつの病巣はだんだん乾燥して10日間くらいで治りますが、全体が治るまでには2〜3週間ぐらいかかることもあります。普通は発熱はみられません。
2)痂皮性膿痂疹
多くはA群溶連菌によるもので、小紅斑から小膿疱、びらんとなり、やがて黄褐色の厚い痂皮(かさぶた)となります。A群溶連菌によるものは腎炎を起こすことがありますので抗生物質の内服が必要です。
予防と治療
とびひは、皮膚にブドウ球菌や連鎖球菌が入り込んで発症しますので、治療は、まず病変部をイソジン液などの消毒液で消毒(消毒液での消毒は避け、シャワーで皮膚の清潔を保つほうが良いという考え方もあります)し、抗生剤入りの軟膏を塗ります。触ったり、掻いたりすると広がっていくので、小さいお子さんの場合は、ガーゼなどで被うなど工夫が必要です。
かゆみを伴うことが多く、子供は特にかゆみを我慢できずに掻きむしり、その手で他の場所や他人に伝染させますので、掻くことを予防するためにかゆみ止めの抗ヒスタミン剤の内服が処方されることもあります。
予防には皮膚を清潔に保つことが重要ですので、毎日シャワーを浴びて汗をこまめに流しましょう。罹患した際には、石鹸を用いるのはかまいませんが、発疹が湿潤しているときはシャワーで石鹸分を良く洗い流すようにし、浴槽にはつからないほうが良いようです。特に他の乳幼児と一緒の入浴は避けて下さい。タオル類の共用も避けましょう。伝染防止のため、びらんが乾燥するまでは幼稚園や保育園などは休ませてください。爪をきちんと切り、外出後の手洗いを励行して手指の清潔に努めましょう。
はじめにきちんと手当すればよいのですが、とびひはとても広がりやすいものです。とびひのようだと思ったら、皮膚科か小児科で受診して、完治するまできちんと治療してください。症状の強い場合は抗生剤を内服したほうが早く治ります。また、かゆみ止めの飲み薬を使うこともあります。
3、乳児脂漏性湿疹
頭、眉、耳、鼻の周囲を中心とした顔面が主ですが、首やわきの下にも見られることがあります。最初は皮膚が赤くなり、小さな盛り上がった湿疹になり、しばらくすると脂性の黄色いかさぶたの様な湿疹が付いてきます。頭髪部や眉毛に黄色い脂っぽいかさぶたが付くことで気づかれますが、放置しておくと臭いがしてきます。痒みは強くありません。
生後3〜4週頃に出来始めて3〜4か月頃には自然治癒します。赤ちゃんの皮膚はお母さん胎内で女性ホルモンの影響を受け、皮脂の分泌が盛んなために脂漏性湿疹が出来るのですが、生後3〜4か月を過ぎる頃には女性ホルモンの影響が減少し、脂漏性湿疹は出来なくなっていきます。逆に、それ以降の子どもは皮脂の分泌が減少したままですので、皮脂の分泌が盛んになる思春期まで乾燥肌が出来やすい状況になります。
予防と治療
入浴して石鹸で皮膚の汚れを落として下さい。強くこすると赤ちゃんの皮膚を傷つけますので注意して下さい。石鹸分は十分流して落として下さい。
4、おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)
赤ちゃんのおむつの当たる部分にはじめは淡く赤くなり、隆起した小さな湿疹、ひどくなると真っ赤になって皮がむけます。汗や尿、便などの刺激が原因です。お尻を拭くときの機械的刺激や、おむつがこすれる刺激が原因となることもあります。
便がやわらかく、尿の回数が多い低年齢の赤ちゃんに多く、おむつの中が蒸れやすい夏に多くみられます。下痢が続いたとき、入浴やお尻を洗う回数が少ないとき、おむつ交換が遅れたときにも起こりやすくなります。
予防と治療
症状が軽ければお尻を洗い、通気性を良くするだけで数日で治ります。症状が強い場合には外用薬(軟膏)での治療になります。
こまめにおむつを取り替え、ひどい場合には石鹸でお尻を1日数回やさしく洗います。お尻の皮膚を清潔に保つことが重要です。洗った後はすぐにおむつをせず、やさしく風を当てたり、乾いたガーゼで押さえて湿り気を取り、お尻の皮膚を乾燥させてからおむつをすることも大切です。
5、かぶれ(接触性皮膚炎)
皮膚に原因物質が接触して起こる皮膚炎です。皮膚に接触付着した物質の刺激によるものと皮膚に接触した物質によるアレルギーによる場合の2つのタイプがあります。接触した部位に紅斑(赤くなる)、小丘疹、水泡(水ぶくれ)が出現し、強い痒みが伴います。アレルギー性の場合は接触して1〜2日後に症状が現れる場合があります。
