2008年 12月28日 放送
インフルエンザ6


 インフルエンザは高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳など症状が強く、年少児では脳炎・脳症が、高齢者では肺炎が問題となります。ワクチンでの予防の他に、うがい、マスク、手洗いなどをお願いします。

1、インフルエンザウイルス
 香港型やソ連型といわれる2つのタイプのA型とB型が毎年流行しますが、毎年ウイルスが変化しますので、昨年に感染していてもまた感染します。
 感染後1〜3日で急に発熱し、38〜40℃が4〜7日間続きます。一旦、熱が下がったように見えた後再度上がることも時々あります。他の風邪に比べ寒気、関節痛、筋肉痛、咳など、症状が強いのが特徴です。ワクチン接種で軽症化が期待できます。
 12月末から3月に流行し初期はA型が、遅くなるにつれB型が主流となるのが一般的です。2種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザにかかることもあります。

2、脳炎・脳症
 3歳までの乳幼児に生じやすいといわれ、意識の低下や長時間の痙攣が特徴です。脳に後遺症を残しやすい病気です。高熱だから脳炎・脳症になるわけではありません。
 ボルタレンやポンタールという解熱剤を使用した場合に脳炎・脳症が生じやすいとされています。その他にも脳炎・脳症をおこすやすいとされる解熱剤もあります。安全性が高いのはアセトアミノフェン(カロナールなど)のみです。熱のため機嫌が悪く寝てくれないなど困る時に限定してアセトアミノフェンを少量使用するにとどめて下さい。薬局で売っている風邪薬や病院でもらう総合感冒薬などのほとんどに解熱剤が含まれています。注意して下さい。

4、治療
 インフルエンザの治療薬は発熱出現後2日以内の開始が有効で、早いほうが症状は軽くすみます。タミフルは安全性にため1歳未満と異常行動出現の可能性のため10歳台での使用は原則控えるようになっています。ただ、インフルエンザ自体でも幻覚、幻聴、異常行動が出現する場合があります。少なくとも発症2日間は子どもの行動への注意が必要です。



2008年 11月30日 放送
乾燥肌6


 子供は皮脂の量が少ないため、冬に皮膚は乾燥します。ひどい場合には布団に入って温もると痒くなり、イライラや不眠の原因になります。エヤコン、コタツなどの快適に暮らす道具も空気を乾燥させ、皮膚を乾燥させます。
 皮膚の汗やあかは痒みの原因となります。お風呂ではその子にあった石鹸をやさしく使って汗やあかを落とし、石鹸をよく洗い流すようにして下さい。タオルでゴシゴシ洗うと皮膚を傷つけ、皮膚の機能を破綻させ、よけいに悪化し、痒みが増します。
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。抱っこする人の服なども含め毛糸などの刺激が赤ちゃんや子供の肌に直接触れないようにして下さい。
 アレルギー体質を持っている子供にできる湿疹をアトピー性皮膚炎といいます。遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光、食事、ほこりやダニなど多くの因子が悪化に関係しています。アレルギー反応の原因を調べるためにRAST法という血液検査などが行われますが、アトピー性皮膚炎のような遅延型といわれるアレルギー反応主体の皮膚炎ではRAST法で原因を探すことは不適切です。

1、食事
 食物制限は食べれば皮膚の症状が悪化する食物のみに限定して下さい。血液検査では原因を探せません。極端な食物制限は発育異常をおこします。食物制限自体がストレスとなり、皮膚炎を悪化させる可能性もあります。

2、ホコリ、ダニ
 生活環境を整備して、ホコリやダニを減らすことは大切ですが、限度があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、ほこりの出やすいものを止めるなどで十分と思います。ダニやホコリは悪化原因のひとつに過ぎません。

3、薬
 ツルツル、スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠は困ります。入浴後に塗ると乾燥した肌に水分を保たせる保湿作用のある軟膏があります。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと皮膚のバリア機能が低下し、症状が悪化します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬も併用して下さい。あせらず気長に治療することが大切です。



