2005年 12月25日 放送
子どもの貧血


 貧血では血液中の赤血球が酸素を体の細胞に供給する能力が低下し、長期間続くと体の発育が悪くなります。主な原因は鉄分の不足です。
 生下時にお母さんからもらった鉄分は生後7か月には減少しますが、離乳食からの鉄分供給で自然に改善します。乳幼児期では、牛乳貧血と呼ばれる、食事量が少なく、一日1リットル程の牛乳を飲用する子の鉄欠乏性貧血があります。牛乳は栄養的には良好な食品ですが、牛乳には鉄分が少ししか含まれていませんし、含まれている鉄分の吸収も不良です。牛乳をたくさん飲んでいるから他の食べ物をあまり取らなくても、栄養が足りているという考えは危険です。走ったりジャンプしたりすることによる足底血管内の赤血球破壊が原因でおこるスポーツ貧血もあります。思春期では成長が急激になりますし、女子では月経出血も出てきますし、やせ願望による無理なダイエットで強度の貧血になります。

原因
 乳児では離乳食が遅れたり、鉄分が少ない食事をとっている場合で、 幼児・学童では鉄分やたんぱく質摂取の少ない子に貧血がみられます。また、思春期前後の女子には無理なダイエットでひどい貧血が起こります。また、生後12か月までの子に牛乳を与えると腸から微量の出血が生じ、貧血が起こりやすくなるといわれています。生後12か月まではなるべく牛乳を与えないようにして下さい。

症状
 顔色が青白く、目の結膜や口の粘膜、爪などの色も白っぽくなります。乳幼児では、きげんがわるく食欲がない、元気に遊ばずゴロゴロしている、体重がふえないなどの症状があらわれます。年長児では、疲れやすく、軽い運動でも動悸や息切れがし、めまいです。
 乳幼児では貧血が3か月以上続くと精神や運動の発達が遅れる可能性が指摘されています。偏食はなるべくしないようにして下さい。

治療
 鉄は肉や魚の赤身に含まれるヘム鉄と穀物や野菜などに含まれる非ヘム鉄に分類され、腸管からの鉄の吸収率はヘム鉄が15〜20%、非ヘム鉄では2〜5%と吸収率はよくありません。ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を促進します。食事には肉や魚と一緒に野菜や果物を摂取することが望まれます。バランスの取れた食事が鉄欠乏性貧血を予防しますし、治療にもなります。食事療法で改善しない場合や強度の鉄欠乏性貧血では鉄剤を服用しますが、飲み過ぎて鉄を過剰摂取すると、頭痛、食欲不振、肝機能障害、皮膚の黒ずみなどの副反応が生じますので注意が必要です。



2005年 11月27日 放送
嘔吐下痢症


 冬の風邪の1つに嘔吐下痢症があります。病名が示すように、嘔吐して、下痢をする病気です。嘔気が強く食事がとれず水分も飲めません。その上、下痢で水分が失われますので、脱水をおこしやすく、特に乳児では注意が必要です。

1、原因
 ロタウイルスやノロウイルス、腸管アデノウイルスが主な原因です。ロタウイルスやノロウイルスは毎年冬季に流行し、冬の初期はノロウイルス、後半はロタウイルスによる嘔吐下痢が一般的です。腸管アデノウイルスは冬以外でも流行します。それぞれタイプが多数あり、毎年かかりますし、一冬に2回以上かかることもあります。
 患者の吐物や下痢便の中にウイルスが多量に存在し、これを触って感染しますので、触った後は手洗いを十分して下さい。大人にも感染します。

