紫外線と皮膚
しもやけ
頭痛




細気管支炎

 気道にウイルスが感染すれば気道に炎症を起こしますが、乳児や年齢が若い幼児に発症する細気管支炎の場合は、気管支が枝分かれした端の方の細い気管支の部分まで炎症が及びます。その結果、細い気管支が狭くなり、肺に出入りする空気の流れが妨げられ、呼吸困難を引き起こし、特に息を吐くことが困難な状況になります。特に、乳児の場合は、細気管支は非常に細く、炎症が起きると痰がすぐにたまって空気が通り難くなります。主な原因はRSウイルスで、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスやアデノウイルスなどの場合もあります。

 細気管支炎は10月から5月頃まで流行します。お母さんのお腹の中でもらった抵抗力(移行抗体)だけでは感染防御は不十分なため、生後6か月未満の乳児でも感染・発症します。2歳までにほぼ100%が初感染をうけると考えられていますが、麻疹や風疹などのウイルスとは異なり一度感染しただけでは以後の感染を防御するだけの十分な免疫力が獲得されず、何度でも感染、発症します。しかし、再感染を繰り返す毎に免疫力も徐々に獲得し、症状も軽くなっていきます。一般的に2歳頃までには数回の感染を受けますので、この頃には十分な免疫力も獲得し、感染しても鼻風邪程度になります。

 RSウイルスなどは接触や飛沫を介して気道に感染し、4〜6日の潜伏期の後、発熱、鼻水、咳などで発症、通常1〜2週間で軽快します。成人や年長児における場合は軽いかぜの症状のみですみますが、2歳以下の乳幼児ではしばしば上気道炎から下気道炎に進展して細気管支炎となります。特に6か月以下の乳児では入院加療を要する頻度の高い病気です。

症状と診断
 細気管支炎の初期は鼻水、くしゃみ、微熱、咳などの感冒様症状です。咳、鼻水などの風邪の症状が2〜3日続いた後、息を吐くときにゼーゼーという音がしたり、呼吸回数が多くなり、呼吸時に胸が凹みます。罹病期間は通常7〜12日で、ほとんどの乳児では症状は軽度で治ります。ただ、一部の乳児では、体型的に狭い気道が炎症によってさらに狭くなりますので、呼吸困難が悪化し、入院を必要となる場合もあります。特に、呼吸機能が未発達な低出生体重児や喘息や先天性心疾患を持つ小さい子どもは重症化しやすいので注意が必要です。

治療
 これらのウイルスに対する治療薬はありません。症状に対する治療法のみです。呼吸困難が出現しなければ、10日ほどで自然に治ります。重症化しやすい乳児に対してRSウイルスの抵抗力を投与して感染を予防する治療法がありますが、現時点では使用対象者は非常に限定されています。
 
 乳児では鼻水や咳などかぜ症状の後、すぐに不機嫌となり、咳もひどくなり、せき込むようになります。呼吸困難により元気がなくなり、母乳、ミルクを飲まなくなります。脱水気味になると痰が絡み、咳込みなどがさらにひどくなり、水分を取れず、どんどん悪くなります。こまめに水分摂取を心がけて下さい。部屋もできるだけ湿度を上げて下さい。加湿器があれば使い、なければ洗濯物を室内に干したりして下さい。
 急に元気がなくなり、母乳やミルクを飲まなくなり、呼吸が速く、苦しそうなときは急いで診察を受ける必要があります。





紫外線と皮膚

 紫外線は波長の長さによりUVA、UVB、UVCに分類されますが、UVCは大気中で減衰し、地上にはほとんど届きませんので、ヒトで問題になるのはUVAとUVBです。UVAはガラスを透過しますので、室内でも注意が必要ですが、UVBはガラスを透過しませんので、注意が必要なのは晴れた日の屋外です。
 サンバーン(sunburn)とサンタン(suntan)は、日本語ではどちらも「日焼け」と呼ばれますが、サンバーンは紫外線に暴露した数時間後から現れる赤い日焼け(紅斑)で、サンタンは赤い日焼けが消失した数日後に現れ、数週間から数か月続く黒い日焼けです。

1、UV-A (波長 315-380 nm)
 UVAはUVBと比べて、大気中での減衰が少なく、UVBの減少する冬季及び朝夕でもあまり減衰しません。肌に急激な障害を与える作用は弱いのですが、肌に蓄積的なダメージを与えます。波長が長くUVBより深く皮膚の真皮層に浸透し、皮膚の張りを保つ弾性繊維を徐々に破壊し、皮膚の弾性を失わせ皮膚の老化を促進する主要因となっています。一度破壊された弾性繊維は回復しませんので、肌は弾力を失いしわができます。また、UV-Bによって生成されたメラニン色素を酸化させて褐色に変化させます。
 日焼けサロンで照射されるのは主にUVAですので、その際に皮膚の老化も加速していることを忘れない方が良いと思います。

2、UV-B (波長 280-315 nm)
 表皮面に作用すると色素細胞(メラノサイト)がメラニンを生成し、それ以上の紫外線の皮膚組織への侵入を防ぎ、より深い皮膚組織へのダメージを軽減させようとする防御反応を取ります。肌への作用が強く、短時間でも肌が赤くなるサンバーン(日やけによる炎症反応)や、数日後に肌が黒くなるサンタン(色素沈着反応)を引き起こします。また、強い紫外線を浴びるとメラニン色素が過剰に生成され、しみやソバカスの原因となります。波長が短いUVBは、炎症やしみの原因となるだけでなく、肌表面の表皮細胞やDNAを傷つけるなどの生体への影響があります。良い点としては皮膚でのビタミンDの生成があります。

3、日焼け止め
 日焼け止めの塗り薬は紫外線の皮膚への進入を防ぐ効果を利用しており、紫外線を防御する成分には、大きく分けて紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があります。紫外線吸収剤は吸収した紫外線を熱などのエネルギーに変換して放出し、紫外線が肌の細胞に届くのを防ぎます。紫外線散乱剤は散乱剤で肌を覆い、紫外線を肌の表面で反射・散乱させ、肌に浸透するのを防ぎます。
 紫外線吸収剤は、その名の通り紫外線を一旦吸収し、熱エネルギーに変換して放出させる成分のことで、SPF値の高い日焼け止め商品によく使われています。しかしSPF値が高いほど、つまり紫外線を防ぐ力が強いほど、皮膚への負担も大きくなり肌荒れを起こしやすく、肌が弱い人や子供などにはSPF値が高い紫外線吸収剤が配合された日焼け止めはあまりお勧めではありません。
 紫外線散乱剤とは、紫外線を反射(散乱)させる成分のことで、酸化チタンや酸化亜鉛などがよく用いられており、紫外線散乱剤が配合されている日焼け止めは、紫外線吸収剤配合のみの物より肌への負担が少ないと言われています。
 これらの製品では、「SPF値」「PA」と呼ばれる紫外線防御効果が記載されています。SPF値はSun Protection Factorの略で主に日焼けの原因であるUVBの遮断率を表しています。SPF25の場合は、無対策の場合と比較して紫外線が1/25になり、SPF100は1/100ということです。PAは protection of UVA の略で、UVAの遮断に対する効果を表しており、PAは+(効果がある)、++(効果がかなりある)、+++(効果が非常にある)、++++(効果が極めて高い)の4段階で表記されています。PAがSPFと異なり、数値で表記されないのは、UVAのブロック率を評価する良い分析法が存在しないためです。

4、紫外線による利点
 紫外線による利点は、UVBによる皮膚でのビタミンDの生成です。ビタミンDはカルシウムの吸収・沈着や免疫機能の調節に関係しているといわれています。日光照射時間が短いとビタミンDの欠乏を起こし、小児ではくる病を生じさせて低身長や骨の変形を生じますし、成人では骨軟化症となり、骨の痛みや骨の変形、骨折などの症状を生じさせます。

5、赤ちゃんのお出かけ
 天気の良い日に赤ちゃんを散歩に連れて行くときは、強い日差しが直接赤ちゃんに当たらないよう工夫して外出して下さい。赤ちゃんの皮膚は大人よりデリケートで、紫外線で受ける影響には個人差がありますので気をつけて下さい。出来るだけ日差しの強い 10 時〜14 時頃を避けて、朝夕の涼しい時間帯に、薄い長袖を着せてあげ、帽子やベビーカーの日よけを利用するようにして下さい。



思春期早発症(思春期が早い)

 思春期はいずれ出現してくるものですから、いつ出現しても良いかもしれませんが、あまり早く出現しすぎると外見上の問題が生じますし、成人後の身長にマイナスにもなります。また、いじめなどの問題も起こる可能性があり精神的なストレスが問題になります。急に身長が大きくなりだしたらこの病気を考慮する必要があります。治療は出来ますので以下のような子供さんの場合は小児科専門医に相談して下さい。

診断基準

男児
 1、 9歳未満で睾丸、陰茎、陰嚢の明らかな発育が起こる。(睾丸の発育(9.5〜14歳))
 2、10歳未満で陰毛の発生がある。(一般的に10.5〜14歳)
 3、11歳未満で腋毛、ひげの発生や変声がある。(一般的に12〜16歳)

女児
 1、 7歳未満で乳房発育がある。(乳房発達が平均10歳(8〜13歳))
 2、 8歳未満で陰毛発生、小陰唇色素沈着などの外陰部早熟、
    あるいは腋毛発生がある。(恥毛の発生(平均9〜14.5歳))
 3、 9歳未満で初経がある。(初経の発生(平均10〜14.5歳))

 女児のほうが男児より2年ほど思春期が早く来ますが、思春期早発症の子供も多いといわれています。おっぱいが小学校入学までに大きくなったり、生理が出てきた場合には治療が必要です。また、早い時期に急に身長が大きくなりだしたらこの病気を考慮する必要があります。