2008年 10月21日 放送
嘔吐下痢症6


 冬に流行する風邪の1つに嘔吐下痢症があります。機嫌が悪くなったり、ぐったりして点滴が必要となることもあります。特に乳児では脱水症を伴いやすいので要注意です。
 ロタウイルスやノロウイルス、アデノウイルスが主な原因です。それぞれタイプが多数あり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。
 患者の吐物や下痢便中にウイルスがありますので、これらを触って、口の中にウイルスが入ることによる感染が主です。吐物や便を触った後は手洗いを十分する必要があります。塩素系の消毒薬や漂白剤および85℃で1分間以上煮沸がこのウイルスに有効とされていますが、家庭ではきれいに拭き取ってから手洗いでも十分と思います。
 症状は病名が示すように頻回の嘔吐と下痢です。潜伏期間は1〜3日です。微熱が1日程度認められることもあります。嘔吐は半日から丸1日で治まります。下痢は白っぽいクリーム色の水様便になることが多く、4〜5日間続きます。

 嘔吐や嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(コップ1/4〜1/3程度の嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。その後徐々に1回量を増やしていきます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。
 下痢が続きますので、牛乳や乳糖を多く含む食物は止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。吐気がなければ離乳食や消化の良い食事は欲しがるだけ与えて下さい。食事は腸の回復を助けます。
 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。ひどい嘔吐には嘔吐止めを使用します。

 症状がひどく、口の中が渇いてきたり、ぐったりするなど脱水が疑われる場合には点滴による水分補給が必要です。



2008年 9月28日 放送
離乳食


 「離乳」とは、母乳や育児用ミルクを飲んでいた赤ちゃんが乳汁以外の食べ物を徐々に食べられるようになって乳児食に移行する過程をいいます。

 離乳食開始の目安は@首のすわりがしっかりしている。A支えてあげると座れる。B食べ物に興味を示す。Cスプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなることで判断します。赤ちゃんが順調に発育していれば5ヶ月頃が適当です。
 離乳食をあまり早期から開始すると腸管が未熟なため、腸の粘膜がタンパク質をよく消化できずに分子が大きいまま吸収してしまうので、アレルギーが起こりやすくなる事があります。逆に離乳が遅すぎると、口が成長していくのにそしゃく能力が発達せず、将来的にうまく噛めなくなったり、丸飲みをするようになりやすいといわれています
 離乳初期(5〜6か月)はドロドロ状の食物を飲む事を覚えていく時期です。離乳中期(7〜8か月)は舌で押しつぶせるくらいの硬さが適当です。離乳後期(9〜11か月)は歯ぐきでつぶせるくらいの硬さが適当です。

 育児書などには、母乳やミルクの味以外の味に慣れさすためと、スプーンで飲めるようになることが目的で「お茶や果汁、野菜スープをスプーンであげましょう」と書いてあります。しかし、果汁の摂取により乳汁の摂取量が減少し、栄養摂取量は低下します。離乳開始前に果汁を与える必要はありません。また、スプーン飲みの練習も必要なく、始めは上手に飲めませんが、すぐに上手くなります。

 離乳開始直後は、穀物類や野菜類から始め、1日1回1品、小さじ1杯から2杯程度の量で十分です。2〜3日毎にスプーン1杯ずつ量を増やし、1週間目位から品目も少しずつ加えていきます。タンパク質はアレルギーを起こしやすいため、あまり早くから与えないようにします。尚、この時期では母乳は飲みたい時に飲みたいだけ飲ませます。離乳食の量が増えてくると母乳摂取量は自然と減少します。

 乳児に牛乳をあたえると、貧血をおこしやすくなります。蜂蜜は乳児ボツリヌス症の可能性があります。牛乳や蜂蜜は少なくとも満1歳までは与えないで下さい。



2008年 8月24日 放送
包茎(ほうけい)3


 包茎はちんちんの先端に皮がかぶっている状態のことで、包皮口(ちんちんの尿の出口の皮の部分)が狭くて包皮(ちんちんの皮)がむけなくて亀頭が露出できない真性包茎と亀頭が容易に露出できる仮性包茎に分けられます。