予防と治療
原因物質がわかれば触れないように注意します。外用剤(軟膏)を使用しますが、痒みの強い場合は痒み止めの内服薬も使用します。
6、蕁麻疹(じんましん)
皮膚が蚊に刺された後のような赤い盛り上がる皮疹が特徴で、大きさも形も大小様々で、全身どこにでも出来ます。痒みの強いのが特徴です。食べ物、薬、細菌やウイルス、虫刺されなどが原因となります。食後1時間までに蕁麻疹が出れば食事内容に原因があると考えますが、一般的に原因の特定は困難です。また、体調の悪いときに出やすくなります。急激な温度差による寒冷蕁麻疹、日光に当たると出る日光蕁麻疹などもあります。
通常は数時間以内に自然に治りますが、重傷な場合は、口腔内や気道が腫れて呼吸困難になったり、血圧が低下してショック症状が現れることがありますので油断は出来ません。
予防と治療
原因が明白な場合は、原因を避けることが重要ですが、体調の悪い時には原因としては疑わしいものでも避けるようにして下さい。原因が明白で無い場合には食事制限は不要です。食事制限は子どもの発育に悪影響を及ぼします。血液検査での原因究明は、あまり当てになりません。
蕁麻疹出現時は冷やしたタオルで蕁麻疹を冷やすと痒みが弱まります。涼しくしてあげることが痒みを和らげるのに重要です。蕁麻疹が持続する場合は薬による治療が必要となりますが、蕁麻疹は出現する場所が時間と共に変化しますので外用剤(痒み止めの軟膏)は使いづらく、内服薬の処方が一般的です。
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乳幼児のかん虫、反抗期、こだわり
1、かん虫
赤ちゃんが激しく泣きやまない、夜泣き、食べない、すぐ不機嫌になる、奇声を発する、すねて動かないなど親の言うことをきかない、親が困ることをするなどを「かんむし」と表現します。この子はかん虫が出て困るや、「虫封じ」をしてもらう、「かん虫を切りに行く」ということも耳にします。虫封じの祈祷や虫封じの漢方薬の宣伝を目にします。かん虫を見た人はいません。大人の思うようにならないことを「かん虫が出た」と表現します。子どもは成長するにつれ自分の気持ちが出てきます。自分の思うようにならなければ子どもも腹が立ちます。子どもの思うようになることは少ないのです。子どもは大人とは異なりそれを表現する力を持っていませんし、ストレスを発散する手段もありません。自我が芽生え、腹が立つことを覚えると「かん虫」が出てきます。子どもがうまく成長している証拠です。病気のこともありますが稀です。まして、祈祷や短期間の薬が効くとは思われません。ただ、これらを行うことで親や家族が安心するという心の平穏さが取り戻されれば、子どもも精神的に安定するという有用性はあるかもしれません。
しかし、親もしんどくなりますので、何とか改善しないかと考えるのは当然です。疲れたら子育て中の友人か小児科専門医に相談しましょう。気持ちが楽になります。治すことをあせるより、かん虫とうまく付き合うことを考えて下さい。親が子どもと同じように感情的にならないように心がけて下さい。心にゆとりの持てるときは静かに見守ってあげて下さい。かん虫の強い子は感受性の良い子ですので、これをうまく生かしてあげて将来は感性の優れた人間に成長するように期待して下さい。
20年ほど前になりますが、剃刀の刃で手掌に小さな傷をつけて「かん虫切り」を行うという地方の「まじない」で、剃刀を何人もの子どもに使用したのでB型肝炎が何人にも感染したことがあります。体を傷つけるような「まじない」は止めて下さい。
2、第1反抗期
1歳頃までは親の言うことをきき、親を真似る「いい子」であったのに、2歳を過ぎる頃になると何でも「いや」と言うようになる。いやと言いながら制止する親の手を振り払ったり、物を投げたり、噛み付いたりといった抵抗をする「ほとほと愛想を尽かす」状況となります。一旦、機嫌を損ねると。自分のやりたいことや好きなことまで「いや」を貫きます。最初の反抗期です。