1、原因
 原因は不明なことが多く、特に女児の場合は特別な原因がなく乳房腫大がくることがあります。ただ、まれに脳内や卵巣に腫瘍のあることがありますので注意も必要です。
 特に女児の場合に、1〜3歳頃に乳房のみの発育が見られることがあります。早期乳房発育症といい、原因不明でほとんどが2、3年のうちに自然に消失します。稀に軽度の腫大が持続することもありますが特に心配は要りません。ただ、この病気かどうか、異常がないかどうかは小児科専門医を受診して下さい。

2、思春期が早くて困ること
1)幼稚園でおっぱいが大きいと目立ちます。また、いじめの問題が生じる可能性があります。
2)生理の処理は幼稚園児では難しい。
3)幼稚園や小学校低学年では身長は高いのですが、身長が早く止り、最終身長はかなり低くなります。

3、診断方法
 それまでの身長・体重の経過をチェックし、女性ホルモンや腫瘍のマーカーなどの血液検査、超音波(エコー)やMRIの検査なども行います。

4、治療
 思春期が早く来る場合は薬で思春期を遅らせることができます。薬は普通に思春期が来る時期まで続け、中止後に思春期が来るようにします。



思春期遅発症(思春期が遅い)

 思春期の発来時期は個人差が強く、同級生と比較しないほうがよい場合が多いですし、特に男子の場合は女子に比べ思春期が遅く出現する子供が多いといわれています。
 一般的には、一旦思春期が来れば思春期は正常に進行します。

1、良い面
 思春期が遅いほうが最終身長は伸びる。思春期になるまでの期間は身長が伸びていますので、この期間が長いほうが最終の身長にプラスになります。

2、良くない面
 思春期になると数年間は身長の伸びが非常に良くなります。思春期が遅いとこの身長の伸びのよい時期が遅れてきます。この身長のスパートが遅いと一時期は身長差が開くことになります。身長の差が開くためのストレスと2次性徴がまだ来ないという精神的なストレスが強くなります。

3、診断基準
 男児:睾丸の増大が平均11歳半(10〜14歳)

1、15歳を過ぎても二次性徴(睾丸3〜5ml以上、陰茎、恥毛)の発育を見ない
  睾丸の発育(9.5〜14歳)、陰毛(10.5〜14歳)、変声・ひげ・腋毛(12〜16歳)

2、二次性徴の出現開始から5年以内に外陰部の成熟が完了しない
  女子:乳房発達が平均10歳(8〜13歳)
 1、13歳を過ぎても乳房、乳輪の発達を全くみない
 2、14歳を過ぎても恥毛の発生をみない(平均9〜14.5歳)
 3、15歳を過ぎても初経をみない(平均10〜14.5歳)
 4、乳房の発達開始から5年以上経過しても初経の発来をみない

診断
1、骨の年齢を調べる。
 体の発育には個人差が大きく、暦と異なることがあります。暦の年齢では無理がある場合が多く、骨の発育状況を調べ、後どれくらいで思春期が来るか、身長がどの程度伸びるかを調べます。

2、性腺機能低下症
 性腺機能が悪く、思春期が来ない子供がいます。原因を調べ、助言や治療を行います。

1)機能的
 強い慢性疾患(消化器疾患、甲状腺機能低下など)、低栄養、激しい運動(高エネルギー消費)など

2)下垂体機能低下
 性腺ホルモン低下症、下垂体の腫瘍、外傷、奇形など

3)その他
 ターナー症候群などの染色体異常

治療
 思春期が多少遅いだけの場合は本人に説明して精神的なサポートをしながら思春期を待ちます。思春期が非常に遅い場合や病気で出現する可能性がない場合はホルモンの補充で思春期を出現させます。
 ホルモン補充療は一時的な補充の場合は本来の思春期が来ると中止しますが、出現する可能性がない場合には治療を一生涯か子供が生まれるまで続けます。



舌の変化

舌は舌乳頭などの変化によりその色調、外観が変化し舌苔、地図舌などなどと呼ばれる状態になります。

1、舌乳頭とは
 舌は4種の乳頭とよばれるもので覆われています。舌背前中央には一面に糸状乳頭があり、その頂上は淡い白色のため舌が淡い白色となっています。所々に点々と赤色の茸状乳頭や葉状乳頭があり、舌の根元に近いところに有郭乳頭があります。
 糸状乳頭以外の乳頭は味蕾(味を感じるところ)を持ち、甘味、酸味、塩味、苦味とうま味の味覚を感知します。

2、舌の色
 舌の色は血流状態、舌苔(表面に白く見えます)の程度、舌乳頭の状態によって変化します。舌乳頭が萎縮し、舌苔が消失すれば舌の表面は暗赤色で平らとなりますし、逆に舌乳頭が炎症で赤く腫大すれば、苺舌と呼ばれます。

3、疾患
1)舌苔
 糸状乳頭の表面が増殖、肥厚して舌表面が通常より厚い灰白色の苔状のもので覆われたように見える状態です。口内炎や猩紅熱などの口腔内の強い炎症や脱水などで強くなります。原因消失後は自然治癒します。

2)苺舌(イチゴのような舌)
 糸状乳頭が消失し、茸状乳頭が腫大するため舌の表面(最初は白っぽく、後に赤くなります)に赤い粒々がつき苺のような外観となります。
 原因はA群β溶連菌感染症(溶連菌)、川崎病、ブドウ球菌咽頭炎、風疹、エルシニア感染症、ビタミン欠乏症(ビタミンB2欠乏症、ニコチン酸アミド欠乏症、ビタミンB12欠乏症)の初期などです。
 特に、A群β溶連菌は咽頭炎、扁桃炎後に急性糸急体腎炎、リュウマチ熱となることがあるため苺舌と感じたら小児科専門医を受診しましょう。

3)地図舌(地図のような表面です)
 糸状乳頭が萎縮や消失した赤色の部分と正常な粘膜とが混在するため、海と陸地といった地図状外観となります。その境界は鮮明で、病変部は紅色を呈し、周辺部よりやや凹んでみえますし、日によって位置、形、程度を変えます。原因は不明です。通常、美容上のこと以外には無症状で、治療も不要です。

4)溝状舌(舌に溝があります)
 先天異常により舌背に多数の溝が生じた状態で、治療の必要はありません。

5)鵞口瘡 (がこうそ、白い苔のように見えます))
 新生児から生後3か月ころまでの乳児の口腔内の粘膜や舌の表面に生じる白色ないし乳白色の小さい点状の集まったものである。ひどい場合は口腔内全体が白い苔(こけ)に覆われたようになります。その形状から「チチかす」とも呼ばれています。こすったりして、無理に剥がそうとすると出血します。通常は痛がりませんし、発熱などもありません。広範囲で哺乳力が低下する場合以外は治療も要りません。



しもやけ(凍瘡)

凍瘡は、寒さのために毛細血管が収縮して血行が悪くなり生じる炎症のことで、手や足の指、頬、鼻先、耳たぶなどに生じます。低温による血行障害ですので、寒冷刺激を持続的に受けやすい部位や血行の悪くなりやすい部位に出来やすくなります。皮膚が赤くなって触ると痛い、痒いといった感覚を伴います。その後赤黒くなり、腫れてきます。指に出来ると硬く膨れ上がることもあります。凍瘡で血行が悪くなっている血管が急に温ためられて血流が増加すると血管周囲の神経が刺激され、痛みや痒みとして感じますので、布団の中や暖房で暖まると痛みや痒みが強くなります。
 凍瘡は気温が5℃前後で昼夜の気温差が大きい時期になりやすく、冷え症や冷えやすい体質の人に多い傾向があり、気候や体質、遺伝も関係します。また、手足周辺の湿度が高かったり、手足を濡れたまま放って置くと気化熱により皮膚の表面温度が下がり、凍瘡になりやすくなります。手足の指が濡れたら、早く、しっかりと拭き取り、靴は乾燥させ、手袋や靴下が濡れた場合は早く取り替える事が予防に効果的とされています。
 血液の循環が悪いためになる病気ですので、血行をよくするために凍瘡になりそうな部位や、手足などをしっかり温めたり、マッサージをして予防をして下さい。運動をして血行を良くするのも効果があります。縄跳びなどではつま先で飛び跳ねますので、足先の血行が良くなり、足の凍瘡の予防や治療になります。先端が細い靴では足の指先が圧迫されて血行不良になり、凍瘡になりやすくなります。
 防寒対策も重要で、出来るだけ露出部を覆う帽子、マスク、マフラー、厚めの手袋や靴下なども効果があります。ただ、必要以上に厚着をすると汗をかいて逆に冷えを誘発することになりますし、厚手の靴下は靴を履いた時に足を圧迫して血流を悪くする可能性がありますので注意が必要です。
 治療法は、入浴時や暖房が効いている場所で、患部を温めながらやさしくマッサージする方法、皮膚の血行を良くする軟膏の塗布、ビタミンEの内服などの方法があります。ただ、これら治療法では痛みや痒みなどの抑制には速効性がありません。痛みが強いときはステロイド軟膏を使用して炎症を抑え、痛みを取ってあげて下さい。



小児のメタボリックシンドローム

 内蔵に脂肪がたまった状態(内臓脂肪蓄積)、中性脂肪やコレステロールが高くなる状態(脂質代謝異常)、高血圧、耐糖能異常(高血糖など)などの危険因子が重なった病態がメタボリックシンドロームという概念で、これらが軽度でも重なることによって動脈硬化が進行し、将来心筋梗塞、脳梗塞等へ進展していく危険性が高くなります。このような患者を早期発見しようという基準がメタボリックシンドロームの診断基準で、成人用だけでなく小児用も提唱されています。