2、症状
 嘔吐は頻回ですが半日から丸1日で治まります。下痢は白っぽいクリーム色の水様便が特徴で、4〜5日間続きます。

3、食事
 嘔気のある間だけは食事を止め(食べても吐いてしまいます)、ごく少量(コップ1/4〜1/3程度の嘔吐しない量)のイオン飲料水やお茶を頻回に与えて下さい。胃が膨れるほど飲むと嘔吐します。少量の水分が胃から徐々に吸収されるのを待ちます。その後徐々に1回量を増やしていきます。イオン飲料水が十分飲めるようになったら出来るだけ早く消化の良い食事を開始して下さい。
 下痢が続きますので、牛乳や乳糖を多く含む食物は止め、ジュースなども中止し、お茶、湯冷まし、乳児用(年齢に応じた)イオン飲料水を飲ませて下さい。下痢で腸の粘膜が傷害されると、乳糖(牛乳などに含まれる糖)などの吸収が悪くなり、乳糖や糖分の高い濃度の飲み物や食べ物は下痢の回復を悪くします。吐気がなければ離乳食や食事は消化が良くない食物以外は欲しがるだけ与えて下さい。早期からの食事は腸の回復を助けます。

4、治療
 下痢は体に害のあるものを早く出すようにしている身体の防御反応の可能性が高いことを考慮して、乳幼児では薬で無理に止めないのが一般的です。整腸剤で腸の働きやバランスを良くして腸の回復を待ちます。ひどい嘔吐には嘔吐止めを使用します。
 症状がひどく、口の中が渇いてきたり、ぐったりするなど脱水が疑われる場合には点滴による水分補給が必要です。

 頻回の下痢ではオムツかぶれにすぐになります。お尻を出来るだけ頻回に洗って乾かして下さい。ひどい場合は洗った後で軟膏を使用して下さい。



2005年 10月23日 放送
乾燥肌3


 冬になると肌は乾燥しますので、布団に入って温もると痒がる子が多くなります。イライラや不眠には治療が必要です。

1、皮膚について
 皮膚の表面には角層というバリアがあり、皮膚の脂の膜と共に水分の調節をしています。皮膚の脂の量は性ホルモンに影響され、赤ちゃんはお母さんの性ホルモンの影響で皮膚の脂は多いのですが、生後6か月から思春期までは性ホルモンが少なく、皮膚が乾燥しがちになります。つまり、子どもの皮膚は乾燥しているのが普通です

2、皮膚を乾燥させる因子
 エヤコン、コタツ、電気毛布などの快適に暮らす道具が部屋の空気を乾燥させ、皮膚を乾燥させます。程々にして下さい。

3、入浴
 汗やあかが痒みの原因となりますので、お風呂は有用です。石鹸をやさしく使って、汗やあかと共に石鹸をよく洗い流して下さい。
 タオルでゴシゴシ洗うと皮膚を傷つけ、皮膚の持つバリア機能や保湿機能を悪化させ、痒みが増します。泡立てた石鹸を使って、手のひらなどでやさしく洗ってあげて下さい。

4、衣服
 直接肌に触れる下着などは吸湿性の良い木綿のものを1、2回洗って柔らかくしてから使用して下さい。ノリ付けは止め、麻や毛糸なども皮膚に直接触れないようにして下さい。赤ちゃんなどを抱っこする人も赤ちゃんの肌に直接刺激のあるものが触れないようにして下さい。

5、アレルギー
 アレルギーが出やすい遺伝的な素質をアトピー体質といいます。皮膚が乾燥するアトピー性皮膚炎はダニやホコリといった単純なアレルギー反応ではなく、遺伝、体質、ストレス、友人関係、生活環境、アレルギー、感染、日光など多くの因子が関係しています。食物制限、ホコリやダニなど、原因の1つのみにとらわれすぎるのは感心しません。食物制限は明らかに食べればひどくなる食物のみに限定してください。食物制限自体がストレスとなり皮膚炎を悪化させます。また、生活環境の整備には限界があります。こまめに掃除をし、部屋の換気を良くする、じゅうたんなどを止めるなどで十分です。