 出生時の男児は全員が真性包茎ですが、成長するに従い仮性包茎となり成人では皮もむけます。ほとんどの子は二次性徴終了まで包茎です。程度の強い包茎の真性包茎は中学生でも10%ほどといわれております。思春期が過ぎるまで包皮が亀頭を覆っているのが普通です。

 包皮と亀頭の間には分泌物や剥離した細胞が溜まった黄白色の軟らかい恥垢(ちこう)があります。包皮の下に黄白色の丸いコロコロした塊のように見える場合もあります。こういった恥垢は病的なものではなく、成長に従い包茎が治ってくると自然に消失します。

治療
 包茎口が狭すぎて排尿するのが困難な場合は手術による治療が必要ですが、子供ではこれ以外の包茎の治療は不要です。自然に仮性包茎となり、思春期を過ぎてから包茎も消失します。小学生でも亀頭の一部さえ包皮口から見えれば自然に治ることが多く、放置してもかまいません。ただ、子供が気にするようであれば1〜2か月かけて軟膏を包皮口から塗りこんでいく保存的治療を考慮してあげて下さい。保存的療法で十分効果がありますので、手術を必要とすることは稀です。

注)ちんちんをゴシゴシ洗うことについて

 子供でも恥垢のあるちんちんは不潔で、皮をむいてよく洗った方が良いという人がいます。恥垢は無菌であり、不潔でもありません。包茎はちんちんの発育を妨げませんし、恥垢が陰茎癌の原因になるという根拠もありません。皮をむいてゴシゴシ洗う必要はありません。小児では包皮を無理にむくと出血させます。また無理にめくると亀頭の根元で皮が丸まって、元に戻らず緊急手術が必要となる場合があります。

 包皮は小児期では弱い亀頭を外的刺激や外傷から守っていますし、性的刺激を感知する機能がありますので無駄な部分ではありません。



2008年 7月27日 放送
夏休みの注意点2 :紫外線、熱中症、夏太り


 夏に外で遊ぶと熱中症、紫外線による日焼けなどがありますが、外遊びは体力や気力、自律神経の発育や精神的な発育に欠かせませんし、成人に持ち越される小児のメタボリック症候群の予防に重要な役割を担っています。

 クーラーの効いた家の中でダラダラしたり、ゲームばかりしていると「夏太り」が生じます。クーラーが無い昔は暑くて食欲も出ませんので「夏やせ」があり、秋から春にかけて太った体重が夏に元に戻りましたが、最近は一年中肥るという状況です。さらに、コンビニやファーストフードなど子どもの好きなカロリーの高い食物がいつでも手に入るという状況が夏太りを助長しています。

 紫外線は肌表面の細胞を傷つけ、炎症を起こし日焼けを作ります。また、皮膚で骨の発育に重要なビタミンDを合成します。日本人は黄色人種ですので、皮膚にあるメラノサイトという細胞は紫外線をブロックするメラニン色素を作り、皮膚を黒くして紫外線の悪影響を防止しますので、極端な紫外線対策は不要とは思います。ただ、帽子や衣服、日焼けしやすい子ではサンスクリーン剤での紫外線防御は必要です。

 生体の適応範囲をこえる高温環境が続くと、水分や電解質の代謝がうまくいかなくなり熱中症がおこります。大量の発汗によって脱水や電解質の喪失が生じると脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。睡眠不足、運動不足などの体調不良を極力避ける。高温になる環境を避ける。高温下で運動するような場合には適当な休憩や電解質やカロリーの含まれた水分を十分に摂取させるなどで熱中症は予防できます。

 肥満は肝障害や糖尿病,高血圧を起こりやすくします。バランスの良い食事をおいしく食べて、適度な運動をして太らないように心がけてください。やせすぎも困ります。10代の過度なダイエットは肉体的にも精神的にも影響が大きく危険です。

 屋外での遊びは、気候を感じ、怪我をして痛みを知る、体力向上や気力を養う、覚醒と睡眠のリズムを養う、自律神経を発育させるためには大切ですし、友達と一緒に遊ぶために協調性が養われ、またストレス発散の手段としても非常に有用です。