 こどものメタボリック症候群の暫定診断基準では、わが国の小児肥満では腹囲が80cm以上で代謝循環系のリスクが高まることから、
 6〜15歳における小児の基準を男女共に腹囲を80cm(腹囲/身長=0.5以上、小学生では75cm)以上にすると決められています。これに加え
@高脂血症:中性脂肪が120 mg/dl以上または)HDL-C(善玉コレステロール)が 40 mg/dl 未満 A高血圧:収縮期血圧125mmHg以上または拡張期血圧70mmHg以上、
B高血糖:空腹時血糖が100mg/dl以上
 の2つ以上を伴う場合に小児メタボリックシンドロームと診断します。

 小児期の肥満の2/3は成人の肥満へと移行すること、また体重が過剰傾向にある小児は成人になると肥満しやすいことがわかってきました。さらに、子どもたちのあいだにも、糖尿病や脂質異常、高血圧、脂肪肝など、合併症を伴う肥満症が増えてきています。塾での勉強や室内でゲームを楽しむなど体を動かさない生活、不規則な食事時間、ジャンクフードと称される高脂肪・高カロリー食品の氾濫、コンビニエンスストアなどでの食品入手の容易さなどがあります。エネルギーの過剰摂取・消費減少が小児の肥満を増大させています。 動脈硬化性疾患は、主に成人になってから発症しますが、小児期から徐々に動脈硬化が進行していることが指摘されています。

 肥満やメタボリックシンドロームの予防には、適度な運動と食生活の見直しが大切です。ごはんを主食にしたバランスのよい食事が望まれますし、脂っこいものを避け、味付けも薄くする必要があります。スナック菓子などを与え過ぎないこと、親子や友達同士で外で思いっ切り遊ばせることなども重要です。 小児メタボリックシンドローム対策とはいえ成長期なので、極端なダイエットは危険であり、効果的ではありません。身長の伸びが不良になります。女子では子宮や卵巣の発育が悪くなりますし、拒食症を引き起こして、成人後に妊娠が困難になったり、妊娠しても子宮内での子どもの発育が悪いなどの問題が起こる可能性がありますし、骨のカルシウム沈着不足から来る骨密度の低下は中年以降の骨粗しょう症につながります。それよりも運動を増やして消費カロリーを増やして健康的に肥満を解消する方が効果的です。子供時代には骨に負荷を与える運動をすることで骨にカルシウムを定着させてしっかりした骨格形成をする時期なので、思い切り走ったりすることが必要なのです。子供にとって運動することはメタボリックシンドローム対策だけでなく、成長のためにも重要です。10歳代の過度のダイエットは危険です。



少女から女性へ ―第二次性徴と初経(初潮)−

 小学生の高学年の頃になると女の子から女性らしい体になり始め、月経が始まります。この変化は、あらかじめ脳の中にプログラムされた性腺を刺激するホルモンの増加で生じます。この性腺刺激ホルモンが働いて卵巣から女性ホルモンの分泌がはじまり、まず7歳ごろから乳房が、9歳ごろから陰毛が徐々に発育し、身長も急に伸びだします。10歳から15歳頃に初経(最初の生理)を迎え、初経後1〜3年で身長の増加が止まります。初経の発来は性腺ホルモンと卵巣の周期性変化が始まったことを意味しますが、成人女性のような排卵を伴った規則正しい月経となるのは、初経出現後からさらに数年を要します。初経の頃の月経は無排卵性月経(卵子が排卵されていない)や不正出血であることが多いとされています。これは初経を迎えたころの卵巣の働きはまだ発達途上にあり、遅い人では25歳くらいにならないと卵巣発育が終了しないためとされています。

 この頃は女性ホルモンの分泌が急激に変化しますが、不安定で個人差が大きいのがこの時期の特徴です。このため、精神や身体が大きく変化しますが、きわめて不安定で変化の程度も個人差が大きくなります。

1、思春期発来時期の異常
1)思春期早発症:乳房発育が7歳未満、陰毛発生が9歳未満、初経発来が10歳未満に出現する場合に診断します。

2)思春期遅発症:乳房発育が11歳、陰毛発生が13歳、初経が14歳を超えても見られない場合に診断します。
これらは特に原因となる病気がなく生じることがほとんどですが、先天性の異常や腫瘍、ほかの病気の一症状である場合が稀ですがあります。また、最終身長に影響することもありますので小児科専門医か婦人科を受診して下さい。

2、月経異常
 初経後3年経っても、例えば28日周期のように一定の日にちで月経が整順に来る人は65%で、5年後でも70%程度といわれています。若い女性の場合には月経周期の異常は必ずしも異常とはいえません。治療が必要なものも稀にはありますが、ほとんどは性成熟を待つしかありません。医療機関への受診が必要と考えられるのは

1)無月経
 @無月経の期間が8か月以上続く、A心因性や強い体重減少など無月経となる明らかな誘因があり、その原因に対する検査や治療が必要と考えられる場合、B初経後3年以上経過している場合で(初経後すぐの月経は不規則)、月経が3か月以上来ない場合(妊娠の可能性や女性ホルモンの分泌が少ない可能性)には受診が必要です。
 長期間の無月経はその後の卵巣機能にも影響を及ぼします。無月経が長期間続く場合は婦人科を受診して下さい。

2)思春期出血
 思春期少女にみられる子宮出血で病的でないものでも@出血量が多い、A月経期間が長い、Bあるいは出血が頻回である場合に診断します。このような症状では受診が必要です。
 多くは思春期特有のホルモンのバランス異常に基づくもので、出血も重症の貧血になるほどのことはありません。全身の出血傾向の一症状であったり腫瘍が関係していたりすることもありますが稀です。出血期間が長い場合には貧血のチェックが必要です。

3)月経困難症
 月経時に鎮痛剤が必要であったり、学校を休まなくてはいけない程の症状が強い月経をいいます。
 多くは月経血の排出時におこる子宮の痙攣様収縮が原因ですが、ときに子宮内膜症や骨盤内感染、卵巣腫瘍が原因の場合もあります。

3、スポーツと月経異常
 最近ではスポーツの開始年齢が若年化してきており、小児期からのハードトレーニングや大会への参加といった身体的心理的ストレス、摂取カロリーの減少、体脂肪の減少による初経の発来遅延、一旦は出現していた月経の消失、疲労骨折(月経異常による女性ホルモンの低下が原因)が問題となってきています。初経発来前からのハードトレーニングは初経の発来を遅延させます。特に選手年齢の低年齢化の激しい体操や新体操、マラソンに問題が集積してきています。一般にスポーツは骨量を増加させますが、体脂肪の減少や月経異常、女性ホルモンの低下を来す程の過激なトレーニングでは骨量は逆に減少し、疲労骨折がおきますので、スポーツをする場合には思春期少女の二次性徴の発達やその持続にも注意が必要です。



食中毒による腸炎

 水や食物はけっして無菌ではありませんし、毒きのこやふぐ毒のような自然毒を持つ食物も存在します。ただ、ひとの体はこれらの多くに対応できるようになっておりますし、たとえ病原性があっても、食べた細菌数が少なかったり、毒素の量が少なければ、軽症で自然に治癒します。
 食中毒は@細菌、Aウイルス、B真菌(かび類)、C毒キノコ、ふぐ毒、貝毒などの自然毒などで生じます。細菌によるものが主で、夏季に多いのですが、冬は生牡蠣などによるウイルス性の下痢症が主です。ここでは夏場に多い細菌による感染性腸炎について述べます。

1、症状
 腹痛、嘔気・嘔吐、下痢などが共通しています。菌が腸管壁の細胞へ侵入すると便に血液や膿が混入します。
 一般的には、経口摂取された菌が腸管内で増殖して毒素などを出すため発症する感染型食中毒ですが、ブドウ球菌、セレウス菌、ボツリヌス菌などは食物の中で増殖して毒素を産生します。この毒素を食物と共に食べると発症するタイプです。前者では発症までに増殖する時間(一般的には数日)が必要ですが、後者では増えた毒素を食べて発症しますので、1時間ほどで発症することもあります。

2、原因菌
 夏には主として腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、冬は生牡蠣などによる小型球形ウイルスが主な原因です。

1)腸炎ビブリオ
 夏に海水中で増殖するため、夏期の生の魚介類のエラや内臓に存在しています。魚介類の生食が好きな日本に多い疾患です。真水、熱、低温に弱いため、生で食べる場合はよく洗い、冷蔵庫での保存が重要です。魚を調理したまな板や包丁の水洗いも大切です。

2)カンピロバクター
 色々な動物の腸管内に存在するため、全ての動物が感染源となりえますが、鶏肉を介する感染が主です。低温には強く、肉が一旦汚染されれば冷蔵庫に保存しても感染は防げません。下痢便は粘血便となることが多い。

3)サルモネラ
 色々な動物の腸管内に存在し、卵、鶏肉、ペット類を介して感染することが多い。粘血を伴った緑色の水様便となることが多いですが、乳幼児では全身感染症となることがあるため、これらの年齢では卵や肉の不十分な加熱は避けたほうが無難です。

4)腸管出血性大腸菌
 O―157という言葉で有名になった菌です。牛や鹿の腸管内にこの菌が存在することがあり、この便に汚染された肉や野菜、水などが感染源となりますが、熱に弱く(75℃1分間で死滅)十分な加熱が最も有効な予防となります。牛肉からの感染が主です。血便となることが多く、腎不全となり重症化することもあります。

5)黄色ブドウ球菌
 この菌は健康な人の皮膚や鼻腔内に常在しており、特に皮膚の化膿部に多く存在します。調理している人の手に化膿部があれば食物を汚染しますし、鼻腔内に存在しますのでくしゃみでも汚染されます。おにぎり、お弁当などでの感染が多い。
 この菌による腸炎の特徴は、菌による発症ではなく、食物の中で菌が増殖し、その菌が産生した毒素が食物内に蓄積され、その毒素を食べたため発症します。そのため、食後1〜6時間という短い経過で発症します。悪心、嘔吐が強いのが特徴です。