6、薬
 スベスベの肌にする必要はありませんが、痒くて落ち着きがない、不眠などは困ります。入浴後に保湿作用のあるクリームや軟膏を塗布して下さい。赤みが強い時は炎症を抑える塗り薬も必要です。掻くと症状が悪化し、皮膚のバリア機能も低下します。痒みの強い時には痒みを抑える内服薬を併用して下さい。生活に合わせて、あせらず気長に治療することが大切です。



2005年 9月25日 放送
子どもの癖


 指しゃぶり、爪噛み、チックが問題となります。

1、指しゃぶり
 赤ちゃんには乳首が唇に触れると吸い付くという本能があります。吸っていると安心するようです。指しゃぶりは本能に基づくもので、子どもをあやす知恵です。子どもの心の安定は良いことですので無理に止める必要はありません。無理に止めても止まりませんし、年齢と共に減少してゆきます。手指の使う遊びや、自制力をつけさせるなどで対応して下さい。
 3歳頃までの指しゃぶりでは乳歯の咬み合わせが多少悪くなっても永久歯は正常ですが、4歳以上になると顎の骨格にも影響を及ぼし、永久歯に咬み合わせの不整をおこさせる可能性が出てきます。年齢が大きくなっても減少傾向がなければ、歯科のチェックを受けて下さい。指しゃぶりによる悪影響があれば本人にそれを理解してもらい、自分で減らす努力をしてもらって下さい。
 「おしゃぶり」も泣き止みますし、指しゃぶりよりも止めやすく、歯並びにも影響が少ないのですが、歯並びの悪化や、言葉を話す機会が少なくなるなどマイナスの面も否定できません。

2、爪噛み
 学童期に多く、30%の子が爪を噛むための深爪といわれます。子どもが不安や窮屈に思っていることはないか考えて下さい。指先に傷が出来るのは困りますが、軽度の場合は止める必要はありません。

3、チック
 頻回にまばたきをする、肩をピクピクさせるなど、意味のない動作が無意識に繰り返し出現する症状をいいます。咳払いを繰り返す、「ウッ」「チェ」などの言葉が繰り返し出る音声チックもあります。7〜11歳頃に多く、男児に多いとされています。原因は脳内の神経伝達物質のドーパミンが過剰となり、運動や知覚機能への働きかけがうまくいかなくなり、症状が出ると言われています。生まれつきチックを生じやすい子が、不安や緊張、欲求不満など心理的ストレスが引き金となり出現するのです。止めさせる絶対的な方法はなく、無意識でやっており、緊張でよけいに生じますので、無理にチックを指摘して止めさせようとすると、意識がそちらのほうに向き余計に起こるという悪循環に陥ります。何もしなくても1年以内には消失しますし、長く残っても思春期の頃には目立たない軽度の動きにまで症状が落ち着くといわれます。あせらず、子どもの気分を発散させて緊張感を取り除くことを心がけて下さい。叱らない、注意しない、話題にしないが大切です。



2005年 8月28日 放送
夜尿症(おねしょ)


 夜尿は親以外の他人には迷惑をかけませんし、その子の健康を害することもありません。その子の年齢が進み、身体が発育するにつれて膀胱容量が増大し、睡眠リズムが安定しますので、夜間の尿量が減少して夜尿は無くなって行きます。夜尿は小学生で数%ともいわれ、夜尿をしている子供は意外と多いのです。
 夜尿は大きく2つのタイプに分けられます。ぐっしょり型といって睡眠中の尿の量が多すぎるため夜尿となるタイプがります。睡眠中は尿量を減少させる作用のあるホルモンがたくさん分泌され尿量が減りますが、まだ分泌が不十分なためです。年齢につれて睡眠リズムが安定してくると治ります。あと1つはちょっぴり型といって膀胱の尿をためられる量が少なくて夜中に十分な蓄尿ができず漏らしてしまうタイプです。年齢とともに膀胱の蓄積できる尿量が増大するとともに、排尿を我慢する能力も強くなりますので治ります。