2008年 6月29日 放送
夏の食中毒


 夏の食中毒は腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などの細菌が原因で起こることが多く、症状は腹痛、嘔気・嘔吐、下痢などです。菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。一般的には、菌が腸管内で増殖して毒素などを出し、発症しますので増殖する時間(8時間から数日)が必要ですが、ブドウ球菌などは食物の中で増殖して毒素を出し、その増えた毒素を食べての発症ですので食後1時間程度でも発症します。蜂蜜に混入したボツリヌス菌では生後8か月までの乳児の腸管の中では増殖し、便秘や筋力低下を起こす神経毒を作る可能性があり、1歳になるまでは蜂蜜を与えないで下さい。

1)腸炎ビブリオ
 夏の魚介類のエラや内臓に存在します。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。魚を調理したまな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 鶏肉を介する感染が主です。便に血液が混入します。

3)サルモネラ
 卵、鶏肉、ミドリガメなどのペット類からの感染が主です。粘血を伴った緑色の水様便ですが、乳幼児では重症化します。ペットを触った後は手洗いをして下さい。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157の菌です。十分な加熱が有効です。牛肉からの感染が主です。血便になり重症化もします。

5)黄色ブドウ球菌
 調理人の手の傷や化膿部から汚染します。おにぎり、お弁当などでの感染が主です。菌が産生した毒素が蓄積された食物を食べたために発症しますので、食後1時間以内でも発症します。

対策
 食中毒の予防としては、食べた細菌数や毒素の量が少なければ治療なしでも自然に治ります。菌や毒素を少なくすることが重要で、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うなどを心がけて下さい。

 下痢を止める薬は悪い菌の排出も止め、重症化させる可能性があり、使用しません。



2008年 5月25日 放送
暑熱障害(熱中症)


 気温が高い、湿度が高い、無風状態、急に気温が上昇した時などに起こりやすいとされています。乳幼児では、初夏の気温があまり高くない時期でも、車の中に放置されると熱中症になり、死亡する場合もあります。

1、夏季熱
 乳幼児の体温は外気温に影響されますし、水分の摂取が十分でないと体温は上昇します。暑い環境で眠ると汗をかきますし、寝ている間は水分の補給がありませんので軽度の水分不足状態となり、早朝に38℃程度になることはよくあります。目覚めてからお茶やミルクなどを飲んで水分補給が十分になると平熱に戻ります。元気で機嫌が良いのが特徴で、心配は要りません。

2、暑熱障害
 生体の適応範囲をこえる高温環境が続くと、水分や電解質の代謝がうまくいかなくなり障害がおこります。小児は体温調節機能が未熟で、水分をたくさん必要としますので、暑熱障害は子供に起こりやすい病気です。

 大量の発汗によって脱水や電解質の喪失が生じると、抹消の循環が悪くなり、脱力感、嘔気、頭痛などの症状が出現します。小さな子の場合はおとなしくなる(ぐったりする)、口唇が乾くなどで気づかれます。 普通のレベルの発汗ではお茶やお水の水分補給で十分ですが、大量に発汗する場合では、電解質の含まない水分の補給だけでは、電解質(ナトリウムとクロール)が少なくなり、運動後に下腿のふくらはぎのこむら返りなどの筋肉の痙攣がおこり痛みを伴います。

 重症になると体温が異常に上昇し、極度の脱力状態、皮膚が蒼白となり治療が必要となります。さらに症状が進行すると全身臓器の障害がおこり、痙攣、意識障害などが生じ、死亡する場合もあります。

対応
 睡眠不足、運動不足などの体調不良を極力避ける。高温になる環境を避ける。通気性の良い服装や帽子を着用する、高温下で運動するような場合には適当な休憩や電解質やカロリーの含まれた水分(イオン飲料水を薄める)を十分に摂取させるなどで熱中症は予防できます。