6)ボツリヌス菌
 土の中に存在し、熱に強く、缶詰や真空パックなどの空気に触れにくい食品内で増殖し、神経毒を産生します。健康な小児や成人ではこの菌を食べても通常は発病しませんが、この神経毒を摂取すると視力障害、嚥下障害、唾液の分泌低下などの運動神経麻痺がおこります。ただ、生後8か月までの乳児では腸内の予防態勢がまだ不十分なため、乳児の腸管内では菌が増殖可能で、腸管内で神経毒を産生しますので乳児ボツリヌス症と呼ばれる症状が出現します。症状は初期は便秘であり、進行すると筋力低下や哺乳力減少なども生じます。主な原因としては蜂蜜であり、乳児に対しては蜂蜜を与えないことが原則です。

3、対策
 食物や菌の種類によって異なりますが、@菌を付けない:食品や調理器具、手をよく洗うことです。A増やさない:なるべく早めに食べる。冷蔵庫など菌の増殖を抑えられる所に保管することです。B菌を殺す:十分な加熱処理を行うことです。
 抵抗力の弱い乳幼児や高年齢者、肝硬変などの人では特に注意が必要です。
 細菌による下痢の場合は整腸剤や乳酸菌製剤を用いますが、下痢を止める薬は悪い菌の排出を止めますので余計に重症化させる可能性もあり、使用しないのが原則です。一般に軽症が多く、短期間で自然に軽快しますが、脱水にならないようにこまめに水分(お茶やイオン飲料水)を与えて下さい。薄味のオジヤ、魚や野菜の煮物なども良いと思います。激しい嘔吐や血便などの場合は早期治療が重要ですので小児科専門医を受診して下さい。



暑熱障害(熱中症)

 体の中と外の"あつさ"によって引き起こされる体の不調で、「暑熱環境下、あるいは運動などで体の中でたくさんの熱が作られるような条件下で、体温を維持するための生理的な反応がうまくいかない状態で生じる病態」とされています。つまり、生体の適応範囲をこえる高温環境下で生じる状態で、水分や電解質の代謝がうまくいかないためにおこります。症状は軽症から重症までさまざまです。

 熱中症は、熱波によって主に高齢者に起こるもの、幼児が高温環境で起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるものなどがあります。

 小児では成人に比べ皮膚表面積が大きく、発汗能力も劣るため、体温調節機能は成人に比べ未熟です。また、小児の方が水分をたくさん必要としますので、暑熱障害は子供に起こりやすくなります。

 暑い日が続くと身体が徐々に暑さに慣れて(暑熱順化)、暑さに対応できるようになります。暑い環境下での運動や作業は開始数日で自律神経による汗の反応が良くなりますが、暑熱順化がうまく働くようになるまで2週間程度は必要と言われています。暑熱順化は運動する事によって獲得出来ますので、散歩や軽い運動などで汗をかく習慣を身につけていけば熱中症は予防できます。

 季節的には7月下旬から8月上旬の梅雨明け直後に多く発症しますが、夏以外でも急に暑くなったときに、体が暑熱環境や体の発熱に馴れていないために生じます。@気温は高いときに起こりやすいのですが、気温はそれほどでもなくても湿度の高いときA前日に比べ急に気温が上昇したB無風状態C砂やアスファルトなどの日光の反射が多い所などが起こりやすいとされています。暑熱障害は少しの気配りで予防できる病気です。子どもの環境をチェックし、予防を心がけてください。

 晴天のときには太陽光の地面からの反射や地面が熱を帯びていることもあり、地面に近い低い位置の気温が高くなります。つまり、大人が暑いと感じている時は、乳幼児はそれ以上の暑さを感じているはずです。特にベビーカーの中は風通しも悪く注意が必要です。晴れた日のエンジンを止めた車の中は非常に暑くなりますので、子供を車内に放置する事は止めて下さい。

分類
 一般には3つの型に分類されています。

1、 熱疲労
 大量の発汗により、脱水や電解質の喪失が生じ、水分の補給が追いつかない場合に抹消循環不全が生じ、脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。

対応:涼しい所で休ませ、身体の冷却や水分補給をします。
 急に暑い場所に出ると皮膚の血管が拡張し、血圧が低下して脳貧血といわれる状態となり、失神(熱失神)する場合もあります。

2、筋肉の攣縮
 発汗のため電解質が喪失した(ナトリウムとクロール)ために、筋肉の興奮性が亢進して生じる下肢を主とした筋肉の攣縮で痛みを伴います。下腿のふくらはぎ(ひ腹筋)のこむら返りがよくおこります。電解質の含まない水分の補給を長期間した場合にみられやすい。

対応:電解質の補給を行う。

3、 熱射病(中等症、重症)
 熱疲労の状態がさらに進行し、脱水に加え体温調節機能が破綻した状態です。うつ熱による体温上昇が発汗量を超えているため体温が異常に上昇し、熱自体や熱による循環不全による全身臓器の障害が生じます。体温の異常な上昇、発汗の停止、痙攣、意識障害以外に肝臓や腎臓の機能不全も生じます。
 熱のため発汗が多くなり、水分や電解質が喪失し、血液の循環が悪くなり、尿量も低下します。この状況が進行すると血液の循環が保たれなくなり、組織からの熱放散が不十分となりますので、代謝が障害され組織の破壊が生じます。
 日射病は直射日光に長時間さらされるために生じる循環不全をいいます。

@中等症
 脱水と塩分などの電解質が失われて、末梢の血液循環が悪くなり、極度の脱力状態となり、強い疲労感、虚脱感、頭重感(頭痛)、失神、嘔吐などの症状が生じますし、血圧の低下、頻脈(脈の速い状態)、皮膚の蒼白、多量の発汗などのショック症状にもなります。

A重症
 自己温度調節機能が破錠され、中枢神経系を含めた全身の多臓器障害で、意識障害、おかしな言葉や行動、過呼吸、ショック症状などが生じます。
 重篤で、体内の血液が凝固し、脳、肺、肝臓、腎臓などの全身の臓器の障害が生じ、多臓器不全で死亡に至る危険性が高くなります。

4、予防、治療
 睡眠不足、運動不足などの体調不良は暑熱障害を起こしやすいため、スポーツではこのような状況を極力避けるようにして下さい。肥満、糖尿病、心臓病やどの基礎疾患のある子は特に注意が必要です。服装は通気性の良い、放熱を促進する服を使用し、外では帽子をかぶって太陽光をさえぎる服を選択して下さい。水分補給はこまめに行なって下さい。スポーツ飲料水を半分に薄めたものが適しています。
 発症予防のためや初期症状を見つけたときは涼しい環境と水分補給を十分に取ることが重要です。水分は塩分と一緒だと吸収が早くなり、糖分が含まれると体の回復が早くなります。イオン飲料水をうまく組み合わせて使って下さい。日頃から外遊びを奨励し、暑熱順化をしておいて下さい。
 子供の顔が赤く、汗をかなりかいている時は身体の深部体温はかなり上昇している可能性があり、涼しい環境下で休ませてあげて下さい。強い疲労感や嘔吐、意識障害などの症状が出ている場合は、点滴や入院が必要です。救急車が来るまでの処置としては、衣類をできるだけ脱がせて、体に水をふきかける、その上から、冷水で冷やしたタオルで全身、特に手足(末端部)と体幹部をマッサージ(皮膚血管の収縮を防止するため)する。うちわ、タオルなどで送風する。使用する水は冷たいものよりも、常温の水もしくはぬるいお湯が良いとされています。氷嚢、アイスパック、アイスノンなどを、腋下動脈(両腕の腋の下にはさむ)、頚動脈(首の横に両方から当てる)、大腿動脈(股の間にあてる)などの大血管に当てて、血液を冷却する。霧吹きなどで、水を吹きかけてその気化熱で冷却する。繰り返し吹きかけつつ送風することが肝心です。体の中心部を冷やすことが目的ですので、血液循環を保つため、皮膚表面の血管の収縮を防止する必要から、皮膚表面を冷却しないで、かつ、震えを起こさせないような注意が必要です。そのため、用いる水は出来るだけ温水のほうがよいと考えられますが、温水でないといけないものではありません。冷却は、意識が回復し、寒いと訴えるまでは続けて下さい。




水痘(水ぼうそう)

 水痘帯状疱疹ウイルスは初めの感染で水痘(水ぼうそう)を発症し、水痘治癒とともにウイルスは脊髄の近くの神経節(神経の中継所)などに侵入、潜伏する性質があります。この神経節内に潜伏感染したウイルスは体調不良などの状況で再び活発になり、その神経の支配している部位に帯状の水疱疹を生じ、帯状疱疹とよばれます。

1、症状
 感染してから症状出現めで(潜伏期)は14日(10〜20日)です。発疹は、2〜5mmの水疱とその周囲が赤いのが特徴です。3〜4日後にかさぶた(痂皮)を作ります。その後痂皮は脱落し、色の脱失を残します。全ての発疹の痂皮化終了まで7〜10日間かかります。この間は幼稚園や学校はお休みです。口腔などの粘膜にも出現し、浅い潰瘍、口内炎をとなる場合もあります。熱は初期に38℃程度となることもありますが、2〜3日で治まります。

2、妊娠中あるいは出生直後に母が水痘に感染した場合の児への影響
 妊婦が分娩前4日から分娩後2日の間に水痘が発症した場合、児は母からウイルスをもらっているため、出生後の日齢5〜10に水痘にかかります。新生児の免疫力は低いため17〜30%の児は重篤となるとされています。
 妊婦の水痘発症が分娩前5日〜21日の場合、出生児は生後0〜4日頃に水痘となりますが、母がすでに作った抵抗力をもらっていますので重症化しません。また、22日以前の場合は児に水痘はでません。

3、成人での水痘
 一般のウイルス感染症と同様、水痘でも成人では小児に比し多少重症感があり、2〜3日前から発熱、全身倦怠などの症状が見られ、発疹も大型、数も多く、痂皮形成までの期間、色素沈着、瘢痕も残しやすい傾向です。