1、発達の指標
 1回に出る尿量が多くなっていく(膀胱容量の増大)、夜尿回数が減少してくる(夜間尿量の減少)、夜尿する時刻が寝入りばなから明け方になっていくことで判断します。
 寒いと尿量が増加しますので、夜尿は冬に多くなります。

2、生活指導
 大きくまとめると@しからず、Aあせらず、B起こさずが原則です。@無意識に行っているので、しかられても本人はどうしようもないのです。A長期戦です。未熟な機能が身体の発育と共にゆっくり発達してくるのを待つ必要があります。B子どもの健全な発育・発達には十分な熟睡は大切です。夜尿のおこりそうな時刻に起こして排尿させるという方法は、睡眠リズムを崩し、熟睡やホルモン分泌に影響します。夜間の膀胱容量も大きくなりません。夜中に起こして排尿させる方法はなるべく避ける方が良いと思います。

3、対策
 機能の発達は待つしかないのですが、夜間の尿量の減少や排尿抑制機能を高めることは可能です。@食べたり、飲んだりした水分は3、4時間で尿になります。入眠5、6時間前から水分を制限し、夕食も早くして下さい。A塩分をたくさん摂ると尿量が増加し、のどが渇きますので水分摂取が増えます。夕食は薄味でお願いします。B膀胱を大きくする方法として、腎臓や尿管に異常がある場合を除いて、昼間に尿意があっても可能な限り我慢して膀胱を大きくします。Cこれらの対応を行っても効果が得られない場合に薬を使用します。小児科専門医にご相談下さい。



2005年 7月24日 放送
子どもの誤飲事故


 小さな子は色々な物を拾い、何でも口に持っていきます。危険性のある物を食べてしまう事故は、はいはいするようになる8か月頃から2歳頃まで続きます。食べられて困るものは、子どもの手の届く所に置かないで下さい。
 基本的な家庭での処置は@口の中に残っている場合は、両方の頬を押さえて口を開かせてから指でかき出します。胃の中に入れば2日程度で便に出ます。A食べた物を吐かせて出させます。口の中に指を入れ、舌の後方を押せば吐きます。吐きにくいときは牛乳(異物の胃への刺激を緩和する)や水を飲ませて吐かせます。ただ、吐かせてはいけない物(揮発性に物や酸やアルカリ性の強い物)がありますし、牛乳を飲ませてはいけない物(脂溶性の物は吸収が早くなり危険)があります。B揮発性の高い化粧品やガソリン、灯油などは吐かせてはいけません。数日後に肺炎をおこす可能性があります。また、C酸やアルカリ性の強い漂白剤やトイレなどの洗浄剤などは吐かせると口腔内や食道の粘膜をよけいに傷つけます。牛乳を飲ませて希釈してから小児科専門医を受診して下さい。D食べた物やそのかけら、その名前や成分、食べた量がわかる物(箱やラベル)を持って小児科専門医を受診して下さい。場合によっては胃洗浄(胃の中を洗って飲み込んだものを出す)が必要となります。早期受診をお願いします。
 インターネットで調べたり、日本中毒情報センター(中毒110番)や病院で聞いてみて下さい。

1)タバコ
 小児はタバコ1本が致死量です。少量以外は受診して下さい。タバコが浸かっていた水を飲んだ時は15分以内に急激な症状が出ます。灰皿に水を入れたり、ジュースの空き缶を灰皿代わりに使用しないようにして下さい。

2)防虫剤
 パラジクロルベンゼンはなめたりかけらを食べた程度では大丈夫です。牛乳を飲ませると、脂溶性のため余計に吸収が早くなりますのでやめて下さい。

3)乾燥剤
 お菓子についているシリカゲルは大丈夫ですが、生石灰(せんべいや海苔の乾燥剤)は水と化学反応して火傷をします。嘔吐させてはだめです。牛乳を飲ませます。