 熱中症は初期症状出現を見逃さず、塩分やカロリーの含まれた水分を十分摂らして、冷所で安静にさせることが重要です。重症では緊急入院も要します。



2008年 4月27日 放送
こどもの日の健康チェック


 新学期での変化にも慣れた頃と思います。自分の子供を全般的にわたって見直してみませんか。元気さ、食欲、運動能力、知的能力、やさしさ、行動、対人関係などチェックすることは色々ありますが、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 感染を予防できますし、かかっても軽症で済みます。麻疹風疹混合ワクチンの接種は1歳と幼稚園年長児の2回になり、今年からは5年間の限定ですが、中学1年生と高校3年生の時期にも接種する事になりました。有料ですが、みずぼうそう、おたふくかぜなどのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合には接種して下さい。お父さんやお母さんも今まで感染してなければ自分自身へのワクチン接種を考慮して下さい。

2)健診での身長や体重の伸びは順調ですか。
 身体の発育、言葉、行動、運動などの発達で気になることがあれば小児科専門医にご相談下さい。健診での身長や体重の数値を母子手帳の後ろのほうにある男女の年齢別の身長や体重を書き込めるグラフに印をつけて下さい。自分の子供が日本人の平均に比べて身長や体重がどの位置にあり、伸び率はどうかなどがわかります。

 身長がかなり低い場合はホルモンの分泌が少ないなどの病気のこともあります。小児 科専門医を受診して下さい。治療で身長は良く伸びます。2歳頃までの肥満体は問題ないのですが、それ以降では問題になることもあります。小学校以降でかなり太っている場合は脂肪肝など肝機能や糖尿病のチェックが必要です。身体に異常が生じるほどの肥満は困ります。

 肥満は生活習慣病の元凶であり、特に女性ではやせ体型が美しいとする表現が思春期前の女性を洗脳し、摂食障害に追い込んでいます。やせ体型にも程度があり、個人差があること、低身長、子宮や卵巣の発育不全などの副反応もあり、将来の不妊や骨折のしやすい身体になる可能性があります。特に十代での過度のダイエットは危険です。



2008年 3月23日 放送
低身長9


 低身長は学校のような集団生活の中や多感な思春期ではいじめられたり、コンプレックスを持つ、精神的な問題などを引き起こすことがあります。病気のために身長の伸びが悪く、病気を治療する事によって身長が伸びる場合もあります。親、子が共に身長というものを理解し、治療は必要か、必要とすればどのような治療法があるのかを理解することが大切です。中学生や高校生になり、身長が伸びなくなってからでは遅すぎます。
 カルシュームは骨を硬くしますが、骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲んでも身長は伸びません。野菜などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎるスポーツは逆効果のこともあります。負担がかからないように工夫をして下さい。特別に効果が良いスポーツはありませんが、楽しく適度にスポーツをするのが良いと思います。

1、主な原因
1)成長ホルモン分泌不全症
 成長ホルモンは骨を伸ばしたり、筋肉を増やす力があります。このホルモンが少ない場合は身長の伸びはかなり悪くなりますが、ホルモンの補充で身長は伸びます。

2)甲状腺機能低下症
 甲状腺ホルモンは身体の活動性を高めます。低下症では足がむくんだり、便秘、日常生活の活動性が低下します。ホルモンを補充することで身長も伸びます。

3)骨の病気やターナー症候群などの染色体の病気
 低身長の治療は可能な場合があります。

4)思春期早発症
 7歳までに乳房が大きくなるなど思春期が早く来すぎると、子供の頃の身長は大きいのですが、身長が早く止まりますので最終の身長は低くなります。早期であれば治療可能です。

5)愛情遮断症候群
 子供が愛情に飢えてストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。

2、治療
 成長ホルモンや甲状腺ホルモンが少なければ、足りない分だけのホルモンを補充します。補充することによって身長が伸びる以外にも全身状態を正常化し、体の働きも活発化させます。



2008年 2月24日 放送
かん虫、第一反抗期


 赤ちゃんが激しく泣きやまない、夜泣き、食べない、すぐ不機嫌になる、つまり親が困る、親の言うことをきかない、大人の思うようにならないことを「かん虫」と表現します。赤ちゃんは成長するにつれ欲求が強くなります。自分の思うようにならなければ腹が立つと思います。自我が芽生え、腹が立つことを覚えると「かん虫」が出てきます。子どもがうまく成長している証拠です。かん虫とうまく付き合うことを考えて下さい。感染症が心配ですので体を傷つけるようなまじないは止めて下さい。疲れたら子育て中の友人か小児科専門医に相談しましょう。気持ちが楽になります。