4、予防
 ウイルスに接触前の一般的な予防とウイルスに接触後の緊急的予防があります。

1)一般的予防(感染前の予防)
 水痘生ワクチンが市販されており、任意接種で有料ですが1歳以上で接種が出来ます。成人、特に妊娠する可能性がある女性で以前にかかっていなければワクチン接種をお勧めします。

2)ウイルスと接触した後の発症予防

a)水痘ワクチン緊急接種
 接触3日以内であれば水痘ワクチンを接種すれば発症防止や軽症化が期待できます。ただ、ワクチン接種は早ければ早いほうが良いのは勿論です。

b)薬による予防
 ウイルスが血中に広がる時(予想発症日の1週間前、接触後1週間)から薬を7日間服用する方法です。一旦、咽頭などの局所で増えたウイルスが全身に広がるのを防止し、症状を出なくすることを目的としたかなり特殊な方法です。一般的にはお勧めしません。

8、治療
 水痘の発疹はかゆみを伴い、水疱内容液が感染性を持ちますので、かゆみの軽減と水疱の早期痂皮化が主な治療目的となります。

1)水疱や掻痒に対して
 乾いて白い薄い膜様物になりますが亜鉛化軟膏の塗布が一般に行われており、掻痒感の軽減にも効果があります。
 子どもでは汗をかいたり、汚れたりして水疱の破れた部分の掻痒、痛みが強くなったり、細菌感染の機会を作る場合があります。皮膚は清潔に保つべきで、湯船に入るような入浴は細菌感染の問題もあり勧められませんが、シャワーなどで汗や汚れなどを洗い流すことは子どものイライラの解除や安眠、親の安眠のために有用です。特にオシメの部分や肛門部はきれいにしてあげたいものです。

 ウイルスに効く薬はほとんどないのが現状ですが、幸いこのウイルスに対しては非常に効果のある薬があります。3〜5日の服用で発症期間が短縮し、症状が軽くすみます。服薬の開始は発疹出現後48時間以内であれば有効ですが、早ければ早いほど効果があります。



子どもの頭痛

 風邪の発熱に伴う頭痛が最も多くみられますが、体調不良、鼻閉、肩こり、心配事や精神的なストレス、遠視や乱視による眼精疲労など原因は色々です。また、一緒に遊んでほしいなどの周囲の気を引くためや行きたくない、やりたくないなどの訴えの場合もあります。
 頭痛はズキンズキン、ガンガンと拍動性に激しく痛む場合は片頭痛を考えます。頭を動かす、姿勢を変えるなどの動作で痛みが強くなります。音や光に過敏になったり、吐気を伴う場合もあります。片側のこめかみの辺りの頭痛が続く場合が多いのですが、子どもでは両側の痛みで1時間程度の持続で治まる場合も多くみられます。遺伝的な要因が強く、不規則な生活やストレス、寝すぎや睡眠不足、気候や気圧の変化などが誘因となります。痛みのある部分を冷やして、暗くて静かな部屋に寝かせます。体を温めて血液の循環がよくなると、かえって頭痛がひどくなります。
 テレビの見過ぎ、ゲームやパソコンのやり過ぎ、姿勢の悪さ、ストレスなど最近の生活習慣で緊張性頭痛も増えてきています。長時間同じ姿勢でじっとしていることによって、肩から首、頭へとつながっている筋肉が緊張して固まり、頭全体や、後頭部から首筋にかけて締め付けられるような重苦しい感じがします。
 小学高学年になると朝の寝起きが悪く、午前中は調子が悪くて頭痛を訴え、昼頃にはすっかり元気になるという起立性調節障害を伴う子どもも多くなります。
 片頭痛では寝すぎや寝不足解消に早寝早起きなどの生活リズムを整え、外遊びなどの楽しい事も心掛けて、テレビやゲームのやり過ぎ、まぶしい場所や騒音などの誘発要因を避けることで発症を予防します。おけいこ事、塾、クラブ活動などが過重となっていないか、家庭や集団生活での人間関係も考えて下さい。学校生活での不満や不安、家庭内の問題、友人関係、受験のプレッシャーなど子どももストレスを溜め込んでおります。ストレスの発散を家族と共に行って下さい。
 鎮痛薬を飲んで、ぐっすり眠ると、すっきりすることも多く、痛みが強くてつらそうなときは鎮痛薬を服用することも考慮して下さい。ただ、心理社会的要因の関与した頭痛は鎮痛薬が効きにくく難治で、カウンセリングも必要な場合もあります。
 歩く時にふらつく、手足が動かしづらいなどの神経症状がみられる、頻回に頭痛や嘔吐が出現する、症状が進行している場合などでは緊急受診や検査が必要です。



生活習慣病

 日本のこどもの生活も@体型、体力向上を目指した食事の西欧化による動物性蛋白質と脂質の摂取増加、A塾の流行による余暇の減少、Bテレビの普及などによる夜型の生活習慣、C受験勉強によるストレスなど変化してきています。

 種々の病気はその個人が持つ遺伝要因と密接に結びついていますが、その発症や進行には外部環境や生活習慣要因が大きく関与しているといわれています。生活習慣は長い時間かかって形成されるものであすので、一度好ましくない習慣が形成されると一朝一夕に改善することは難しくなります。生活習慣は幼児期にその基礎がつくられ、小学校が完成期であり、中・高校期は自立期であるといわれています。つまり生活習慣は幼少時期にその基本が身につけられるものですので、幼少時期の家庭、保育園、幼稚園、学校における適切な生活習慣獲得が重要と考えられています。

 しかし、難しく考えると生活できませんし、子育て出来ません。自分の家庭で、出来る範囲で、かつ長続きする生活を考慮して少しずつ改善していって下さい。

1、生活習慣病とは
 生活習慣病は「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症、進行に関与する症候群」と定義されています。
 生活習慣病の遺伝的素因を持つものにとっては発病の予防、あるいは遅延のために生活習慣の改善は非常に重要な意味を持ちます。個人個人の生活習慣に対する意識、対処が問われる疾患です。

 最近は、かつて成人病といわれた2型糖尿病、高血圧、高脂血症などの発症年齢が徐々に低下してきており、小児成人病とも呼ばれるようになっています。この中でも、特に2型糖尿病の発生が小児期後期から思春期に多く見出されるようになってきました。遺伝要因に加えて、動物性脂肪の過剰摂取、食物繊維の摂取不足、運動不足、喫煙、肥満が2型糖尿病の発症を増加させるといわれています(糖尿病の項参照)。

2、見つけられる病態
 多くの小児生活習慣病の発症に密接に関連するのが小児期の肥満です。肥満は肉眼的にも判断できますし、毎年必ず行われる身体測定で評価できるという特徴、利点があります。

3歳頃までの肥満は成人になってからの肥満と結びつきませんので、この頃の「ぽちゃぽちゃしてかわいい」は心配いりません。3歳以降の肥満の大部分は成人になってからの肥満に結びつきますので、小児期での肥満対策は重要です。

3、予防法
 生活習慣の中では食事が重要な要素を占めるとされ、日本が長寿国である一因に位置付ける報告もあります。@蛋白質が多種(肉、魚介、豆)、A比較的低脂質かつ抗動脈硬化作用のある魚油の占める割合が多い、B糖質は複合糖(食物繊維、炭水化物が多い)という和食が見直されるべき時期に来ていると思います。成人してからの「おふくろの味」を懐かしむ食行動の存在は小児期の和食が一生の食生活に影響を及ぼすことを示す良い例ではないでしょうか。

 その他に、摂取エネルギーの制限、消費エネルギーの増加は重要です。常日頃からスナック菓子や甘い飲料の制限、運動の時間や空間の増加を実行しなければなりませんが、子どもだけに制限を強要させることは継続不可能でありますので、家庭が一丸となって行ってあげて下さい。

1)運動の効果は?
@運動能力、持久力、体力の増強
Aエネルギー消費
B血圧を低下さす
Cインスリン感受性を高める
D血清総コレステロールを低下さす
Eストレスの発散
F生涯スポーツの基礎となる。
G危険からの回避能力の向上
H精神発達の促進と社会性の育成

2)運動をする上での注意点は?
@年齢による適した運動の選択
 小学校:スマートな基礎動作
 中学校:基礎体力作り
 高校 :筋力トレーニングや技術の習得

A多種目を行う
B競技性を少なくし、遊び部分を多く
C食事指導と精神指導も合わせて行う

など、楽しみながら続けられる環境が必要です。

 肥満を主訴に来院する場合、肝機能の軽度異常によく遭遇します。「薄味に」「ジュースやポテトチップスなどの間食、脂っこい食事は少なめに」「自動販売機で買うのであれば、お茶かノンカロリー、小さいスポーツドリンクの缶」「少し歩くか軽い運動を増やす」「やせる必要はないが体重を同じにし、増やさない」などと指導しています。少しでも守ってくれると数か月で肝機能は正常値に戻ります。こどもには身長の増加があり、体重の維持だけで肥満度が下がります。指導する側にとってこどもに無理なダイエットや運動をさせる必要がなく楽です。

1)家庭での注意点
 肥満はやせる努力をするよりも肥満しないように注意するほうが楽だし、効果的です。また、年少時開始のほうが効果は良いといわれています。悪くなる前の早期対策が楽です。ただ、肥満体型であるからやせなければならないと単純に注意するのは慎重であるべきと考えます。肥満度が大きくても脂肪肝にならない児や肥満と見えない児が脂肪肝であったりもします。元気で、活発で、肥満が肝障害など体に悪さをしなければ肥満体であるということは個人の勝手であるという理論は言いすぎでしょうか。自分だけではどうしようもない環境がありますし、肥満の原因となる過食がストレスのはけ口の1つとしてストレスに対する自己防衛手段であるかもしれません。ゆっくり何年もかかって自分にあった食生活を摸索してもらえればと願っています。家庭の味覚、嗜好、食事の伝統などの食生活は各家庭で異なるはずです。本に書いてあるような一律の食事内容は実を結びません。また、食事のコントロール、その人にあった食事形態は一生涯続いてこそ意義があるのであり、ごく短期間に無理をして強制しても、その直後の反動、原状復帰などが生じるようであれば成功とはいえません。個人の生き様は重要であり、大切にされるべきです。本人の自覚を促しながらゆったりとした改善が重要です。