4)蚊取りマット、
 2枚程度では大丈夫です。液体蚊取りのビンも舐める程度は大丈夫です。

5)芳香剤、クレヨン、水性絵の具、食器用洗剤、石鹸、シャンプー
 少量であれば大丈夫です

6)ボタン電池
 胃に穴があくことがあります。早期に受診して下さい。



2005年 6月26日 放送
熱中症(暑熱障害)


 気温による体の外の暑さや、運動などで作られた体の中の熱さが体の適応範囲をこえたために、水分や電解質の代謝がうまくいかなくなった状態です。水分をたくさん必要とする小児のほうが熱中症は起こりやすくなります。重症になると死亡します。
 熱中症は、熱波によって主に高齢者に起こるもの、幼児が高温環境で起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるものなどがあります。
 季節的には7月下旬から8月上旬の梅雨明け直後に多く発症しますが、夏以外でも急に暑くなったときにも起こります。体が暑熱環境や体の発熱に馴れていないために生じます。@気温は高いときに起こりやすいのは当然ですが、気温はそれほどでもなくても湿度の高いときA前日に比べ急に気温が上昇したB無風状態C砂やアスファルトなどの日光の反射が多い所などが起こりやすいとされています。暑熱障害は少しの気配りで予防できる病気です。子どもの環境をチェックし、予防を心がけてください。

1、熱疲労
 大量の発汗により、脱水や電解質の喪失をきたし抹消の血液の循環不全をきたした状態です。脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。涼しい所で休ませ、身体の冷却や水分補給をします。

2、筋肉の攣縮
 発汗のため電解質(ナトリウムとクロール)が喪失したために、筋肉の興奮性が亢進して生じる下肢を主とした筋肉の攣縮で痛みを伴います。下腿のふくらはぎ(ひ腹筋)のこむら返りがよくおこります。電解質の含まない水分の補給ばかりをした場合に起こりやすくなります。電解質を含んだ水分の補給を行って下さい。

3、熱射病(中等症、重症)
 体温が異常に上昇し、熱自体や熱による血液の循環不全により、全身臓器の障害が生じた状態です。おかしな言葉や行動、けいれん、意識障害などが生じます。肝臓や腎臓の機能不全も生じます。

対応
 睡眠不足、運動不足などの体調不良は暑熱障害を起こしやすいため、スポーツではこのような状況を極力避けるようにして下さい。服装は通気性の良いものを使用し、帽子をかぶって下さい。水分補給はこまめに行なって下さい。水分は塩分と一緒だと吸収が早くなり、糖分が含まれると体の回復が早くなります。スポーツ飲料水を水で半分に薄めたものが適しています。

 発症予防のためや初期症状を見つけたときは涼しい環境と水分補給を十分に取ることが重要です。症状が出ている場合は、点滴や入院が必要です。



2005年 5月22日 放送
食中毒の季節です2


 もうすぐ梅雨です。食物の傷みやすい時期です。水や食物には必ず細菌が付着していますが、胃の酸は菌を殺しますし、腸には多くの有用な菌があり体を守っています。有害な菌でも食べた菌数が少なければ、症状は出ずに菌は死んでしまいます。食中毒予防には食物管理以外に健康管理も必要です。

1、症状
 腹痛、嘔気・嘔吐、下痢が主です。菌が腸管壁へ侵入すると便に血液や膿が混入します。
 一般的には、口から入った菌が腸内で増殖して毒素などを出すために食べた数日後に発症しますが、ブドウ球菌などでは食物の中で菌が作った毒素を食べて発症するタイプの食中毒なので、食後数時間で発症します。

2、原因菌
1)腸炎ビブリオ
 夏の生の魚介類のエラや内臓に存在します。この菌は真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫で保存が重要です。手や調理に使用したまな板や包丁をこまめに水洗いして下さい。
2)サルモネラ
 色々な動物の腸内に存在します。卵、鶏肉、緑ガメなどのペット類を介して感染することが多く、ペットを触った後は手洗いをして下さい。血液や粘液を伴った緑色の水様便が多いですが、乳幼児では全身感染症となりやすいため、卵や肉は十分加熱をして与えて下さい。