 2歳頃になると走ったり、言葉を理解したり、行動の幅が広がると同時に、自分で出来ることに喜びを感じるようになります。色々な事に兆戦し、他人が手伝うと「自分で、自分で」と怒ります。急いでいるのにこれをされると、こういった時期だとわかっていても、理性と感情は別で、我が子ながら腹が立ってきます。

 自己というのが強く出始め、大人のいう「反抗期」です。ただ、子供は反抗しているのではなく、急いでいるとか子供のためにという大人の都合や考えを理解できていないだけです。あと数年間はこういう時期だと諦めて下さい。

 出来なかったことに挑戦し、我慢をしてみたり、一生懸命に言われたことをしようと努力します。親にほめられたり、認められることを喜びます。自分でさせることにより、能力がついていきますし、失敗をしながら自分の限界を理解し、耐える能力が身についてきます。甘やかしすぎたり、制限のない自由奔放は困ります。他人とうまく協調してやっていくルールを教えながら、その中で自由にさせて下さい。子どもは自分の欲求のままに振舞おうとしますので、悪いことや不注意なことには怒ったり、注意を喚起する必要があります。善悪の判断を教えてあげて下さい。これらの体験を通じて衝動にブレーキがかかり忍耐力が身に付いていきます。

 親が子どものプライドを踏みつけたり、頭ごなしに押さえつけたりすると強く反発し、します。子どもに親の状況を説明してあげて下さい。子供の話を聞いてあげて下さい。



2008年 1月27日 放送
子どもの健やかな眠りと目覚め


 ヒトは昼間に使用した脳や身体の疲れを癒すために眠ります。脳や身体を休息させ、機能を調節するために睡眠は不可欠です。

 睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌、自律神経の体内時計は約25時間周期で動いており、24時間に合わせるためには、朝に光をあびることが重要です。
 睡眠中に多く分泌される成長ホルモンは骨を伸ばして身体の成長を促進し、筋肉を増やしたり、痛んだ組織の修復や脂肪分解も行います。このホルモンの分泌が少ないと低身長になります。
 メラトニンは夜に分泌量が増えるホルモンで眠気を催す作用がありますし、抗酸化作用、老化や発癌の防止、生体リズムの調節、性成熟の抑制作用などもあります。
 朝の太陽の光に刺激され分泌が始まるセロトニンは鎮静作用があり不安や恐怖の感情を抑え穏やかな気分にしてくれます。逆に脳内にセロトニンが不足すると不安緊張が誘導され、不眠状態に陥りますし、すぐ平常心をなくす「切れ易い」精神状態、マイナス思考の状態になります。

 睡眠時間が短い子では、テレビを見る時間が長く、夜食を食べ、朝食を欠食し、運動不足などの太りやすい生活習慣にあります。また、睡眠時間が短いとホルモンやステロイドなどの分泌状態が変化し、肥満、高血糖(糖尿病)、高血圧といったメタボリックシンドロームを誘導する事になります。成長を促すホルモン、メラトニン、セロトニンの分泌を増やし、健康を保つためには特に朝の太陽の光を浴びることと十分な睡眠時間をとることが重要です。

 最近、夜の街中で子どもを連れた親を良く見かけます。親の夜更かしに合わせて子どもの入眠時間が遅くなったり、親の都合で子どもの眠りを中断したり、帰宅の遅い父親とのスキンシップを重視して乳幼児に夜更かしをさせるなどもあります。宿題や塾のために寝るのが遅くなる事情もあります。しかし、生活リズムの基本は睡眠です。これが乱れると子どもの発育に悪影響を及ぼしかねません。それぞれの家庭環境の考え方や状況の内で実現可能な範囲で実行すればよいと思いますが、早起きをし、朝食を食べ、昼間に体をよく動かし、就寝時間を決め、寝かしつけるときは物語を読んだりする、テレビや電気を消して眠りやすい環境を整えることも重要です。




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