清潔な皮膚

 日本人は清潔、潔癖志向が強く、毎日お風呂に入って全身を石鹸で洗っています。お風呂に入らず不潔にしても、臭いはするかもしれませんが、皮膚炎なることはほとんどありません。小さい子供の皮膚は皮脂の分泌は少なく、大人のようにベタついたりすることも少ないので、お尻などのよく汚れる部分は洗う必要はありますが、汗を流す程度の入浴で十分です。逆に洗いすぎたり、こすりすぎたりすると皮膚が荒れて皮膚炎になります。

 赤ちゃんの場合は、肌は弱く、汗もや湿疹など肌のトラブルが起きやすいのですが、赤ちゃんは新陳代謝が盛んなので、多少の汗もや湿疹は放っておいても治ることが多く、あまり神経質になる必要はありません。赤ちゃんの湿疹も出来るだけ早く治って欲しので、薬での治療は必要な場合も多いですし、湿疹も程度が強ければ早期の治療が重要です。ただ、スキンケアで治る程度の赤ちゃんの軽度の湿疹にまで薬をたくさんつけてスベスベの皮膚にしようと一生懸命になる必要は無いと思います。妙齢の女性であれば皮膚はスベスベに保つ努力をする価値はあると思いますが、赤ちゃんや子供の場合では、多少の湿疹にはスキンケアだけでゆっくり治るのを待つことも選択枝のひとつと考えれるような、ゆったりとした子育てをして下さい。

 最近は、食事の前やトイレの後の手洗い以外にも、保育園や幼稚園、学校、その他さまざまな施設の入口にアルコールの手洗い液が置かれています。病院で感染者や入院患者に接触する仕事や抵抗力の低下した病気の子供、食物を提供する仕事などの場合は厳密な消毒も時には必要と思いますが、一般の家庭や元気な子供に対してまで、それ程清潔にする必要はあるのでしょうか。アルコール消毒は簡便であり、インフルエンザウイルスにも効果があり、頻用すべきだというマスコミの報道がありました。マスコミが良いといえば必要、不必要は別にして、皆が右に倣って実施するのを日本人は好みます。手洗いも指の間、爪の隙間まで丁寧に30秒間程度するべきだというマスコミによる指摘もありました。本当にここまで、元気な一般の子供たちに必要でしょうか。登園、登校、施設入り口で手洗いをしてどれ程の感染が予防できるでしょうか。子供から子供に伝染する病気は主として咳、鼻水、吐物、便を介して伝染します。手洗いの効果は非常に限定的と考えます。逆に、洗いすぎて手が荒れると、手荒れてささくれた皮膚の小さな傷の中に細菌が入り込んで、手を洗っても多くの細菌が生きており、食中毒や細菌感染症の感染源となります。手が荒れるほどの手洗いは避けて下さい。

 私たちの皮膚や腸には無数の細菌(常在菌)が存在しておりますが、これらの菌は有害ではなく、これら菌の自浄作用や合成する物質が我々の健康を維持する働きをしています。無数の有益な細菌が皮膚や口腔内、腸管内に生きてくれているおかげで、病気の原因となる細菌が皮膚や腸管内で増えるのが抑制されたり、体内に入って病気を引き起こすことが予防されています。微生物(菌)の存在は私たちの健康に必須なもので、無ければ生きていけない共生です。ただ、病気の原因となる微生物もいますので、そのような微生物が繁殖しないように手洗いをして、清潔にすることは病気を予防するという点で大切なことです。しかし、無害な微生物まで、むやみに殺菌して、生活環境から微生物をなくしてしまうと、病原菌が繁殖しやすい環境を作ることになりますし、私たちの身体が微生物に対して抵抗性を失うことにもなります。不必要な殺菌や過剰な除菌はかえって危険です。普通の生活であれば、厳密な手洗いやうがいまでは不要と思います。

 殺菌グッズ、除菌グッズ、除菌加工、空気除菌など色々清潔好きな日本人好みの宣伝文句が沢山あります。靴下などは臭いが少なくなり良いのかもしれませんが、空気清浄機、布団や文房具の抗菌までとなると不要といわざるをえません。全ての物の表面や空気中には細菌やウイルスは無数に存在しています。一般生活のなかでは細菌やウイルスの存在しない場所は存在しません。しかし、人間は細菌との共生で生きれています。抗菌グッズを使用すると害のない細菌100億個が10億個に減りますが、これらは無害の菌を減らしているだけです。善玉菌が少なくなれば悪玉菌が増加し、病気になりやすくなります。皮膚の常在菌を減らすと皮膚の自浄作用がなくなり、病気を引き起こす菌が繁殖して皮膚病になりやすくなります。子供の生活環境がきれいになってアレルギー疾患を持った子供が増えたという話もあります。必死に抗菌掃除や空気中を除菌してもドアを開けたり、人が動いたり、くしゃみをすれば無数の細菌やウイルスが空気中に散らばります。報われにくい努力や出費は減らして下さい。床や畳が汚れたら掃除機をかけたり、水拭きをして、衣服が汚れれば洗濯をして、手が汚れれば水道水の流水を使用して石鹸で洗うというだけで十分ではないでしょうか。手洗いを厳密にするのは、伝染力の強い病気の原因となる菌が手に付いたときぐらいに限るという考え方で良いと思います。

<滅菌、消毒、除菌について>
 滅菌は存在している全ての微生物やウイルスを死滅させるか除去することで、消毒は病原性のある微生物を害のない程度にまで減らすことです、除菌は対象物から微生物を除いて減らすことをいいます。
 殺菌法として一番簡単で確実なのは熱を加えることです。水や食品に含まれる微生物は沸騰する100℃程度でほとんどは死にます。しかし、カビや細菌の胞子は熱に強く、100℃でも生き残ります。これでは困りますので、滅菌をする場合に、高温の120℃、15分間という高温高圧滅菌(オートクレーブ)で処理すると、熱に強い胞子も死んでしまいます。ただ、加熱は手洗いには使用できません。塩素系の消毒剤であるミルトンやキッチンハイターも殺菌効果は強力で、短時間で効果が出ますが、手洗いには使用できません。予防注射や採血の時の皮膚消毒で使用されている80%のアルコール消毒は上記の2つよりも効果は多少落ちますが、強力な殺菌効果を有しており、簡便で、手洗いにも使用可能です。

 ただ、手を清潔にするのであれば、単純で効果があるのは、水道水と石鹸を使って手を洗う除菌法です。水道水の蛇口から出る流水と石鹸で洗うことで細菌やウイルスが洗い流されて激減します。泥や汚物の付いた手では、泥や汚物を取った後からでないと、アルコール消毒の効果は非常に低下します。汚れた手には流水による手洗いが基本です。流れる水を使用しますので清潔になるのであって、洗面器などに溜めた水で手を洗っても、細菌やウイルスが多少薄まり減少しますが、清潔と言えるまでにはなりません。あくまで水道水の流水で洗うことが重要ですが、非常に簡単で良い方法と思います。



咳、痰

 咳、痰、鼻水などは気道(鼻腔、咽頭、気管、肺など)に入った異物を外に出そうとする働きがあります。咳や痰を止めると細菌などの異物が外に出ず、困ります。咳、痰などはむやみに止めないようにしましょう。しかし、咳、痰、鼻水は本人や家族にとって、つらくてしんどいものです。特に子どもは口で息をするのが下手なため、鼻水で鼻がつまると寝てくれません。抱っこして鼻が通るようになれば機嫌が良くなるのですが、親も子も寝不足になります。薬をうまく使って下さい。

1、薬
 1)咳に対しては気管拡張剤を用いて気道の通りを良くし、痰を出しやすくしてやれば咳が軽くなります。
 2)痰をやわらかくする薬を用いると痰が出やすくなり、気道上皮の動きが良くなります。
 3)鼻水には抗ヒスタミン剤を少量使用しますと鼻水が軽減されますし、少し眠気が出て眠りやすくなります。
 4)百日咳などの特殊な咳の場合は、咳を止める作用のある特殊な薬を使います。

2、喘息様の咳、呼吸困難に対する薬
 気管が炎症や収縮によって狭くなることで生じます。息を出すとき「ヒューヒュー」という音がするのが特徴です。狭窄がひどいとこれらの音が聞こえない場合もあります。呼吸が苦しそうであれば小児科専門医を受診してください。

1)吸入(ネフライザー)
 直接に気管や肺に薬を入れるやり方です。経口薬や注射薬とは異なり、必要なところへ直接作用します(不均一ですが)ので薬の量も少なくてすみ、全身への副作用も出にくいという利点があります。気管支拡張剤とインタールの吸入が一般的です。

2)経口の気管支拡張剤
 良く用いられます。長時間効果が持続する薬もあります。症状や発作の状況に応じて使い分けます。

3)吸入ステロイド
 成人ではリモデリング(炎症によりダメージを受けて気管が変形してしまう)という考えで、変形を予防するため吸入ステロイドが使用されます。ただ、小児では気管がダメージを受けても自然に回復することが多く、吸入ステロイドを子どもに使用することには慎重であるべきと考えます。
 しかし、重症例や頻回例には使用します。幸い、吸入の場合は経口や注射とは異なり、全身への影響はかなり減少します。
 深刻に悩まないでゆったり構えてください。喘息様の発作は小学生の中頃からほとんど出なくなる子どもを多く見かけます。それまで我慢です。