3)腸管出血性大腸菌
 O―157で有名になった菌です。牛肉からの感染が主です。熱に弱く十分な加熱が最も有効です。便に血液が混じることが多く、腎不全となることもあります。

4)黄色ブドウ球菌
 この菌は皮膚の化膿部に多く、調理人の手に傷や化膿部があれば食物を汚染します。おむすびやお弁当を作る時に気をつけて下さい。食べた毒素での発症ですので、食後1〜6時間で発症します。

5)ボツリヌス菌
 健康な人ではこの菌を食べても発病しませんが、生後8か月までの乳児の腸管内では菌が増殖可能で、神経毒を産生します。症状は便秘で、筋力低下などなども生じます。蜂蜜にはこの菌が含まれていますので、乳児には蜂蜜を与えないで下さい。

3、対策
 @菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗う。A増やさない:早めに食べる。冷蔵庫などに保管する。B菌を殺す:十分な加熱処理を行う。

 下痢を止める薬は悪い菌や毒素の排出も止め、症状を悪化させますので、使用しないのが原則です。消化の良い食事にして、お茶やイオン飲料水を与えて下さい。便の臭いが強い、便に血液が混じる場合などでは早期治療が重要ですので小児科専門医を受診して下さい。



2005年 4月24日 放送
こどもの日の健康チェック


 入園、入学、進級などによる状況の変化にも慣れ、一段落した頃かと思います。明日は子供の日です。子供の全般についてゆっくり考えてみてはいかがでしょうか。
 元気さ、健康状態、運動能力、知的な能力、行動、対人関係などチェックすることは色々です。小さなお子さんの場合はまず、母子手帳を開いてみてください。

1)予防接種は予定通り接種されていますか。
 予防接種のページがあります。BCG、ポリオ、三種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳)、麻疹、風疹、日本脳炎などのワクチンが無料で行われています。接種の開始時期は生後3か月、6か月、1歳とワクチンによって異なっていますが、接種は順調ですか。接種が早ければ早くから病気の予防が可能です。接種がまだの人は早く接種して下さい。予防接種の無料券は7歳半までしか使えませんので、この年齢を超えると有料となります。病気にかかりたくはありません。他人にうつしたり、治療法がなくて重症になる病気もあります。病気を予防するにはワクチンを接種して予防するしかありません。有料ですが、水ぼうそう、おたふくかぜなどのワクチンもあります。保育園や幼稚園を長期間休まれては困るなどの場合も接種して下さい。お父さんやお母さんも子供から病気をもらいたくなければワクチン接種を考慮して下さい。予防は治療に勝ります。

2)健康診断を受けていますか。身長や体重の伸びは順調ですか。
 生後4か月、10か月、1歳半、3歳などの健診があります。健診を受けていない場合や言葉、行動、運動などの発達で気になることがあれば小児科専門医にご相談下さい。健診、幼稚園や学校で測定された身長や体重を母子手帳の後ろのほうにある男女別の身長や体重を書き込めるグラフに子供の身長や体重の印をつけて下さい。小児科に行けば詳しいグラフがあります。自分の子供の身長や体重が平均に比べてどの位置にあるのか、また、それらの伸びはどうかなどがチェックできます。入園・入学式、運動会などで同級生に比べて非常に低い、高い、やせている、太っているなども参考になります。

 身長が非常に低い場合にはホルモンの分泌、かなり太っている場合には脂肪肝や糖尿病などのチェックが必要です。やせすぎも困ります。ほどほどが良いのです。低身長は薬で治療できる病気のことがあります。ただ、年齢が大きくなると治療不可能となります。低身長、肥満、やせは早期からご相談下さい。