この頃には行動能力も増加し、知的関心も増してきますので、自分から積極的に色々やりたがります。しかし、危険であったり、周囲が困ることは親が禁止しせざるを得ません。しかし、子供は状況が理解できていませんので、親の「いけません」に対して、子は「いや」を連発して抵抗を試みます。つまり、自我が芽生えてきたということです。この年齢では世界の中心は自分であり、自分のしたいことは何でもするのが普通なのです。また、この頃ではしてはいけない理由を説明してもそれを理解できるほどの能力には至っていません。5歳ころまで待つ必要があります。この頃は自己中心的で、自分お考えを通そうとし、親の考えと衝突しますが、子供は言語表現力は十分でなく、自分の気持ちを親にわかってもらえないし、周囲の危険な状況なども理解できませんので、怒って物を投げつけたり、泣きわめく事になります。しかし、怒られ、注意されることによって自分の欲求はどのようなときに是認されたり拒否されたりするのか、どのような行動がほめられ、叱られるかを学んでいきます。この結果、他人の反応を予見し、社会に対する適応行動が発達していきます。してはいけないことを我慢し、しなければならないことを認識、体験することの大事な時期ですので、大暴れしている時でも過剰になだめたり、ご機嫌をとることは避けて、静観することも必要かもしれません。
子供が親に依存していた状態から自立していくために自我の芽生えは大切であり、逆に反抗しない子供を心配しなければならないのです。親は子供の勝手な行動に腹が立っても、反抗期に達したことを喜ぶ方に気持ちを切り替えるような心に余裕を持って接して下さい。意思が強く、自己の判断で行動できる立派な大人への第一歩なのです。反抗しない子供の場合、体が虚弱か反応するエネルギーがない、親が厳しすぎて怖くて反抗できない、何でも子供の思うとおりに甘やかしすぎるなど、反抗しない原因を考え、それを改善するべきかもしれません。子供が何事にも反対するのは、それによって自分の存在を認めさせ、また自主独立を宣言しているという考え方もあります。子供の意思に反して、強制的に何かをさせようとしたりせず、上手にほめて、他人に頼らないように励ましてあげることで、親子とも和やかな気持ちでいられますし、子供は自立していきますので、最終的に親は子供にかかる手間が少なくなり楽です。
3、子どものこだわり
2歳頃になると歩いたり、走ったり、言葉を理解したり、さまざまな動作が可能となります。行動の幅が広がると同時に、行動が自分で出来るようになることに喜びを感じるようになります。色々な事への兆戦が行われます。また、この頃には自分がやりたいことは何でもしようとしますし、そのやり方にしてもその子その子の独特のやり方がある場合があります。物の置いている位置にこだわり、他人が動かすと叫んだり、わめき散らす。服の着る順番やボタンのかける順番でこだわり、他人が手伝ったりすると「自分で、自分で」と怒る。手伝ったり、順番が違うと時には最初からやり直すことすらあります。朝などでは大人は急いでいるのにこれをされると、こういった時期だとわかっていても、理性と感情は別で、我が子ながら腹が立ってきます。
小児科の診察でも、この年齢になると服を自分で上に上げて診察しやすくしてくれる子供がいます。これを親や看護婦が手伝うとすごく怒ります。それはその子にとっては非常に重要なことなのだと思います。自己というのが強く出始め、色々とこだわりだします。これも親のいう「反抗期」です。ただ、子供は反抗しているのではなく、急いでいるとか子供を楽にしてあげようとする大人の都合や考えを理解できていないだけです。周囲のことを考慮出来るようになるにはあと数年が必要で、この時期では幼すぎて不可能です。当然、この時期は自己中心的で自分が世界の中心です。大人の思うようにはいかない時期に入ったと諦めて下さい。
他人のことや、その後の結果などはまったく眼中にはなく、大人の手に負えなくて、大人が我慢できなくなる。「かん虫」が出たといわれます。大人と子供の考え方や行動の仕方のギャップに大人が耐え切れないのです。「かん虫」の子供の背景を考えてあげて下さい。親に依存していた状態から、自己が育ってきて、子供が自立するようになる過程です。他人の言いなりになる子供よりは自分を表現できる子供のほうが頼もしくはありませんか。わがままな自己は困りますが、うまく自己を育ててあげて下さい。親としては試練ですが、子供や子育てというものを理解して、我慢が必要です。ただ、我慢も限界があります。小児科専門医に相談して下さい。
4、対応