舌小帯短縮症

 生まれつき舌の裏側の中央にある舌小帯という膜様の「ひだ」が舌の先端近くまで接着していて、舌を自由に前方に出せない状態を舌小帯短縮症といいます。舌小帯短縮の程度が重度な場合では、舌を口唇の外へ突き出すことが困難であったり、舌の先端がつれてハート型になったりします。乳児の1〜3%くらいに見られ、男児に多いとされています。

 舌小帯短縮症があると、おっぱいを上手に飲めなかったり、言葉が舌足らずででラ行の発音がうまく出せなかったり、英語の発音がうまく出せなかったりすることがある、などと言われる場合があります。しかし、実際にこのようなトラブルが起こるのは稀で、一般に舌小帯短縮症があっても手術の必要のある症例は極めて稀です。以前は母乳がうまくのめなくなるかもしれないという理由で、乳児期に舌小帯を切離することもありましたが、現在では、そのような処置をすることはほとんどありません。日本小児科学会の調査では舌小帯短縮症であっても、哺乳障害や呼吸障害の原因となることはほとんどなく、したがって手術の適応となる症例は少なく、手術の対象となる症例の大部分は構音障害の改善が目的であると報告しています。

舌小帯短縮症は乳児期の摂食嚥下で問題となるよりも、幼児期の構音障害の原因として問題になることがあります。「サ」行音、「タ」行音、「ラ」行音などが歯間音になったり、歪み音になったりすることがあります。特に「ラ」行音が影響を受けやすいとされています。例えば「りんご」が「いんご」、「ラッパ」が「ダッパ」のように置き換わる場合があるといわれています。「ラ」行音の習得は通常は5〜7歳と言われており、その時期を待って必要なら手術をすることが多くなっています。

治療
 軽度のものは治療の必要がありません。舌が発育して幅や長さが増すにつれ舌小帯は退縮して細くなり、伸びてきて4、5歳頃には外見上もわからなくなります。ただ、舌の先から5mm以内にまで付着しているような極端に短い場合には、舌小帯が将来伸びても、次第に太くなって来ますし、哺乳し難くいし、発音が舌足らずになるので、乳児期に切った方が良い場合もあるとされていますが非常に稀です。

 構音障害による手術適応は4、5歳くらいになっても舌が上あごにつけられなかったり、舌の先が歯のはえる部分を越えて前方に伸ばせない場合に考慮します。

上唇小帯
 上唇小帯とは、上くちびると歯茎をつないでいる「すじ」をいいます。上の歯茎の中央で、左右の切歯(前歯)の真ん中にある帯状の肉です。2歳未満ではこの小帯が太く、歯ぐきの頂上から上の前歯の間に割り込むようにまわりこんでいる場合が一般的です。上顎の発達につれて萎縮していきます。1歳6か月児健診などで指摘されることがありますが、よほど極端なものでなければ乳幼児期に切除する必要はありません。

 上唇小帯が特に太く肥厚していると歯の萌出の遅れや位置異常、噛み合わせの不正の原因になることがあります。また、上顎の左右の前歯の間が広く開いてしまう(正中離開)という美容的な問題も生じます。これらの場合には手術の適応となりますが、特に支障が無ければ永久歯が生え変わるまで経過観察になります。



喘息性気管支炎

小児アレルギー研究班では主として乳幼児に起こる喘息様症状を来す気管支炎と定義しています。この病気は各種の急性、慢性気道疾患を含んだ総称として考えるとされています。1〜2歳児に多くみられ、風邪をひくとすぐに呼吸音にヒューヒュー、ゼーゼーといった音が聞こえるようになり、治りにくいのが特徴です。原因となる主な病気としては急性気管支炎、反復性気管支炎、急性細気管支炎、アレルギー性気管支炎、乳児喘息と気管支喘息(軽症型)、慢性気管支炎、その他喘鳴をともなう疾患などがあり、病気によって治療方法も異なります。

 急性気管支炎はウイルスや細菌などにより気管支に炎症が起こるものをいいますが、小さい子どもは気管支の内径が細いため、気管支炎による気管支壁の炎症により更に気管支腔が狭くなり、狭い内腔を空気が出入りするためにゼーゼーといった音(喘鳴)が起こります。この状態を喘息性気管支炎または喘息様気管支炎と呼んでいます。症状は喘鳴、痰がらみの咳のほかに、感染による発熱や鼻水を伴うことがあります。喘息性気管支炎は幼児期によく見られる気管支の病気ということです。咳は主に夜間に多く、咳き込みますので睡眠不良になり、ひどくなると日中も激しく咳込みます。気管支に痰が絡んで咳が強く出る点でその症状は気管支喘息とほぼ同じですが、喘息性気管支炎の本体は急性気管支炎です。気管支喘息はアレルゲンに出会うことで誘発されることが多く明らかなアレルギー疾患です。喘息性気管支炎は感染に伴う急性気管支炎のゼ−ゼ−型と考えられ、気管支喘息とは異なり、小学校に入学するころには風邪を引いても発作を起こさなくなります。

 風邪を引いた時にだけ、呼吸音がヒューヒュー、ゼーゼーといった音の聞こえる場合で、風邪が治れば治ります。幼児が風邪などを引いているときに出てくる症状で感染症に誘発されるアレルギー症状と考えられています。その根底にはアレルギー体質が存在すると思われますので本質的には気管支喘息との違いは程度の差と思われます。ただし喘息性気管支炎は成長とともに軽快することが多いとされています。その子が、そのまま喘息にならずに治ってしまうか、本当の「気管支喘息」に進展してしまうか、その時点ではよくわからないという意味がこめられています。残念ながら、どのような子が治り、どのような子が「気管支喘息」に進展するかは現在のところ予測する方法はありません。

 また、冬に1歳以下の乳児が気管支よりさらに細い細気管支に炎症が起こり、呼吸困難をおこす急性細気管支炎という病気があります。RSウイルスによる冬の風邪です。大きな子では鼻水や咳といった風邪症状ですみ、重症化しないのですが、1歳までの子どもの細気管支炎は治療に抵抗する喘鳴、呼吸困難が起こり、入院治療が必要になることも多い病気です。小さい子が咳き込んだり、喘鳴が認められる時は早期からの治療が重要です。

治療
 水分補給と薬です。部屋の乾燥を防ぐために濡れたタオルや洗濯物を吊るしたり、加湿器を使って加湿し、食欲が低下した場合にはこまめに水分を飲ませるようにして下さい。水分が痰の切れをよくします。ホコリ、タバコや線香の煙などは咳き込みを悪化させますので避けてください。
 薬は風邪の原因に対する治療薬と痰を軟らかくする薬や気管支の拡張剤を使います。咳き込みの強い場合は必要に応じて薬の吸入もします。細菌感染が疑われる場合は抗生物質も併用します。 喘鳴が強い時や、上記の気管支拡張剤で喘鳴がとれない時は、更に抗アレルギー剤を使用します。



先天性股関節脱臼

 先天性股関節脱臼は生まれた時にすでに脱臼が完成している場合は少なく、脱臼しやすい状態で生まれてきて、新生児期に股関節の取り扱いが不良のため、だんだんと脱臼が進行し、股関節脱臼になってしまう場合がほとんどとされています。

 新生時期での下肢を伸した状態が脱臼をおこしやすい状態とされており、1960年代までは股関節と膝が無理矢理伸された状態でオムツをぐるぐる巻にする巻オムツが一般的であったため、先天性股関節脱臼が非常に多く認められました。しかし、1972年に京都市で始まった巻オムツの中止と赤ちゃんの股を開いた格好で抱っこすことを心がけるなどの先天性股関節脱臼予防法が全国に広がった1975年以降からは発生率が劇的に減少しました。下肢を伸した格好にすると全ての赤ちゃんが脱臼するわけでありませんが、もともと脱臼しやすい傾向にある赤ちゃんが下肢を無理矢理伸された格好にされ続けると先天性股関節脱臼となるとされています。赤ちゃんを裸にして仰向けに寝かせると、膝を曲げ、股を開いてカエルのような格好になります。股関節を開き、股関節と膝関節を曲げた状態が自然であり、下肢はアルファベットのMの字の形になります。このスタイルが赤ちゃんにとっていちばん無理のない、自然な姿勢で、股関節にとっても脱臼しにくい格好です。赤ちゃんはもともと関節がゆるいので、股関節もはずれやすく、本来カエルのように曲がっている足を、無理に真っすぐにさせようとしたり、この姿勢を妨げるような形のオムツや衣類をつけることで、股関節の発達がうまくいかず脱臼してしまいます。関節は赤ちゃんが自分の意志のままに自由に動かせる状態にしておいてあげるのが良く、股関節のことだけを考えればオムツもあてずに裸で育てるのが一番良いのです(非現実的ですが)。下肢は曲げることにも伸ばすことにも自由である必要があります。

 症状は赤ちゃんのオシメを替えるときに股が開きにくくてオシメの交換がしにくかったり、おむつを換えるときに股関節で音(クリック)がするような感触があるなどで気づかれたり、生後1か月や4か月の乳児健診で指摘される場合が多いのですが、

1)ひざを曲げた状態で股を広げると股関節にクリッという音がする感触がある。これは股関節がはずれたり、はまったりするときに出る音の可能性があります。

2)両足を曲げて、ひざが外側を向くように広げてみると、開きが悪い。

3)両足をそろえると、太ももやおしりの深いシワの数が左右で違う。左右の足の長さも違う。
などがあります。

1、発生頻度の高い原因

1)妊娠中での子宮内の赤ちゃんの姿勢異常が指摘されており、骨盤位分娩で出生した児に多いことが明らかになっています。

2)出生後に下肢を持続的に伸展する状態が繰り返されると脱臼しやすくなります。下肢を伸ばした状態を強制的に続けると、股関節を曲げる力が、股関節脱臼を引き起こす力に変換してしまいます。三角オムツや巻オムツをしたり、厚着、横抱きなどをおこなうと、股関節は強制的に伸展位に保持されます。赤ちゃんが自由に下肢の運動ができる状態にしておくとが先天性股関節脱臼予防には重要です。