2005年 3月27日 放送
低身長6


 同じ生年月日の子100人を身長順に並べると、前から2人は低身長症と診断され、治療で身長が伸びる可能性があります。クラス内で身長がかなり低い、あまり伸びないなど感じたら可能性が強くなります。小児科専門医に身長の経過をチェックしてもらって下さい。中学生や高校生になり、身長が伸びなくなると治療は困難になります。親、子が共に身長を理解し、治療の必要性や方法を理解することが大切です。
 身長は男児では17歳、女児では15歳頃まで伸びますが、個人差が大きく、思春期の早い子では早く止まりますし、遅い子では遅くまで伸びます。
 カルシュームは骨を硬くしますが、骨を伸ばすのはたんぱく質です。牛乳をたくさん飲んだり、アミノ酸サプリメントを服用しても身長の伸びは増加しません。野菜などを多くしたバランスの良い食事を楽しく食べることが身長に良い結果を生みます。また、適度な運動は骨を刺激し、身長増加を促します。ただ、膝などに負担をかけすぎると逆効果になり ます。負担がかからないように工夫をして下さい。特別に効果が良いスポーツはありませんが、楽しく適度な運動が良いと思います。

1、原因
1)成長ホルモン分泌不全症
 成長ホルモンは骨を伸ばしたり、筋肉を大きくする力があります。このホルモンが少ない場合は身長の伸びはかなり悪くなりますが、ホルモンの補充で身長は伸びます。

2)甲状腺機能低下症
 甲状腺ホルモンは身体の活動性を高めます。低下症では足がむくんだり、運動する気力が低下します。ホルモンを補充することで身長も伸びます。

3)骨の病気
 手足の骨の伸びにくい病気があります。成長ホルモンの効果が期待できる場合もあります。

4)ターナー症候群などの染色体の病気
 染色体自身を治療できませんが、低身長は治療可能です。

5)思春期早発症
 7歳までに乳房が大きくなるなど思春期が早く来すぎると、子供の頃の身長は大きいのですが、身長が早く止まりますので最終の身長は低くなります。早期であれば治療可能です。

6)愛情遮断症候群
子供が愛情に飢えてストレスを感じると身長の伸びが悪くなります。

2、診断
 身長の発育経過、手の骨のレントゲンで骨の発育状況、血液検査で成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌能力などを調べます。
3、治療
 成長ホルモンや甲状腺ホルモンが少なければ、足りない分だけのホルモンを補充します。補充することによって身長が伸びる以外にも体の働きを正常化します。



2005年 2月27日 放送
溶連菌2


 A群ベータ溶血性連鎖球菌(溶連菌)という細菌は、咽頭炎、扁桃炎、中耳炎、猩紅熱などのほか膿痂疹、丹毒、食中毒もおこします。小児ではリューマチ熱や腎炎を引きおこし、心臓や腎臓に障害を与えることが稀にあります。
冬の発熱ではインフルエンザをまず疑いますが、発熱をきたす病気は色々あります。ほとんどの原因はウイルスで時間の経過とともに治癒しますが、この菌の場合は早期診断をして抗生剤での治療が必要です。

1、溶連菌について
 子供に多い咽頭炎の原因菌の1つで、のどが痛くなり、発熱します。ただ、まれに心臓や腎臓などに障害を起こしうる菌なので小児では非常に重要な菌です。この菌は100以上の型があるため何度でも感染します。

2、咽頭炎、扁桃炎
 健康な子供でも15〜30%の子どもが咽頭にこの菌を持っています。この菌の存在自体が悪いことではありませんが、時に咽頭に炎症を起こすと咽頭炎、扁桃炎となります。
 症状は3歳未満とそれ以上で差があり、3歳未満では咳や鼻水といった症状が主です。3歳を越える頃からは発熱と強い咽頭痛で発症します。咽頭の発赤は強く、点状の発赤や出血斑を伴い、扁桃にも白苔が出現するなど特徴があります。舌は白苺舌や赤苺舌といわれ、表面がイチゴみたいにざらざらとなります。全身の皮膚に細かい紅色の鳥肌みたいな発疹が出ることがあります。3歳以上では要注意の菌です。