今まで自分では出来なかったことも自分でやってみる。やって自信が出てくる。「もう2歳になったからね」「お兄(姉)ちゃんになったね」「もう、赤ちゃんとちがうからね」こういう自尊心をくすぐるような言葉に弱く、我慢をしてみたり、一生懸命に言われたことをしようと努力します。多少ですが、言い聞かせれば我慢できますし、親からほめられたり、認められることを喜びます。何でも珍しく、聞きたがり、まねしようとします。自分でやってみて失敗をしながら自分で出来たことに自信を深め、自立心が育ちます。子供も自己中心的な言動が周囲に受け入れられないことを感じたり、大人の期待に応えようと頑張ったりして、とまどいやストレスを感じています。子供を抱きしめてあげて下さい。子供は親や周囲の愛情の中で元気に育ちます。
危険な場合やされては困ることなど、どうしても親として譲れないことや抑えねばならないことには妥協をしない。ダメなものはダメというけじめは必要です。ただ、子供の話を聞いてあげて下さい。「なぜ、したの」「なぜ、したいの」の親の問いかけに子供は子供なりに説明してくれます。それに対して親の考えを説明してあげて下さい。しかし、この年齢の子供には大人の理屈は通用しませんし、言って聞かすなどはまだ無理です。甘やかしと違うけじめを考えて下さい。親を困らせると親が振り向いてくれる、親がかまってくれる、来てくれるなど、子供としては親の注目と愛情がほしい、甘えたいという表現である可能性も考慮してあげて下さい。また、「静かにしていなければならない」「座って待っていなければならない」「走ってはいけない」などは大人の決まりごとや倫理であり、子供は自分の感性で行動するのが個性です。困ったときは子供をおもいきり抱きしめてあげて下さい。ダメなことはダメでも、少しだけダメな範囲を緩めてあげて下さい。外見にとらわれる必要はありません。個性を大事に伸ばし、感性豊かな伸び伸とした、自分で考え、決定できる子供を育てて下さい。
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乳幼児の水分補給
最近は育児用粉乳(ミルク)や市販の離乳食、果汁や乳児用のイオン飲料水などが色々増えて乳幼児に対する食事や水分補給の選択肢が増えました。ただ、企業やマスコミはその良さを宣伝しますが、そういった宣伝文句を全て考慮して育児をしなければならないのでしょうか。必要な部分もありますが、宣伝に踊らされ過ぎてはいないでしょうか。ゆったりとした子育てをお願いします。
1、体の水分
成人では体の60%は水分で構成されていますが、子供ではさらに多く、生後数か月までは70%、乳幼児期では65%が水分です。通常はその水分の約5分の1が1日に失われるため、それとほぼ同量の水分補給が必要です。この水分補給というのはお茶やイオン飲料水の水だけではありません。ご飯やおかず、果物、お菓子の中にもかなりの量の水が含まれておりますし、母乳やミルクも80%以上は水分です。ミルクや食事を十分食べていれば、水分の摂取量は十分であり、通常は特別な水分補給まで考える必要はありません。お風呂上りに・・・・といった宣伝に乗る必要はありません。
2、水分補給を考慮すべき状態
食べたり、飲んだりして体内に入る水分と汗、尿、便や皮膚からの不感蒸泄などで失われる水分とのバランスが問題となります。体温が高くなると皮膚からの不感蒸泄が多くなり、水分を余分に必要とします。子供は発熱や嘔吐、下痢を伴う病気によくかかります。熱や嘔吐、下痢では体外に失われる水分が多くなり、また食欲もなくなり体内に入る水分が少なくなりますので脱水状態になりやすくなります。こういった場合は食事以外の水分補給を考慮しなければなりません。
3、脱水症の症状
脱水になると口唇や口腔内が乾燥し、尿量が減少してきます。進行すると元気がなくなり、意識がはっきりしなくなり、痙攣なども生じます。元気で、口唇や口腔内がみずみずしく、尿は多少減少する程度であれば問題はありません。口唇や口腔内が乾いてきたり、尿が出にくくなりだしたら早く小児科専門医を受診してください。
4、脱水症の原因
発熱や嘔吐、下痢を伴う病気は、その程度が強ければ全て原因となります。この中でも冬に多い嘔吐下痢症は、嘔吐ために水分が飲めないのに加え、頻回の水様下痢のために便中に多量の水分が失われ、脱水症に特に注意が必要な病気です。また、炎天下で長く遊んでいたり、汗をたくさんかいたりしても脱水になります。
5、水分補給の方法
1)嘔吐や下痢のない場合