3)女子に発生率が高い(男子の5〜6倍)ことや、動物にホルモンを投与する実験などの結果から性ホルモンが発生に関与していることが知られています。

2、予防法
 関節は赤ちゃんが自分の意志のままに自由に動かせる状態にしておいてあげるのが良ということです。正しいオムツとその当て方が脱臼の予防に欠かせません。現在市販されている紙オムツは問題ありませんが、腰の部分のテープをきつく閉めすぎず、足の運動が自由にできるようにして下さい。布オムツも股に当てる股オムツ、抱っこも足の間に手を入れるようして下さい。ただ、足の間に手を入れる抱っこの方法は、抱っこされる人に当たっている方の下肢は圧迫され自由な動きが制限される可能性がありますのでいつも同じ方向の抱っこでは問題が起こる可能性があります。ズボンなどは下肢の動きを制限しない物を選び、小さくて下肢の動きを制限する可能性のあるものは用いないで下さい。

 赤ちゃんを抱っこする場合は、抱っこする人と赤ちゃんとがお互いが向き合うようにして、赤ちゃんの膝が曲がるようにして、下肢を抱っこする人の左右になるようにすると、赤ちゃんの下肢は自然な形をとり、ある程度自由な運動が可能になります。抱っこする人の胸と赤ちゃんの胸を合わせ、赤ちゃんの股を支えて、膝も股も屈曲しており、股関節が自由に動いて自然な開排位になる抱っこ法が抱っこの基本です。赤ちゃんの背中が抱っこする人に向いてても、下肢が曲がり、自由に動ければかまいませんが、赤ちゃんを横にして抱くと、下肢の動きが制限されるので横抱きは出来るだけ避けるべきです。

 新生児・乳児期にオムツや抱っこの仕方などの正しい取り扱いをすることで、先天性股関節脱臼の多くは予防が可能です。治療は専用のバンドを下肢に1、2カ月着けます。これは痛みも苦痛もなく脱臼を元に治す働きがあり、このバンドでほとんどは治ってしまいますが、だめな場合には入院や手術が必要な場合もあります。放置されたり、治療が困難だったりすると、将来的に変形性関節症へ発展して、成人後に股関節に痛みを訴えるようになります。




外遊び(紫外線、熱中症対策)

 子どもが外で遊ぶと交通事故などの危険以外にも、夏は熱中症に代表される暑熱障害、強い紫外線による日焼けなどの皮膚への影響など心配がたくさんあります。しかし、外遊びは体力や気力、自律神経の発育や精神的な発育に欠かせませんし、成人に持ち越される小児のメタボリック症候群の予防に重要な役割を担っています。また、悪い点は予防が可能なことも多いので、危険防止を心がけ、良い点と悪い点を考えながら楽しい外遊びをさせてあげて下さい。

1、悪い点
 紫外線による皮膚への影響と暑熱障害に注意が必要です。

1)紫外線による影響
 紫外線には、中波長の紫外線(UVB)と長波長(UVA)があります。UVBはエネルギーが強く、肌表面の細胞を傷つけ、炎症を起こし日焼けを作ります。また、皮膚で骨の発育に重要なビタミンDを合成します。一方、UVAは皮膚の深い部分の真皮まで到達し、長期間皮膚に作用すると真皮の中のコラーゲンが減って異常な弾力線維がたくさん作られ、日光性弾力線維症を引き起こします。屋外で働いている人では、年をとると顔などに深いしわができますが、これは本来の老化現象ではなく、紫外線で起きる光老化です。一番紫外線が強い時期は4月から9月までで、1日のうちでは午前9時から午後3時ごろまでとされています。

 紫外線で傷害されたDNAは修復酵素で自動的に修復されますが、傷害が多ければ一部に異常が残ってしまう可能性があります。皮膚にあるメラノサイトという細胞は紫外線をブロックするメラニン色素を作り、紫外線の悪影響を防止しますが、メラニン色素が少ない白人では影響を受けやすく、皮膚がんになりやすいとされています。また、病気でメラニン色素がない人も、若い年齢で皮膚がんになってしまいます。メラニン色素が少ないイギリスのケルト系の人たちがオーストラリアに移住して強い日差しを浴びた結果、30代で前がん状態である日光性角化症になる人が出現し、さらに何年かすると扁平上皮がんになりやすいことが、最近分かってきました。オーストラリアは南極に近く、オゾンホールの影響をまともに受ける地域であり、住民は白人が多いという2点から、オーストラリアでは外出する時は長袖シャツを着て、帽子をかぶり、さらにサンスクリーン剤をからだの露出部に塗って、できるだけ太陽の紫外線を浴びないよう子どもを指導しているようです。

 幸い、日本の国はオゾンホールからは遠く、また日本人は黄色人種ですので、皮膚のメラニン色素を作る力は強く、自分でメラニン色素を増やして紫外線の影響を受けにくくします。外で遊ぶときに、日本の子どもたちには極端な紫外線対策は不要とは思いますが、紫外線が強い夏期では帽子や衣服、日焼けしやすい子ではサンスクリーン剤で紫外線防御をして戸外の活動をするように指導するべきかもしれません。日本人でも色白で、日焼けで皮膚が赤くなり黒くなりにくい子はメラニン色素を作る力は弱く注意が必要です。紫外線には日焼け、色素沈着、老化、皮膚がんなどのマイナス面があります。かつて、くる病予防として、ビタミンDを体内(皮膚)で合成するために日光浴をするよう指導されましたが、現在の日本人は食事でビタミンDを十分に摂取しており、わざわざ長時間の日光浴をする必要はありません。

 また、急な日焼けではメラニン色素が作られずに紫外線の影響を受けますので、日本人といえども重症の日焼け(火傷)になります。徐々に日光に慣らして、皮膚のメラニンを増やしておく必要はあります。外気浴は生後1か月から行いますが、乳幼児では日焼けしやすいので注意が必要です。乳児の日光浴は日向ぼっこ程度で行うべきで、日焼けするほど行ってはいけません。また、秋から春にかけて行い、真夏には行わないようにして下さい。夏はなるべく皮膚への直射日光を遮るようにして下さい。

2)暑熱障害(熱中症)
 生体の適応範囲をこえる高温環境が続くと、水分や電解質の代謝がうまくいかなくなり障害がおこります。暑くなりだした梅雨から真夏にかけて多く、小児は体温調節機能が未熟で、水分をたくさん必要としますので、暑熱障害は子供に起こりやすい病気です。

 大量の発汗によって脱水や電解質の喪失が生じると、抹消の循環が悪くなり、脱力感、嘔吐、頭痛などがおこります。

 普通のレベルの発汗ではお茶やお水の水分補給で十分ですが、大量の発汗の対応として、電解質の含まない水分の補給ばかりでは、電解質(ナトリウムとクロール)が少なくなり、運動後に筋肉の痙攣がおこり痛みます。下腿のふくらはぎのこむら返りが一般的です。

 体温が異常に上昇すると、熱自体や熱による循環不全が生じて全身臓器の障害がおこり、痙攣、意識障害などが生じます。

 睡眠不足、運動不足などの体調不良を極力避ける。高温になる環境を避ける。高温下で運動するような場合には適当な休憩や電解質やカロリーの含まれた水分を十分に摂取させるなどで熱中症は予防できます。

 熱中症になった場合は、塩分やカロリーの含まれた水分を十分摂らして、冷所で安静にさせる。状況によっては衣服を脱がせ、体を冷却することが必要で、重症では緊急入院も要します。

2、良い点
 屋外での遊びは、気候を感じ、怪我をして痛みを知る、体力向上や気力を養う、覚醒と睡眠のリズムを養う、自律神経を発育させるためには大切ですし、友達と一緒に遊ぶために協調性が養われ、またストレス発散の手段としても非常に有用です。外で遊ぶことは小さな動物や植物に触れ、いつくしむ心が形成されます。最近はテレビ、インターネットやゲームといったメディア漬けの子どもの精神状況(キレル子ども)が問題視され、運動不足と間食の摂りすぎによる肥満、糖尿病などの小児のメタボリック症候群も問題になってきています。小児期の肥満は成人に移行し、成人での糖尿病などの病気を引き起こします。屋外で遊ぶことは運動量が増え、筋肉量が増えますので基礎代謝が亢進し、間食もしなくなり、ゲームやメディア漬けが回避され、本来の子どもの健全な状態になり、肥満も解消されます。
 平日6時間以上メディアに接触している小学生は26%、中学生では24.2%で、休日では15時間近いレベルになるというデータがあります。子どもといえどもメディアを避けて生活することは不可能ですので、うまくメディアに対応するために、ダラダラと長時間は困りますが、子どもの頃から良質のメディアに親しむことも必要です。ただ、メディアが相手だと対人関係が構築されにくく、年齢的に不適切な情報も入って来ます。ゲームでは自分は痛みを感じませんので、他人の痛みも理解できません。また、長時間のメディア漬けでは親と子が共に過ごす時間が減り、夜更かし、睡眠時間の減少、朝食を食べないなどの問題のほか、コミュニケーション能力の育つ邪魔をするなど問題点が多くあります。子どもの時期は室内に居ると退屈しますので、メディアに興味が行き、メディア漬けとなりますので、出来るだけ外で遊ばしてください。遊びながら怪我をしたり、打撲するといった痛みの経験も子どもの心身の発育には欠かせないことです。何が安全で、何が危険か、自分の出来る範囲はどこまでかなどの判断力がつき、危険を回避する能力がつきます。

 また、栄養状況が良く、ビタミンDの食事からの摂取が多くなってもやはり紫外線(UVB)による皮膚でのビタミンDの合成は子どもの骨の病気であるクル病発症予防には重要です。ガラスを通過した日光はUVBがガラスでカットされるため、短時間でよいのですが室外で日光を浴びることが皮膚でのビタミンD合成に必要です。



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