3、とびひ
 とびひの原因としては黄色ぶどう球菌が有名ですが溶連菌の場合もあり、痂皮が厚いのが特徴的です。腎炎をおこすこともあります。

4、急性糸球体腎炎
 咽頭炎や皮膚感染症後1〜3週に全身の浮腫、血尿、蛋白尿、高血圧が出現し、数か月の入院が必要です。

5、リュウマチ熱
 稀な病気ですが、心臓、関節、神経などがやられます。咽頭炎発症後1〜5週に生じます。再発があり、再発する毎に心臓障害が重くなりますので再発防止が重要で抗生剤を長期使用します。

7、治療
 早期の診断、治療が重要で、抗生物質を5日間は服用します。微熱程度でものどの痛みが強い場合などでは小児科専門医を受診して下さい。

8、予防
 咳や鼻水、皮膚炎では水疱から感染します。手洗いやうがいが予防となります。咽頭炎での兄弟の感染症は25%ほどです。兄弟に症状が出れば薬を服用します。

9、登園、登校について
 適切な抗生剤治療後24時間以内に伝染力はなくなるため、登園・登校は本人の健康状態により可能です。



2005年 1月23日 放送
インフルエンザ


 今年は気候のためか、ワクチンが良く効いているのかインフルエンザは流行していません。しかし、3月末頃まではインフルエンザのシーズンですので油断はできません。インフルエンザは高熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、咳など多彩な症状を示し、年少児では脳炎・脳症が、高齢者では肺炎が問題となるやっかいな病気です。かからないようにうがい、マスク、手洗いをお願いします。

1、インフルエンザウイルス
 流行するのはA型とB型です。A型は香港型とソ連型に大きく分類されますが、A型B型ともに毎年ウイルスが変化しますので、昨年に感染していてもまた感染します。

2、症状
 ウイルスに感染後1〜3日で急に発熱し、38〜40℃が4〜7日間続きます。一旦、熱が下がったように見えた後再度上がることも時々あります。「かぜ」といわれる他のウイルスと比べ、寒気、関節痛、筋肉痛、咳などの症状が強く出ます。
 流行の初期はA型が、遅くなるにつれB型が流行します。数種類のA型とB型といったように、一冬で数回インフルエンザにかかることもあります。

3、診断
 のどか鼻腔内の粘液で15分ほどで診断できます。粘液採取は痛いですが我慢です。

4、治療薬
 インフルエンザの薬はウイルスの増殖を抑える薬ですので、体内でウイルスがすでに増えてしまった状態では効果がありません。そのため発熱出現後40時間以内(2日以内)の開始でなければ効かないとされています。早期に診断し、なるべく早く薬を服用してウイルスを増やさないようにするのが大切です。

5、脳炎・脳症
 意識の低下や長時間の痙攣が特徴です。脳に後遺症を残しやすい病気です。3歳までの乳幼児に生じやすく、発熱と同じ日や翌日になります。高熱だから脳炎・脳症になるわけではありません。熱だけでは頭に異常はきません。

6、解熱剤の使用
 ボルタレンやポンタールなどの解熱剤を使用した場合に脳炎・脳症が生じやすいとされています。その他にも脳炎・脳症をおこすやすいとされる解熱剤もあります。安全性が高いのはアセトアミノフェン(カロナールなど)のみです。解熱剤は一時的に(数時間)熱を下げる作用はありますが、病気そのものを治す力はありません。熱のため機嫌が悪く寝てくれないなど困る時に限定してアセトアミノフェンを少量使用するにとどめて下さい。薬局で売っている薬や病院でもらって残っている薬などは成分を確認して下さい。成分が不明な場合は使用しないで下さい。




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