何でも好きなだけその年齢にあった飲料や食事を与えてください。食欲があまりなく、1回の量が少ないと考えられる場合は頻回に与えてください。
2)下痢がある場合
年齢により異なりますが、なるべく普通の食事を続けるように努力してください。@母乳はそのまま与える。A育児用ミルクもそのまま与える。B離乳食は続ける。たんぱく質や脂肪分は多少控える。離乳食は育児用ミルクよりも下痢時には消化吸収が良い場合があります。C牛乳は止める。下痢が続けば腸管での乳糖を分解する力が低下し、下痢を助長する可能性があります。Dジュースや果汁も止めるか少なくする。糖分濃度が高いため下痢を助長する可能性があります。Eお茶や乳幼児用イオン飲料水は積極的に与える。
3)嘔吐がある場合
子供の胃は構造上、嘔吐しやすくなっており、よく吐きます。嘔吐が強い場合、食事はいったん中止し、お茶やその年齢にあったイオン飲料水に限定し、水分が普通に飲めるようになってから食事を再開します。脱水を心配して大量の水分を一度に飲ませようとするとよけいに嘔吐します。せっかく飲んでも嘔吐すればゼロです。最初は少量ずつ頻回に与えてください。嘔吐しにくくなります。牛乳や脂っぽい食事は嘔吐しやすくなりますので止めてください。
4)注意点
@嘔吐や下痢ではまず、小児科専門医を受診して原因を探す必要があります。A嘔吐や下痢は体に害のあるもの、不要なものを体外に出す生体防御作用です。原因が不明な場合は嘔吐や下痢を薬で無理に止めることは避けてください。余計に病気を重くすることもあります。B嘔吐も下痢もひどい場合は点滴での水分補給が必要です。
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乳幼児の体重増加不良
体重が軽い原因には@早産(予定日より早く生まれた)、子宮内発育不全(子宮内での発育が悪かった)などの出生時の体重が少ないために、体重増加はしているがまだ低体重である例とA出生後に体重の増加が悪く低体重になった例とが考えられますが、単に体重増加不良と言う場合には通常は後者を指します。原因としては単に総カロリーや食事の総量の摂取不足のみならず1つ1つの栄養素が質的(内容)、量的に少ない場合や同じものばかりを食べるなど、食物の相互関係が配慮されていない場合、また消化吸収能力、体内での利用の程度、児の必要量が亢進している状態などが考えられます。単に体重増加が悪いからといって栄養不足と単純に判断したり、母乳から人工栄養に代えないで小児科専門医に相談して下さい。
1、体重増加不良の判定
一般に低体重とは3パーセンタイル以下を指します。この数値は、統計上同じ年齢の100人の子どもを身長または体重順に並べたときの前から何番目かということで、3パーセンタイル以下とは同年齢の集団の中で100人中3人以下ということです。
1)体重増加不良とは
一般に体重増加不良というときは、体重の上昇が標準体重の上昇に比べ劣ることをいいます。少しの増加速度の低下でも、長い経過では体重は3パーセンタイル以下となることがありますので、体重の増加不良に気づいたら小児科専門医を受信して下さい。ただ、赤ちゃんはぽちゃぽちゃした太り方から独歩後の引き締まった体つきに変化します。この間にはしばらく体重増加の見られぬこともありますし、毎日一定量ずつ身長や体重が増えている訳ではありません。1週とか1か月といった間隔で見ても増えすぎていたりあまり増えなかったりしていることも多いので長い目で見ることも必要です。
2)体重増加不良の判断のしかた
厚生省の乳幼児身長・体重曲線上(母子手帳に図がありますが、もう少していねいな図は医院内にあります。気軽にお申し出ください)に今までの身長、体重の測定値を記載してみて下さい。曲線上のある一時点から体重増加が悪く、徐々にずれていく場合は受信して下さい。
現在の体重が標準より小さくても曲線を横切って上昇している場合、あるいはそこまでいかなくても曲線と平行して増加をみる場合は体重増加良好と判定してよいと思います。
低出生体重児でも同様に低体重でも標準曲線に平行した上昇を認めれば体重増加が順調と判断できますし、そのうちに追いついて行くと思います。
急性感染症や下痢、嘔吐で体重は減少しますが、治った後は順調にすぐ元に戻ります。順調な体重増加がこない場合は要チェックです。
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